和風貞操逆転世界の若君   作:エッジマン

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短めですが、毎日更新の予定です


さよならインフェルノ織田家

 織田信長が本能寺で炎上したことしか歴史の授業に覚えがない。

 いや流石に織田から豊臣、そして徳川の流れは知っているが。

 

 細かい流れを一切覚えてない。なぜなら俺の前世は不良だったからだ。

 なんとなくグレて、なんとなく抗争して、なんとなく刺されて死んだ。

 

 無念、無惨。だけれども自業自得のなんとも儚い人生だったという記憶がある。

 そうして転生した世界はなんとも和風。しかも俺はインフェルノ織田家に転生した。

 

 インフェルノってなんだよ。

 知らんがな。なんか前頭部に二本の角が生えてて黒い炎が出せるんだよ。

 そんな感じで和風って言っても、前世の戦国時代とは異なる感じらしい。

 

 前世の戦国時代と違う点はもう一つある。

 どうやら、この世界では女が武将を営むようなのだ。筋力など些細なこと。この世界では魔力が絶対的武力であり、女のほうがはるかに魔力が大きいためだ。

 

 俺の姉君、吉乃。彼女がこの家の後継ぎであり、俺は婿に送られるとのこと。

 幼少からこの女とはとことん喧嘩したのだが、ついぞ勝てなかった。

 

 着物を半分脱ぎ去り、さらしを顕にしたその姿はさながら野生児。腰まで伸ばした黒髪を一本にまとめ、木に登っては柿を貪り、川を泳いでは魚を取ってくるというとんだ女傑である。

 

 俺は前世のこともあり、ずいぶん勝ち気な姉だなと思いはしたものの、ガキだったために特に気にすることもなく、この女と野原を駆けた。もちろん楽しくなかったといえば嘘になる。

 

 そんな姉が元服する前に、こんなことを俺に言い出した。

 

「なぁ、イチ。おまえは男なのだから、もうすこしおしとやかにしたらどうだ?」

 

 いつものようにお気に入りの木の上に登って、柿を食いながらだ。

 やはりさらしが半分むき出しの女に、そんな事を言われたくはなかった。

 

「なにをおっしゃる姉上」

「しかしそんなことでは婿の貰い手がない。屋敷にいる他の男を見ろ」

 

 もちろんその歳になると、男の立ち振舞いというのにもなんとなく見当がついた。

 なるべく動かず、筋肉はつけず、体は細身にして髪を伸ばす。

 線が細く、それこそ女と見間違うような美男子が好まれたのである。

 

 一方の俺は筋骨隆々とまでは言わずとも、かなり引き締まった体をしていた。

 髪も邪魔くさいと肩ほどまででバッサリと切り捨てている。

 それを吉乃のように一本にくくっているのが現状だ。

 

 本当はそれ以上短くしたかったのだが、母君に泣かれた。

 異性への美意識がうるさいのは、前世と変わらないようである。

 

 背もすくすくと伸びており、とてもじゃないがこの世界の美男子とはいい難いのが現状だった。

 姉に似て、顔立ちばかりは整っているが。

 

「おまえがそんなだから、あの白夜叉などに婿にいかねばならぬのだ」

「白夜叉?」

「近江に住んでいる武将だ。老婆のように白い髪で、猿のように小さいらしい」

「背が低いのは姉上もでござらんか」

「言うな。気にしているのに」

 

 むすっとして食べかけの柿を下にいる俺に放り投げてきた。

 こちとら川で魚を釣っているのだ。邪魔をしないでもらいたい。

 

 姉はと言うと、もう元服近いというのにまだまだ未成熟極まりない。さらしに包まれた胸は相変わらずのペタンコだし、背だって俺の胸元に届くかどうかと言うぐらい。

 

 そのくせ男好きなのか、しょっちゅう美男子を見ては追いかけ回して褌を奪って喜んでいた。

 

「まぁそれがしは姉上のような女も好みでござるが」

「奇特なやつめ。女といえばでかい乳、でかい尻が美徳だろうが」

 

 背が高くて、爆乳で、やたらとムチムチしていることが美徳らしかった。

 その筋の人間ならば天国だと喜ぶだろう。しかして俺は昔ながらの貧乳派だった。

 

「時に姉上はこのような片田舎の武将で一生を終えるつもりか?」

「何を言う。女に生まれたからには天下を目指すのが定めだろう」

 

 そう言うと、吉乃は木から飛び降りてきた。

 バシャン、と川の水が跳ねる。せっかく魚を釣っているのに。

 

「そして大勢の男を婿に抱えるのが、武将の夢だ!!」

 

 自慢げに微笑む姉。昔から笑顔の愛らしい御仁であった。

 しかして俺は知っている。彼女の歩む結末がおそらく、あの本能寺であると。

 

「であるのならば姉上、一つ助言をば」

「ほう、なんだ」

「けっして寺に泊まりなさりませんよう」

「なんとも奇異なことを言う。わしは妖怪変化の類かなにかか」

「違いない」

 

 俺が神妙にそう言うと、姉上はカカッと笑いながら俺の頭を撫でた。

 不思議と悪い気はしなかった。

 

 はてさてうつけだなんだのとバカにされていた姉上であるが、その元服姿は見事なものであった。着物を美麗に着こなし、髪も下ろしたその姿はまさに大和撫子そのもの。

 

 一方の俺は元服前に白夜叉のところに婿に行くことになった。

 俺には似合わない籠に入れられ、ぶらぶらと数日間の旅路である。

 それを見送る姉上は半ば涙目になりながらこう言った。

 

「弟でさえなければ婿にしてやったものを」

 

 不思議と姉上にそういう情はわからなかったが、俺はその言葉を聞いて涙してしまった。

 抗いたがき肉親の情がそこにあった。

 




ガバガバ貞操逆転戦国時代よーいスタート。
ちなみにうろ覚えジョジョ以上に作者は戦国時代についてうろ覚えです。

□登場人物□
イチ ……市とも一とも。黒髪でけっこうしまった体をしている。背は高め。
吉乃 ……イチの姉。自由気ままだが野望は大きい。黒髪ポニテで背は低い。貧乳。
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