『昨日未明、都内で3人の政治家が何者かに襲われ死亡しました。何れも激しく頭部を損傷しており、連日発生している怪事件と──』
とある街の路地裏で政治家の女性が襲われていた。襲っている男の右の顔は焦げているかのように黒かった。
「西園寺先生⋯!あ、あなたは一体⋯!!」
「キミは知り過ぎた、美人政治家も今日で終わりだ」
「なっ!?や、やっぱり、3人の議員を襲ったのは!!」
その瞬間、男は腕を刃のように変化させ、女性を斬りつけた。
「皆まで言うな、もっとも、私が始末したのは2人だけだよ」
「じゃあ残りの1人は⋯?
あなた⋯何者なの⋯!?」
「何者?そうだな⋯人間の脳をエサにする者、これからお前の脳も存分に味わってやるぞ」
「い、嫌⋯」
「ん?」
男は再び腕を刃に変えると、自分の真後ろへと伸ばした。そこには、異能力を発動していたマキと銃口を男に向けているフィクスが居た。
「抵抗勢力の蟻か」
「異能力⋯『朧火』!」
「出血大サービスだ、喰らっとけ!!」
『フルボトル!』
ワタルはラビットフルボトルをスチームガンに装填すると、銃口を向け直した。
「くだらん。どうせ下級」
そう男が言った瞬間、黒炎が男を包み込む。
「なっ!?か、体が、燃えて!!!」
「
『スマッシュアタック!ラビット!』
ワタルは男の足を撃つと、動きが完全に鈍くなり、マキの異能力による炎が激しく燃えた。
「ぐあああああーーっ!!や、止めろ!!何だ!?何処だことは!!?」
それを見た、マキは答えた。
「朧火には3種の炎があります、その内の1つが幻影、触れた人は私がイメージした幻影を見るのです。」
「ぎゃああぁぁーーっ!!食うな!!俺を食らうんじゃねええーー!!」
マキの説明が聞こえていないのか、黒炎の中で発狂していた。
「精神を内部崩壊させます、被害者と同じ痛みを味わって下さい」
「あが⋯ぐが⋯」
精神操作で狂わされたのか、男、いや憑从影はその場で気絶するように倒れてしまった。
「ふう。任務完了です」
「活躍全部持ってきやがって」
フィクスはスチームガンからフィクススパナボトルを引き抜き変身を解除した。そして、マキを見て言った。
「マキ、これアドバイスだけどあんまり自分の異能力の弱点は言うもんじゃねえぞ?別に呪〇〇戦みたいに弱点の開示による縛りがある訳じゃあるめぇし」
「それより!!大丈夫ですか?ケ、ケガしてますよね?」
「そりゃ室外機だ、対象はこっち」
室外機に向かって声を掛けているマキは襲われていた女性の方を見て言った。
「はっ!!すみません!私目が悪くて、さっきコンタクト落としちゃったみたいで!」
「ありがとう。それよりあなた達は?」
「はいっ!とと、通りすがりの⋯一般人と」
「何緊張してんだよ⋯通りすがりの喫茶店の店員です」
「私の命の恩人よ、そんな緊張しなくていいのに」
だが、それにマキはたどたどしく答える。
「ひ、人見知りなので⋯」
「人見知りいい加減克服しろっての」
「うるさい!」
それを聞いた女性は自分の鞄を漁り始める。
「紙とペンはっと、ちょっとこれ持っててくれる?」
「え、あ、ごめんなさい。私冷たいモノ触れなくて、それより救急車呼びますね!ワタル110番」
「了解」
「病院には一人で行けるわ、後でお礼がしたいから⋯ここに連絡先を⋯って、え?いない?」
女性が気づけばマキとワタルの姿は何処にもなかった。
「第四殲滅支部、黒神マキ、任務遂行しました!」
「比嘉さーん、俺も居るよ〜」
『ははっ、ご苦労さま2人共よく頑張ったな!政治家を殺したもう一体の憑从影は今探してるから帰宅して休んで良いぞー』
「りょーかいです!」
「なら、俺もちょっと遅いけどnacitaに帰って開店の準備でもするか……んグッ」
マキは行こうとしたワタルの首根っこを引っ張ると、元の場所に戻す。
「何だよ急に!殺す気か!?」
「いや、良かったらワタルも家でご飯食べない?」
「は?飯?」
「うん、これからマキの殲滅部隊のコンビの人とお兄ちゃんのご飯食べるつもりだから」
「いや良いけどさ」
「じゃあ決まり!!」
そう言うと、マキはワタルの手を掴み、引っ張って行った。
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─黒神家─
「おっ!マキお帰り〜!」
「ただいまです!あれ?コウ君とハカちゃんは?」
マキを出迎えたのは、丁度料理を運んでいた茶髪の女性だった。
「ハカちゃんお母さんと買い物行ってて遅くなるからご飯いらないって、コウは殲滅支部の仕事よ。あら?後ろに2人は?」
「高階さん、第四殲滅支部で先月からコンビ組んでる方、こっちはワタル。殲滅支部の特殊協力者で仕事を色々手伝ってくれるマキの友達」
「マキも仕事だったの?」
「うん、帰りに憑从影が出たって連絡があったから、あと高階さん晩ご飯用意してないみたいでウチで一緒に食べれたら嬉しいって、ワタルは丁度ご飯時だったから誘ったの」
「すみません、厚かましいお願いをしてしまいました」
「本当にすみません、料理の人数も考えないと行けないのに来てしまって」
高階とワタルがそれぞれ謝るとミレイは笑って言った。
「気にしないで、もうすぐ出来るから一緒に食べよ!」
「ありがとうございます、この綺麗な人が総合格闘技中1から5連覇中のマキちゃんのお姉さん?」
「さらっと、凄いプロフィールが明かされたな。マジなの?マキ」
「そうなんだ!しかもオールワンパン!」
「驚いた、その華奢な体の何処にそんな力が」
「⋯⋯⋯」
話のキャパがオーバーしており、ワタルは思考が停止した。
「またぁ、異能力者には勝てませんから」
「早くお姉ちゃんも異能力解放して入隊しよーよ!」
「やだやだ!解放したら今より呪い強くなっちゃうし、女の幸せぜーんぶ奪われる呪いとかお姉ちゃんムリ!」
(異能力の呪いって完全に人によるんだな、そこら辺もこれからは勉強した方が良いな)
ワタルはそんな事を考えながら話を聞く。
「確かに、コウ君と結婚できなくなっちゃうもんね」
「ないない!コウとはただの腐れ縁だって」
「コウ君って?」
「恐らくですけど、第四殲滅支部のエース浅薙晃誠さんの事ですか?」
「はい!コウ君とお姉ちゃんは同い年でラブラブなんですよ?」
「ちょっ、ちょっとマキ!コウとは何にもないってば!///」
ワタルは心の中で”何にもないってことはないんだろうな〜”と思いながら様子を見ていた。
「えへへ!いいなー幼馴染」
「マキだって、ボーイフレンド連れてきてるじゃん!」
「へ?」
「ほら、確かワタル君だっけ?」
急に声を掛けられてギョッとするワタルにミレイは言った。
「違う!ワタルは唯の仕事仲間だもん!!好きな人とは別!!///」
「私、ボーイフレンドとしか言ってないよ?マキ」
「はっ!」
「とにかく!コウとは何にもない!!//父さんが拾ってきてウチで同居してるだけでしょ、さ、高階さんもワタル君も座って」
「あ、はい。お邪魔します」
「本当にいきなりすみません、ってマキどうした?」
マキは家の中をキョロキョロと見回し始めると、それを見たミレイがマキに言った。
「ユウマならキッチンよ、晩ご飯作ってるわ」
「ありがと!お兄ちゃ〜ん!!マキも一緒に作るッ!!」
そう言い、マキはキッチンへと走って行った。ワタルがマキの走って行った方を見ると、マキが黒髪の男性に抱き着いていた。
「ぐへっ!いきなり飛びついてくんな!」
「聞いてー!今日ね、ガシャで推しキャラが出たのっ!」
「まだそのゲームやってんのかよ!」
「だってマキ、『幕☆ラブ』の総司くん大好きなんだもーん!」
「そうですか⋯」
「『恋と邪推は、滅びでござる!』」
「は?」
「総司くんの名セリフ!ねえ、お兄ちゃんもやろ?」
「やらねーよ⋯厨二病さく裂してんぞぉ⋯」
「マキ中2だもーん!ぐりぐり⋯うりうり」
「痛い痛い!メガネ押し付けてくんなって!」
「もう、じゃあメガネ取る!」
そう言うと、マキは抱き着いていた兄である、黒神ユウマから降りると、メガネを外し、目を瞑って言った。
「ほらお兄ちゃん、頭ポンポンして!」
「それ冷蔵庫だぞー⋯」
「はっ!」
その後、料理の準備が終わると、それぞれが食べていく。
「はあああ〜☆今日もおいっしぃ〜☆」
「お兄ちゃんに胃袋掴まれてます⋯私」
「何だこれ、こんなに美味い飯久しぶりに食った」
「本当に美味しい、中3でこんなに料理できるなんて尊敬です」
それを聞いたユウマは言った。
「姉貴とマキに手伝ってもらいながらっすけどね、それより今日戦ったんだろ?ケガとかしてねーか?」
マキに視線を移して、ユウマが聞くが、
「うん平気だよ!でももう一体が見つかってなくて」
「比嘉さんが探してくれてます」
「ホント大変よねぇ、憑从影殲滅の仕事なんてお姉ちゃん絶対やりたくないもん」
それを聞いて、高階が思い出したように言った。
「あっ、そう言えばチラッと職場で聞いたんですが、ユウマ君って異能力者なのに異能力が使えないって本当ですか?」
「そっすね」
「後天的な覚醒も出来ないんですか?」
「俺霊感ゼロっすから、それなのに50体以上の悪霊に取り憑かれて呪われまくった最悪の人生送ってるっす」
「呪いだけが発動して力は得られない。そんな話、聞いたことありませんね⋯」
「”黒の亡霊”存在価値がないから俺、他の異能力者からはそう呼ばれてるみたいっすよ⋯って近くね」
「ん?何が?」
マキはいつの間にか、ユウマの腕に抱きついております、マキは不思議にも思っていない。
「はは、あの人見知りのマキちゃんがお兄ちゃんには、こんなベッタリなんて知りませんでした」
「そうですか?普通ですよ、ね?お兄ちゃん!」
「それじゃご飯食えねーだろ⋯」
「マキは根っからのお兄ちゃんっ子だからねぇ」
「ワタル?どうかした?」
ワタルは考えていた。異能力者の覚醒については比嘉俊彦から教わっており、それに付随して覚醒方法の種類も。だけど、ただ呪いだけを残して異能力が使えない何てそんな事はあるのだろうか?と。だが、ワタルはマキに呼ばれた。
「ん?どうかしたか?」
「いや、急に止まっちゃったから」
「いや、ちょっとな……すみませんユウマさん、トイレ借ります」
「いいっすよ」
ワタルはトイレに行くと、携帯が鳴っている事に気付いた。
「マスターか?もしもし」
『ワタル!すまねえ、店の鍵閉めたか不安でよ、バイトが忙しくて抜けられなくてよ!調べて貰えねえか?』
「ちゃんと閉めたと思ったけどな〜、まあ分かったよすぐ帰る」
『本当に悪いな、それじゃChao!』
ワタルは電話を切ると、直ぐにトイレから出てリビングへと向かった。
「あれ?ワタル早かったね」
「マスターから電話が来ててよ、頼まれ事したから帰らせてもらいます」
「あ、それならワタル君も異能力の覚醒調べて見ませんか?」
「すみません、俺憑影じゃないし、異能力者でも無いから!ユウマさんすみません、ご飯残しちゃって今度これの埋め合わせは必ずします!!」
そう言うと、ワタルは黒神家を後にしていったのだった。
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「はぁ、マスター人使いが荒いんだよ」
「ってあれ?ツキじゃねえか」
「あ、比嘉さん」
そこに居たのは、これから仕事なのか、それとも仕事終わりなのか分からない比嘉俊彦だった。
「外で会うのは珍しいですね」
「おう、お前と黒神が倒してくれた政治家殺しの憑从影のもう一人探しててよ」
「春に突入した筈なのに寒いっすねぇ〜」
「確かに、明日の夜には雪が降るなんて言われてるな」
ワタルはマスターに言われた事も忘れて、比嘉俊彦と話し込んでいた。
「そうだ、最近黒神とはどうだ?」
「何だかんだ、仲良くやらしてもらってますよ」
「違ぇよ、恋愛的にはどうだって言ってんだよ」
「はっ!?何で俺がアイツと!!まぁ、そんなことはどうでもいいんですよ!!」
「誤魔化した」
「そうだ、比嘉さん明日マキ誕生日なんで黒神家にお祝いしに行きません?」
「急だな、まあ黒神の奴も最近頑張ってるしいいか、ってかツキ、お前何か急いでたんじゃないのか?」
「あ!?すみません、それじゃまた明日!!」
「おう!」
ワタルはnacitaへと街を走って行くのだった。ワタルはこの選択はまず1つ後悔する事になる、あの時、もう少し話してから解散していれば、nacitaでコーヒーを振る舞うと言って誘っていれば。比嘉俊彦は死ななかったかもしれないからだ。