技術試験隊斯ク戦ヘリ 作:ザクスキー2世
〖機密指定:甲〗
報告書番号:U.C.0079-0425-603-05
提出日:宇宙世紀0079年4月25日
宛:ジオン公国軍総司令部 技術本部長 アルベルト・シャハト少将 殿
発:第603技術試験隊 オリヴァー・マイ技術中尉
表題:YMT-05「ヒルドルブ」地上運用試験及び実戦に於ける技術評価報告の件
1. 運用概要
本報告書は、宇宙世紀0079年4月23日、北米大陸アリゾナ方面に於いて実施せし試作モビルタンクYMT-05「ヒルドルブ」(以下、本機と呼称す)の地上運用試験、並びに降下に際して発生せし敵部隊との交戦につき、取得資料に基づく技術評価を為すものなり。
搭乗者はデメジエール・ソンネン少佐。今次試験は、地球重力下に於ける本機の砲戦能力及び運用上の有用性を再評価する目的にて計画されしものなり。
然れども、試験区域への降下途上に於いて輸送機コムサイが敵襲を受け、本機は所定の試験手順を完了するに先立ち実戦へ移行せり。敵はザクⅡ、61式戦車及び対MS歩兵火器を併用する混成部隊にして、ザクⅡを運用せし者も連邦軍所属と認めらるるものなり。
交戦には、別途地上試験中なりしYMS-08B及び搭乗者アスカ・ナカノミヤ少佐が参加せり。同機は敵の誘引、観測情報の提供、敵戦車及び歩兵の制圧を担い、本機との協同戦闘を実施せり。
評価資料は、本機より受信せし稼働・射撃記録、コムサイに於ける観測及び通信記録、YMS-08B及び同乗せしブリンクマン技術少尉より提供されし映像・位置情報、並びに帰還せし搭乗者の報告及び救出時の観察による。
通信途絶後の機内記録全てを取得し得たるものには非ず。従って、損傷部位の細部及び機械的原因については、映像にて確認し得る事実と搭乗者の申告とを区別して記すものとす。
なお、敵大型陸戦艇との交戦、敵指揮官機搭乗者の自決及び敵部隊の所属に関する事項は、本報告の範囲外につき別途報告す。
2. 性能評価(実戦取得資料)
〖主砲及び射撃管制〗
一、対MS直射能力
APFSDSによる射撃に於いて、ザクⅡの胴体を貫徹し、機体を即時に戦闘不能とする威力を確認せり。約100mの近距離に於ける射撃にても同様の結果を得たり。
初期の協同戦闘では、YMS-08Bが敵を稜線の張り出しより誘い出し、本機が側方より射撃を加えたり。之により、地形に遮られし敵に対しても、観測及び誘引を担当する機体との連携を以て有効射線を確保し得る事を実証せり。
なお、命中弾の全てが即時撃破に至りしものには非ず。左腕部のみを破壊せし目標にはYMS-08Bが追撃を加えており、右戦果は共同によるものとして扱うべきなり。
二、曲射による遮蔽下目標への攻撃
敵が稜線の背後へ退避せし後、本機は曲射榴弾射撃へ移行し、敵の滞留地点及び移動経路へ着弾を与えたり。
右射撃は敵に陣地移動を強い、直射を避ける為の地形利用のみでは本機の攻撃を免れ得ざる事を示せり。特に、支援対象たるMSが敵前に在る場合、遮蔽後方への砲撃を継続し得る点は有用なり。
然れども、稜線越しの着弾効果を砲手のみで確認する事は困難にして、観測手段の確保を要す。今次戦闘に於いてはYMS-08B及びコムサイより得られし情報が、目標の所在確認と味方位置の把握に寄与せり。
三、TYPE3による対空射撃及びHEによる至近射撃
接近戦闘に於いて、敵ザクⅡが跳躍し上方より攻撃を企図せし際、本機は之を確認後、TYPE3の装填及び信管ゼロ距離設定を指示せり。車体の方向転換と主砲の仰角変更を行いつつ装填を完了し、降下する敵機を至近距離にて撃破せり。
之は上方よりの攻撃に対する応急の対処として高き効果を示せしものなり。但し、目標の運動は跳躍後の降下に限られ、射距離も極めて短し。本事例のみを以て、航空機全般に対する防空能力を証明せしものとは扱い難し。
続く地上目標にはHEを使用し、胴体への直撃・炸裂により撃破せり。徹甲弾、榴弾及び対空散弾を同一砲より使用し得る事は、地形及び目標の変化に対応する上で本機の大いなる利点なり。
四、加熱時の着弾偏差
連続射撃の過程に於いて照準に対し左方へ逸れる着弾を認め、搭乗者より砲身加熱に射撃制御の補正が追随せざる旨の報告を受けたり。
後続射撃では搭乗者による修正と外部着弾情報の提供を経て命中を得たり。然れども、右の改善を以て射撃プログラムの不具合が解消せりと見做す事は出来ず。射撃間隔、砲身温度及び使用弾種を揃えたる比較試験を実施し得ざりし為、偏差の発生条件と補正量の確定には至らず。
取得資料を基に温度補正を再検討し、冷間時のみならず連続射撃後の精度を確認する必要あり。
〖機動及び兵装運用〗
一、車体機動とモビル形態
本機は履帯による走行を保ちつつ、上半身を起こすモビル形態へ移行し、車体の進行方向と主砲の指向を異ならしめて交戦せり。
近距離に於いては左右履帯の速度差を利用したる急旋回、進退の切り替え及び砂煙・煙幕を併用し、複数のザクⅡの間を突破せり。敵が車体後方へ回り込みたる場合にも上半身を旋回させて射撃を行い、追撃機に一方的な射撃を許さざりき。
低い車体を地形へ寄せる運用は敵の照準を妨げ、必要時にモビル形態へ移行する機構は射撃自由度の確保に寄与せり。但し、今次戦闘は砂地及び比較的開けた丘陵に限らる。市街地、軟弱地盤等に於ける走行・旋回性能を同等とする根拠は未だ得られず。
二、マニピュレーター及び携行火器
装備せし105mmザクマシンガンに加え、撃破せし敵機より120mmザクマシンガンを回収し、左右の腕に保持して射撃せり。両火器は接近する敵の照準を妨げ、主砲の指向及び再装填に要する時間を確保するに有効なりき。
異種のMS用携行火器を戦場にて取得し使用し得たる点は、マニピュレーターを備うる本機の利点として特記す。但し、之は弾薬自体の互換性を意味せず。105mm及び120mmの補給は別個に考慮を要し、敵よりの回収を通常の継戦手段として算入すべきに非ず。
アームバケットは接触戦闘に於いて敵火器への打撃、敵機の押し返し及び斬撃の阻止に用いられたり。マニピュレーターによる敵手首の拘束も確認され、火器を指向し得ざる距離に於いて抵抗を継続する手段となれり。
然れども、敵はマシンガンの弾倉脱落後もヒートホークにて攻撃を続行せり。本機の105mmザクマシンガンも銃身を掴まれ、射線を下方へ逸らされたり。火器保持能力及び作業用腕部の存在のみでは、接触距離へ侵入せしMSを確実に排除し得ず。右アームバケットの切断及び左手指の喪失を含む経緯は後記の通りなり。
三、装填操作及び煙幕
搭乗者は音声にて使用弾種、次弾及び信管設定を指定し、装填動作と車体機動を並行して実施せり。スモーク散布の指示に応じたる発煙装置の作動も確認せり。
次弾を予め指定する操作は射撃後の再装填へ円滑に移行する上で有効なり。
今次記録にて射撃継続を阻む装填停止は認められざりき。他方、単一搭乗者の使用例のみにつき、音声入力の認識精度及び雑音下の誤作動率を定量的に評価するには別途試験を要す。
3. 対MS戦闘記録及び損傷経緯
一、通信機能の損傷
敵のミサイル攻撃後、本機よりの音声及び稼働・射撃データの送信が途絶せり。アンテナ損傷に起因するものと推定せらるるも、装置の現物検査を実施し得ず、送信機本体を含む故障範囲の確定には至らず。
コムサイはYMS-08Bより送られし観測映像及び位置情報を基に、敵の動向、遮蔽地形及び進路を通信せり。帰還後の搭乗者報告によれば、本機は外部通信を受信し得る状態にあり、同情報を利用せり。
但し、交戦中のコムサイ側には受信継続を確実に知る手段なく、本機からの応答も得られざりき。
二、ザクⅡ4機との近距離戦闘
本機はYMS-08Bとの協同射撃に続き、同機が敵戦車及び歩兵に拘束されし間、接近せしザクⅡ4機と交戦せり。
モビル形態への移行後、履帯による機動、主砲及びマシンガンの射撃を併用し、同4機を撃破せり。内訳はAPFSDSによる2機、TYPE3による跳躍中の1機、HEによる至近の1機なり。
最終の敵機にはヒートホークによる前部装甲への打撃を許せしも、後退して間合いを取り、105mmザクマシンガンにて頭部を損傷せしめたる後、HEにて撃破せり。この段階では走行及び装填機能は存続せり。
前記戦闘は、本機が砲撃位置に停止せる場合のみならず、包囲下にて移動を強いられし状況にても主砲を使用し得る事を示せり。一方、至近の敵に対して射撃機会を得るには、車体を動かして砲口との距離を確保する必要ありき。
三、指揮官型ザクⅡの急襲及び走行機能喪失
4機撃破の直後、別の指揮官型ザクⅡが側方より急襲せり。主砲の指向に先立ち接近せし敵はマシンガン射撃を加え、本機の側部に着弾、車体後部に発煙を認めたり。
本機は左アームバケットにて敵マシンガンの銃身を打ち、弾倉を脱落せしめたり。敵機は直ちに火器を放棄し、ヒートホークを以て右前側の履帯を切断せり。履帯の脱落に加え、破損せし覆いの転輪間への噛み込みを認め、車体の右前部が沈下せり。
本機は残存履帯による後退及び方向転換を試み、上半身を旋回させて主砲を敵へ向けんとせり。然れども、敵は車体右側に沿って移動し、左アームバケットの打撃を盾にて受けつつ接触距離を保てり。
次いで敵機は、本機右手の105mmザクマシンガンの銃身を左手にて掴み、射線を地面へ逸らせり。その状態より右後側の履帯へヒートホークを加え、履帯を切断すると共に転輪の縁を破壊せり。外れし履帯が車体下へ巻き込まるる状況も映像に認めらる。
之により右側は前後とも走行機能を失えり。左側の履帯はなお回転せしも、右側の損傷部が地面へ食い込み、車体は僅かに向きを変えるに留まれり。敵との間合いを開くに足る後退及び旋回は不能となり、主砲を有しながら敵を射線へ捉え得ざる状態に陥れり。
右前後の履帯切断及び外部走行部の損傷は映像にて確認せし事項なり。搭乗者も救出時に駆動系故障による移動不能を申告せり。但し、内部の伝達軸、歯車等の損傷有無まで確認し得たるものには非ず。
四、腕部による抵抗及び救援
本機は敵に掴まれし105mmザクマシンガンを手放し、右アームバケットを敵機の脇腹へ打ち付けて一時姿勢を崩さしめたり。然れども、敵は主砲の下へ踏み込み、再び砲口より内側の位置を占めたり。
搭乗者は左手にて敵の右手首を拘束し、ヒートホークの振り下ろしを阻止すると共に、右アームバケットによる打撃を継続せり。損傷したる車体が傾く中での抵抗なりしが、敵機に拘束を解かれ、左手指の一部を切断されたり。
続く斬撃には右アームバケットを差し入れ、車体への直撃を阻止せり。敵は食い込ませしヒートホークにて同部を引き、車体へ片足を掛けて捻る事により、最終的に右アームバケットを付け根より切断せり。
その直後、YMS-08Bが側方より介入し、敵機を本機後方へ引き離して交戦せり。同機はヒートサーベルにて敵の両腕及び両脚を切断し、胴体を残して戦闘不能とせり。指揮官型ザクⅡの無力化は同機による戦果にして、本機単独の撃破数には算入せず。
救援時の近接映像では、上半身側面の防楯に多数の破孔を認めたり。
本機の腕部による抵抗は救援到着までの時間を確保せしものと評価す。但し、走行機能を失いし後は主砲及び携行火器による排除が困難となり、最終的な救出は外部の援護に依存せり。
五、搭乗者の負傷及び救出
救援機は本機へ接触回線を接続し、搭乗者の生存を確認せり。搭乗者は当初自身を無事と申告せしも、脱出時には額の創傷及び出血を認めたり。略帽の左側は血液を吸い、顔面左側にも出血が及ぶ状態なりき。
ソンネン少佐は自力にてハッチを開き脱出を試みしが、車外へ出たる際に姿勢を崩せり。ナカノミヤ少佐はYMS-08Bの左手にて之を受け止め、そのまま搭載して退避せり。
コムサイ到着時にも起立を試みて膝を折り、降車には介助を要せり。コムサイに残留せし筆者及びキャディラック大尉の2名にて少佐を座らせ、筆者が身体を支える間に同大尉が頭部創傷へ布を当てて手当を行えり。続いてYMS-08Bより降りたるブリンクマン技術少尉が介助に加わりたり。搭乗者は意識及び会話能力を保ち、生還せり。
負傷の程度及び出血量、並びに受傷時の衝撃方向と車内の接触箇所は、本報告の取得資料のみでは確定し得ず。搭乗者が応答及び操縦を継続し得たる事を以て、無傷又は軽傷と判定すべきに非ず。
また、救援機の掌上に負傷者を収容する方法は、急加減速及び跳躍を制限せり。今次の退避は地形を利用し、負傷者保持に配慮せる機動によって遂行されたるものなり。
六、敵砲撃による機体大破及び現地遺棄
敵指揮官機の搭乗者による信号弾発射の後、ナカノミヤ少佐は本機搭乗者の退避を急がしめたり。搭乗者を収容して離脱せし直後、敵大型陸戦艇より戦場一帯への大口径砲撃が加えられ、本機もその集中を受けたり。
映像には本機の砲身が跳ね上がり、車体及び隣接する敵機が爆煙・土砂に覆われる状況を認む。同砲撃により車体に重大なる破壊を生じ、実機を用いたる試験の継続は不能となれり。既に自走不能なりし上、車体の損壊及び現地の回収手段に鑑みて搬出不能と判断され、現場判断にて遺棄を決定せり。
他方、退避時の観測映像に於いて、確認し得る主砲の砲身及び砲尾部は外観上原形を留め、車体と同程度の大破を認めず。主砲一式には回収及び再使用の余地あるものと見込まる。
但し、外観上の残存は内部の健全性を保証せず。砲撃及び落下による砲身の歪み、砲尾の閉鎖機構、取付部及び駐退復座機の損傷を含め、再射撃の可否は回収後の分解検査及び作動試験を待つものとす。
本機の自走不能は、敵MSとの接触戦闘に於ける右前後走行部の破壊による。搭乗者救出後の大口径砲撃は、既に移動不能となりし車体へ更なる損壊を与えたるものなり。従って、接触戦闘による移動不能と、その後の砲撃による機体喪失を区分して評価するものとす。
4. 総評及び今後の運用提案
本機は地上戦に於ける大口径火力支援兵器として、対MS直射、遮蔽後方への曲射、及び限定的な対空射撃を一機にて遂行し得る事を実証せり。特に、味方MSによる観測及び敵の誘引を受けたる砲撃は、相互の兵装・機動特性を補う運用として有効なり。
モビル形態、携行火器及び履帯による機動は、接近する複数のMSに対しても射撃機会を確保するに寄与せり。大型なる車体のみを理由に、本機を近接時に抵抗し得ざる固定砲台同然と扱うは妥当ならず。
一方、今次の接触戦闘では、敵に砲口より内側へ侵入され、走行部を順次破壊されたり。機動により敵を射界へ戻す余地を失えば、主砲の威力は直ちに自衛能力へ結び付かず。作業用腕部による抵抗も、接近せし敵MSの排除を保証するものには非ざりき。
近距離戦闘に於ける戦果は、走行によって射撃位置を確保し得る条件下のものとして評価すべきなり。走行不能時の自衛能力には、なお重大なる制約あり。
また、右戦果を一般搭乗者にて再現し得るか否かは別問題なり。
ソンネン少佐は砲身加熱による偏差を修正しつつ、車体の操縦、目標選定、主砲の指向、弾種指定及び両手火器の射撃を並行して遂行せり。之は搭乗者の砲術及び操縦経験に負う処大にして、機構を備うる事のみを以て一般部隊にも同一の戦闘能力を期待する事は出来ず。
YMS-08Bによる誘引及び観測、敵戦車・歩兵への対処、並びに最後の救援介入も、評価から除外すべからず。特に同機が他の敵に拘束されし間、本機への近接護衛は得られざりき。
今後の検討事項は以下の通りなり。
第一に、主砲の温度補正及び弾種別射撃制御の改善を要す。熟練者の経験を恒常的な補正手段とする事なく、連続射撃下に於いても所定の精度を維持し得るものとすべし。
第二に、通信装置の防護及び予備送信手段を検討すべし。主砲及び走行機能が存続せる間にも、送信不能により味方との連携が大きく制約されたり。通信喪失後の射撃・陣地転換に関する手順も、観測側と併せて整備する必要あり。
第三に、周辺警戒及び近接護衛を運用計画へ組み込むべし。主砲による交戦へ注意が集中せし際、死角より接近する敵を搭乗者単独にて常に捕捉する事は困難なり。護衛機が別目標への対処を強いられし場合の交代及び離脱要領を定め、本機と護衛が相互支援不能となる事態を避くべし。
第四に、走行部の防護及び損傷後の機動能力を検証すべし。今次は右前後の履帯を続けて破壊され、残存せる左側履帯のみでは離脱し得ざりき。履帯の切断に加え、覆い及び脱落部材の噛み込みが運動を妨げたる点も検討を要す。
アームバケット及び手指の防御利用については、斬撃を受けたる際の保持力、取付部強度及び腕部可動への影響を調査すべし。但し、防護の追加は重量及び整備負担を伴うにつき、近接護衛と併せて検討を要す。
第五に、操縦及び射撃操作の負担を調査し、搭乗者教育へ反映すべし。音声による装填指定等は操作の省力化に寄与すれども、目標選定及び機動判断そのものを代替するには至らず。実戦記録を教範へ用いる際は、ソンネン少佐個人の技量に依存する動作と、標準化し得る操作とを分けるべきなり。
第六に、搭乗者保護及び負傷時の脱出手段を点検すべし。今次の頭部負傷を特定の車内部材又は拘束装置の不具合へ帰する根拠は未だ無し。搭乗者からの聴取及び操縦区画の構造検討により、打撃・急激な傾斜に対する保護、ハッチ周辺の支持物、負傷者の搬出方法を確認する事を要す。
意識を保ち会話し得る搭乗者たりとも、独力での安全な脱出及び移乗を期待し得ぬ場合あり。救援時の介助並びに負傷者を収容したる救援機の機動制限を、部隊の救出要領へ反映すべし。
第七に、輸送、補給及び損傷時の回収手段を検討すべし。本機の大口径弾薬、履帯及び専用部材を前線へ供給する負担は、火力評価と別に確認を要す。自走不能となりし本機を、随伴MSによる通常の救援のみで短時間に退避せしめる事は困難なりき。搭乗者を救出し得ても機体を搬出し得るとは限らず、回収の見込みを欠く単独運用には慎重を期すべきなり。
今次試験では予定せし継続走行、整備所要及び耐久性に関する比較試験を完了し得ず。製造費及び部隊運用費を含む量産上の得失についても、本報告の資料のみでは十分なる判定に至らず。
然れども、地上部隊に随伴し、必要に応じて直射及び曲射を行う火力支援手段として、本機が示せし能力は再検討に値するものと認む。取得せし射撃・機動資料を保存し、射撃管制及び運用条件の改善に供する事を具申す。
5. 本機の要否に関する筆者所見
以下は、右の技術評価とは別に、筆者個人の見解として付記するものなり。
現在、我が軍の地上兵力中に、MS部隊と同一の速度にて進退し、且つ大口径砲による直接協同支援を為し得る兵器は存在せず。
マゼラアタックは砲塔の旋回機構を欠き、目標の出現方向へ車体を向け直す必要あるが故に、遭遇戦及び市街地戦に於ける即応性に難あり。マゼラトップより取り外せし175mm砲をザクに保持せしむる運用も前線部隊にて行われ居れど、之は本来他の任務に充つべきMSを射撃位置へ拘束するものにして、恒久の解決たり得ず。加えて、MSの携行火器は陣地、装甲目標及び敵大型陸戦艇の類に対し、威力・射程共に不足なり。
前線の火力不足を補うべく各部隊が独自の改修を行い居る現状は、右の空白を裏書きするものと考う。
本機は、今次戦闘に於いて右の空白を埋め得る事を実際に示したる、現存する唯一の兵器なり。
MS部隊が敵を拘束し、本機が遮蔽の内外を問わず火力を加うる。右の組み合わせは、MSのみを以て同一の任務を強いる場合に比し、投入すべき機数と損害を減じ得るものと見込まる。
地球攻撃軍の抱うる戦線は広大にして、投入し得るMSの数には限りあり。火力支援を専らとする兵器を別に備うる事は、MSを本来の任務へ振り向ける為にも必要なり。
量産に際して解決すべき課題の多き事は、本報告に列挙せし通りなり。射撃制御、通信、走行部の防護、補給及び回収、並びに搭乗者の練度に関する諸点は、いずれも軽視し得ざるものなり。
筆者は、之を以て本機の価値を否定するものとは考えず。右は運用と改修により減じ得る性質の課題にして、代替兵器の不在という事実を覆すものには非ず。
依って筆者は、課題の解決を条件としつつ、本機又は之に準ずる火力支援兵器を地球攻撃軍へ配備する事を要すと考うるものなり。
右は技術評価の範囲を超ゆる意見につき、採否の御判断を仰ぐ。
なお、今次の遺棄は現地に於ける回収不能の判断によるものにして、残存部材全ての再使用を否定するものには非ず。後日、現場の安全及び必要なる回収手段を確保し得たる場合には、主砲及び関連部材の回収を検討すべきなり。
回収後の検査にて使用可能と判定されたる砲及び部材は保存し、他の搭載母体への転用を含む後続試験に供し得るものとす。その際は搭載母体の強度、射撃反動、装填装置及び射撃管制との適合を改めて確認する必要あり。
以上の得失を併記し、今後の採否及び配備方針の御判断に資するものとす。
右、報告す。
宇宙世紀0079年4月25日
オリヴァー・マイ技術中尉
登場させるとしても大分先になりますが、ジークアクスのキャラを出すのはアリかナシか。(出るならニャアン)
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アリ
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ナシ
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どっちでも良い
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早く書け