《超越し者》……トランス・センドとは、誰しもが魂に秘めている《星耀(ルミナス)》という力を《黎明の星紋(ルキフル)》で人工的に目覚めさせた《超えし者(イクシード)》と自分の力で目覚めさせた《醒なる者(エル・アウェイク)》を一身に宿した者のことをいう。僕は今は《超えし者》だけど、自分のなかにいるもう一人の僕とでもいうべき力を覚醒すれば、《超越し者》になる。その力は、《超えし者》の《V(レベルファイブ)》に匹敵する――。
理事長から告げられたその説明を、理事長室から帰る途中、頭の中で何度も反芻していた。
僕があのとき、《焔牙》を持っていたのは、その時に《醒なる者》に覚醒していたからだということがわかった。そして、鞘は《超えし者》になったときに手に入れた者だと考えられる。
ただ、もう一度《醒なる者》に覚醒してしまうと、二度と元には戻れないと忠告を入れられているので、よいそれと出してしまうのは忍びない。まぁ、僕がもう一度覚醒しなければならない、つまりどうして《醒なる者》の力を失ったのかは分からないとのことだが。
気が付けば、穂香の待つ自室の前へと来ていた。一度、ドアノブに手を掛けようとして、止まった。自分が化け物であると、分かってしまった今、 どんな顔して穂香に会えば良いのだろう。何て言えば良いのだろう。
僕は、怖くなった。途方もなく、怖くなった。穂香に、嫌われるかもしれないと思ったから。穂香が、僕を怖がると思ったから。
だから、僕は、……そこから、逃げ出した。
「災禍……?」
――――
逃げ出したといっても、外には出れない。だから、僕は、遠くを見渡せる場所、時計台へと向かった。心臓がパンチングボールのように跳ねるのも構わず階段を駆け上がり、展望台へとついた。ラウンジみたいな場所で、海からの潮風が全身を優しく撫でる。
「良い景色だなぁ……。」
沈みかけの夕日を眺め、一人ごちる。
今日は、ここで眠ろうか……。しかし、風邪引かないかな……。
と、いつもは考えもしないことを考えていると、人の駆け上がる音が聞こえた。こんな時間に誰が、と後ろを向くと……。
「災禍!」
駆け上がったせいで、はぁはぁ肩で息をした、穂香がいた。
「ほ、穂香……!」
じり、と一歩後ずさる。
「どうして、ここに……。」
「走っていく後ろ姿が見えて、もしかしたら、と思ったから……。」
もしかしたら、で当たる所が流石と思った。
「どうして?どうして走っていったの?」
「それは……。」
言えない。言えるわけがない。自分が《超えし者》ではなく、《醒なる者》でもない、《超越し者》……化け物だったなんて。
「何か、言われたの?」
「まぁ、うん。」
「何を言われたの?」
「……。」
「……言って、災禍。私、災禍のことなら、絶対何を言われても嫌ったりしないから。」
「!……敵わないな、穂香には。」
そして、僕は全てを話した。自分の正体を、逃げ出した理由を。
「そっか……。で?」
「へ?」
「それだけじゃない。災禍が《超越し者》だった。ただそれだけのことじゃない。そんなことで私が災禍のことを嫌いになったりなんか、しないわ♪」
「……ありがとう、穂香。」
こうして、穂香に連れられて僕は部屋に戻った。そして、寝るときに一緒に寝させられたのは言うまでもない。関節を決められて動けなかったよ……。
――――
はい、ついに《超越し者》の定義が明らかになりましたね!遠山tsunです!
いきなりですが、アブソリュート・デュオのアニメがついにクライマックス!
透流の《絶刃圏(イージス・ディザイアー)》も発動し、もうアドレナリンがバーストしましたね!
ただ、時折小説と違う部分が今までの中でも多数あり、これは出してほしかったな、とかこれはいいな、とか思ったりしました。
さて、《死化羽(デストラクション)》が現れて透流達の運命やいかに!?で終わった十一話ですが、こちらはようやく小説の半分ほど。話数が延びてごめんなさい……。
出来るだけ一つの話に内容を詰められるよう頑張ります。
それでは、また数日後に。じゃあの!!