狂気が渦巻くこの研究所の奥で複数の影を産み落とす装置が動く
それも最終工程の途中に過ぎない
影は、装置中央に集まり液状に融合していく
人影は、まだ卵に過ぎない。
卵の内側から、男がもがき苦しみながら上半身だけが逃げ出す。
報告書の写真の重要容疑者に似た男が絶望しながら液体に纏わりつかれて中に連れ戻される。
「終わらせてくれぇぇぇっ!!」
同時に、複数の人影が喋る
「あきらめろ」
「世界は終わり」
「我々の始まり」
この地下では、男の叫びはかき消される。
中央監視室
「あんた大丈夫か」白衣の男が、警備室の人に問う。
「後輩を先に避難させてくれ」
「分かった。で、その後輩はどこにいる?」
え?だって其処に・・・声が出ない ア…そうだった
俺、対策室に電話した時に死んだんだっけ。
後輩も確かその時に・・・
「あ・り・が・・う」
彼は息を整え、通信機で報告をする。
「救出対象の2名の死亡を確認」
「すまん。手遅れだった」
彼女は少し震えた声で返答する。
「大丈夫、覚悟はしていました」
「ですが事態は、深刻です」
「当該封鎖案件は、フェイズ1です」
「ですが、現在はフェイズ3から4が妥当です」
男は、現状の装備を確認する。
「フェイズ2~3装備での査察だった」
「支援物質を送ってくれ」
通信の返答が驚きの声を上げる。
「え!フェイズ4でも今の装備なら大丈夫ですよ」
少し頬をかきながら
「だが、フェイズ5・ブラックだと思われる」
沈黙と恐怖が訪れた。
「質問します。その根拠は?」
「救出対象者2名と我々の時間認識のズレだ」
「これは、此処が加速度的に異界化をしている証拠だ」
オペレーターは、冷静に返答する。
「これを我々は、特級事案・ブラックに認定します」
「異界の発生源と異界主の排除を要請」
「全ての手段を持って全て殲滅してください」
ジャージの上の白衣をなびかせて彼は、宣言する。
「了解」
同時に、地下ブロック入口を守るように床から多数の人影が這い出る。
「ザコに興味はない」
彼は、特殊なインナー・パンチンググローブを装着している。
そして、彼は拍手した。
多数の人影は、瞬間に蒼炎に焼かれる。
地下ブロック入口前
男は、息を整えて脱力する。
先ず左手を前に出し、息を鼻から吸い肺を満たす。
その後、口からゆっくり吐く。それを数回繰り返し、脱力を行う。
右手の拳を突き出す!! 轟音と共に、中へ侵入しながら通信する。
「封鎖扉の破壊完了」
「異界への侵入を実行する」
「異界での無線は、破壊されるため」
「ここからは、無線をオフにする」
オペレーターが最後の通信をする。
「ご武運を・・・」
目の前の人影が変異する
その名は「
迷い込んだ者を玩ぶハンター。
男は、溜息交じりにあきれたように吐き捨てる。
「ただの番犬は・・・」
「片腕で十分だ」
右腕と蒼炎で薙ぎ払う。
蒼炎は連鎖的に怪異を燃やし 冷静にそして、無感情に処理する。
そして、地下中央儀式室。
巨大化する肉の卵が部屋の中心に鎮座していた。
そこから、心音が広い部屋全体を揺らす。
これは、図面と違う巨大な空間だった。
彼は、呆れて声を漏らす。
「ここまで、成長すると・・・」
「破壊しても、無数の破片がまた異界主になるだけだ」
「孵化して殲滅した方が早いな」
同時に今一番の鼓動が鳴り響き
肉の卵が裂けていく
そして、黒い液体が勢い良く漏れ出て それが、辺りに異臭を漂わせる
それは、腐った肉が焦げた匂いに近かった。
その誕生の光景は、まさに不快だった。
そこから、六本の長い腕が現れる。
自らの卵をむしり、胴体の巨大な二重口で、捕食する
極端に短い二本脚が地面を壊す
頭部は、無数の眼が開き、周りを確認している。
奴は卵の殻を食らい産声を上げた。
【うfhれうおfhrうぇおうfffwfw】
泥をまき散らす胴体は、辺り一帯を朱色の大地へ塗り替える。
朱色の光で空間が罅割れ、そこには不快な空が広がる。
悲鳴を上げて浸食される世界
緑が存在しない大地
太陽もない朱色の空
異界には、時間は存在しない
異界主は笑うそぶりを見せる
村雲にとっては、見飽きた行動だった。
外を確認したな
「外にお前の居場所は存在しない」
「これより武装の安全装置解除」
音声コマンドにより男の両方の拳の水晶が蒼く輝き
白衣は、蒼炎を模した模様が現れる。
その蒼い光は、この世界を燃やす
その変化に異界主は、男を睨む それは、最初の障害となる者と理解した為だ。
両者の視線が交わる。
男は、ファイティングポーズして宣言する
「記録開始・・・変異主を確認」
「現異界主を異形の赤ん坊と仮認定」
「「特異物対策室」室長・
「これより破邪滅却を行う」
そして、蒼い炎が大地を焼く
太陽が昇り青空が広がり不快な空と衝突する。
「貴殿の存在は否定された」
異界主は、初めてその存在を観て
恐怖以上に死を感じた。
死を撒き散らす存在が感じる恐怖
それは、徐々に怒りへ変わった。
村雲を否定するための渾身の力でその巨体を飛び上がらせて
そして、全ての腕を振り下ろした。