「っ……っ……!」
穂香の瑞々しい足に触れる僕は、とても緊張し、冷や汗を流していた。
《新刃戦》まであと二日になった今日の四時限目……保険の授業で応急処置――包帯の巻き方を学んでいた。そして、今は《絆双刃(デュオ)》で実践することになっているのだが……これは、かなりまずい。
「ちょっと……災禍、顔赤いけど、大丈夫?」
「だ、大丈夫だ、問題ない。」
触れた状態のまま動かない僕に、僕の《絆双刃》である冬木穂香が困惑の声をあげる。
早く終わらせてしまいたいが、そうも行くまい。何故なら、椅子に座ってる穂香の足を巻きやすいように持ち上げた今の状態と、僕の膝をついた姿勢、それらが合わさっておきる現象、パンチラというのが今現在起こっているからだ。模様は青と白の縞パン、穂香らしい可愛いパンツだ……じゃなくて!僕の脳は、それを一生懸命見ないようにすることに専念しようとしている。 だから、こんなことになっているのだ。
あぁ、ちくしょう!やってやんよ!
何とか僕は、包帯を巻き終えることが出来た。その後、授業は滞りなく終わり、その日の授業は終了と相成った。……なお、終わったあと少ししてから穂香から不穏な空気が流れ始めたのは、きっとあの現象に気付いたからであろう。だって、その日の夜にパイル・スクリュー・ドライバー(サイレントver)を叩き込まれたのだから。……生きているのが、不思議だった……。
――――
《新刃戦》前夜。僕らは僕のベッドである下段のベッドの上でテレビを見ながら普通に会話していた。
「ねぇ災禍。猫の可愛さって異常だと思わない?」
「逆に考えるんだ。猫の可愛さが普通なのだと。」
「確かに……。」
「つまり!猫が可愛いのは当たり前だったってことなんだよ!」
「な、なんだってぇ!?」
……とまぁ、内容はふざけたものだけど、どうして《新刃戦》に関する話をしないのかというと、下手に話をするよりも、いつものように過ごす方がいいだろうという僕らの考えが一致したからである。
「あれ?もうこんな時間。そろそろ寝ようか、災禍。」
「うん、そうだね。」
その後、消灯した僕らはそれぞれのベッドに入り、すぐに眠りに落ちた。
――――そして、僕らの《新刃戦》の幕が、ついに上がる――――
「さぁて、いっちょやりますか!」
「うん!絶対勝とうね、災禍!」
「もちろんだよ穂香。」
僕らは校門の手前――くじ引きで始めの場所を決めたため――で待機してる中、高揚感を隠さずワクワクした感じで会話をした。そして、改めて学校へ視線を戻したとき……、
高らかに、甲高い音で時計塔の鐘が学園中に鳴り響いた。
「行くよ、穂香!」
「うん!」
僕らは地面を思いきり踏み締めて駆け出した。作戦は……結局、その時の判断に任せるというものだった。仕方ないね、その内、考えることをやめてしまったんだもの!
――――
僕らは校内を探索していた。東、南、西、と回り、一階は残り東だけになった。今は、西の終わり部分だ。
「案外見つからないねぇ……。」
「そうだね……皆動き回ってるのか、戦闘をしているのかもしれないね。」
そう言って、東部分へと入ったその時。
「おや。」
「あ、三國先生。」
角を曲がったその先に、三國先生が立っていた。待ち構えていたようで、少し怖い。
「どこかの《絆双刃》と当たりましたか?」
「いえ、全く見つからなくて……。」
「そうですか……。見つかるといいですね。」
「あ、はい。」
「それでは。」
「あ、さようなら。」
そうして、三國先生は僕らの来た西側へと歩いていった。見つかるといいですね、その何気ない一言に、僕は悪寒を覚えた。
――――
「……?」
最後の北の部分も半ばというところで、僕は足を止めた。視界に、ぼんやりと人影を二つ捉えたために。一人は僕と同じくらいの身長で、もう一人は僕よりも高い身長だ。
「っと。どうしたの災禍。」
「……敵だ。」
「え!?」
僕が立ち止まったのを見て、前につんのめってから何とか僕のとなりで止まった穂香も、言われて人影な気づいたらしい。
……ようやく他の《絆双刃》との戦闘か……、体が戦いたくてウズウズしてたから、思う存分やろう!
そう思い、胸元に手を当てて、《力ある言葉》を口にしようとしたその時、二つの人影が動いた。低い方が前に、高い人が後ろに。
「!」
警戒して、後退りをする僕。
何だ……何だこの感覚。前にもどこかでこんな感覚を……?
言い様のない不安を胸が覆う。低い方の人影が、夕暮れの日差しが窓から差し込む部分に到達したとき……僕は、驚愕と困惑に顔を歪めてしまった。
「……んな……して……。」
あまりの驚愕と困惑に、言葉も途切れ途切れになってしまう。
「……。」
穂香なんて、驚きのあまり、口に手を当てたまま動かないくらいだ。それも仕方ないだろう、だって……現れた低い方の人影の正体は……、
「……久しぶりだね、災禍。そして……穂香。」
僕が長年探し求めた……穂香の双子の姉の……冬木由美香だったのだから。
――――
「何で……どうして……どうして!由美香がここにいるのさ!!」
本来なら、恐らくだけどあの老人と青年の元にいるはずなのに、こんなところにいるわけがない!
そう動揺が動揺を呼ぶ中、もう一つの高い方の人影が動き、正体を現した。
「これはこれは……お久しぶりですね。」
「お前は…………、お前、は………お前はぁあ!!」
その人影の正体は、射るような相貌の、短く切った金髪の持ち主の青年だった。そして、その青年を見た瞬間、僕は、忘れていた記憶を取り戻した。こいつは、僕があのとき戦ったやつだ!
「そう言えばお名前を聞いていませんでしたね……私は《K》と言います。あなたは?」
瞳に光のない由美香の横に立った《K》が、嫌らしいほど爽やかに自己紹介と僕の名前を聞いてくる。由美香は、何故かここの制服を着ていて、《K》はタキシードを着ている。そのタキシードのネクタイを整えながら聞くものだから、尚更気に触る。
「……斬龍災禍。覚えておいてくれて何よりだよ《K》。最も、こっちは忘れてたけど。」
「忘れられてたとは……少しショックですよ。」
「気にしないでよ、思い出したんだからさ。」
僕と《K》の視線がぶつかる。……由美香は、相変わらず立ってこちらを見たままだ。穂香は、何とか自分を取り戻したようで、両拳を胸元で握り締めている、
「ようやく会えたな……《K》。お前には、借りがあるから、返させてもらいたいね。」
「久しぶりに会ってもこれとは……いきなり殺意をぶつけてくるのは変わりませんね。まぁいいでしょう。かかってきなさい、と言いたいところですが……《装鋼の技師(エクイプメント・スミス)》様からは、この方の戦闘を見守ることとしか仰せつかってないものですから、今回は残念ながら。代わりに、この方があなたの……いえ、あなたがたのお相手をしますよ。」
「《装鋼の技師》ってのがあのときの老人さんか……。」
「えぇ。」
「そいつのもとに案内してよ。由美香を連れ去った理由を問い詰めなきゃいけないからね。」
「……これはテレビものっぽくて、私が言うべきことではないでしょうが……この方を倒してから、というやつですよ。」
「はんっ。……由美香、ようやく会えた。さ、早くこっちに……。」
様々なことが明らかになる中、僕は《K》がさっきから言う、由美香と戦うということを馬鹿馬鹿しいと思いながら、由美香へと近付く。
「!災禍危ない!!」
「!?」
少し俯いた由美香から、黒い焔が舞い上がると同時に、穂香からの警告がとぶ。僕は本能的に後ろに下がった。が……。
「っ!?」
由美香が握った《曲刀》により僕の腹が浅く斬られた。
「災禍!」
「ぐっ……。何で、由美香が《焔牙(ブレイズ)》を……!?」
血が少し流血し、少しばかり痛むも、それよりも由美香が手に持つ《曲刀》への驚きの方が勝る。
「私も……使えるようになったんだよ……災禍。あのとき、災禍が負けるのをただ見てるしかなかった私への怒りでね……。」
「そん、な……。」
「……何故この方を連れ去ったのか、理由が知りたい、でしたね。」
「!」
「……ふふ、秘密ですよ。」
「!!貴様ぁあ!!!……っ!?」
一々、気に触る《K》への怒りが爆発し、掴みかかろうってしたとき、目の前に由美香が《曲刀》に口元に横に構えて現れた。
「退いてよ由美香……、僕は、僕は……!」
「酷いなぁ災禍ってば。折角の再会なのに、私よりもその人ばっかりなんだから……。しょうがない、なぁ!」
「うわっ!?」
また、由美香が《曲刀》を振るう。今度は間一髪避ける。が、由美香は追撃してきた。
「やめてよお姉ちゃん!!どうして災禍を攻撃するの!?」
「久しぶりに会えたんだもの。戦ってみたいじゃない。」
「そんな……そんなのっておかしいよ……!そんなの、お姉ちゃんじゃないよ……!!」
「!!お姉ちゃんじゃ、ない……?……そうか、まさか!」
由美香の攻撃を何とか出現させた《焔牙》の《大太刀》で、鞘のままでガードしながら、穂香の一言で閃いた僕は、由美香の延長線上にいる《K》を睨み付けた。すると、《K》はさらりと答えた。
「えぇ、そうですよ。少しばかり、洗脳に近い処置をさせていただきました。少しなのに、中々かからなかったもので、今の状態になるのに随分とかかりましたが。」
「《K》……お前とあの老人だけは、絶対に許さない!!」
「災禍!!」
「ぐっ!!」
腕に加わる衝撃がより一層増したことで由美香に気が戻る。
「ねぇ、どうして見てくれないの?折角また会えたのに、ようやく会えたのに!!」
「由美香……。」
洗脳を少しといえど受けているはずなのに、どの言葉も本心のように思えて、僕の心に深く突き刺さる。さらに、少し憂いを帯びたその表情がより深く僕の心に突き刺さってくる。
「ほらほら、早く《焔牙》を抜かないとやられてしまいますよ?」
「くっ……!」
何故戦わねばならないのか、そして、何故《焔牙》が人を傷つけられるのか、様々な疑問が頭をよぎる中、悔しいが《K》に言われた通りなので《焔牙》を鞘から抜く動作で由美香を後ろに飛ばして、鞘を炎散させて、《大太刀》を構えた。
「災禍……!」
穂香が僕に駆け寄る。
「穂香、離れといて。……今から、荒れるから。」
「……私に、何か出来ることない?」
「何か出来ること、か……。今は、僕に全部任せてほしい。必ず、穂香を守るから。必ず、……由美香を助けるから。」
「……分かった。」
そう言って、穂香は離れたところへ駆けていって、こちらに振り返り笑った。そして、口が
『頑張って』と動いたのを僕は見逃さず、小さく笑い返してから由美香へと視線を戻す。
「これは見物ですね。どうこの方を助けるのか。……しかし、そう簡単にとけますか?」
「へっ。そんな風に笑ってられるのも今のうちだよ。……行くよ、由美香!」
「うん、来て!」
そして、僕は由美香へと走り出した。由美香を助けるために、穂香を守るために。
――――
はいどうも、遠山tsunです。今回はいよいよクライマックス(いきなり)!!
洗脳された由美香を、災禍はどう助けるのか!?果たして、助けることが出来るのか!?
そう期待してくれたら光栄です。
突然ですがここで、少し本文について補足を。穂香を守る、と災禍は言いましたが、あれは由美香を助けて、穂香の心や笑顔を守る、と暗に言ったものです。……殺しては、どちらも守れませんしね。
さて、これまたいきなりですが……次回、最終回です!まぁ、見てて分かるとは思われますが。
最終回も、必ず見る!という方、ちょっと覗いていこうかな?という方。大歓迎です!
それでは、次回までじゃあの!!(……評価&コメントお待ちしてまぁす!)