今回は過去編二話目となります。……因みに、次回過去編最終回だってこと、知ってた?
あ、知らないですか、ですよね~(笑)
それでは!本編でゆっくりしていってね!
「……。」
カチ、カチ……と架けるタイプの木時計の針が秒を刻むごとに、金の先の丸い棒が揺れる。その音に耳を傾けながら、少女は足をパタ、パタ……と交互に布団に打ち付けながら、絵本を読んでいた。
少女の名前は冬木 穂香(ふゆぎ ほのか)。体が弱いため、姉の冬木 由美香(ふゆぎ ゆみか)と共に冬の大地に飛び出すことができない。
ふと、二段ベッドの上段の高さにある長方形の窓から外を眺めると、枯木に白銀の雪が積もり、その光景が永遠に続いているように見えた。
この先で、姉は斬龍 災禍(きりゅう さいか)という人と遊んでいるんだろう、と小さく溜め息をつきながら少女は思った。自分も、体がせめて姉並みであれば……と、もう何度も何度も思ってきた切ない気持ちを胸に覚える。
「あ……。」
絵本を読む手をやめて、外の景色を眺めていると、ドサッ、と一本の木から積もった雪が限界を迎え、落雪した。
「………、よし!」
一抹の不安を覚え、少しばかり少女は逡巡したが、不安を拭い去ることが出来ず、本当に死ぬ気で外に出る決意をした。茶色いブカブカのコートを羽織り、赤いマフラーを深めに巻き、ポンポンのついた白く可愛いニット帽を被ると、成りを正して、小屋から少女は飛び出した。
……ここで少女が飛び出さなければ、運命の歯車は崩壊していたであろうことは、誰一人として知る由もなかった……。
――――
「こっちへ来なさい、お嬢ちゃん。」
初老の老人は杖をついていない方の手を、由美香の方へ向けた。……って、ちょっと待て!
「何で由美香を呼ぶのさ!!それに、僕は坊主じゃない!!」
「ワシにとっては、実験材料ではない貴様に用などない。ワシはそのお嬢ちゃんに用があるのじゃ。」
さらり、と腹のたつことを言ってくる老人を睨むと、怖いのうと煽るように言った。
「何で……何で私を?」
僕の腕に捕まってきた由美香にこんなときでもドキッとしてしまう自分に内心苦笑いしながら、老人の答えを待った。……答えは、全く不明瞭なものだった。
「お嬢ちゃんの『秘密』に用があるからじゃ。」
「!?」
僕は?マークを浮かべたが、由美香はビクゥッ!!と僕と初めて会ったとき以上に跳ね上がり、震えだした。
「な、んで……?」
「なぁに、お嬢ちゃんのお父さんにはちと縁があってのう。……心当たり、あるじゃろ?」
「……あのときの、おじさんは……あなたの……!?」
「そう、ワシの部下じゃ。最も……そのお嬢ちゃんがk「ちょっ、ちょっと待ってよ!!」む?」
雪が皆の方に降り積もるけど、誰一人として気にしない。少なくとも僕は、気になどしてはいられなかった。
「どういうこと!?全く意味が分からないよ!!さっきから何の話をしてるのさ!?」
焦りが焦りを呼び、もう耐えきれず僕は叫んだ。その悲痛の叫びは……老人の低い声で返された。
「……お嬢ちゃん、チャンスをやろう。その煩い坊主を守りたいのなら、此方に来なさい。その煩い坊主がどうなってもいいのなら、そのまましているがいい。」
「っ!!」
由美香が息を飲んだ。困惑している僕でも、今のは分かった。あれは、僕を人質にしたんだ。由美香が僕と老人を交互に見て、慌てる。今までこんなことはなかった。由美香が選択を無理矢理迫られるなんて。
だから……僕は、胸のうちに蠢く胸くそ悪い感情を隠すことなく放った。
「……ふざけるなよクソジジイ。」
「むぅ?」
「由美香を!!お前なんかに奪われてたまるか!!折角、折角出来た友達を、親友を!!……大好きな人を!!」
「さ、災禍!?」
由美香がさっきとは別の意味で、さっきは青ざめていたが、今度は顔を赤くして僕を見る。
僕の怒りの叫びを聞いて目を丸くしていた老人は、腹を抱えて笑いだした。
「……何がおかしい。」
「いやなに、散々言ってくれるなこの坊主は、と思っての。……笑わせてくれた礼じゃ、《K》。半殺しにしても構わん。」
「御意に。」
深々、と綺麗に礼をした青年は、こちらに向き直ると、ゆっくりとこちらに歩いてきた。
一歩一歩、雪を踏み締めて歩いてくる《K》という青年は、僕の前にたつと……いきなり、蹴り飛ばした。景色が目まぐるしく変わり、体中に冷たい感触が何度も伝わる。
最終的に、思いきり木にぶつかって止まった。
「っ……っ……!!」
腹が軋む痛みに、悶え苦しむ僕。頭もぐわんぐわんして立つことが出来ない。目の焦点があったときは、《K》がこちらを見て憐れむ顔をしているときだった。
「何とまぁ軽い……。今まで何度も敵を蹴ってきましたが……やはり手応えのない。いいことを教えて上げましょう。彼我の戦力比較は、真っ先に身につけるべき能力ですよ。」
「……。」
難しい単語を言われ、少し戸惑う。まぁ、要するに、身の程をわきまえろって言いたいんだろう。余計腹立つ……何なんだこいつら。さっきから自分勝手に言いやがって。
「!!」
そんな《K》の奥に、じり、じり……と迫る老人がいた(目がやらしく見えるのは、僕だけかな?)。そして、腰を抜かしたのか跡をつけながら、怯えた表情を浮かべる由美香。その老人の手があわや由美香に触れそうになったその瞬間、僕の中で何かが吹っ切れた。
「うぉおぉあああ!!」
「!!」
僕の中から黒い奔流が流れ出した。体の骨が、身が、血肉が軋み、燃えるように熱い。
「ウ、ヴゥ……ウガァアア……!!」
風が僕を中心に吹き荒れる。由美香の長い髪が強く靡き、《K》の短い金髪が大きく仰け反り、老人の髪も同様に仰け反っている。
僕は、台風の目のように一切の風を感じない。感じるのは、軋む痛みと熱い《魂》。やがて、獣のように呻いていた僕は、《魂》を手に掴んだ。
その瞬間、風が爆発して、無音の静寂が訪れた。うずくまっていたはずの僕は、いつの間にか僕は立ち上がり、無言で《魂》を握っていた。
「《焔牙(ブレイズ)》……。」
老人は、僕の知らない単語を呟いていた。……由美香は、その単語を初めて聞いたような顔は、していなかった。少なくとも、僕にはそう見えた。
――――to be continued!!
どうでしたか?
ついに覚醒した災禍!果たして彼は一体!?そして、穂香は!?
様々な思想を巡らせてくれたら、アリスオンザヘブンです。
それでは、また次回!じゃあの!!