「マスター、買い出し終わったぞ」
「おう、コーヒーいるか?」
「味見してくださいね?」
「心配しすぎだっての、ほらこの通り⋯⋯不味ぃ」
石動惣一は自分の淹れたコーヒーを飲み、横に置くとキッチンに移動する。
「ワタルはまた修理屋か?今回は⋯⋯フライパン?」
「あぁ、ミレイ姐さんがこの前料理をした時にフライパンに穴が空いたらしい」
「フライパンに穴が空くってどんな⋯」
「知らんよ」
「でもよ、ユウマ君だっけか?家事全部1人でこなしちまうなんてすげぇな、しかも殆ど1人で」
「そこに関しては本当に同意だよ、あの人程尊敬できる人はそう居ないからな」
ワタルはテレビのリモコンを手に取り、電源を付けた。
「「ブフォッ!!」」
ワタルは水をマスターは牛乳を吹き出した。理由は、先程まで話題に出していたユウマがテレビに出ており、血走った目をして油揚げを食べながら、
「え?あれってユウマくんじゃ⋯」
「いや、流石に他人の空似でしょう。何処の世界にあんな溶岩地帯で油揚げを食べてる人間がいるんですか⋯⋯いましたね」
「1人で何ノリツッコミしてんだよ、仕方ないそのフライパン修理もう終わるだろ?届けるついでに事情聞いてきたらどうだ?」
「⋯⋯⋯まあ、了解です」
ワタルは何時の間にか完全に直していたフライパンをリュックに詰めると、nacitaを後にしたのだった。
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「すみませ〜ん!修理屋で〜す!」
ワタルは黒神心霊相談所の玄関のチャイムを押しながら言った。そして、玄関の扉が開いた。
「あら!ワタル君じゃない、もしかしてフライパンもう直ったの?」
「はいミレイ姐さん、一応完全に直しましたけど」
「すごっ!完全に塞がってんじゃん、そうだ!ワタルくんに行って欲しい場所が有るんだけど」
玄関から出てきた黒神ミレイはワタルから直されたフライパンを受け取り、言った
「フジコ山に先に向かってほしいんだけどいい?」
「何故日本最大の山に?」
「ワタルくん来たってことはニュース見たんでしょ?ユウマがそこに居るから足止めしておいてほしいの」
「無理難題が過ぎませんか?」
「お願い!今度、nacitaにユウマとハカちゃんとご飯食べに行くから!」
「⋯⋯⋯はぁ〜、ツケって事で」
「よろしく!」
ワタルは懐から小型のリモコンのような物を取り出すと、スイッチを押した。
「それは?」
「流石に掃除屋の仕事をするにおいて、徒歩じゃ毎回死ぬので、知り合いに作ってもらったリモコンで、これを押すと」
遠くからエンジン音がし始め、何かが走ってくる。それは、ワタルとミレイの目の前で止まった。
「え!これってバイク!?」
「そう!その名も”フィクスバイカー”!特注で作って貰ったんですよ、移動すると言ったらバイクがいいなと思いまして」
「でも、ワタルくん免許って──」
「じゃ、そういうことで」
ワタルはバイクに跨がると、アクセルを踏んでフジコ山へと走って行った。
(通報されたら自分一発アウトだから、さっさとフジコ山へと退散だ)
「あれ?ミレイさん、どうしたんですか?」
「あ、ハカちゃん。ちょっとワタルくんが修理したものを返してもらってね、ついでユウマの足止めをしに行ってもらったの」
「ワタルさんですか?」
「それじゃ、私たちもフジコ山に行きますか!」
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──フジコ山──
「グフフ、この山のマグマで揚げた油揚げはさぞ美味かろうなぁ、世界が真っ赤に煮えたぎるサマを想像しただけで⋯⋯グフフフフ、ヨダレが止まらんぞ」
「いや、何言ってんですかユウマさん」
フジコ山の噴火口で高らかと叫んでいたユウマにワタルは言った。
「おや、誰かと思えばワタルでは無いか」
「⋯⋯⋯アンタ、ユウマさんじゃないな?」
「ボクは山狗、マグマの魔王とでも名乗れば分かるか?」
「マキの囮影⋯」
「悪いが邪魔するのなら容赦はせぬぞ?どのみち”人類揚げ揚げ計画”にはキサマは不要じゃからな」
「気分で碌でもない計画考えやがって、ならこっちも全力で止めないとな」
『ビルドドライバー!』
「始めますか」
ワタルは懐からフルボトルを取り出して振る。キャップを開くと、ビルドドライバーに装填した。
『タンク!ラビット!ベストマッチ!』
ハンドルを回し、ワタルの前方と後方に青と赤の装甲が形成された。
『Are you ready?』
「変身!」
『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!』
ワタルに装甲が重なり、仮面ライダーフィクスが姿を現した。
『ドリルクラッシャー!』
「ミレイ姐さんが来るまで耐えるとしますか」
「ゴチャゴチャと
ユウマの手から火炎が現れ、それをワタルに飛ばしていく。だが、ワタルはそれをドリルクラッシャーで叩き斬る。
「威力落ちたんじゃねーの?マキが使ってたときの方が強かったと思うけど?」
「この程度がボクの本気だと思うな!!」
ユウマは両手を上空に上げると、上空に巨大な火炎の玉が現れ、どんどん膨らんでいく。太陽と言われても遜色ないように。
「うそーん」
「ボクを舐めた罰だ!!」
(ヤバい、流石にあの大きさは消防車のボトルでも防ぎきれない、でも仮に防がなかったら周囲の森に引火する⋯⋯そうだ!)
ワタルはドライバーの横についているボトルのホルダーから2本のボトルを取り外し、少し振ってドライバーに装填した。
『掃除機!ゴリラ!』
「流石にベストマッチじゃないか⋯」
そう言いながらもハンドルを回して、前方と後方に装甲を形成した。
『Are you ready?』
「フィクスチェンジ!」
ワタルの装甲は戦車と兎から変わり、右腕にはロングレンジクリーナーと呼ばれる掃除機がつけられており、左手にはゴリラの腕のようなFIXマッスルグローブと呼ばれる物がつけられていた。
「なんじゃ?ゴツくなっただけか?」
「さあな?見てりゃ分かるんじゃねえの?」
ワタルはロングレンジクリーナーをユウマが作り出した巨大な火球に向けて吸引し始める。その吸引した炎はワタルの右肩にあるFIXトラッシュバーターと呼ばれる装置に送られていく。
「ムダじゃムダじゃ、ボクの炎は人間如きにどうと出来るものじゃない」
「そいつはどうかな」
ワタルは吸引するのをやめると右肩についているスイッチのような物を押す。すると、FIXトラッシュバーターから炎が上に舞い始める。
「んでもって、これだ!」
『ダイヤモンド!ゴリラ!ベストマッチ!』
「フッ!ベストマッチ来たぁ!!!」
ハンドルを回すと、後方にだけ装甲が形成された。
『Are you ready?』
「フィクスチェンジ!」
『輝きのデストロイヤー!ゴリラモンド!イェーイ!』
ワタルは右手を炎の渦の中に手を突っ込むと炎の渦がみるみる内にダイヤの渦へと姿を変えていく。
「なッ!ボクの炎が!!」
「これでチェックメイトだ!」
ハンドルを回すと、左手のFIXマッスルグローブが輝き始める。それと共に、ダイヤの渦がワタルの目の前にやって来た。
『ready go!ボルテックフィニッシュ!イェーイ!』
「喰らえェ!!」
ワタルは思い切りダイヤの渦に殴りかかると、ダイヤの渦が全てをユウマの元に飛んでいく。
だが、ユウマは唐突にジャンプするとその攻撃を避ける。
「おい!ユウマまで殺す気か!?」
「はっ!自分とした事が本気で殺す気でいってた」
「っていうか、何だあれ!?何をどうやったらボクの火炎をどうこう出来るんだよ!?」
「そんな事自分に言われても⋯⋯」
「ユウマ!何やって⋯え!?どういう状況?」
ワタルと山狗が口論していると、不意にユウマを呼ぶ声が聞こえた。ワタルと山狗がそちらを向くとそこには三途川ハカがいた。
「誰じゃキサマは?」
「どこの誰だか知らないけど、今すぐユウマを解放して!ユウマに三途の川は渡らせない!」
「魔王に対して無礼なもの言いじゃのぅ、これより世界をグツグツにするのじゃ!人間どもは皆息絶え霊となってこやつに取り憑く、キサマ等もその一体に加えてやろうぞ」
「まだ言ってんのか!?
この油揚げ中毒が!?」
「そ、そんな事、させるわけ無いでしょ!」
ワタルとハカがそれぞれ抗議する、だがシリアスな場面に似つかわしくない声が後ろから聞こえた。
「おひさー狗っち」
「き、キサマは!なぜキサマがここにおるのじゃ!」
声を掛けたのは黒神ミレイだった。しかも、黒神ミレイの姿を見た途端、山狗は焦り始める。
「なに言ってんのよ、弟のピンチに姉が駆けつけるのは当然でしょ」
「抜かせ小娘、よかろう、キサマも霊にしてやるぞ”人類揚げ揚げ計画”の一端に加わるがよい!それに先程の火球はまだ残っているしな!!」
「しまった!!」
ワタルは上空を見ると、先程より小さくなっているが、それでもサッカーボール程の大きさの火球がまだ残っていた。
「これでボクの勝ちだ!」
「よーしそれなら、ワタルくん私の事空に打ち上げて貰ってもいい?」
「え!?それどころじゃ──」
「いいから!」
「ああ!もうどうなっても知りませんよ!!」
そう言うと、再度ハンドルを回し左手にエネルギーが溜まり始める。
「ミレイさん駄目です!相手は山を噴火させる魔王なんですよ!
幾らなんでも勝てるわけ──」
「人間風情が調子に──」
『ready go!ボルテックフィニッシュ!イェーイ!』
ワタルはミレイを上空にある火球まで打ち上げる。そしてミレイは言った。
「大丈夫!手加減してあげるから☆」
「へ?」
そう言うと上空にあった火球を蹴り上げて、ユウマの方へと飛ばした。そしてユウマに衝突して、地を抉る勢いでユウマは吹っ飛んで行った。
「えええええーーーー!!!?」
(ま、魔王も⋯ワンパン⋯!!!?)
「何処のエース〇ーンだぁ!!」
ハカとワタルは驚き、開いた口が塞がらなかったのだった。その後、何とかユウマは山狗の乗っ取りから抜け出せたようでいつもの調子に戻っていた。ワタルはユウマから夕飯を食べていかないか?と誘われたがマスターが店に居るので断って帰宅したのだった。
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「すっかり、暗くなっちまったな。ただいま!マスター、夕飯頼⋯む?」
ワタルがnacitaの扉を開くと、そこには白髪でワタルと同じ歳くらいの女性が料理を食べており、マスターは食べている様子を見てニコニコしていた。
「マスター、その子は?」
「ああ、店の前で倒れてたみたいでな。拾ってきた」
「そんな捨て犬感覚で言われても」
仮面ライダーフィクス!
「記憶喪失?」
────────────謎の記憶喪失の少女
「コウモリ男⋯か」
「どうしてお前がフェニックスボトルを?」
全ての鍵を握るのはコウモリ男の都市伝説────
「モルモットの顔なんて覚えてないわよ」
「ナイトローグ⋯?」
第12話 コウモリ男の噂