「気づいたら持ってたのよ」
「本当に?」
ワタルは結月に詰められていた。理由は、2年前の事件の時にマキとユウマに渡した筈のフェニックスフルボトルを持っていたからだ。
「昨日、着替えてた時にポケットから出てきたの。ワタルが先刻振ってたし、振れば何か起きるのかなって思って」
「⋯⋯⋯少し貸してくれ」
ワタルはそう言い、結月からフェニックスフルボトルを受け取ると、ドライバーに装填する。
『フェニックス!』
「間違いなく本物か⋯これについても覚えてないんだよな?」
「え、ええ⋯ん?何か落ちてない?」
「あ?」
結月は走り始めると、先程ナイトローグが姿を消した場所に落ちていたボトルのような物を持ってきた。
「これってワタルが使ってるボトルだよね?」
「ナイトローグが落としたのか、これは⋯⋯ロケットか?」
「そういえばワタルが先刻、姿が変わってたのは何なの?」
ワタルは妙な感情を抱きながらもビルドドライバーを見せた。
「ワタルが先刻使ってた」
「ああ、その名もビルドドライバー。お前や自分が持ってるフルボトルを用いた憑从影と戦うためのシステム⋯⋯らしい」
「らしい?」
「自分も詳しいことは何も知らないんだよ、それよりも、さっさと目的の廃研究所行くぞ?」
「え!?ちょっと待ってよ!!」
ワタルは結月を置いて、通報のあった研究所に早歩きで進んでいく。結月も、それに続いて走ってついて行くのだった。
_______________________
「見た感じ、中には目立つ物は無いな」
「ちょっとライト貸してよ!流石にこんなに暗いんじゃ前も見えないから!!」
「廃墟の研究所で叫ぶな」
懐中電灯で照らしながら研究所の奥へと進んでいく。結月は先程のフェニックスフルボトルについてワタルに質問をする。
「私が持ってたあのボトルって、ワタルの大切な物なの?」
「⋯⋯何だよ急に」
「いや、私があれを見せた時、凄い形相だったから」
「昔、行方不明になった知り合いに預けた物だったからだよ。それを何故か結月が持ってたからだ」
「それって友達?」
「⋯⋯⋯どうなんだろうな、アイツがそう思ってくれてたら嬉しいけどな」
ワタルはそのまま黙り込んでしまい、結月もそれを聞いて、気まずい空気が流れ始めた。結月はどう話をきり出そうかと考えていると、ワタルが急に足を止める。下を向いて歩いていた結月は思い切りぶつかる。
「いきなり止まってどうしたのよ?」
「いや、何か落ちててな」
「廃墟なんだから、落ちててもおかしくないよね?」
「いや、その割には真新しいような」
ワタルが拾い上げたのは、何かの資料のようだった。そこにはこう書かれていた。
「”被検体番号002”?何だよこれ、何かの実験の記録か?」
「そりゃ、研究所なんだか⋯ら」
「でも⋯、”実験内容。ネビュラガスを投与し、経過観察を行う”このネビュラガスって何のことだ?」
「わ⋯ワタル、ワタル」
「どうした?いきなり霞んだ声しやがっ⋯て」
結月は怯えたような表情で廊下の奥を指差しており、ワタルもその方向を見遣るとそこには、
「ゔおおおおおおおォーー!!!」
そこに居たのは憑从影でも、死霊でもない今まで見たこともない異形だった。上半身に青色で握り拳のようになっていて内側は黄色。ワタルはそれを見るとドライバーを装着する。
「結月、少し後ろに離れてろ」
「分かった」
『タンク!パンダ!』
前方に青色の、後方にモノトーンの装甲が形作られる。
『Are you ready?』
「変身!」
ワタルは左手のパンダの腕を構えると、そのまま異形に爪を突き立てて、突っ込んでいく。異形がワタルに殴りかかるがそれを受け止めた。
「アンタ何者だ!?」
「ウガアアアアァ!!!」
「話は通じねえか⋯なら!?」
ワタルは別のボトルをドライバーに装填しようと振り始めるが、そこで声が聞こえた。
「大変そうだな?ワタル」
ワタルの耳に聞こえたのは、あの2年前の事件から聞くことが無くなった、人を舐めたようなふざけた声だった。
「今度こそ、本当に久しぶりだな」
「スタァァーク!!!」
ワタルの目の前に姿を現したのはスタークだった。直ぐ様、スタークに飛び掛かろうとするが、それは異形に止められてしまう。
「邪魔だ!?」
「血気盛んだなァ!オレと戦いたいんだったら、その”スマッシュ”を倒すんだな」
「スマッシュ?」
「オレ達の人体実験で生まれた副産物って所だ、お前がコイツを倒すまで言う事は何も聞かねえぞ?」
ワタルは異形に向き直って、スマッシュを殴って後方に下がらせると、別のボトルを装填する。
『ロケット!ハリネズミ!』
『Are you ready?』
「フィクスチェンジ!」
ワタルはハリネズミの装甲、FIXスパインナックルの針をスマッシュに突き刺す。野太い悲鳴のようなものが聞こえた。それでもワタルは突き刺し続け、そのまま突き飛ばす。
「容赦無いねぇ〜、ならもう一つとっておきの情報を教えてやるよ」
「あ゙ァ?」
「お前が攻撃してるスマッシュはな、誘拐した子供なんだよ」
「ッ!?」
その言葉を聞くと攻撃していたワタルの手が止まり、攻撃の手を緩めた。その瞬間、スマッシュはワタルをうめき声を上げながら殴り飛ばす。
「うぐぁ!!」
「やっぱりアイツと同じだな、相手が生きている人間ならお前は戦うことを躊躇する、だからお前は此処ぞという戦いは何時も勝てない」
「うる⋯せぇ!?」
「そう思ってるなら反撃したらどうだ?」
だが、ワタルはスマッシュの攻撃を受け止めて流すことはしても、反撃は一切しなかった。このままだと、ジリ貧になる。ワタルはそう思ったが、後ろから結月の声が聞こえた。
「ワタル!!ロケットとパンダだよ!その2つの組み合わせをして!!?」
「ロケットとパンダ?何で急に」
「いいからッ!!」
ワタルはこのままジリ貧になるよりマシだと思い、ロケットとパンダのフルボトルを装填した。
『ロケット!パンダ!ベストマッチ!』
「ッ!?結月、後で話させてもらうからな!?」
そして、ハンドルを回すと、前方にロケットの装甲、後方にパンダの装甲が現れる。
『Are you ready?』
「フィクスチェンジ!」
『ぶっ飛びモノトーン!ロケットパンダ!イェーイ!』
ワタルは右手のロケット型の装甲、スペースライドアームの機能を使い、急加速を行い、スマッシュに突き立てる。
「今から、自分とお前で空の旅行と行こうか!!」
そう言い、ワタルは右肩につけられた装甲、FIXロケットショルダーからエンジンが入り、火が吹き始めた。そしてスマッシュも巻き込みながら上空へと飛んでいく。そして宇宙に着く、
「ここまで来れば、必殺技使っても大丈夫だよな」
ワタルがハンドルを回すと、ロケットのエンジンが更に強くなる。スマッシュは避けようとするが、宇宙空間で重力が無いため、上手く動けていない。
『ready go!ボルテックフィニッシュ!
イェーイ!』
四方八方から、突撃してパンダの爪で切り裂いていく、それから数撃入れた後、ワタルはそのまま地球に叩きつけたのだった。
「あ、戻ってきた!!」
「悪い、遅れた」
「何がどうなったら宇宙まで行くことになんのよ」
ワタルは先程の研究所に戻り、結月と合流していた。スマッシュは側に倒れていた。すると倒れていたスマッシュから粒子状の何かが吸い取られるとそこに居たのは子供だった。
「スマッシュが人間に戻ったのか?」
「ブラボー!流石は仮面ライダー、やるじゃねえか?」
「スタークッ」
スタークが何時ものようにヘラヘラと笑って、こちらを見ていた。スタークの手には形が少し違うボトルのような物を持っていた。
「ご褒美に2つ、お前からの質問に答えてやるよ」
「⋯⋯⋯」
「どうした?オレの気分が変わらねえ内に聞いたらどうだ?」
「分かった、なら1つ目だ。あのナイトローグと名乗った奴についてだ」
「あの女とオレはあくまで協力者ってだけだ、オレも奴について詳しいことは知らん」
「なら、お前とナイトローグの関係って⋯」
「そいつとオレでとある組織を作ったんだよ」
ワタルは警戒を強めた。未だに正体が掴めないスターク、明確な敵対を見せたナイトローグ。
「組織だと?」
「その名も”ファウスト”数名の憑从影とオレとナイトローグで構成されている、さてオレは帰らせてもらうとするよ」
「何?お前らの拠点は此処じゃねえのか?」
「また会おうじゃねえか、Chao!」
「待てッ!!」
ワタルの声を無視して、スタークは黒煙に包まれて姿を消したのだった。その瞬間、研究所の照明が赤く点滅し始める。
「これって⋯」
「何が起きてやがる⋯⋯」
『セキュリティシステムが作動しました、
この施設は今から1分後、爆発します』
「「嘘っ!?/嘘だろ!?」」
アナウンスのような物が流れ、ワタルと結月は驚愕する。ワタルは、スマッシュから戻った子供を背負うと、結月を連れて研究所から脱出するのだった。
_______________________
ワタルside
自分と結月はその後、子供を人が気付きやすい場所に寝かせて、nacitaへと戻って来ていた。そして、研究所はアナウンスの通りに爆発した。
「あの後、直ぐ警察が来たから人体実験の施設については調べられなかったな」
「まさか、爆発するとはね」
「何で20年も前に廃墟になった研究所のセキュリティが生きてんだよ」
連中について分かったことは、思ったより少なかった上に、新たなナイトローグというコウモリ女。
「ナイトローグにブラッドスターク、それに
異能組織ファウスト⋯か」
「でも、私の記憶のコウモリ男は⋯」
「十中八九、ナイトローグの事だろうな。それにあの研究所にはもう灰や煤しか残っていない」
あの研究所に何か研究資料などが、残っていれば手掛かりになると思ったが、それも今では叶わない。
「いや、そんな事ないよ?これ⋯」
「ん⋯えっ!?これって⋯」
結月が手に持っていたのはUSBメモリであり、廃墟になる前の研究所のロゴが入っており、あの研究所から持ってきたのが分かった。
「何でお前」
「実はワタルがスマッシュって奴と戦ってる時に」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
結月は自分に後ろに下がってろと言われた際に、空いていた研究室に入っていた。その際に
「あれ?このパソコン、電源が付いてる」
結月が開いたパソコンにはフルボトルが書かれており、それは自分が使っていたベストマッチについても書かれていた。
「兎に戦車、忍者と漫画、ゴリラとダイヤ、それと、パンダとロケット!ワタルに伝えなきゃ!!⋯⋯ん?これって」
結月の目に映ったのは机に置かれていたUSBメモリだった。それをポケットに突っ込むと、結月は自分が戦っている所に戻ったと言う。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「なる程な、だからあの時。でかしたぞ!!」
「あ、ありがとう」
自分は、マキに感謝するとUSBメモリを早速パソコンに接続した、メモリに入っていたのは論文のような物だった。
「これ、何かの論文か」
「論文?」
「えーっと、スマッシュスチームシステムって物についてだな、ってこれは!?」
「何、何が書いてあるの?」
論文に書かれていたのは、自分が2年前まで使っていたスマッシュスチームガンについての論文だったのだ。
「ってことは、ワタルが言ってるスマッシュスチームガンの製作者が書いた論文ってことね?」
「まさか、これがあるとはな」
「そうだ、これの作者って誰なの?」
「恐らく、論文の最後に名前が⋯⋯⋯ッ!?」
自分はマウスのカーソルを一番下までやると、そこに書かれていた名前を見て、驚愕した。
「だとしたら、何でこの論文がここに⋯⋯」
「どうしたのよ?急に⋯
結月はその名前を復唱した。それにより、自分の見間違いで無い事が分かる。自分は結月の言葉に続けて言った。
「雨宮雫は⋯⋯⋯母さんの旧姓だ」
仮面ライダーフィクス!
「ワタルのお母さんが⋯⋯」
ワタルの母親とファウストに関係が?───
「死の科学者⋯」
「この服って」
────ワタルが実家で見つけた物とは?
「父さんも母さんも⋯生きてる?」
第14話死のサイエンティスト