「ねえ!何時になったら調べてくれるの!?」
ワタルは現在、結月に詰められていた。自身についての記憶のことだった。
「いや、そんな事言われてもな。調べたいけどこっちとしちゃツテも何も無い、一からだからな⋯」
「でも⋯」
「なら、お前の顔写真を撮って聞いて回るぐらいしかないけど」
ツテが無い以上、出来るのは顔写真を用いた人海戦術以外無い。だが、
「あまり、大人数に顔を見られるのは、ちょっと」
「この問答、3回目だぞ。おい」
ワタルと結月は3回程この問答を繰り返しており、ついに堪忍袋の緒が切れたのか、ワタルは言った。
「はぁ、なら殲滅部隊行ってみるか?自分の母親が関係してるなら少しくらい、話聞いてくれそうだし」
「え?本当!?」
「あからさまにテンションを上げるな、あくまで話を聞けるかを聞くだけだ」
「知り合いなの?その人と…」
「まぁ、殲滅部隊の日本最強の4人の内の1人ってのは言っておくよ」
「お、ワタルも結月ちゃんも何処か行くのか?」
店から出ようとした2人はマスターに呼び止められる。そう言えばと、結月はマスターに聞いた。
「そう言えば、マスターってよく店から居なくなりますけど、いつも何処に言ってるんですか?」
「え?前に言って無かったっけ、バイトだよ、バイト」
「バイト?ですか」
結月は頭の上にハテナマークを浮かべる、何故喫茶店の経営者が外部のバイトをしているのだろう、と考えていたタイミングでマスターは察したように言った。
「実はこのnacita、あんまり経営が上手くいってなくてな、何でかわからんねえけどお客さんあんまこねえだろ?」
「どう考えたってマスターのコーヒーが原因だろ、あんなブレイクタイムに舌をブレイクさせてくるコーヒーなんて」
「うるさいな、仕方ねえだろ?黒さを追求しすぎたらああなっちまったんだから」
「黒さ追求して、味落としてちゃ、世話ねえぜ」
「うるせえ!!」
マスターの説明にちょくちょく、ワタルは突っ込むが、結月は一応理解は出来た。そしてもう一つ、質問をする。
「何のバイトをしてるんですか?」
「あ、確かにそれは聞いたこと無いな、マスター、何のバイトしてんだよ」
「俺か?まあ試験薬のバイトみたいなもんよ」
「試験薬?危なくないのかよ」
「何たって俺だぜ?」
何故か納得できたワタルと結月は、マスターに殲滅部隊に行くことを伝えた。だが、マスターは2人を呼び止めた。
「でも大丈夫なのか?確か、結月ちゃんが言ってなかったか?政府の連中にはブラッドスタークの関係者が居るんじゃねえかって、一応だが、殲滅部隊は政府公認だろ?」
「「あ」」
どうしようかと、悩んでいた2人にマスターは狐のお面を渡した。
「これってお面か?」
「話が聞きたいのは、確かユウマくんのお父さんだろ?なら、彼に見せる時だけ顔を見せればいいじゃねえか?」
「なる程、これで顔を隠せば良いんですね?」
「でも、顔隠すのに何で狐のお面なんだよ」
「こういうのは、雰囲気作りが大事なんだよ」
結月は、マスターから狐のお面を受け取ると、顔に取り付けた。
「それじゃ、自分たちは行くから」
「お留守番お願いします」
「元々、俺の店だっての!?何か分かるといいな!」
それを聞くと、2人は店を後にするのだった。
「さて、そろそろか?入って来ていいぞ?」
「わかったわ」
マスターがそう言うと、店に入って来たのはナイトローグだった。ナイトローグは、店の入り口の扉に鍵を掛けるとカウンター席に座った。
「態々、俺の所に来るなんてどういう風の吹き回しだ?計画については、現地で話し合ってんだろ?何時も」
「あら?あの子達は?」
「結月ちゃんの手がかりを探しに行くんだと」
「探しても見つかるはず無いのにね、見つかったとしても⋯⋯」
「全ての元凶が言うかね〜、普通?」
ナイトローグはトランスチームガンを取り出すと、自身に黒煙を噴射する。そして変身を解除した。
「今、ボトルは殆どあの子が持ってるのよね?」
「ああ、あいつに一応預けてるよ。あいつのハザードレベルは3.3、成長度合いにしたらこれから要期待って感じだな」
「当然ね」
「それと、結月ちゃんに関してだが2.6だ、アンタが接触してから上がってねえよ」
「そう⋯」
変身を解除したナイトローグは、マスターからコーヒーを貰い、飲み始める。
「何時もワタル達には不味いって言われるし、俺が飲んでも不味いけどよ、お前不味くないのか?」
「あら?私は美味しいと思うけど」
「アンタ、マジか」
マスターは雑談を終えると、エプロンを外し、懐からトランスチームガンを取り出した。そしてボトルを装填する。
【コブラァ!!】
「蒸血」
【ミストマッチ!コ・コッ・コブラ……コブラ……ファイヤー!】
「それで?今日、アンタが来たってことは仕事だろ?」
そう言うと、ブラッドスタークは仮面の下で不敵に笑うのだった。
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「ここが⋯殲滅部隊」
「まあ、東京の支部だけどな、ん?」
すると、ワタルは何かに気づくと、そのまま走って行く。結月は、それを追いかけると急に止まったワタルとぶつかる。
「ちょ、ワタル!?急にどうしたの!?」
「いや、今、あ!居た!!」
ワタルが見つめる先に、ユウマ、ハカ、ミレイが居た。
「あ、ワタルくんだ!」
「何だ?ワタルくん達も博士に呼ばれたのか?」
「え?ユウマさん達、三途川博士に呼ばれたんですか?」
ワタルはユウマ達に話を聞くと、どうやら三途川ナギに特訓として呼ばれたらしい。
「ワタルくんは違うのか?」
「ああ、自分はちょっと別の用事でして」
ワタルは横目で結月を見ると、ユウマはそれ以上の深掘りはしなかった。すると、不意にユウマとミレイの肩に手が置かれた。
「おい、ミレイ、ユウマ。俺のこと、何時まで待たせてんだ?」
「パパ?」
「ひっ、はっ博士!?」
「何で博士がここに⋯」
「何時まで経ってもお前等が俺の所に来ないから、態々俺が来たんだよ。何だ、そこにいんのはワタルじゃねえか」
「あ、どうも三途川博士」
「よし、お前もユウマ達の特訓に付き合え」
「「はぁっ!?」」
そのまま、拒否権も無しにワタルはトレーニングルームへと連れて行かれたのだった。
ワタルと結月はユウマ達が特訓をしている様子を見ていた。そこそこ大きめな死霊と戦っている。
「ワタル、あの大きいのって」
「死霊だよ、死霊」
驚いている結月を気にせずに見ていると、後ろからナギに言われた。
「それで?お前等はどうして殲滅部隊に来た?また、雨宮雫についてか?」
「いや、今日聞きたいのは結月についてです」
「結月?誰だそりゃ」
ワタルは親指で結月を指差すと言った。
「実はコイツ、少し前から記憶喪失でして、それで家で居候中何ですけど」
「居候はやめてよ、間違ってないけど」
「コイツについて何か分かりませんか?」
「いや、顔を狐の面で隠してんだから分かるわけねえだろ〜」
「「あ」」
話していると、気づけばユウマ達は死霊を倒しており、それを確認した三途川ナギはトレーニングルームへと歩いて行った。そして、ミレイが三途川ナギが入って来た事に気づくと言った。
『よし博士!全部倒したわ!向かうところ敵なーし!』
『アホか、憑从影の中には今のお前らじゃ逆立ちしても勝てない奴らがいんの、他にも特殊な異能力を使う奴らもいるからぁ〜』
ワタルは一瞬、今のお前らじゃと言われた時自分の事も少し見られたような気がした。そして、三途川ナギは続けた。
『特殊な異能力?』
『そ、例えば”
『ご老人?何それ、おじいちゃんなの?』
『脳筋もここまで来ると清々しいな⋯』
「ワタル、私達はコントでも見てるの?」
「言うな、自分もちょっと思ったけど」
『五方陣、異能力者を狩る異能力者』
『えっ!?』
それを聞いて、ワタルは少し驚いた。異能力者のみを対象にする異能力者も居るのか、と。そして同じく驚いているハカが三途川ナギに聞いた。
『そんなの⋯いるの?』
『いるよ〜、死霊の上位クラスと誓約を交わして、その力を借りるっつーろくでもねーのが、その対価として囮影を奪ったヤツの肉体を生贄として捧げんの、ある意味禁忌に触れた異能力』
本当に碌でもないな、とワタルは思っているとミレイの質問に三途川ナギは言った。
『もしそいつと出会ったら?』
『逃げて自分の囮影を死守しろ』
『え?博士の口から逃げろなんて初めて聞いたし⋯!』
ワタルは少しだが、三途川ナギに特訓をお願いしたことがあるため、何れ程強いかは分かっている。その、三途川ナギが逃げろと言ったことに驚いていた。
『で、でも目の前で誰かの囮影が奪われたら?』
『お前らじゃ手に負えないからぁ〜、そいつの事は諦めて迷わず逃げろ』
『そ、そんなこと、出来るわけ!!う⋯』
ナギはミレイの頬を掴んで言った。
『言ったよねぇ〜?お前ら弱っちいからぁ、蟻が猛獣相手にしてるようなモンなの、
そいつにこっちの戦力何人ころされたと思ってんだぁ?』
『でも⋯』
『五方陣の呪いは四方に召喚された上位クラス4体の死霊と中央の異能力者、この5つの陣を破壊しない限り解けない、生贄が食われるまでの時間はたったの1時間、足掻くだけ無駄だからぁ〜、ごちゃごちゃ言ってないで諦めて逃げろ、それじゃ次はお前だぞ〜、ワタル』
三途川ナギはこちらに向くと、さっさと来いと言うように手招きをしている。
「行きたくねえ⋯」
「行ってこい、掃除屋さん?」
「うっせえ、はぁ⋯行くか」
「ワタル!これ返しとくね」
ワタルは結月から投げつけられた物を見ると、懐からビルドドライバーを取り出して、部屋から出て行った。
「それで自分は何をすればいいんですか?
三途川博士」
「お前も今から死霊と戦ってもらうぞ?仮に五方陣の異能力者に会った時、死霊ぐらいには勝てなきゃな?」
「はいはい、アイツに渡されたのはヤバかったら使うか」
ワタルはドライバーを腰に巻いて、ボトルを取り出した。
【タンク!ラビット!ベストマッチ!】
ハンドルを回すと、前方に金色の装甲が、後方に青色の装甲が形成された。
【Are you ready?】
「変身!」
【鋼のムーンサルト!ラビットタンク!
イェーイ!】
ワタルはドリルクラッシャーを出現させると、目の前に巨大な蜘蛛のような死霊が現れる。
「はぁ!!!」
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結月side
ワタルはフィクスに変身して、巨大な蜘蛛の死霊と戦っていた。真逆、私について聞きに来たら、こんなことになるなんて。
「大丈夫?」
「あ、貴方は?」
「あ、ごめん!私は黒神ミレイ、あそこに居るユウマの姉よ」
「ど、どうも。私は鳳結月です、ワタルが住んでるnacitaでお世話になっています!」
ミレイさんはそう言うと、私の隣に座る。凄い、見るからに大人のお姉さんって感じだ、
「ワタル、大丈夫かな」
「大丈夫でしょ、あの子何だかんだ強いし」
「ミレイさんはワタルの事、どれくらい知ってるんですか?」
「え!?なになに!?結月ちゃんワタルくんの事気になるの!!?」
「ち、違いますよ!?誰があんな修理バカ」
ミレイさんがニヤニヤしてこっちを見てるのは解せない。それに私が気になってるのは⋯
「ただワタルの事、私あんまり知らないなぁって」
「え?そうなの?」
「ワタルが修理屋や掃除屋として働いてること、憑从影と戦ってること、フィクスに変身することでも、どうしてそこまでして戦ってるのかは、私は分からない」
「恐らく、マキのおかげかな」
「マキ?さんですか?」
「そう、ユウマとお姉ちゃんの妹。2年前にちょっと大きな事件があってさ、その時から行方不明なんだ。妹とワタルくんは仲良しだったらしいんだ、その時に救われたって言ってたくらいだもん」
救われた?ワタルが?でも、ワタルがそのマキって言う人を探してるって事なのかな?何か、頭がこんがらがってきた。
「大丈夫?結月ちゃん!?」
「だ、大丈夫です。ただ頭が疲れちゃって」
「よーし!なら、お姉ちゃんが膝枕してしんぜよう!!」
「え?いや、でも」
「いいからいいから」
私はされるがままに、ミレイさんの膝に頭を乗せて寝かされる。確かに最近、変な夢を見て寝付けてなかったけど、それに何か懐かしい。懐かしい?
「あれ?」
「結月ちゃん、泣いてるの?」
「へ?」
私は、瞼の近くに触れると水滴に触れた。私は何故か泣いていた。マスターに拾われてから私は涙を流したことも無かったと思う、
「いや、何か懐かしいと思って」
「懐かしい?⋯⋯実はお姉ちゃんも何だ、昔マキをこうやって膝枕してあげたこともあったなぁって」
「⋯⋯⋯」
「ありゃ、起きるの?」
「はい、でもありがとうございます。ミレイさん」
「私こそありがとう!結月ちゃん!!」
ミレイさんに勢い良く抱き着かれた。思わず、私も抱き返した。そして私は気づいた、部屋の出入り口にワタルが居た。
「⋯⋯⋯」
「あれ?ワタルくん終わったの?」
「え、ええ、まあ」
「ワタル?何か勘違いしてない?これは」
「⋯⋯⋯⋯百合だ」
「何て?」
「百合だ!!リアルの百合だ小説では見たことあるけど現実では初めて見た!!!」
この後、ワタルに対して誤解を解くのに1時間程かかった。
結月side─終了─
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その後、ワタルはユウマ達も含めて結月の狐の面の下の顔を見せた。ユウマとハカは前に見た事あったし、ミレイも大した事は分からなかったが、三途川ナギだけは違った。三途川ナギは、結月の顔を見た途端、目を見開いた。その反応が気になり、ワタルは三途川ナギに聞いた。
「三途川博士!」
「どうした?」
「結月が顔を見せた時、目見開いてましたよね?何か知ってるんですか?」
「⋯⋯⋯」
「アイツと約束したんです!何か知ってるなら教えてください!お願いします!!」
ワタルが頭を下げると、難しい顔をした三途川ナギが携帯端末を取り出すと、とある写真を見せてきた。
「これは?」
「俺やハルトの学生時代の写真だ」
「何でそんなも⋯⋯⋯ッ!?」
ワタルは思わず言葉を失った。何故ならそこに映っている8人の中に結月と瓜二つの女性が映っていたからだ。
「何で、この写真に若い時の父さんが」
「やっぱりワタル、お前は雨宮雫と木霊幸人の息子か⋯⋯」
「何でそのことを?」
「そこに映ってるのは雨宮雫と木霊幸人だ」
「は?」