技術試験隊斯ク戦ヘリ 作:ザクスキー2世
明日で第5章の物語は最終回となります。
オッチナンはザクの左手で次の補強材を掴み、右手を離して機体を引き寄せた。艦底へ回り込むにつれ、格納庫の明かりが艦腹の陰へ消えていく。腰から延びるワイヤーを引っ掛けないよう何度も手を止める間にも、すぐ近くではワシヤのヅダが敵を追い払っていた。
先に突入してきた2機のパブリクが、それぞれ胴体下部から2発ずつミサイルを放った。ワシヤは迫る弾体へ銃口を振り、1発を撃ち砕く。さらに1発が護衛艦の砲火に捉えられ、残る2発は転舵したヨーツンヘイムの艦尾を掠めて後方へ抜けていった。
撃ち尽くした2機も速度を落とさず艦隊の下を通過し、遠ざかってから大きく弧を描き始めた。胴体下部には空の取付部が見える。再び攻撃するには母艦でミサイルを積み直さなくてはならず、そのまま戦闘宙域を外れて大きく迂回しながら帰投していく。
『左足をその先の補強材へ掛けて下さい。横に張り出しているところです』
「これか?」
『はい、もう少し爪先を奥へ入れて、右足も掛けて下さい』
ミアの誘導に従って両足を掛け、ザクの背を艦底へ寄せると、巻き取られるワイヤーが次第に張っていく。格納庫から固定完了の報告を受けたオッチナンは、補強材から両手を順に離し、機体が動かないことを確かめた。続いて前腰と後ろ腰に急造した固定具から、ザクマシンガンを1丁ずつ取り出す。
艦底に固定されたザクII J型が、両手に構えた銃を近づく敵へ向ける。
『シェル中尉、最初は短く撃ってくれ。こちらでワイヤーの状態を見る』
「ちょうど来たぞ、試してみる!」
ワシヤの射撃を逃れたセイバーフィッシュが艦首側から回り込み、機銃の届かない艦底へ入り込もうと迫ってくる。
オッチナンが右のザクマシンガンを短く撃つと、反動で上体が揺れ、張り詰めたワイヤーが機体を引き留めた。補強材に掛けた足も外れていない。左のザクマシンガンも加えて撃つと、機首を上げて逃れようとした敵の胴体へ弾が集まり、片翼が付け根から折れた。
姿勢を崩したセイバーフィッシュがヨーツンヘイムから離れていく。噴射口の脇から炎が噴き出し、やがて胴体も耐えかね折れて爆発した。
「1機やったぞ!マイ中尉、ワイヤーは持ちそうか?」
『ワイヤーに異常はない。続けていいが、間違えて艦体を撃たないようにだけ気をつけてくれ』
『助かったぜオッチナン!下は任せた、こっちは弾倉を換える!』
ワシヤはヅダを艦腹へ寄せ、ヨーツンヘイムを敵との間に置いて空の弾倉を取り外した。オッチナンの射撃が続く間に新しい弾倉を差し込み、艦底側へ機体を出した。オッチナンの弾列を避けたセイバーフィッシュが1機、こちらへ向きを変えてくる。
ワシヤはその進路へザクマシンガンを向けて短く撃った。操縦席の後ろに命中すると、炸裂した弾片にパイロットがやられたのか、敵機はまるで転んだかのように横転しながら遠ざかっていく。
「これで少しは……」
楽になると言いかけたワシヤは、近くを進むパプアを越えてくる新たな戦闘機を見つけ、口を閉じた。間隔を開けて接近する3機のさらに向こうには、ミサイルを積んだ後続のパブリクまで見えている。
艦隊から遅れたパプアの艦尾で大きく火が噴き出し、艦隊前方の護衛に戻っていたヘルベルト少尉は、閃光に気づいて機体を後ろへ向けた。爆発は艦尾から中央部へ広がり、外板の裂け目から噴き出す積荷に混じって、貨物区画の隔壁までもが剥離して外宇宙に吹き飛んでいく。
少尉はパプアの近くにいるランチへ急いで呼びかけた。
「パプアから出たランチ、もっと離れろ!艦が沈むぞ!」
小さな艇の噴射炎が延び、その後ろでパプアの中央部が爆発した。艦首と艦尾が裂けて離れ、残った区画も連鎖する爆発に砕かれる中、ヘルベルト少尉はランチ2艇が破片の広がる範囲から離れるのを見届けた。
両艇の位置を記録し、ライヒ中尉へ報告する。
「こちら04、パプアが沈んだ!ランチが2艇、こっちへ向かってる」
『護衛艦に位置を知らせて戻ってきて。こっちにも敵が来てるわ』
少尉は位置を送信して前方へ向き直り、パゾクを守るライヒ中尉のザクへ機体を寄せた。ライヒ機が艦首側の敵へ射撃を続ける間に、ヘルベルト少尉は艦尾側へ回り込もうとするセイバーフィッシュへ銃口を向ける。
パプア沈没の報告がヨーツンヘイムの艦橋にも届き、プロホノウ艦長はランチの位置を記録させてから、艦隊の航路図へ目を戻した。出港時にはパプア15隻、パゾク15隻に本艦と護衛の2隻を加え、33隻が隊列を組んでいた。だが、各艦がシャチの群れのように襲ってくるセイバーフィッシュの攻撃を避けて針路を変えるうちに、その並びも崩れつつある。
「右後方のパゾクと針路が交差する。通信員、本艦の後ろを通るよう伝えろ」
「了解!」
通信員の返事に見張りの声が重なった。
「敵巡洋艦に命中!」
続いて通信機から、ガネバン中尉が僚艦へ射撃を指示する声が聞こえた。
『ミナミトリシマ、その艦を逃がすな!射撃続行!』
正面のモニターに映るサラミスは、前部砲塔を失い、舷側から炎を噴きながら艦首を振っている。後退に移ろうとするその中央部をミナミトリシマの斉射が貫き、艦橋の根元でも爆発が起きた。
推進器の光が消えても艦体はそれまでの勢いで進み続けた。内部で爆発が続き、裂けた外板の隙間から炎が噴き出している。
『敵巡洋艦1隻撃沈!残り2隻、なおも接近!』
艦橋に上がった短い歓声を見張りの報告が遮った。
「突撃艇接近!パブリクです!」
「砲術士、ミサイルの迎撃を優先しろ!」
ワーテルロー少尉が各砲座へ命令を伝え、ヨーツンヘイム上部の機銃が新たな敵へ向きを変えた。
「後続の突撃艇8機を確認!2機ずつ間隔を開けて接近中!」
オキノトリシマの艦橋からは、沈んだサラミスの手前を通り、艦隊へ近づいてくるパブリクが見える。先行した2機は既に離脱し、まだミサイルを積んだ8機が別々の進入針路から続いていた。最後の2機は遠く外側を回り、艦隊の下方へ出ようとしている。ガネバン中尉は突撃艇の位置に加え、その後方で砲撃を続ける2隻の巡洋艦との距離も確かめた。
「前部主砲、突撃艇を撃て!後部主砲は巡洋艦を撃ち続けろ!ミナミトリシマ、そちらの突撃艇は任せる!」
前部の連装メガ粒子砲が旋回し、先頭のパブリクへ斉射を浴びせた。胴体下部の大型ミサイルが1発、取付部から千切れ飛び、艇体も残る1発を巻き込んで爆発する。間隔を開けて並走していた僚艇は残骸の脇を突き抜け、砲塔が向き直る前に2発とも発射した。
「ミサイル2発、パゾクへ向かっています!」
報告を受けたライヒ中尉はミサイルの側方へザクを回し、近い方へすれ違いざまにザクマシンガンを撃ち込んだ。外装が裂けて噴射炎が乱れても、弾頭が爆発するまで撃ち続けた。だが、もう1発は既にザクを遠く通り過ぎていた。
狙われたパゾクが艦首を振ったが、ミサイルは後部の箱形の艦体へ突き刺さった。大爆発が起きて推進器の周囲から外板が吹き飛び、貨物区画で続けざまに起きた爆発が、下方の中央部へ伸びる連結部まで引き裂く。前部の箱形の艦体が中央部に繋がったまま進む一方、千切れた後部艦体は、残った推進器の噴射を受けて回転し始めた。
崩れた貨物区画から飛び出す資材を避けようと、近くの輸送艦が慌てて針路を変えた。
『右へ避けろ!パゾクの残骸が来る!』
ミサイルを撃ち尽くしたパブリクが、ライヒ中尉の前を横切ろうとしていた。母艦へ戻るために大きく回り始めてはいるが、高速で飛ぶ艇はすぐには進路を変えられない。ライヒ中尉はその通過先へザクマシンガンの弾列を送った。
横腹へ弾を浴びたパブリクが傾き、そのまま射線を突っ切る。操縦席から機関部まで裂けた艇体が、艦隊から離れた斜め前方で爆散した。
ライヒ中尉が艦隊へ銃口を戻す間にも、次の組の1機が2発のミサイルを放った。そのうちの1発はヨーツンヘイムを狙い、撃ち終えた艇は艦隊の外へ抜けていく。
オッチナンは艦底へ真っすぐ迫る弾体に、右のザクマシンガンを向けた。最初の弾列は僅かに脇へ逸れたが、左の銃も加えて照準を直すとザクの優秀なFCSのお陰か、まるで点のようなミサイルの先端に続けて命中する。
爆発がヨーツンヘイムの艦底を照らし、ザクの脇を抜けた破片が外板を叩く。固定された機体にも細かな振動が伝わってくるが、オッチナンはもう1発を探して銃口を振った。
「1発は落とした!もう1発はどっちだ!?」
『左です!隣のパプアへ向かっています!』
オッチナンはミアの声に左腕を振ったが、銃口の先に足元の補強材が重なった。慌てて引き金から指を離す。機体を捻って射線を確保しようにも、腰は固定されていて動かない。
「駄目だ、補強材が邪魔で撃てない!左側のMSに迎撃を頼んでくれ!」
他のMSが迎撃する間もなく、ミサイルは隣を進むパプアへ達した。艦橋の真上にある連結部へ命中し、爆発が隣接する貨物区画まで大きく引き裂く。下へ張り出した艦橋が爆風に押されて傾き、貨物区画から噴き出した炎がまだ撃っていた上甲板を舐めて機銃を砲座ごと呑み込んでいく。
オキノトリシマが突撃艇へ砲を振り向けている間にも、2隻のサラミスは距離を詰めてくる。ガネバン中尉は左の敵艦へ後部主砲の射撃を集中させたが、相手は損傷した舷側を隠すように艦を傾け、残る砲で撃ち返してきた。その砲撃を避けて転舵する間に、右のサラミスまでが艦隊へ砲口を向けた。
「ミナミトリシマ、右の巡洋艦を押さえろ!」
ミナミトリシマも主砲の一部をサラミスへ向け直したが、突撃艇への砲火が薄れた隙に、同じ組のもう1機が右側から突入した。パゾクとパプアへ1発ずつミサイルを放ち、艦列の脇を一気に通過していく。長い推進炎を引く2発の弾体は、パプアの機銃弾を抜けてそれぞれの艦へ迫った。
『パゾク1隻とパプア1隻にミサイル命中!…両艦からランチが出ています!』
ガネバン中尉がそちらへ目を向けると、パゾクの前部艦体が連結部から千切れかけていた。箱形の艦体が傾き、その隣ではパプアも貨物区画から艦尾にかけて炎に包まれている。両艦から数艇のランチが離れた後も小爆発は続き、残った艦体の原形を崩していく。
ミナミトリシマの前方では、別のパゾクがサラミスの砲撃を避けようと回頭し、その舷側を敵の砲口が追っている。ミナミトリシマはその間に割り込んで主砲を撃ち、パゾクの転舵が終わるまで敵との間を塞いだ。
そこへサラミスの次の斉射が届いた。1発がミナミトリシマの艦首を掠め、もう1発が左舷中央部へ命中する。砲塔の後ろから外板が吹き飛び、開いた穴から炎と破片が噴き出す。
「ミナミトリシマ、被害を知らせろ!」
『左舷中央部に被弾、火災発生!隔壁を閉鎖しています!』
回線の向こうで報告の声が遠のき、部下への怒声に変わった。
『ダメコン班、脱気消火を急げ!』
「機関は!?」
『機関は無事です!左舷主砲2基は主系統の緊急遮断で使えませんが、残る砲で応戦します!』
負傷者を運び出せという声も重なる。パゾクがようやく転舵を終えて離れると、ミナミトリシマも針路を変えたが、敵へ向けていた砲塔のうち2基は沈黙したままで、先ほどまでの斉射は戻らない。
ガネバン中尉は前部主砲の一部も巡洋艦へ戻し、ミナミトリシマが態勢を立て直すまでサラミスを近づけまいと射撃を続けさせた。
艦隊の外縁にいたヘルベルト少尉は、さらに後続のパブリクがミサイルを切り離すのを捉えた。2条の推進炎が伸び、斜め前方からパゾクへ迫ってくる。撃ち終えた艇は進入時の速度を保ったまま、艦隊から離れる方へ針路を曲げ始めていた。
ヘルベルト少尉が手前の1発を捕捉すると、FCSの照準点が弾体の進む先に現れた。少尉は両手で構えたザクマシンガンの銃口をその予測位置へ合わせ、引き金を引き絞る。
「当たれ!!」
曳光弾がミサイルの進路へ伸びていく。照準点を追って銃口を動かしながら、少尉は迫る弾体を睨みつけた。その前部に弾列が食い込むと、ミサイルは閃光に包まれ、噴射炎ごと砕け散った。
すぐにもう1発へ銃口を振ったが、ミサイルは照準を合わせる間にザクの脇を抜け、パゾクへ迫っていく。
「この角度じゃパゾクに当たる!03、そっちから撃てるか!?」
『こっちで撃つ!』
パゾクの艦首近くにいたスミス少尉の射撃で、ミサイル後部の噴射口が砕け、推進炎が消えた。だが、弾頭は勢いを失わずに進み、回避しようとするパゾクの後部艦体へ突き刺さった。艦内で起きた爆発が側面の外板を内側から押し広げる。
破口から長い建造用部材が飛び出し、側面に並ぶ円形の搬入口が外板ごと吹き飛んだ。後部の箱形の艦体は内部から膨れ上がり、上へ突き出した小さい艦橋もろとも爆発に呑まれて崩れていく。
ヘルベルト少尉がスミス少尉を呼ぼうとした時、接近警報が鳴った。ミサイルの迎撃に気を取られる間に、2機のセイバーフィッシュが左から距離を詰めていた。ヘルベルト少尉がザクマシンガンを向けて撃つと、先頭は下へ逃れ、その後ろにいた1機が、機体後部のコンテナ型ミサイルランチャーから小型ミサイルを2発放った。
少尉は右へ機体を滑らせて1発目を躱したが、続く1発が左肩へ命中し、衝撃で上体を振られたザクが回転を始めた。操縦席に損傷を知らせる警報が響き、千切れた左腕が破片と共に遠ざかっていく。
「左腕をやられた!機体が回ってる!」
『04、慌てないで!後ろは私が押さえるから、姿勢を戻して!』
追撃しようとしたセイバーフィッシュをライヒ中尉が射撃で退かせる間に、ヘルベルト少尉は姿勢制御スラスターを噴かして回転を止めた。右腕と脚が操作に応じて動くのを確かめると、握ったままのザクマシンガンを構え直し、まだ旋回を続ける敵機へ向ける。
その進路へ短く区切って撃つと、片翼の先が飛んだ。大きく外へ膨らんだ敵機をライヒ中尉の弾列が捉え、胴体を撃ち抜く。
『ヘルベルト、怪我はない?』
「怪我はない、まだやれる!右腕も推進器も大丈夫だ!」
『分かったわ、私の右について。03、弾倉を換えるから援護して!』
スミス少尉が前へ出るのに合わせ、ヘルベルト少尉もライヒ中尉の脇へ機体を寄せて、艦隊へ近づく敵を探した。片腕になっても、今は戦列を離れるわけにはいかない。
ヨーツンヘイムの左舷へセイバーフィッシュの機銃弾が続けて命中し、装甲板の表面で火花が散った。敵機は機体後部のコンテナ型ミサイルランチャーから1発放ち、艦尾側へ機首を振る。ミサイルは左舷格納庫の側面へ命中し、爆発が外板を引き裂く。
左舷格納庫は発進作業に備えて既に脱気されていた。そのため被弾後も火災は起きなかったが、照明が消え、非常灯の下では壁の留め具から外れた器材が宙を漂っている。ノーマルスーツを着た作業員たちは破れた配管の弁を閉め、飛散した破片や器材で負傷した仲間を抱えて気密室へ退避していった。
艦橋へ左舷格納庫と隣接区画を閉鎖するとの報告が入ると、プロホノウ艦長は通信席へ顔を向けた。
「全員出たか?」
「全員退避しました!負傷者3名は医務室へ搬送中です」
「よし、閉鎖しろ」
隔壁が閉じられ、続いて機関には異常なしとの報告が届いた。艦底に続いて左舷も破られたが、ヨーツンヘイムはまだ航行を続けられる。
先ほどパゾクを狙った艇に続き、その僚艇も前方のパプアへ2発のミサイルを放った。1発は艦首の先を抜けたが、もう1発は艦体へ迫っていく。パプアの対空砲座がそちらを向こうとしたところへ、艦尾を越えたセイバーフィッシュが射撃を浴びせ、機銃の1基を黙らせた。
ミサイルを撃ったパブリクは、そのままヨーツンヘイムの艦首側を横切った。ワシヤは艦首の陰から銃口を出し、通り過ぎる艇の横腹へザクマシンガンを撃ち込む。弾列が操縦席の後方を捉え、パブリクは艇体を折られながら爆散した。
だが、放たれたミサイルは進み続けた。パプアの残る砲座では止められず、左右に並ぶ艦体のうち左側の下面へ突き刺さる。
総員退艦を命じる声がパプアから届いたが、貨物区画で続く爆発は収まらず、左右の艦体を繋ぐ連結部まで引き裂いていく。下へ張り出した艦橋が支柱ごと千切れ、通信が途切れた時には、両側の艦体も幾つもの破片に分かれていた。
「今ので何隻だ?」
艦長の問いに、通信員が各艦の報告を確かめる。
「撃沈を確認したのはパプア4隻、パゾク3隻です。ミナミトリシマは中破していますが航行可能です。他にも損傷した輸送艦があります」
パプアとパゾクを合わせた30隻のうち7隻が沈んだ。プロホノウ艦長は、出港前に積荷や出発時刻を確かめ合った相手の顔を思い浮かべた。短く頷くと、まだ航行を続けている艦の位置を確かめるために航路図へ目を戻す。
「残る各艦の状態を確認しろ。応答のない艦は、近くの艦に見てもらえ。ランチの位置も記録しておけ」
「了解」
「マルケス、左のパゾクと針路を揃えろ。これ以上離されるな」
窓の向こうでザクマシンガンの弾列が敵機を砕いたが、そのすぐ下を別の戦闘機が通り抜けていく。MSが目の前の敵を落としても、他の方向から入る機体までは止められず、離れた輸送艦ほど援護を待たされる。
オッチナンは固定具へ戻していた左のザクマシンガンに新しい弾倉を取りつけ、再び両手に銃を構えた。ワシヤが側面を守っている間、艦底へ入る敵は自分が止めなくてはならない。
艦尾側へ回ったセイバーフィッシュを右の銃で追い払うと、反対側から入ってきた敵へ左の銃を振り、機首に撃ち込んで操縦席を砕いた。直後、右から機銃弾を浴びた。左の敵を撃っている間に、別の1機が艦腹に沿って近づいていた。
機銃弾がザクの右肩の盾に弾かれ、火花を散らした。オッチナンがそちらへ銃口を戻しかけると、敵機後部のミサイルランチャーが発射炎を噴いた。放たれたミサイルが頭部の右側を直撃し、爆発が首の付け根から右肩の関節部までを包む。
正面の映像が消え、前へ振られた身体にシートベルトが食い込んだ。右腕からも応答がなくなり、艦底から引き剥がされかけた機体を張り詰めたワイヤーが繋ぎ止めている。
「くそっ!」
反射的に脚を動かしかけ、オッチナンは慌てて操作を止めた。ここで足を外せば、機体を支えるものはワイヤーだけになる。
格納庫の管制席では、マイとミアが艦外カメラの映像を見つめていた。ザクの頭部は失われ、裂けた右肩の付け根からは、ザクマシンガンを握った腕が離れていく。
「シェル中尉、応答してくれ!」
『生きてる!前が真っ暗だ、右腕も反応がない!』
「頭部と右腕を失っているが、ワイヤーの固定は無事だ。左腕と脚は動かせるか?」
『動く!だが前が見えないんじゃ撃てない!』
二人がやり取りする間にも、ミアはザクを撃ったセイバーフィッシュを追っていた。敵機は旋回を終え、再び艦底へ機首を向けている。
「マイ中尉、さっきの敵がまた来ます!」
「ワシヤ、艦底へ回ってくれ!シェル中尉が被弾した!」
『分かった!』
ワシヤはヅダを艦底へ回し、ザクに近づく敵を横から撃った。胴体をへし折られた敵機の脇を抜け、そのまま後続にも弾列を浴びせて追い払う。
側方の補助カメラにヅダの噴射光が映った。オッチナンは無事なカメラへ順に切り替えたが、どれも正面は映せず、左腕が動いても狙いをつけられない。操縦桿を握り直したところで、ハッチの開放レバーへ目が留まった。
「マイ中尉、ハッチを開けるぞ!目で見て撃つ!」
『待て、まだ敵がいる!開ければ操縦席を撃たれるぞ!』
「閉じたままじゃ撃ち返せないだろ!左腕が動くうちはやれる!」
オッチナンはノーマルスーツの気密を確かめて操縦席内を減圧し、空気を抜き終えてからハッチの開放レバーを引いた。前面の装甲が開くと、その向こうには星が広がっており、先ほど撃ち落とされた敵の破片がゆっくり横切っていく。
オッチナンは座席から身を乗り出しかけたが、シートベルトに肩を引かれて深く座り直した。左腕を上げてザクマシンガンの銃身を見える位置へ出し、補助カメラでも腕の位置を確かめながら、銃口を少し外へ振る。
『オッチナン、まさかそのまま撃つ気か!?』
「カメラが死んでるんだ!他にどうしろってんだ!?」
『無茶しやがって……右から来るぞ!』
オッチナンは右側の噴射光を目で追い、艦底へ近づくセイバーフィッシュを捉えた。その進路へ左腕を向け、引き金を引く。
ザクマシンガンの振動が操縦席まで響く中、弾列は敵の後ろを抜けた。銃口を敵機の進む先へずらして撃ち直すと、片翼に命中した。セイバーフィッシュは艦底から機首を逸らして離れていく。
「狙いは勘頼みだが、何とかなる!ワシヤ、下は任せて側面へ戻ってくれ!」
『分かった!身を乗り出すんじゃないぞ!』
去っていくヅダの噴射炎が開いたハッチを照らし、オッチナンは詰めていた息を吐いた。ヘルメットの中に呼吸音が響き、銃口の向こうには宇宙が広がっている。ここへ撃ち込まれれば、もう正面の装甲は守ってくれない。
オッチナンは補助カメラで右側を確かめてから正面へ目を戻した。左のザクマシンガンを構えたまま、次の敵を待つ。
ヨーツンヘイムの左舷へ戻ったワシヤは、敵が近づいていない間に推進剤の残量へ目を落とした。機体に異常はないが、艦首から艦尾、側面から艦底へと飛び回るうちに、ずいぶん減っている。まだ飛べるだけの量はあるものの、敵が途切れなければ、補給に戻る機会すらなくなってしまう。
ワシヤはヅダを艦腹へ寄せ、残弾の少なくなった弾倉を交換した。さっき撃ち落としたパブリクも、ミサイルの発射は止められなかった。次は撃たれる前に落とさなくては。
その間も艦の上方では機銃が撃ち続けていた。弾倉を取りつけ終えたところへ、マイの声が入る。
『ワシヤ、左前方を見ろ!下方からパブリクが2機来る!』
ヅダを横へ出すと、艦首の陰から2つの艇影が現れた。遠く外側を回っていた最後の組だ。どちらも胴体下部に大型ミサイルを2本抱え、艦隊の下方からヨーツンヘイムへ真っすぐに突っ込んでくる。
「見えた!2機ともミサイルを抱えてる!」
プロホノウ艦長は、接近する2機との距離を確かめた。今から転舵しても、向きを変え終える前に撃たれる。4発もの大型ミサイルを受けて、ヨーツンヘイムが持つとは思えない。
上部の砲座が射撃を始めたが、2機は最初から艦底側へ抜ける針路を取っていた。接近する艇を追って左右の機銃が銃口を下げると、射線が自艦の外板に重なり、相次いで射撃を止める。
艦底のオッチナンも左のザクマシンガンを撃った。だが、初めから大きく間隔を開けた2機を一度には狙えない。片方の進路へ弾列を送る間にも、もう1機が遮るもののない宙域を加速してくる。
ここまでか。
プロホノウ艦長はそう思いながらも、声を張り上げた。
「取り舵一杯!敵へ艦首を向けろ!機関最大!」
「取り舵一杯!」
マルケスが復唱し、機関制御席からも増速を告げる声が上がった。
「副長、各区画の閉鎖を確認しろ!衝撃に備えさせろ!」
クリューガー副長が送話器を取る頃には、艦橋の足元から増速する機関の振動が伝わってきた。モニクは肘掛けを握り潰さんばかりに掴み、正面のモニターを睨みつけていた。手袋には深い皺が寄っている。ヨーツンヘイムが向きを変え始めても、パブリクの進路から艦体を逃がし切れない。
その時、左後方から近づいていたオキノトリシマが増速し、転舵するヨーツンヘイムの前へ艦首を突き出した。
『ヨーツンヘイム、そのまま回頭しろ!本艦が間に入る!』
パブリクとヨーツンヘイムの間へ進んだオキノトリシマが、突撃艇へ向けられる砲を全て撃ち始めた。メガ粒子砲の光に重なって対空機銃の弾列も伸びる。
突入針路を護衛艦に塞がれ、2機は艇体を傾けて外へ膨らみ始めた。進む先へメガ粒子砲が走り、片方の艇腹を掠める。パブリクはなお向きを変えようとしていたが、高速で進む艇を急には曲げられず、オキノトリシマの艦首近くへ迫っていた。
2機がそこを抜ければ、ギリギリではあるが再度ヨーツンヘイムを狙える。ワシヤはパブリクの進路へ目を走らせ、ザクマシンガンを構えた。護衛艦の艦首を越え、通過する前に正面から迎え撃つしかない。
「マイ、俺が突っ込む!オキノトリシマに射撃を止めるよう伝えてくれ!」
『待て、まだ連絡がついていない!今出たら味方に撃たれるぞ!』
「待ってたらミサイルが来る!早くしてくれ!」
ワシヤがペダルを踏み込むと、ヅダの背部から推進炎が延びた。強烈な加速に身体を座席へ押しつけられ、息が詰まる。オキノトリシマの艦首を越える進路へ機体を向けると、さらに出力を上げた。
『ヅダが前へ出る!進路と射線が重なる砲は射撃を止めろ!』
ガネバン中尉の命令が伝わり、ヅダの進路と重なる砲撃が止まった。ワシヤはオキノトリシマの艦首を越え、真正面から近づいてくるパブリクへ銃口を向ける。
視野の端が暗くなっていく。首を動かそうにもヘルメットを座席から離せず、操縦桿を握る指の感覚まで鈍っている。先頭の艇がヅダを避けようと機首を振ったが、迫る艇体はほとんど横へ動かなかった。ワシヤはその操縦席へ狙いを重ね、引き金を引く。
急速に距離が縮まる中、ザクマシンガンの弾が風防を砕いて操縦席へ叩き込まれた。パブリクがミサイルを抱えたまま爆発する。ワシヤがその脇へ機体を逸らすと、身体を座席へ押しつける力の向きが変わり、肩にシートベルトが食い込んだ。狭まった視界には、正面しか残っていない。
まだ1機いる。
間隔を開けて進んでいたもう1機が、先行艇の爆煙の脇を通り抜けようとしていた。ワシヤはザクマシンガンを振って撃ったが、弾列は艇の脇を抜けた。
もう少し、右だ。
ワシヤは重い腕で操縦桿を押し、再び引き金を引いた。弾列がミサイルの取付部から艇体へ食い込む。パブリクの機首が跳ね上がり、千切れた2発のミサイルが回転するが、推進器には火が点かない。直後に艇体が爆発し、ミサイルも2発とも巻き込まれて砕けた。
ワシヤはペダルを緩めた。身体への圧迫は弱まったが、視野の暗がりは消えず、正面までがぼやけている。気を抜けば意識が途切れそうで、歯を食いしばりながら息を吐いた。
『ワシヤ、聞こえるか!?応答しろ!』
「……き、聞こえてる」
『2機とも落とした!ゆっくり減速しろ、こちらへ戻るんだ!』
「分かってる……ちょっと待ってくれ、まだ目が……」
ワシヤは足の裏でペダルを確かめ、ゆっくりと機体を反転させた。進行方向へ背を向けてから主推進器を短く区切って噴射し、身体に掛かる力を確かめながら減速していく。
ようやく周囲が見えるようになると、ヨーツンヘイムはまだ転舵を続け、その手前をオキノトリシマが進んでいる。ヅダに損傷はなかったが、推進剤も弾薬も大きく減っていた。
ヨーツンヘイムの艦橋では、モニクが肘掛けから手を離していた。曲がったままの指をゆっくり伸ばし、通信席へ顔を向ける。
「ワシヤ中尉は無事なのか?」
「応答がありました!減速して、こちらへ戻ってきます!」
モニクは頷いたが、すぐには言葉が出ない。隣ではプロホノウ艦長が敵艇の撃墜を確認し、操舵席へ指示を出す。
「艦隊と針路を合わせろ。右舷格納庫、ワシヤ中尉の収容準備を急げ」
前を進むオキノトリシマを敵の砲撃が掠め、前部外装の破片が散った。それでも主砲をサラミスへ向け直し、応射を始める。その後ろでは、ヨーツンヘイムの機銃が近づく戦闘機を追っている。
ララァは居住区の手すりを握り、時折伝わってくる重い振動に耐えていた。格納庫から戻ってきたミアは、扉の向こうで乗員たちと負傷者を運んでいる。通路を空けろという声に続き、担架を持った兵が通り過ぎていった。
艦外では誰かが怯えていた。その近くでは、怒りながら仲間を呼び続ける人もいる。人の気配が不意に途切れる度に手へ力が入り、耳を塞ぎたくなる。そんなことをしても、届いてしまうのは分かっていた。
その時、脳裏に稲妻のようなものが走り、ララァは顔を上げた。それまでとは違う気配を捉えて、胸が高鳴る。
誰かが近づいてくる。
まだ顔も見ていないのに懐かしく、胸が痛くなるほど愛おしい。会わなくてはと思うより早く、ララァは手すりを引いていた。扉を抜けたところで、乗員が驚いて声を掛ける。
「ララァちゃん、どこへ行くんだ!?ここで待ってなさい!」
乗員の声はもう耳に入らず、ララァは角の手すりを掴んで身体を振り、艦橋へ続く通路を進んだ。近づいてくるその人を早く見たくて、手すりを引く手に力がこもる。
艦隊の前方では、スミス少尉がセイバーフィッシュを落としたところで、ザクマシンガンの弾を撃ち尽くしていた。弾倉を外す僚機をヘルベルト少尉が右腕の銃で援護したが、後続の敵は弾列を避け、ザクの下へ回り込もうとする。
別の方向から伸びた弾列が、そのセイバーフィッシュの機首を砕いた。炎を引く残骸の向こうから赤いザクが姿を現した。機体を捻るなり次の敵へ銃口を向け、スミス少尉が識別表示を確かめるより早く通信を送ってくる。
『こちらシャア・アズナブル。救難信号を受信した。これより援護に入る』
ヨーツンヘイムの通信員が顔を上げた。
「シャア少佐です!味方MS4機、艦隊へ接近!」
「後方にムサイ級!ファルメルを確認!」
ファルメルの砲撃がサラミスの進路を横切ると、敵艦は回頭し、艦隊へ向けていた砲を救援艦へ振り向けた。救援艦が全速で距離を詰めて砲戦に加わる中、赤いザクに続く3機のザクIIも艦隊へ入ってくる。
『デニム、スレンダーとクラウンを連れて輸送艦の護衛につけ。深追いはするな』
『了解!』
命令を受けて3機が散り、デニム機が近くのパゾクへ向かうと、スレンダー機はその反対側から来る敵を迎え撃った。クラウン機も射撃を始め、パプアを狙っていた戦闘機に進路を変えさせる。
ライヒ中尉は味方が配置につくのを見届け、右側から来る敵へ機体を向けた。弾倉を取りつけたスミス少尉がヘルベルト少尉と共に続き、その後方を帰投するヅダが通っていく。
ワシヤは赤いザクを目で追っていた。敵を追い払ったその機体がヨーツンヘイムの手前へ戻ってくるのを見て、ようやく肩の力を抜く。
「……やっと来たかよ」
座席へ頭を預けて笑おうとしても、口からは荒い息ばかりが漏れる。
艦橋へ飛び込んできたララァは、入口の手すりで身体を止め、ヘルメットを外して脇の固定具へ押し込んだ。すぐに前方へ向かって再び身を躍らせると、振り返ったモニクが声を上げた。
「ララァ!戦闘中に入ってくるな、居住区へ戻れ!」
ララァはそれでも止まらず、モニクの座席の背へ手を掛けて通り過ぎた。モニクは急いでシートベルトを外し、手すりを伝ってその後を追う。
「待て!聞こえないのか!?」
ララァは前面の窓枠を掴み、ガラスへ顔を寄せた。艦橋の少し先を赤いザクが通り過ぎようとしている。
あの中にいる。
唇を開いても声にはならず、赤い機体を見つめるほど、胸に懐かしさが込み上げる。顔を見たい。もっと近くへ来てほしい。さらに身を乗り出そうとするララァの腕を追いついたモニクが掴んだ。
「窓から離れなさい!艦が揺れたら身体をぶつけるぞ!」
砲座からの報告を聞き終えたプロホノウ艦長が目をやると、ララァはモニクの声にも振り向かず、赤いザクだけを目で追っている。
普段は妙に大人びた娘だが、赤い彗星を目の前にすると年相応の顔を見せるらしい。艦長は少しばかり感心しながら窓の先を見た。赤い彗星は地球にまで名が知れ渡っているのかと、見当違いのことを考えている。
「特務大尉、その娘を頼みます。しっかり掴まえておいて下さい」
「艦長、民間人をここへ置くわけには……!」
「マルケス、針路を保て。通信員、ファルメルへ本艦と艦隊の状況を送れ」
艦長が指示に戻ると、モニクは言葉を呑み込んだ。鼻を鳴らしてそっぽを向き、手すりを掴んで身体を支える。もう一方の手ではララァの腕を離さず、なおも窓から離れるよう言い聞かせていた。
誰かに見られているような気がして、シャアはヨーツンヘイムへ目を戻した。艦の周囲に新たな敵影はない。艦底には頭と片腕を失ったザクが張りつき、射撃を続けている。シャアは機体を上昇させながら損傷した艦腹へ目を走らせ、その上の艦橋に人影を見つけた。
カメラを艦橋へ向けて拡大すると、長い黒髪に褐色の肌をしたノーマルスーツ姿の少女が、ガラスへ顔を寄せてこちらを見つめている。後ろの女性士官が腕を掴んで何か言っているが、少女は振り向こうともしない。
どこかで会っただろうか。
覚えはないのに、初めて見る顔とは思えない。シャアは一瞬その少女を見つめた。戦闘中の艦橋になぜあんな娘がいるのかと訝しんでいると、デニムからの通信に引き戻される。
『少佐、敵が輸送艦の後ろへ回り込みました!』
「分かった、私が行く。そのまま前を押さえていろ」
シャアは拡大表示を解除し、ザクマシンガンを構え直して推進器を点火した。
窓の先で赤いザクが向きを変え、ララァは窓枠に沿って手を滑らせながら、遠ざかる機体を追う。輸送艦の陰へ消えると、モニクの声が少しずつ耳に戻ってきた。
それでも、窓枠を掴んだ手を離せなかった。
ご高覧ありがとうございます。
はい、ということで中編でした。
オッチナン君の乗っているザクの状態のイメージとしては、マトリックス レボリューションズのミフネ隊長のラストみたいな感じですね。
アレとガランシェールの固定砲台ギラズールがモデルです。
パブリクはなんで波状攻撃のような形になってしまったかというと、パブリク母艦やセイバーフィッシュ母艦であるコロンブスは残骸群の更に後方に潜んでいるので、セイバーフィッシュは先に出発して残骸群の中に潜み先発して攻撃を仕掛け、まず護衛機であるMSを誘引する。
パブリクは空いた隙に突撃して行って、護衛機が居なくなって手薄になった本命の輸送艦隊に必殺の大型ミサイルをお見舞いする戦法のはずが、隠密と初期加速のために残骸群の後方に配置されたため、残骸群を突っ切るか上方または下方から大きく迂回して艦隊に突入するかを選択せねばならず、敢えて艦隊全体に散らばって攻撃をした方が対空防御が分散して撃墜率を高く出来、被撃墜率が下がると採った作戦の結果が戦場への到達時間のズレとなり、同時攻撃にならずに逐次投入のような形になってしまったという感じです。
これは、このルウム戦役までの連邦宇宙軍が相手よりも上回る戦力で艦隊決戦を行い、全力でぶん殴って全てを解決することを重要視しており(優勢艦隊決戦ドクトリン)、航空機などは戦場の撹乱や敵の航空機がもっぱらの相手だとしてあまり重要視していなかった為だと推察しており、そういった補助艦艇や機体を使ってのドクトリンを確立させておらず訓練もあまりされていなかった。
これはジオリジンやイグルー(作品を作るための予算的兼ね合い等もきっとあったとは思うが、ジオン側の艦隊にセイバーフィッシュなどの艦載機が突っ込んで行ってミサイル撃ちまくってムサイを撃沈する姿は無いとは言わないがほとんど見ない)を見れば明らかです。また、遠距離からの艦砲で撃ち合いをするのに、敵の懐に味方が入り込んでいたら友軍誤射になりかねないので、敢えてやらなかったというのもあると思います。
基本的に強大な連邦宇宙軍艦隊が、相手より少数の状態で活動をしなければならないような事態は、そもそも想定していなかっただろうと私は考えているので、ジオンから連邦軍建て直しの貴重な時間を稼ぐ為の乾坤一擲の作戦と同時に、またと無い機会としてセイバーフィッシュやパブリクを来るべき連邦製MSに見立てて運用のテストとしたら経験不足でこうなってしまった。というのが今回私が書きたかったヘリオン作戦の全貌になります。
護衛機の相手はセイバーフィッシュ、護衛艦の相手はサラミス3隻、パブリクは20発のミサイルで最大20隻の輸送艦を沈める。
役割が全て合致していたら、凄いことになりますね。
それと、40話で放った救難信号をキャッチしたのはシャア隊でした。
もう安心ですね!
次回は第5章最終話になります。