五日目、今日も今日とて午後はマラソン大会なのだが……逆に考えるんだ。
――マラソン大会でいいさと。
「遅いな……。」
「うん、そうだね……。」
夜のとばりがやって来そうな時になってもみやびは帰ってこない。
どうしたんだろう……昨日はもっと速く走り終えていたっていうのに……。
昨日は空色が茜色に変わり始めた頃にゴールし、座り込むこともなかったっていうのに。
足でも捻ったかな……?
「みやびのことか?」
僕らの会話に、橘が反応する。
「ルームメイトだもんね……。気にならない方がおかしいよね。」
咲夜……じゃない!!昨夜の一件のせいか、今までよりも近い位置に、もう僕の足元の影と
穂香の影が触れ合うくらい、穂香は近い。そんな穂香が少し哀愁を漂わせていう。
「もしかしたら、みやびは――。」
皆までいうな、分かっている。ここ数日、立て続けに一人、また一人と学校からあばよとっつぁんしていってるのだ。入学したてからいきなり厳しい訓練ばかりで、日が増えるごとに
クラスの誰かの心がハートブレイク!!していっている。人が少ないのはやはり寂しい。
今、橘が介抱している女の子も弱音を正に弱々しく吐いている。
「――――ちょっと、様子を見てくる。」
「へいへい。お気を付けて~。」
透流は、校門をかけてコースを逆走していった。
「……優しいな、透流は。」
クラスメイトとはいえ、会って数日の人のために動けるなんて、早々出来ることではない。
「……災禍だって、充分優しいよ?」
「え?」
僕の独り言が聞こえてか、穂香が夕日のせいか顔を仄かに赤くして言った。
「何でもないよ♪」
「あ、うん……。」
僕は、穂香が何て言ったか聞こえなかった。だから、何でもないと言われれば何も言うことは出来ない。ただ、心なしか、穂香は嬉しそうだ。
「少々不埒者ではあるがな。」
「いきなりどうしたのさ橘?ていうか、それ誤解だから!」
「あはは。」
「ふふふ。」
「何?僕だけハミってんの?」
「気にしないで、災禍。」
「そうだな。気にすることはないぞ。」
「うわっスッゴイ気になる!」
とまぁ、僕が何故かハミられてる間に、透流がみやびをおんぶして帰ってきた。足を少し捻っただけのようだ。それを見て、僕らは皆安堵しながら、二人に駆け寄った。
――――
「それじゃ、今日までありがとう、穂香。」
「こちらこそ、ありがとうね、災禍。」
その日の夜、僕と穂香はいつも通り僕の布団に並んで座って話をしていた。といっても、話の内容は違うけれど。
「といっても、正式な《絆双刃(デュオ)》も変わらないのだけど。」
「はは、確かにそうだね。」
そうなのだ、結局はお互いこのままでいようと決めたから、正式な《絆双刃》も変わらないのである。……え?他の誰か誘いに来なかったのかって?そうだね……血反吐を吐くまで殴り(ry←前々回辺り)ってしたら皆逃げていったよ♪それだけ。
「……。」
穂香の笑顔を見て、由美香のことが脳裏にフラッシュバックした。……昔のこと、やっぱり分からない。僕は、何故、昔《焔牙(ブレイズ)》を使えたのか。そして、何故由美香が拐われなければならなかったのか。この二つはどうしても分からない……。理事長に聞けば分かったりしないかな。何か、何でも知ってそうだし。……なんちて。そんなわけないか。
「どうしたの?災禍。」
「え、あ、いや、何でもないよ。眠いからかな。」
「あ、眠いならもう寝ようか。」
「そうだね。……そうしよう。」
少し考え事をしていて、穂香が僕のことを覗いてきているのに気付かなかった。だから、穂香の提案に素直にのって何事もなかったかのようにした。
「……女の子の前で、別の女の子のこと、考えちゃ駄目だよ?」
「ぶっ!?」
「あぁ、やっぱり考えてたんだー!」
「いや、それはその!」
女の勘と言うべきか、鋭い勘で僕を誘導尋問みたくして事実を証明させた穂香に、僕はこのあと実に数十分責められることになる……。
――――
「さぁさぁ!《絆双刃》のパートナー申請は、今日の夕方六時までだかんね!それを過ぎたら、よっぽどの理由がない限りは卒業まで変更が効かないから、パートナーとは仲良くやるよーにね!」
翌日、土曜日となり、SHR《スティール・ホンダ・ラン(じゃない!)ショート・ホーム・ルームでのうさ先生からの最後の通達が終わる。
さて、放課後だ。早速穂香と申請に……。
と、腰を浮かそうとしたその時。
「あ、そうそう!斬龍君と冬木ちゃんはこの後先生のところに来てね!」
「ダニィ!?」
僕らにщ(゜▽゜щ)(カモン)コールしたうさ先生はそのままつかつかと教室の外へと出ていった。周りの皆から何したんだよ~と冷やかしを受けながら僕らは戸惑いながらうさ先生の後を追う。
「んじゃ、付いてきて~。」
と言って、そのまま来させられたのは理事長室前。
そんな!そこまで大事になっていたなんて!馬鹿な、この災禍がぁあ!!
と、凄まじい動揺を何とか内面に押さえつつ、中へとはいる。中は、昼過ぎだというのに薄暗く、ピリッとした空気が張りつめており、奥には理事長が座りそうな高そうな椅子に座る理事長と、その隣に無表情に佇む三國先生が立っていた。そんな空間に穂香と二人して喉をならして部屋の中央まで進むと、そこでうさ先生が扉を閉じた。
「……そこまで緊張すんなよお前らよぉ。」
「「!」」
勢いよく後ろを向くと、扉に背をもたれかけて、腕を組ながら不適に笑ううさ先生……いや、月見先生がいた。
「……なるほど、あの極端に明るいのはそれを隠すためだったんですね。」
「あぁ、そうだよ。……というか、その口振りだとどこか予想していたように思えるんだが?」
「えぇ、まぁ。何となくですけど。」
「ほぉ、そりゃおもしれぇ。まぁ、今はそんなことじゃねぇ。」
本性をあらわにした月見先生が顎をくいっと、僕と穂香の真後ろ、九十九朔夜理事長と三國先生が僕らに視線を向けていた。それに、改めて気を付けをした僕と穂香。したというか、反射的だった。二人から放たれるプレッシャーは、普段は味わうことのないほどのものだとたからだ。しかし、今後はこれが当たり前なのだと悟った僕は、そして同じく悟ったらしい穂香は落ち着いた雰囲気を醸し出す(かもしだす)。
「……急な呼び掛けに応じていただき、誠に感謝いたしますわ。」
「いえ、そんな……。」
小さく礼をする理事長に、僕はつい首を横に振ってしまう。少し、驚きだ。
「呼び出した理由は、あなた方に言っておかねばならないことがあるからです。」
「言っておかねばならないこと?」
穂香が小さく眉を寄せてオウム返しをした。
「えぇ、あなた方の《絆双刃》申請ですが……GW、つまりゴールデンウィーク明けまで待つことにします。」
「「……はい?」」
僕と穂香の疑問の声が重なる。それに対してかどうかは分からないが、小さく口元を緩めた理事長が話を続ける。
「色々疑問はあるとは思いますが、こちらにも思うところがありますの。まぁ、何れ何故このようなことになったのかは分かりますわ。図らずとも、近いうちに。」
「……それは、どういうことですか。」
怪しげな雰囲気がプンプンするぜぇ!
だから、僕は警戒心ゆえに聞き返した。が。
「言葉通りですわ。何れ、否応なしに気付くことになりますわ、斬龍災禍、冬木穂香。」
フルネームで名前を呼ばれることに違和感を感じる。
「本来なら、話はここで終わりなのですけれど、斬龍災禍、あなたにはまだ話が残っていますわ。あなたは、先にお帰りなさい。」
「僕に?」
「えぇ。」
不満そうにしながらも、理事長には逆らえない。それに、この空間で逆らうことが出来るのは、相当な度胸の持ち主か、よっぽどのバァカやろぉう!!だけなので、穂香は大人しく指示にしたがい、理事長室を後にした。
「さて、単刀直入に言います。斬龍災禍、あなたは《超えし者》ではありません。そして、もう一つの《超えし者》、《醒なる者》……エル・アウェイクでもありません。あなたは、《超越し者》……トランス・センドですわ。」
……新たな《超えし者》の存在に加えて、意味不明な僕の存在を言われた件について。
――――
はいどうも!自分でも物語に大変な出来事を起こしてしまったと思ってる遠山tsunです!
しかし、後悔はしていない!反省もしていない!逆に清々しいね!
と、テンション上げ上げはここまでにして、最初に指摘を。
最後の部分の《超越し者》、トランス・センドについてですが、本来はトランス・センダー・パーソンです。長いな、と思ったのと、ダーで終わらせたくなかったという二つの理由からトランス・センドにしました。気に入らなかったらごめんなさい……。
今回は、何と衝撃の事実!災禍は《超越し者》だった!果たして、何故災禍が《超越し者》なのか?それはまた次回。
では、最後にまた感謝を。
毎度読んでくださってる方、コメントを書いてくださってる方、ありがとうございます!
あ、ちなみに、自分公立高校受かりました!(あっさり)
毎回長い後書きに付き合ってくださりありがとうございました!それでは、また数日後に。
じゃあの!!