技術試験隊斯ク戦ヘリ 作:ザクスキー2世
本日16時にもう一本投稿します。
機密
第603技術試験隊専属護衛独立戦隊 通称ヌエ戦隊戦闘詳報
宇宙世紀0079年5月23日
サイド3・グラナダ間航路における輸送艦隊護衛戦闘
宛 ヌエ戦隊長 アスカ・ナカノミヤ少佐殿
発 ヌエ戦隊長代理兼旗艦オキノトリシマ艦長
マッツ・ガネバン中尉
首題戦闘に関し、各艦戦闘記録、MS搭乗員報告及びMS小隊長エンマ・ライヒ中尉の聴取事項を取りまとめ、下記のとおり報告す。
目次
第1 形勢
第2 計画及び指揮区分
第3 戦闘経過
第4 令達報告要旨
第5 戦果及び被害
第6 戦闘後における我が兵力の現状
第7 功績
第8 戦訓並びに所見
別紙第1 MS小隊長聴取要旨
別紙第2 主要搭乗員等安否
第1 形勢
1 我が状況
当戦隊は戦隊長不在のため本職が代理指揮を執り、第603技術試験隊母艦ヨーツンヘイム及び輸送艦30隻を護衛して、サイド3よりグラナダへ向け航行中なり。
輸送艦の内訳はパプア15隻、パゾク15隻。積荷は艦艇建造用部材、整備用交換部品、MS用予備部品等。当戦隊2隻及びヨーツンヘイムを合わせ、出港時の総隻数33隻。
2 使用兵力
(1)護衛艦艇
旗艦オキノトリシマ及びミナミトリシマ、計2隻。
(2)当戦隊MS小隊
ザクI Q-2型3機。小隊長ライヒ中尉、スミス少尉及びヘルベルト少尉搭乗。
(3)試験隊
EMS-04S ヅダ1機。ヒデト・ワシヤ中尉搭乗。
(4)臨時艦底防御機
ザクII J型1機。オッチナン・シェル中尉搭乗。部品適合確認用の搭載機を転用し、交戦途中よりヨーツンヘイム艦底へ係止して使用す。
戦闘開始時、宇宙戦闘機動を実施し得るMSは前記小隊3機及びヅダ1機の計4機。J型は艦体係止による固定火点にして、機動予備には算入せず。
3 敵情
交戦及び救援部隊の通報により確認せる敵兵力は、サラミス級巡洋艦3隻、コロンブス級航空母艦3隻、パブリク突撃艇10機並びにセイバーフィッシュ多数。
コロンブス級のうち2隻は戦闘機母艦、1隻は突撃艇母艦として行動。戦闘機は輸送艦隊攻撃隊のほか母艦直掩隊を有し、逐次戦闘に加入す。重複観測を含むため、当戦隊が確認し得た戦闘機の総数は未確定。
敵は航路近傍の残骸群を利用して接近し、巡洋艦砲撃、戦闘機の反復攻撃及び突撃艇の大型対艦ミサイル攻撃を併用。護衛火力を分散せしめ、輸送艦の撃破を企図せるものと認む。
パブリクは各機の胴体下部に大型対艦ミサイル2発を搭載。先行2機及び後続8機の計10機を確認す。高速にて攻撃針路を通過し、発射後は戦闘宙域外を大きく迂回して母艦へ帰投す。交戦中、再補給後の再突入を認めず。
4 来援兵力
シャア・アズナブル少佐指揮のムサイ級ファルメル1隻及びザクII 4機。交戦後半に来援し、輸送艦隊直掩及び砲戦に加入。爾後、アズナブル少佐機及びファルメルは敵航空母艦の追撃に移り、残るMS3機は輸送艦隊防御を継続す。
第2 計画及び指揮区分
1 任務
ヨーツンヘイム及びグラナダ向け輸送艦隊を護衛し、敵襲を排除して航行を確保す。
2 指揮区分
本職はオキノトリシマにありて護衛戦隊の戦闘指揮を執り、僚艦への目標配当、MSの任務指定及び輸送艦隊防御に関する調整を行う。
MS小隊の戦術指揮はライヒ中尉に委ね、各機の相互援護、弾倉交換及び局地的配置変更は同中尉の判断によらしむ。
ヨーツンヘイムの操艦、艦内指揮及び損害対処はプロホノウ艦長の所掌とし、針路、火力及び直掩配置について当戦隊との連絡を保持す。
第3 戦闘経過
1 警戒強化及び敵襲確認
ヨーツンヘイムより左前方残骸群に関する警戒通報を受領。発端は同艦便乗者ララァ・スンの申告にして、オリヴァー・マイ技術中尉を経て艦長へ報告せるものなり。この時点では敵影未確認なるも、本職はミナミトリシマに同方向の光学監視強化を命じ、MS小隊を発進待機とす。
続いて残骸群より進出する複数の噴射光を認む。敵味方識別の照会に応答なく、接近機を戦闘機と判定して戦闘配置を令す。ヨーツンヘイムの要請に応じMS小隊を発進せしむ。同艦もヅダの発進を命ず。
各艦に最大出力による全方位救難送信を命令。現在位置、針路及び敵襲状況を通報せしめ、送信終了後にミノフスキー粒子を散布することとす。
2 敵戦闘機の侵入及び砲戦開始
敵戦闘機は分散して輸送艦隊へ侵入し、先頭付近のパプアに命中弾を与う。ヨーツンヘイムよりヅダ発進。本職はライヒ中尉にパゾクへ接近する敵機の優先排除を命じ、ヨーツンヘイム周辺の直掩はワシヤ中尉に配当す。
ライヒ中尉は小隊を輸送艦隊前方へ展開す。離脱敵機への追撃を制限し、被護衛艦に向かう敵機の阻止に努む。
救難送信終了後、オキノトリシマ及びヨーツンヘイムがミノフスキー粒子を散布す。以後、光学観測及び局地通信を主体として指揮を継続。
次いで残骸群よりサラミス級3隻の進出を認め、敵の有効射程外より先制砲撃を開始す。両艦の集中射撃により先頭艦の前部主砲を破壊。左右に展開する僚艦にも射撃を配分し、接近を抑制す。この間、輸送艦隊は転針及び増速を実施。
敵巡洋艦は護衛艦への砲撃を強め、その間隙に航空隊を侵入せしむ。当戦隊は輸送艦隊外側の位置を保持し、被護衛艦への接近阻止を主として砲戦を継続す。
3 落伍艦掩護
推進器損傷のパプア1隻、増速不能となり輸送艦隊より落伍。本職はライヒ中尉に援護機派出を命じ、ヘルベルト少尉機をもってこれに当たらしむ。オキノトリシマも落伍艦側へ進出し、一部主砲を対空牽制射撃に転用す。
敵航空兵力の増加に伴い、小隊の分散配置を維持すれば、輸送艦隊前方の防御を危うくするものと判断す。ヘルベルト少尉に復帰を命ず。同少尉より脱出艇離艦中の報告を受け、艦砲掩護を継続しつつ同機を前方防御位置へ復帰せしむ。
4 ヨーツンヘイム艦底火点の増設
ヨーツンヘイムの上部対空火器は艦体に射線を遮られ、艦底侵入機の
同艦はシェル中尉の申出及びマイ技術中尉の技術判断により、搭載J型の艦底展開を実施す。プロホノウ艦長の許可下、甲板員が係止索を装着。ミア・ブリンクマン技術少尉の誘導により機体を艦底へ移動せしむ。
移動中、先行パブリク2機がヨーツンヘイムへ突入し、各2発、計4発の大型ミサイルを発射。ワシヤ中尉機及び護衛艦砲火が各1発を破壊し、残る2発は転舵した同艦の艦尾を過ぎて逸脱す。両艇は速度を保ちて艦隊下方を通過し、遠方にて大きく針路を曲げ、帰投に移る。
J型の両脚を補強材へ掛け、射撃反動に耐え得るよう機体を固定す。
シェル中尉はザクマシンガン2丁を使用し、敵機1機を撃墜して艦底防御に加入す。これによりヅダの弾倉交換及び側方復帰が可能となる。ただし補強材による射界制限は残り、隣接艦まで防御し得るものにあらず。
5 敵巡洋艦撃沈及び後続突撃艇攻撃
前記落伍パプアは爾後爆沈。ヘルベルト少尉は離脱中のランチ2艇の位置を記録して通報す。
一方、先頭サラミスに対する両艦の集中射撃を続行。ミナミトリシマの斉射が中央部を貫通し、艦橋基部の爆発及び船体崩壊を認め、撃沈を確認す。敵残存巡洋艦2隻は接近及び砲撃を継続。
後続パブリク8機の接近を確認す。2機ずつ間隔を開け、各組は異なる針路より接近す。最後の2機は外側を大きく迂回して艦隊下方へ進出中なり。
本職は前部主砲を突撃艇に指向し、後部主砲による対巡洋艦射撃を続行す。オキノトリシマは後続の先頭組の1機をミサイル発射前に撃墜。並走せる他の1機は残骸の脇を通過し、パゾクへ2発を発射す。
ライヒ中尉機はパゾクに向かう大型ミサイル2発のうち1発を破壊。残る1発は迎撃圏を通過して命中し、同艦後部船体及び連結部を破壊す。発射母機はミサイルを撃ち尽くし、大きく針路を曲げつつ同中尉機の前方を通過。同中尉は急な進路変更の困難なる同艇の横腹を射撃して撃墜し、防御位置を保持す。
次の組の1機はミサイル2発を発射して艦隊外へ離脱。シェル中尉機はヨーツンヘイムに向かう1発を破壊す。併進する他の1発は補強材の陰に入り射撃不能となり、隣接パプアに命中。
同組の他の1機は艦隊右側より突入し、パゾク及びパプアへ各1発を発射。両弾とも命中し、両艦は脱出艇を発進せしめたる後に船体崩壊。発射艇は艦列の脇を通過して離脱す。
敵は砲撃と突撃艇攻撃を併せ、護衛火力の分散を強要す。ミナミトリシマは回避中のパゾクを掩護すべく敵巡洋艦との間に進出し、左舷中央部に被弾。火災及び負傷者発生の報告あり。主系統の緊急遮断に伴い左舷主砲2基使用不能となる。
本職はオキノトリシマの火力を巡洋艦に集中し、ミナミトリシマの転針及び損害対処を掩護す。
さらに後続の組より1機がパゾクへ2発を発射し、帰投に移る。ヘルベルト少尉機は大型ミサイル1発を破壊するも、残る1発への射線上にパゾクが重なるため、スミス少尉機に迎撃を引き継ぐ。同機は推進部を破壊せるも弾頭の進行を阻止し得ず、ミサイルはパゾクに命中。
同組の他の1機も前方のパプアへ2発を発射。1発は艦首前方を逸脱し、他の1発は戦闘機に対空砲座を制圧された同艦へ接近す。発射艇はヨーツンヘイム艦首側を横切る際、ワシヤ中尉機の側方射撃により撃墜。発射済みミサイルはなお進み、パプアへ命中して船体を破壊す。
右の大型ミサイルによりパプア3隻、パゾク3隻を喪失。先に敵戦闘機の攻撃により失いたるパプア1隻と合わせ、輸送艦の喪失は計7隻となる。
6 MS及び試験隊母艦の損傷
ヘルベルト少尉機はミサイル迎撃直後、左側より接近するセイバーフィッシュの小型ミサイルにより左腕を喪失。ライヒ中尉機が追撃機を制圧する間に姿勢を回復す。右腕及び推進系統の作動並びに搭乗員負傷なきを確認し、爾後は小隊内の相互援護下に戦闘を継続。
ヨーツンヘイムは艦底外板及び左舷格納庫を損傷。格納庫は被弾前より脱気済みにして火災発生なし。負傷者3名を退避せしめ、同格納庫及び隣接区画を閉鎖す。機関作動は維持。
艦底J型は敵小型ミサイルの直撃により頭部及び右腕を喪失す。シェル中尉はヅダの援護下に操縦席を減圧し、前面ハッチを開放。直接目視及び残存補助カメラにより、左腕のザクマシンガン射撃を再開す。脚部及び係止索は保持され、機体の離脱及び漂流なし。
7 ヅダ突入による突撃艇撃破
最後の組の2機は、未発射の大型ミサイル各2発を胴体下部に搭載したままヨーツンヘイム艦底側へ突入す。両艇はあらかじめ間隔を開け、下方を通過する針路を取れり。同艦対空火器は射界を失い、J型の片腕射撃のみでは阻止困難なり。
本職はオキノトリシマを増速し、回頭中のヨーツンヘイムと敵艇との間に進出。指向可能な主砲及び機銃をもって射撃し、敵に回避を強いて発射姿勢の保持を妨ぐ。敵艇は外側へ大きく針路を曲げ始めたるも、急転針し得ず、本艦艦首近くへ接近す。
ワシヤ中尉の突入通報に接し、ヅダ進路と射線の重なる砲に射撃中止を命ず。同機は本艦艦首を越えて急速接近し、敵艇2機をミサイル発射前に撃墜。ヨーツンヘイムは回頭を続行し、輸送艦隊への復帰を果たす。
ヅダは機体損傷なきも、弾薬及び推進剤の消耗大。ワシヤ中尉には急加速後の視野狭窄等を生じ、減速及び帰投時の応答にも遅延を認む。
8 救援部隊加入及び敵巡洋艦撃退
アズナブル少佐機以下ザクII 4機が来援し、輸送艦隊前方及び側方の迎撃に加入。後続ファルメルも砲戦を開始す。直掩配置の増強に伴いヅダはヨーツンヘイムへ帰投し、当戦隊MS小隊は防御を続行。
敵巡洋艦2隻の反転を認め、本職は近距離にある損傷大なる1隻へ火力を集中す。ミナミトリシマには過度の前進を禁じ、使用可能な右舷主砲の指向を命ず。ファルメルと目標を統一し、3艦の共同射撃により船体分断及び撃沈を確認。
残る1隻は増速して砲戦距離外へ離脱。当戦隊は輸送艦隊との離隔及びミナミトリシマの損傷を考慮して追撃を打ち切り、両艦を周辺警戒に復帰せしむ。
9 敵航空母艦撃滅及び戦闘終結
アズナブル少佐機及びファルメルは敵航空隊の帰投方向へ追撃。当戦隊は救援MS3機とともに輸送艦隊近接防御を継続す。
救援部隊より、アズナブル少佐機が戦闘機母艦2隻、ファルメルが突撃艇母艦1隻を撃沈せる旨の通報を受領。母艦喪失後、残存敵機より降伏の申出相次ぎ、輸送艦隊周辺の組織的攻撃は終息す。
パブリク残存5機は全機ミサイルを撃ち尽くして帰投中なりしも、母艦の被弾により収容を断念。先行2機及び後続3機とも再補給を受けず、母艦喪失後にアズナブル少佐へ降伏せる旨の通報あり。
敵の反転及び航空隊離脱は観測せるも、敵側撤退命令の原文、母艦内予備機の損失及び離脱巡洋艦の最終所在については未確認。
10 救難、機体回収及び航行再開
ヨーツンヘイムはプロホノウ艦長の指揮により信号弾を発射し、ランチによる救難を開始。当戦隊は周辺警戒に当たる。
敵軍生存者も救助収容し、武装解除、所属及び氏名の確認並びに負傷者の処置を実施す。敵兵は味方生存者と収容区画を分離し、警備員を付す。
艦底J型はスミス少尉機の支持下に係止を解除し、右舷格納庫へ回収。係止金具1個に亀裂を認め、予備索を設けて支持を確保の後、当該金具を取り外す。
ライヒ中尉は降伏機監視に従事し、状態良好なセイバーフィッシュの回収を具申。技術担当及び甲板員の確認により3機を選別し、火器管制及び主電源を停止してヨーツンヘイム艦外へ固定す。搭載位置は射界、格納庫出入口及び損傷区画を避く。
ファルメルより、降伏パブリク5機の搭乗員全員を救助艇へ収容し、各艇を無傷で
応急処置及び救難を終え、MS並びに鹵獲機の回収完了後、残存艦の航行能力に応じ隊形を再編。グラナダへ向け航行を再開す。
第4 令達報告要旨
1 通信
粒子散布前、各艦に全方位救難送信を命令し、位置、針路及び敵襲状況を通報せしむ。散布後は光学観測及び局地通信により指揮連絡を維持。
2 主要命令
(1)MS小隊は輸送艦隊前方に展開し、被護衛艦へ侵入する敵機を優先して排除。
(2)ワシヤ中尉はヨーツンヘイム周辺を直掩。
(3)落伍パプアにヘルベルト少尉機を派出。前方防御の低下に伴い復帰を命じ、艦砲をもって代替掩護。
(4)ミナミトリシマ損傷後、オキノトリシマの対巡洋艦火力を増し、同艦の転針を掩護。
(5)ヅダ突入に際し、その進路に射線の重なる砲のみ射撃中止。
(6)救援加入後、損傷サラミスに3艦の火力を集中。残存巡洋艦への追撃は輸送艦隊防護のため打切り。
3 記録の取扱い
前項は命令内容の要旨にして通信原文にあらず。戦果認定に当たりては、各艦砲戦記録、MS間通信及び救援部隊通報を照合す。人員損耗、弾薬消耗及び航空機撃墜数の未確定分は追報とす。
第5 戦果及び被害
1 艦艇戦果
(1)サラミス級1隻撃沈。オキノトリシマ及びミナミトリシマ共同。
(2)サラミス級1隻撃沈。上記2艦及びファルメル共同。
(3)コロンブス級2隻撃沈。アズナブル少佐機による戦果として救援部隊より通報。
(4)コロンブス級1隻撃沈。ファルメルによる戦果として救援部隊より通報。
以上、撃沈計5隻。救援部隊の戦果を含む。離脱サラミス級1隻は撃沈又は航行不能の確認なし。
2 航空機戦果
パブリクの個別撃墜確認分5機。内訳はオキノトリシマ1機、ライヒ中尉機1機、ワシヤ中尉機3機。侵入10機のうち残る5機は、救援部隊の通報により無傷での鹵獲及び搭乗員全員の収容を確認す。
セイバーフィッシュは各MSに撃墜あり。共同射撃による重複計上を避くるため、艦砲及び救援部隊の記録と照合のうえ確定数を追報す。命中後なお飛翔を継続せる機体、降伏機及び母艦内の未確認搭載機は撃墜確実に算入せず。
3 大型対艦ミサイル
発射を確認せる大型対艦ミサイルは、7機各2発の計14発。発射前に撃墜せる3機の搭載弾計6発と合わせ、侵入10機の搭載弾計20発に一致す。
発射14発のうち、ワシヤ中尉機、ライヒ中尉機、シェル中尉機及びヘルベルト少尉機が各1発、護衛艦砲火が1発を破壊。飛翔中に破壊したるミサイルは計5発なり。護衛艦砲火による1発は個艦別の戦果配分をなお照合中なり。
輸送艦命中6発、目標逸脱3発。命中弾の内訳はパプア3発、パゾク3発にして、逸脱弾は先行2機の発射弾2発及び後続艇のパプア向け発射弾1発なり。
スミス少尉機の推進部破壊1発は爾後パゾクに命中せるにつき、迎撃成功に算入せず。発射前の搭載弾破壊は母機撃墜に付随する戦果とし、飛翔中ミサイルの迎撃数と区分す。
4 鹵獲及び捕虜
セイバーフィッシュ3機を鹵獲。ヨーツンヘイム艦外に固定して搬送中なり。外観上の状態をもって選別せるものにして、即時使用可能と判定せるものにあらず。
パブリク5機を無傷で鹵獲し、全機を回収。全艇とも大型対艦ミサイル2発を発射済みにして、同弾の鹵獲なし。前記セイバーフィッシュと合わせ、鹵獲機の回収数は計8機なり。
サラミス、コロンブス及び降伏航空機の敵兵を収容。捕虜総数は各収容先の名簿照合後に追報す。
5 艦艇被害
(1)輸送艦
パプア4隻、パゾク3隻喪失、計7隻。残存はパプア11隻、パゾク12隻、計23隻。輸送艦30隻に対する喪失率約23.3%。
残存艦にも損傷あり。個艦別の被害程度、積荷損失及び本修理に要する資材と期間は精査後に追報す。
(2)オキノトリシマ
敵砲撃により前部外装損傷。主砲及び機関に作動上の異常を認めず。
(3)ミナミトリシマ
中破。左舷中央部被弾、火災及び負傷者発生。主系統緊急遮断により左舷主砲2基使用不能。消火及び区画隔離後も当該砲は未復旧。機関に異常なし。
(4)ヨーツンヘイム
艦底外板及び左舷格納庫損傷。左舷格納庫使用不能、隣接区画閉鎖。右舷格納庫及び機関は作動を維持す。
6 MS被害
メテオ02・ライヒ中尉機 戦闘後、降伏機監視及び鹵獲機搬送を実施し、作業終了後に帰艦。
メテオ03・スミス少尉機 J型回収支援後に帰艦。補給を受け鹵獲機搬送に再出動し、作業終了後に帰艦。
メテオ04・ヘルベルト少尉機 左腕喪失。右腕及び推進系統の機能を保持し、自力帰艦。
EMS-04S ヅダ 機体損傷なし。弾薬及び推進剤の消耗大。操縦記録上、機体限界の超過を認めず。
ザクII J型 頭部及び右腕喪失。主要観測機能及び火力低下。係止金具1個に亀裂。僚機及び甲板員の支援により回収。
当戦隊及び試験隊の戦闘使用5機につき、全機回収を確認。全損及び未回収0機、主要部位欠損2機。
7 人員被害
当戦隊及び試験隊のMS搭乗員5名全員帰艦。ヘルベルト少尉及びシェル中尉は機体損傷時の負傷なしと報告。ワシヤ中尉は急加速後に視野狭窄等を生じ、帰艦後受診のうえ休息を命ぜらる。
ヨーツンヘイム左舷格納庫被弾時、負傷者3名を医務室へ搬送。右は当該区画の初報にして、輸送艦隊全体の負傷者総数にあらず。
喪失輸送艦乗員を含む戦死、行方不明及び負傷者数は、乗員名簿と救助者名簿の照合後に追報す。生存未確認者と戦死確認者は区分して計上するものとす。
第6 戦闘後における我が兵力の現状
1 艦艇
出港時33隻のうち26隻残存。内訳は輸送艦23隻、ヨーツンヘイム1隻及び当戦隊2隻。来援のファルメルは右の隻数に算入せず。応急処置及び隊形再編により、グラナダへ向け航行可能なり。
オキノトリシマは護衛継続可能。ミナミトリシマは輸送艦隊速力に追随し得るも、左舷主砲使用不能により火力減殺。ヨーツンヘイムは右舷格納庫のみ使用可能にして、左舷格納庫の復旧を要す。
2 MS及び搭乗員
主要部位欠損2機は、補修及び点検完了まで即時戦闘可能兵力に算入せず。ヘルベルト少尉機は欠損部補修及び姿勢制御系統点検、J型は頭部及び右腕の補修並びに係止部を含む構造検査を要す。
ヅダは機体損傷なきも搭乗員の継戦余力低下を認む。残る機体も含め、補給、機体点検及び搭乗員の診察休養後に再出動の可否を判定すべし。
3 兵器及び燃料消耗
主砲の射撃回数並びに機銃弾、MS用弾薬及び推進剤の消耗量は集計のうえ追報す。各機の弾倉交換及び戦闘後再出動に伴う補給分を照合し、使用可能残量を確認するを要す。
第7 功績
1 MS小隊
ライヒ中尉は敵機追撃を抑制して防御位置を保持し、損傷機を含む小隊の相互援護を指揮す。スミス少尉は迎撃の引継ぎ、J型回収及び鹵獲機搬送に任ず。ヘルベルト少尉は落伍艦掩護及び脱出艇位置通報を実施し、左腕喪失後も僚機と協同して戦闘を続行。各員の任務遂行は顕彰に値すると認む。
2 試験隊搭乗員
ワシヤ中尉はヨーツンヘイム直掩に任じ、未発射大型ミサイル搭載の突撃艇2機を連続撃墜して同艦を掩護す。
シェル中尉は艦底固定火点を構成し、頭部及び右腕喪失後も残存火器により射撃を継続。両名の功績顕著なり。
3 艦内各部
ララァ・スンの申告及びマイ技術中尉を経た報告は、敵影確認前の警戒強化とMS発進準備に寄与す。ララァ・スンが艦外の敵情を知り得た経緯は未詳なり。
砲術、損害対処、甲板、整備、管制、救難及び衛生の各員は、艦砲とMSの射線調整、J型展開及び回収、損傷区画閉鎖、負傷者退避並びに航行能力維持に従事す。搭乗員の戦果と併せ、各部署の功績を評価するを適当と認む。
4 救援部隊
アズナブル少佐隊及びファルメルの来援により直掩及び砲戦兵力を増し、損傷艦と消耗機の退避余地を得たり。敵航空母艦の撃滅は再攻撃の基盤を奪い、戦闘終結の決定的要因なりと認む。
第8 戦訓並びに所見
1 護衛兵力及び任務達成
輸送艦30隻に対し護衛艦2隻及び機動MS4機をもって多方向の反復攻撃に対処するは、防御密度において不足あり。敵を局地的に撃破するも、その間に生ずる他方面の間隙を補い得ず、輸送艦隊の拡散に伴い相互支援の距離も増大す。
当戦隊は来援まで残存輸送艦隊の防御を継続し、輸送艦23隻及びヨーツンヘイムの航行再開を確保せり。ただし輸送艦7隻の喪失は護衛任務上重大なる損失にして、敵艦撃沈数をもって相殺し得るものにあらず。
同規模輸送艦隊の護衛には艦艇又は直掩MSの増強を要す。増強不能の場合、相互支援の及ぶ範囲を基準として輸送艦隊規模、航過順序及び隊形を再検討すべし。艦間隔のみを縮小すれば射線遮蔽及び衝突の危険を増すにつき、回避余地と射界を併せて定むるを要す。
2 指揮及び射撃統制
粒子散布前の救難送信、艦砲とMSの射線調整及び損傷後の相互援護は有効なり。ヅダ突入時の射撃中止並びに損傷サラミスへの共同射撃は、平素の連絡訓練を適用し得たる例と認む。
一方、砲戦と防空の間で火力配当の変更を繰り返し、全防御正面に継続した火力を維持し得ず。落伍艦へのMS派出と復帰、ミナミトリシマ損傷後の配置及び追撃打切りは、いずれも本職の判断による。防御配置及び当戦隊指揮の責は本職にあり。
今後も射撃中止は味方MS進路と重なる砲に限定し、他方面の射撃を継続し得る統制を徹底すべし。
3 突撃艇及びミサイル迎撃
パブリクは高速突入中の急な針路変更に難あり、発射後も直ちに反転せず、大きく迂回して帰投す。今回、ライヒ中尉機及びワシヤ中尉機は通過中の艇体を側方より射撃して撃墜せり。ただし発射母機を撃破するも、既に発射せる弾の到達を止め得ず。可能な限り発射前の母機撃破を図り、発射後はミサイルの迎撃を優先すべし。
同一艇の通過、帰投及び再突入を区別し、未発射弾の有無を通報するを要す。2発を撃ち尽くしたる艇は再補給を要するにつき、未発射弾を有する艇の迎撃を優先すべし。
輸送艦隊内部における迎撃は味方艦による射線閉塞を伴い、命中を得ても弾頭到達を阻止し得ざる場合あり。大型ミサイルは可能な限り外縁において迎撃し、推進部の噴射停止のみをもって撃破と判定せざるを要す。
迎撃担当機への側方援護、後続弾の引継ぎ及び破壊確認を訓練に加うべし。また輸送艦底部及び連結部周辺の死角を事前に図示し、MSの担当区分と交代経路を定むるを要す。
4 臨時火点及び損傷機運用
J型の艦底係止は対空火器の死角を補うに有効なり。ただし補強材による射撃制限、係止金具の損傷及び回収困難を伴う。今後同様の措置を採る場合、予備係止索、射撃反動、母艦転舵時の荷重及び回収要領を併せて準備すべし。
操縦席ハッチ開放下の戦闘は急迫時の措置にして常用すべきものにあらず。片腕又は主要観測装置を喪失せる機体について、僚機の掩護、任務制限及び回収手順を定むるを要す。
5 ヅダ運用
突撃艇2機の発射前撃墜によりヨーツンヘイムへの大型ミサイル攻撃を阻止せり。一方、機体性能限界内の機動にても搭乗員の継戦能力を著しく減殺する場合あり。
機体の健全をもって直ちに継戦可能とせず、搭乗員の状態、推進剤及び弾薬残量を総合して任務を付与すべし。今回の急速突入を常用戦法とするは適当ならず。
6 落伍艦掩護及び救難
落伍艦への直掩派出は残存輸送艦隊の防御密度を減ず。脱出艇の位置記録、艦砲による代替掩護及び直掩機の復帰判断を共通要領として整備するを要す。
救難時は外周警戒を保持し、救助艇活動区域と残存敵機監視区域を区分すべし。敵軍生存者の収容に際しては武装解除及び区画警備を継続す。
7 修理及び調査
ミナミトリシマ左舷主砲系統、ヨーツンヘイム左舷格納庫及び欠損MS2機の復旧を優先するを要す。残存機も補給と点検を実施し、搭乗員の診察及び休養を確保すべし。
鹵獲セイバーフィッシュ3機及びパブリク5機は安全確認後、武装、通信機器、機上装備及び残存記録を技術調査に付するを適当と認む。
8 総括
当戦隊及び試験隊は訓練に基づく連携を維持し、損傷及び消耗の累積下にも防御を継続せり。されど敵襲の終息には救援部隊の加入と敵母艦撃滅を要し、現有兵力のみをもって同規模の襲撃を排除し得るとは認め難し。
以上の戦果、損害及び戦訓を報告し、補修、兵力配当並びに護衛戦闘要領の改善につき指示を仰ぐ。
別紙第1 MS小隊長聴取要旨
申述者 MS小隊長 エンマ・ライヒ中尉
聴取者 ヌエ戦隊長代理 マッツ・ガネバン中尉
本紙は戦闘後の聴取内容を項目別に整理せるものにして、逐語録にあらず。
1 追撃制限及び防御位置
敵は一部機をもって我が直掩機を誘引し、その間隙より別機を輸送艦に接近させる行動を反復す。離脱敵機を追撃すれば帰位まで防御に間隙を生ずるため、輸送艦隊に向かう敵機を優先し、射撃後も被護衛艦との位置関係を保持す。
各機には敵位置のほか、自機移動により生ずる防御上の間隙を通報せしむ。戦隊長の反復訓練のうち、敵を見失うも防御位置を離れず、僚機及び艦砲へ状況を引き継ぐ要領は特に有効と認む。
2 落伍艦援護
ヘルベルト少尉派出中、輸送艦隊前方は残る2機をもって防御す。派出継続は小隊の防御密度をさらに減殺するため、同機の復帰及び艦砲による代替掩護は必要なり。
脱出艇の確認及び位置通報は継続せるも、小隊のみをもって輸送艦隊防御と全落伍艦救援を併行する余力なし。
3 ミサイル迎撃
輸送艦への接近後は射線上に味方艦の介在する場合多し。ヘルベルト少尉よりスミス少尉への引継ぎも射線閉塞による。推進部破壊後の命中事例に鑑み、噴射停止のみをもって迎撃完了と認むべからず。
集中射撃中は発射母機及び随伴戦闘機への警戒を欠きやすく、迎撃担当機への援護を要す。ただし当時の3機をもって各輸送艦直掩と両立するには限度あり。
4 損傷機の戦闘継続
ヘルベルト少尉機の左腕喪失後、機体姿勢、右腕、推進器及び搭乗員の状態を確認す。単独帰投及び損傷前と同じ任務の続行はいずれも危険と判断し、小隊内に収容して相互援護下に使用。
姿勢回復及び弾倉交換に際しては僚機が敵追撃を制圧し、損傷機に処置の余裕を与う。平素の訓練手順を実戦に適用し得たり。
5 救援加入時の状況
救援前、小隊は交互に弾倉交換を行い、損傷機を含む相互援護により射撃の間隙を補う。敵機撃墜は続くも、全侵入方向を制圧するに至らず。
救援MS加入後は防御位置を分担し、ヅダの帰投と当小隊の防御継続が可能となる。来援がさらに遅延せば、同一防御線の維持は困難なりしと判断す。
6 鹵獲機回収
降伏せるセイバーフィッシュ中に損傷僅少なる機体あり、敵装備調査に供し得ると判断して回収を具申す。回収数及び固定方法は技術担当の指示に従い、救援部隊への警戒引継ぎが可能なる範囲において実施。
聴取者附記
右申述は当戦隊の命令記録及びMS間通信に見られる行動経過と概ね一致す。射撃命中率、弾薬消費量及び個人別撃墜数の認定は、なお記録照合を要す。
別紙第2 主要搭乗員等安否
ライヒ中尉 帰艦。戦闘後、降伏機監視及び鹵獲機搬送に従事。
スミス少尉 帰艦。J型回収及び鹵獲機搬送を支援。
ヘルベルト少尉 帰艦。搭乗機左腕喪失。本人より負傷なしの報告。
ワシヤ中尉 帰艦。搭乗機損傷なし。受診後休息。
シェル中尉 帰艦。搭乗機頭部及び右腕喪失。本人に負傷なし。
ブリンクマン技術少尉 負傷なし。
ララァ・スン 負傷なし。
その他輸送艦隊人員 乗員名簿及び収容者名簿照合のうえ、死傷者及び行方不明者一覧を追報す。
右、報告す。
ヌエ戦隊長代理 マッツ・ガネバン中尉