「おい、斬龍(きりゅう)!!」
教室から出て、大いなる悩みから『現実逃(ゲフンゲフン、あれ喉の調子が)とりあえず』自分の三大欲求の遊(レッツパーリィ!!)、眠(ぐぅぐぅ、すやすや)、食(飲んどる場合かぁ!!)の一つ、食を満たそうと廊下に出たとき、後ろから九重が僕を呼んだ。
「災禍(さいか)でいいよ。どうしたの九重(ここのえ)?」
「それなら俺こそ透流(とおる)でいいぜ、災禍。いや、お前も《異能(イレギュラー)》だったんだな。」
「透流も、《異能》だったんだね。」
「まぁ、何だ。そういうのなしで、仲良くしようぜ、災禍。」
透流が握手を求めて透流が手を差し出す。僕もそれを握って、固い握手を交わす。
「うん、よろしく、透流。」
「……仲がよくて何よりだ。」
「「?」」
手をお互い引いたときに、横から凛とした女の子の声がした。そちらを向くと、藍色の流れるようなロングの髪に、高校生にしては少し大きいのでは、という二つのパンチングボールが時折跳ねる、雰囲気も凛とした女の子がいた。
「いや、ウチの……橘の道場でも男子同士の決闘が絶えなかったもので、こういう言い方をしたら少し悪いが、特別な君達が仲が悪かったらどうしようか、と心配したのだが……要らぬ心配をしたようだ。私は橘 巴(たちばな ともえ)。よろしく頼む。」
「僕は斬龍 災禍。よろしく、橘。」
「俺は九重 透流。同じくよろしく、橘。」
「うむ。」
それぞれ片方の手を差し出し、橘が両の手で握る。
「……ところで、これも要らぬ心配かもしれないが……。」
「「?」」
「……間違っても、そ、その、三人目の同居人とかは……。」
「「作らねぇよ!?」」
「そ、そうか!そうだよな!!」
……何だろう、真面目すぎて空回りする学級委員長みたいだ……。いや、学級委員長なんだけど。
「トール、早く食堂に行きましょう。」
「災禍~、お腹すいたから早く行こう?」
そんなときに、透流の裾をユリエがちょん、と可愛らしく小さくつまむ。それは問題ないのだが、僕の腕を穂香(ほのか)が、一瞬抱きついてから引っ張った。そう、一瞬でも抱きついて。その光景を見た、学級委員長さんが……。
「き、斬龍の不埒者ぉお!!」
「誤解だぁあ!!」
顔を真っ赤にして走り去っていった。弁明しようにも、もうすでに影のひとつもない。う、動けん!!馬鹿なぁ!?とザ・ワールドされた訳でもないのにあの速さ。まさか、シルバー・チャリオット!!……いや、ないか。
「?どうしたの?学級委員長さん。」
「いや、僕にはさっぱり……。透流は?」
「俺に話を振るなよ……。」
透流が僕の分まで吐いたのではないか、ってくらい深い溜め息をついた。
「……とりあえず、食堂に行きましょう。」
そんななか、ユリエが淡々と食堂に行く提案を告げた。それに、誰も異論を唱えることはなかった。誰も、唱えられなかった……。
――――
食堂で四人で楽しく速めの夕食を食べて、寮について少し聞いて、僕と穂香は割り振られた部屋へと入り、中でカオスな会話を繰り広げていた。
「これから一週間よろしくお願いします、あなた♪」
「あなた!?」
「私、頑張ります♪」
「何を!?」
「三人で桜並木を歩きたいですね♪」
「すでに産むこと決定!?」
「あ、でもやっぱり四人で順風満帆……。」
「増えた!?」
「もう、さっきから消極的だね!作る気ないの!?」
「あったら即退学だし、作っても即退学なんだけど!?」
「そういや、今までの全部嘘だからね?」
「嘘かよ!?……よかった、本気だったら色んな意味で危なかった……。」
という、もう、わけがわからないよ、とき○うべぇさんもお手上げのカオスな会話を終えて、まともに会話をする。
「改めて、一週間よろしく、災禍。」
「こちらこそよろしく、穂香。」
何だか、初めてなのに、懐かしいこの感じ……。やっぱり、あいつとの会話の感覚と……。
と、僕が物思いに耽り始めると、穂香が少し心配そうな顔で、言った。その一言で、現実に引き戻される。
「……冬木(ふゆぎ)って名前、覚えてない?」
「!?」
まさか、それを穂香の方から聞いてくるなんて、思わなかった。
「……どうして、僕が冬木の苗字に敏感だって、知ってるの?」
「……さぁ、何ででしょう♪」
この会話の時だけ、穂香の雰囲気は違っていた。だから、その時に覚えた警戒心も、すぐに消えてしまった。
「……あ、風呂入ってきていい?」
「あ、うん、どうぞ。」
そうして、穂香は風呂場へと消えていった。
……もしかしたら、冬木という苗字があいつと穂香で一緒なのは、偶然じゃないのかもしれない。そんなことを、僕は思った。
そして、シャワーの水が跳ねる音に胸をドキドキしていると、突然キュッっと止まり、ガチャっとドアが開いた。
「な、なんでタオル姿!?」
「いやぁ、着替え忘れちゃって……。」
……天然なのか?
そう、頭を小さく悩ませていると、風がフワッとふいた。さっき、僕が少しでも涼しくなるようにと開けておいた窓からだ。さぁ、ここで当然だけど皆に問題だ。軽い布が、風に吹かれると?……答えは簡単。吹き飛ぶだ。
そして、あわや可愛らしい胸のてっぺんが見えてしまう、その時に《超えし者(イクシード)》ならではの速さで穂香が回転し、一言。
「……記憶、消去(デリート)。」
そして、回転蹴りが頭にクリーンヒット。綺麗に二段ベッドの下のベッドに入り、衝撃で気絶した。
――――
夢で見たのは、あの日の記憶。その夢は、僕が忘れていた細部まではっきりとしていた。
「……。」
この冷えた、一面雪景色の森の中、僕は地面に血を流しながら倒れていた。そして、目の前にいる、女の子を見上げていた。
『――――。』
女の子が、一言言って、涙を流す。
何で、何で泣いてるの?
頭部からも血を流していて、片目が流血で瞑っているので、もう片目でその女の子に疑問の眼差しを向ける。
『――――。』
女の子は、遠くに歩いていく。……その先に、初老の老人がいた。
誰だ……誰だよ、 お前!?
僕の記憶にはいなかった、謎の老人。声を出したくても、全く出せない。呻き声ひとつ。
そうして、ヘリが降りてきて、老人に連れられて乗る直前、女の子が……冬木 由美香がこちらをみる。そして、ヘリの風圧がこちらに届き、それに僕は意識を失った。
「はっ!?」
ガバッと布団から跳ね起きると、穂香が台所で鼻唄混じりに料理をしていた。
「……ねぇ、穂香。」
「なに?」
「……僕、昨日の夜何していたかさっぱり覚えてないんだけど。」
「……疲れてるんだよ、きっと。」
「そっか。」
昨日の夜、何してたかな……。部屋で穂香と会話して、穂香が風呂に入ったまでは覚えてるんだけど……。だから、忘れたんだろう。そう納得した。……夢を見たことは、穂香には内緒だった。
どうも!コメントくれた皆さんありがとうございます!!読んでくれた皆さんありがとうございます!!遠山tsunです!今回は、少し物語成分と微量の恋愛成分がありましたね。どうでしたか?続きが気になっていただけたのなら光栄です。
さて、次回はついに主人公と橘の二人きりの会話があります。進展?気になるなら、次回をお楽しみに~♪
のしのし。