ワタルside
「記憶喪失?」
自分は先程、山狗の騒動が解決した所でnacitaに帰って来ていた。すると、見慣れない少女が居たため、マスターに話を聞いていた。
「どうやら、この子自分の年齢以外の記憶を全部無くしちまってるみたいでよ?名前も思い出せないみたいだぜ?」
「いや、何で家に連れてくるんだよ。警察に任せればいいじゃん」
「それが、何か事情があるっぽくてな」
自分はご飯を食べている少女の側に行き、話しかける。
「君、どうして家の店で倒れて──」
「うるさい黙れ、お代わり」
「あ゙?」
「ワタル、ストップ!女の子だから!拳は駄目だから!!」
自分は彼女を殴ろうとするがマスターに動きを止められている。何でだよ、一応だけど見た感じ無銭飲食だぞコイツ。
「お代わりなッ!分かったから、直ぐ持ってくるからワタル手を上げるんじゃねぇぞ?」
「⋯⋯⋯分かった。」
「取り敢えず仲良くな!!」
そう言うと、マスターは再びキッチンへと駆け込んで行った。
「⋯⋯それで?先刻、マスターは君の事について事情があると言っていた、その事情って?」
「⋯⋯それより、アンタは?」
「アンタ⋯⋯自分は月影ワタル、この店で修理屋として働いている従業員だよ」
「言っておくけど、私は自分の名前も覚えてないし、どうしてこの店の前で倒れてたのかは知らない」
「そんな事分かってるよ、でも何かは覚えてるんでしょ?」
頭を人差し指でトントンと叩きながら思い出す様にして言った。
「ガスマスクの人達、ガラスの箱、コウモリ男。私が覚えてるのはこれだけ」
「ガスマスク?それにコウモリ男⋯か」
「それが何なのかは分からないけど⋯」
「それにしても、マスター!!どうしてコイツ、家に連れてきたんだ?」
「流石に女の子放置する訳にも行かないでしょ?それに警察に連絡しようとしたら、この娘にも止められるしよ」
「もし、警察に預けられてもアイツらに捕まるから!?⋯⋯⋯あれ?アイツらって誰?」
少女は頭を抑えながら、焦ったように言った。自分はその様子を見て、その”アイツら”が彼女の失った記憶に関わっていると推理する。
「恐らくだけど、君の言う”アイツら”ってのが君の記憶を消した可能性が高い⋯で?どうすんの」
「え?」
「お前の記憶の事、こっちで調べて見るか?」
「何で?アンタには得なんて無いでしょ、なのにどうして⋯」
「どうせ行き場なんて無いんだろ?マスターが許可するなら別に良いよ、それに調べる調べないは気分だ、どうする?」
「⋯⋯分かったわ!!調べてちょうだい!」
自分はそれを聞くと、カウンターに置いてある紙束から1枚取り出して、何かを書くと彼女に渡した。まあ、形式上必要だからな。
「ほい」
「何よこれ?」
「領収書」
「⋯⋯領収書!?」
「そりゃそうだろ、家に記憶喪失の女を養う程の余裕は無い、家で働いて返してね」
「嵌めたわね!?」
「それだけで済んでるんだから有難いと思え、やっぱ君、名前決めた方が良くない?」
彼女は戸籍が無い状態。せめてでもトラブルを防ぐ為に名前を決めておいた方が良い。そう考えた自分は、マスターに向いた。
「⋯⋯⋯マスター何か良い名前ある?」
「う〜ん、そうだな」
「私の意見は取り入れないの!?」
「よし!それなら鳳 結月ってのはどうだ?」
「鳳 結月?何か元ネタあんのか?」
「おう、実はバイト先の子が好きなゲームがあるんだけどその子の推しの苗字が”
「じゃあ”
「俺の行きつけのバーの名前が”結月”なんだよ」
「雑じゃねえ!?」
「いいね!その名前」
「嘘だろ!?」
「記憶が戻るまで私の名前は鳳 結月」
そう言って、ニヤニヤしながら自分の名前を復唱していた。何故だか予想以上に気に入ったようだ。
「マスター、今日は取り敢えず飯食ったら寝るよ」
「おう、でも風呂は?」
「明日の朝にでもシャワー浴びるよ」
それを言うと、マスターに夕飯を用意してもらって食事した後、寝ようとしたのだが、
「何でマスター、座敷で寝るんだよ」
「しょうがねえだろ?女の子と寝るのは絵面的に駄目だろうが、取り敢えず俺のベッドに寝かせたけどよ」
マスターの寝室はこのnacitaの2階で自分は家族兼、住み込みで働いている感じだからnacitaの奥の座敷で寝させてもらっている。まあ、そんなことより、
「まぁ、それは置いとくとしてマスターどう思う?結月の話」
「残ってる記憶についてか?」
「ああ、ガスマスク、ガラスの箱、コウモリ男。最後のコウモリ男を無視するならガスマスクをしてる連中とガラスの箱が見える場所に結月は居たんだよな?」
「それがどうしたんだ?」
「自分が予想するに、嫌な想像になっちまうが結月、アイツが”人体実験”を受けていたって可能性は?」
「は!?人体実験⋯⋯いや、流石に」
「だから、あくまで可能性なんだよ。まあコウモリ男については分からないんだけどな」
結月が言っていた”コウモリ男”については、調べるしかないとしか言いようがない。聞いた感じだと何かの都市伝説か?なら行くべきなのは
「明日、黒神心霊相談所にでも行ってみるよ。何か分かるかもしれねえし」
「了解、ユウマ君やミレイちゃんによろしくな」
「はいはい、じゃあおやすみ」
「おう!おやすみ」
自分とマスターは布団で横になると、そのまま眠りについたのだった。
ワタルside─終了─
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「こんにちは!ユウマさん、ミレイ姐さん居ますか?」
ワタルは結月を連れて、黒神心霊相談所に来ていた。都市伝説や心霊関係の情報を手に入れる場合はここ程、いい場所は無いと思ったからである。だが、
「ワタル、ここって何処なの?」
「黒神心霊相談所、心霊関係の事件等を解決する所、結月が言ってた”コウモリ男”についての情報を聞きに来たんだよ」
玄関の扉が開くと、出てきたのは三途川ハカだった。
「あれ?ハカさん」
「ワタルさんですか、ユウマに用ですか?それにその方は?」
「それについても相談したいんですけどユウマさん居ますか?」
三途川ハカはそれを聞くとワタルと結月をユウマの元に連れて行った。
「昨日は色々と悪かったな、山狗に乗っ取られたとはいえ、迷惑かけちまったみたいだな」
「いえ、実は聞きたいことがありまして」
ワタルはそう言うと、結月を指差しながら言った。
「実はコイツ記憶喪失でして、家の店の前で倒れてたんですよ」
「え?大丈夫なのかよ?⋯⋯名前は?」
「お⋯鳳 結月です」
「実は結月の記憶を辿る内にある”コウモリ男”っていう言葉が出まして、何か知りませんか?」
「「ッ!?」」
コウモリ男という言葉を聞いた途端、驚いたような表情をする。ワタルはやはり黒神心霊相談所にも何か情報が来ている、そう思い更に聞いた。
「知ってるんですか?」
「教えてください!?」
ワタルと結月の問にハカが答えた。
「実はワタルさんと結月さんが来る少し前に警察から直接、協力依頼があったんです」
「直接警察から?」
「はい、数日前から起きている子どもの誘拐事件で”コウモリ男”っていう都市伝説が関わってるらしくて」
「どんな都市伝説なんですか?」
「夕方、人通りの少ない所に子供が行くとコウモリ男に攫われるっていう」
「すみません、事件が起きた場所って?」
ワタルと結月は黒神ユウマに誘拐が起きた場所を教えてもらい、2人は黒神心霊相談所を後にするのだった。
「ハカ、念の為聞きたいんだけどハカは”コウモリ男”っていう都市伝説知ってたのか?」
「いや、知らないわ」
「え!?ハカも知らない都市伝説とかあるのか?」
「私も殆どの都市伝説や怪異は頭にあるつもりなんだけどね、どうやら最近流行ってるみたいなのよ」
「まさか警察から直接依頼されるとは思ってなかったけどな、つうか姉貴は?」
「ミレイさんなら友人と大学の勉強だって」
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2人は一度nacitaに戻り、机に地図を広げていた。
「誘拐が起きたのは、全て人気が無い路地裏。時間は15:00〜17:00で、下校時間が重なってるな」
「ってことは、私はそこで誘拐されてコウモリ男に記憶を消されたってこと?」
「それが一番高い可能性だな、でも子供の共通点はユウマさんに教えてもらった限りだと見つからない。そして、誘拐された子供は全員が小学生、でも結月は何処からどう見ても高校生ぐらいだろ?そういえば結月、何歳かも覚えてんのか?」
ワタルの質問に結月は困ったように考えると答えた。
「それが、そこら辺もあんまり記憶無くて」
「なら、コウモリ男とやらを探してみるか」
「難しい事考えてんな、2人共、そんな2人に俺の特製コーヒーを飲ましてやるよ」
マスターは2人分のコーヒーをお盆に乗せて持ってきた。ワタルはそれを見て、明らかに嫌そうな表情をする。
「俺特製コーヒー”nacitaで何シタ”ってね」
「ありがとう!マスター!」
「マスター⋯またッ!」
「良いじゃねえかよ!それに結月ちゃんに関してはまだ俺のコーヒー飲んでねえんだから感想くらい聞かせないよ」
「?⋯⋯頂きまーす」
「おい、辞めたほうが⋯」
「んグッ!ん〜ん〜!!」
結月は飲んだ瞬間、体がビクッと震えるとそのまま、唸っている。
「おい、喋ることも出来なくなってるぞ。冷蔵庫に前買ってきたオレンジジュース入ってるからマスター出してくれ」
「んだよ!まだ不味いって決まった訳じゃねえだろ?」
「おい結月、マスターのコーヒー飲んだけど無事か?」
結月は口の中に残っているコーヒーをマスターが持ってきたオレンジジュースで流し込むと、言った。
「不味い」
「案の定駄目じゃねえかマスター」
「あれ?今回は自信あったんだけどな」
「毎度毎度言ってるけど味見してから出せよ」
「ちょっと待って」
結月はオレンジジュースを味わいながら、ワタルとマスターに言った。
「何か⋯⋯懐かしい気がする」
「もしかして結月ちゃんの記憶!?」
「いや無いだろ、何でマスターの不味いコーヒーを飲んで思い出すんだよ」
ワタルはポケットから缶コーヒーを取り出して飲み始める。するとマスターの携帯が鳴った。
「ワタル、何時ものだ」
「了〜解」
「え?ちょ、ちょっと!?」
ワタルはヘルメットを部屋から持ち出すと、店から出て行った結月もワタルについて行く。
「ちょっと何処行くのよ!?」
「⋯⋯まぁ、暫く家で生活するなら結月にも知ってもらった方が良いか」
「え?何の話を──」
ワタルは懐から小さなスイッチを取り出して押した。するとエンジン音と共にワタルと結月の目の前にバイクが止まった。
「え?何でバイクが無人で」
「ほら、結月の分のヘルメット」
「あ、ありがとう⋯って」
「取り敢えず乗りな、説明は向かってる最中に言うから」
結月は渋々ながらも、ワタルとバイクに乗り、移動し始める。
「昨日、自分は修理屋の仕事をしてるって言ったろ?」
「ええ、言ってたわね、でもそれが?」
「実はそれ以外でも自分は仕事をしてるんだよ、そのもう一つが掃除屋」
「掃除屋?まさか死体?」
「そんな訳無いだろ!憑从影だよ憑从影!」
「⋯⋯⋯?憑从影って何よ」
「は!?憑从影知らない奴なんて居んのかよ」
「そんな事言われても知らないわよ」
「はぁ⋯⋯憑从影ってのは人間に生まれながらに死霊が寄生してる生命体。ソイツらの殆どが”異能力”って力を持ってんだよ。自分はそれらをぶっ殺して回ってんの」
「殺ッ⋯⋯分かり合うとかは⋯」
「出来てたら死者何て出てねえよ」
「⋯⋯⋯⋯」
「自分の事を人でなしとでも罵りたいなら後にしてくれ、今向かってるのは街外れにある研究所跡」
「研究所?そこに何があるのよ」
「おかしなスーツを着た憑从影と思われる奴が研究所跡に入って行ったっていう通報があったらしい」
「でも、何で私も」
「自分の仕事については話しておいた方が驚かれなくて良いと思ったからな」
それから数十分後、ワタルと結月は件の研究所跡まで到着した。直ぐに中へと行こうとしたが、何者かが入り口に立っていた。
「ワタル、あの人って通報者の人?」
「いや、マスターが通報者の人には現場から離れてって言ったらしいから居るわけない、あんた誰だ?」
フードを深く被っている上に、今は夕方であり薄暗いため顔は見えない。すると、フードの何者かは懐に手を入れる。ワタルはラビットフルボトルを取り出して振ろうとした。
「ッ!?」
「あれって銃?」
ワタルは何者かが取り出した銃を見て驚愕する。それは、スタークが持っていたトランスチームガンだったためだ。そしたもう片方の手にはフルボトルのような物を持っており、それを振り始める。
「何でアンタがそれを!?」
「ワタル?」
『バット!』
何者かはワタルの問い掛けを無視して、トランスチームガンにボトルを装填する。そして銃口を上に向けて言った。
「蒸血」
『ミストマッチ!
バット・バッ・バット⋯ ファイヤー!』
「初めましてと言うべきかしら?仮面ライダーフィクス。いや月影ワタルさん?」
聞こえたのは確かに女の声だった。煙の中から現れたのは金色のコウモリの紋章が胸と顔に描かれた赤と緑の配線が剥き出しになっている怪人だった。結月はその姿を見ると怯え始める。
「あぁ⋯あ、あぁ!!」
「おい!どうした結月!?」
(結月の反応的にコイツがコウモリ男か)
「ナイトローグ⋯?だっけか、アンタ自分等に何の用だ?」
「礼儀がなって無いわね⋯まぁいいわ。ワタシの相手になってくださる?」
『ビルドドライバー!』
「言うまでもねぇ、スタークの関係者なのはお前が使ってるそれで分かる。ぶっ倒してその面拝んでやらぁ!!!」
「待ってワタル!お願い!」
変身しようとしたワタルを結月は腕で止める。冷や汗が止まっておらず、小動物のように怯えている。
「逃げよう!!アイツはアイツは!?」
「いいから落ち着け、安心しろアイツは」
ワタルは2本のボトルを取り出して振り始める。
「俺がぶっ倒す!!」
『タンク!ラビット!ベストマッチ!』
『Are you ready?』
「変身!」
『鋼のムーンサルト!ラビットタンク!イェーイ!』
ワタルはフィクスに変身すると、ナイトローグへに殴りかかる。だが、ナイトローグはヘラヘラしながら受け止める。
「何が可笑しい!?」
「流石、スターク様の第一号の実験台ね。あの頃よりも一撃が重いわ!」
「それだ!!アンタは結月の事も実験したのか!?」
「モルモットの顔なんて覚えてないわよ」
「あァァ!!!?」
ワタルは後方に下がると、ハンドルを回して上空へと飛び上がる。
『ready go!ボルテックフィニッシュ!イェーイ!』
「喰らえェ!!!!」
左脚を突き出すと、そのまま滑っていくようにナイトローグの元へと降りていく。タンクローラーシューズのキャタピラが回転し始め、ナイトローグを捉えた、筈だった。
「あら?キックは思ってたより軽いわね?」
「なっ!?」
「だとしたら教えてあげるわよ、キックってのは」
トランスチームガンにボトルを再装填して、ワタルの真下から上に向けて撃ち込んだ。
『スチームブレイク!バット!』
「グハァッ!!」
そのままワタルは上空に打ち上げられる。それを見て、ナイトローグは別のボトルを取り出すと、装填してワタルに向かって引き金を引いた。
『フルボトル!スチームアタック!ロケット!』
誘導弾のような物が銃口から発射されて、ワタルに飛んでいく。
「嘘だろッ!!」
ワタルは別のボトルで変身しようしたが、その前に誘導弾が着弾して撃ち落とされる。そして、落ちてきたワタルの真下に立って言った。
「こうやるのよッ!!!」
「あがっ!!?」
落ちてきたワタルを横から蹴り飛ばすと、木に叩きつけられて、変身が解除された。
「くっ、あぐあッ!!」
「あら、呆気ないものね。こんなのがヒーローさんかしら?」
「⋯何だと」
「貴方は所詮作られたヒーローなのよ。
さて、ワタシも目的をしないとね」
ナイトローグはゆっくりとワタルに近づき、頭に手を伸ばす。ワタルは目を瞑ると何かが突き飛ばされるような音がした。目を開けると、
「ゆ、結月?」
「大丈夫!?ワタル?」
どうやら、結月はナイトローグが油断している時に一撃入れたようだ。少し離れた所に吹き飛ばされたナイトローグが居た。
「やるじゃない、今日はこの辺にしてあげる」
ナイトローグはスチームガンから煙を出して姿を消したのだった。だが、それよりもワタルは結月がナイトローグを殴りかかった時に持っていた物に驚いていた。
「結月⋯」
「どうしたの?怪我は!?」
「それよりも!?どうしてお前がフェニックスフルボトルを?」
仮面ライダーフィクス!
「気づいたら持ってたのよ」
フェニックスフルボトルは結月が───────
「奴を紐解いていけば直にスタークにも辿り着ける」
「異能組織ファウスト?」
「あの女とオレはあくまで協力者ってだけだ」
─────────────スタークの協力者とは?
「何でこの論文がここに⋯⋯」
第13話陰謀のセオリー