Fate/Divine Brush──桜花浄界── 作:一般ガス会社社員
※セイバーに関する部分を修正しました。
第8話 剣と太陽
土蔵の中に、重い沈黙が落ちていた。
つい先ほどまで床に浮かんでいた召喚陣の光は、もう消えている。古い木材の匂いと、冬の夜気だけが残っていた。だが、何もなかったわけではない。そこに何かが現れたという事実だけが、空気の中にまだ強く残っている。
衛宮士郎は、自分の右手を見下ろしていた。
赤い刻印。
令呪。
桜の手に浮かんでいたもの。凛の手にもあったもの。マスターである証。昨日まで、それは士郎にとって他人事だった。桜が巻き込まれ、凛が戦い、士郎はそこにいるだけの半端な立場だった。
けれど、今は違う。
その赤い紋様は、確かに士郎の右手に刻まれている。
そして士郎の前には、青と銀の甲冑をまとった少女が立っていた。
金色の髪。凛とした瞳。小柄な体に似合わないほど強い存在感。手には何も持っていないように見える。だが、士郎には分かった。見えないだけで、そこには剣がある。彼女は何も持っていないのではない。何かを隠しているのだ。
セイバー。
凛がそう呼んだ。
最優のクラス。剣士の英霊が収まる器。
そのセイバーは、士郎の前に立っている。
そして土蔵の入り口には、白い神狼がいた。
ライダー。
雪のような毛並み。額から頬へ走る紅い隈取。背に負った神鏡。尾へ流れる炎のような毛。桜を間桐の地下室から連れ出し、臓硯と蟲を浄化し、ランサーの槍を受け止めた太陽のサーヴァント。
ライダーは桜の前に立っていた。
セイバーは士郎の前に立っている。
二騎のサーヴァントは、互いに主を背に庇うようにして向き合っていた。
見えない剣の気配が、土蔵の空気を鋭くする。
ライダーの背の神鏡が、淡い金色の光を帯びる。
桜は息を呑んでいた。凛は額に手を当てたまま固まっている。アーチャーは黙っているが、その視線はセイバーとライダーの両方を測っていた。
「待て、セイバー」
最初に声を出したのは士郎だった。
自分でも驚くくらい、声が焦っていた。
「ライダーは敵じゃない」
セイバーは、剣の気配を緩めないまま答えた。
「ですが、別のマスターに従うサーヴァントです」
「それは……そうだけど」
士郎は言葉に詰まる。
確かに、凛から聞いた聖杯戦争のルールでは、マスターとサーヴァントは基本的に敵同士だ。七人のマスターが七騎のサーヴァントを使い、聖杯を奪い合う。なら、桜のライダーと士郎のセイバーは、本来なら敵ということになる。
けれど、それはあまりにも違和感があった。
ライダーは桜を守っている。
桜を助けた。
士郎自身も、昨日ライダーに救われたようなものだった。
それを敵と言い切ることはできない。
「ライダーは桜を守ってる。俺たちを襲うつもりはない」
「マスターの判断ですか」
「判断っていうか……」
士郎は土蔵の入り口を見る。
ライダーは唸らない。
吠えもしない。
ただ、桜の前から退かない。
その姿を見て、セイバーの目がわずかに動いた。
「守護を第一とするサーヴァント、ということですか」
セイバーは静かに言った。
「少なくとも、今この場で斬りかかる意思はないようですね」
その言葉とともに、見えない剣の圧が少しだけ弱まる。
ライダーもまた、背の神鏡の光をわずかに落とした。
完全に警戒を解いたわけではない。
けれど、今すぐ戦う空気ではなくなった。
士郎はようやく息を吐いた。
「助かった……」
「助かってないわよ」
凛が低い声で言った。
士郎が振り返ると、凛は本当に頭を抱えていた。
「まず確認するわ」
凛は深呼吸した。
その表情は、怒っているというより、理解が追いつかないものを無理やり整理しようとしている顔だった。
「衛宮くん。あなた、マスターになったわ」
「……らしいな」
「らしいな、じゃない!」
凛の声が土蔵に響いた。
「右手に令呪があるでしょ。セイバーを召喚したでしょ。どう見てもマスターよ。昨日まで一般人寄りの巻き込まれ枠だったのに、どうして一晩で最優のサーヴァントを引いてるのよ!」
「俺に言われても困る」
「私も困ってるのよ!」
凛は大きく息を吐いた。
それから、セイバーを見た。
「あなたはセイバーのサーヴァントで間違いないのね」
「はい」
セイバーは短く答えた。
「セイバーのクラスにて召喚に応じました。彼が私のマスターであるならば、私はその剣として戦います」
「その彼が、聖杯戦争のことをほとんど分かってないのよ」
「そのようですね」
セイバーは士郎を見た。
責めるような視線ではない。だが、状況を正確に把握しようとする厳しさがある。
「マスター。貴方の目的を聞かせてください」
「目的?」
「聖杯を求める理由です。私は貴方の剣として戦うために召喚されました。ならば、貴方が何を望むのかを知る必要があります」
士郎は何も言えなかった。
聖杯を求める理由。
そんなものはない。
聖杯が欲しいわけではない。万能の願望機だと凛は言っていたが、士郎にはまだ実感がなかった。戦いたいわけでもない。誰かを倒してまで叶えたい願いがあるわけでもない。
ただ、目の前で誰かが傷つくのを見ているだけなのが嫌だった。
桜を守りたいと思った。
何もできない自分が嫌だった。
その思いだけが、士郎の中にある。
「俺は」
士郎はゆっくりと言った。
「聖杯が欲しいわけじゃない」
セイバーの瞳が、少しだけ細くなる。
「では、なぜ私を呼んだのです」
「分からない。俺が呼んだのかどうかも、正直分からない。でも……」
士郎は右手の令呪を見た。
赤い刻印は、まだ熱を持っているようだった。
「俺は、守りたいと思った。桜を。ここにいる人たちを。目の前で誰かが傷つくのを、見ているだけなのが嫌だった」
桜が息を呑む。
凛は黙っている。
アーチャーは、何も言わずに士郎を見ていた。
「それだけだ」
士郎はセイバーを見る。
「聖杯のことは、まだ分からない。戦争も分かってない。でも、誰かを守りたいって思ったのは本当だ」
セイバーは黙って士郎を見つめた。
その表情は読みにくい。
呆れているのか、怒っているのか、それとも何か別のものを見ているのか、士郎には分からなかった。
やがて、セイバーは静かに頷いた。
「分かりました」
「分かったのか?」
「貴方の願いの形は、理解しました。ですが、マスター。守るためには戦う必要があります。戦いを避けるだけでは、守れないものもある」
その言葉は、士郎の胸に刺さった。
昨日、ランサーの槍を前に何もできなかったことを思い出す。
「……ああ」
小さく頷く。
セイバーはそれ以上、何も言わなかった。
凛が肩を落とす。
「もう、本当に説明することが多すぎるわ……」
桜はライダーの隣に立っていた。
セイバーの視線が、ライダーへ向かう。
「それで、そちらがライダーですか」
凛が疲れた顔で答えた。
「ええ。たぶんね」
「たぶん?」
「こっちも色々おかしいのよ。クラスはライダーで成立してる。でも、普通のライダーじゃない。神性が高すぎるし、英霊というより神霊に近い。しかも土地を清めるし、筆みたいな何かで世界に干渉するし、鏡や勾玉まで出すし……」
凛は自分で言いながら頭を抱えた。
「説明してる私が一番わけ分からないわ」
セイバーはライダーを見た。
ライダーもセイバーを見返す。
言葉はない。
だが、二騎の間には、先ほどとは違う静けさがあった。
セイバーは剣を持つ騎士として、ライダーが桜を守る存在であることを見抜いたのだろう。ライダーもまた、セイバーが士郎の前に立つ剣であることを理解したようだった。
セイバーはゆっくりと剣の気配を下ろした。
「今この場で、敵対する意思はないと見ます」
ライダーは短く鳴いた。
それが了承なのか、当然だと言っているのかは分からない。だが、背の神鏡の光はさらに弱まった。
桜はほっとしたように息を吐く。
士郎も肩の力を抜いた。
ただし、凛だけはまだ厳しい顔をしていた。
「安心するのは早いわよ。問題は外にもある」
凛は土蔵の外へ出た。
庭の塀際には、黒い紙片の残滓がわずかに残っていた。ライダーの聖域に焼かれたのだろう。灰のようで、灰ではない。魔力が抜けた薄い皮のようなものが、夜風に揺れている。
凛はそれを拾おうとして、すぐに手を止めた。
「触らない方がいいわね」
アーチャーが横から覗き込む。
「使い魔か」
「ええ。断定はできないけど、やり口からしてキャスターの可能性が高いわ」
「キャスター?」
士郎が聞く。
「魔術師のサーヴァントよ。使い魔や陣地、遠隔干渉を得意とする場合が多い。今回のこれは、直接侵入するためというより偵察ね。衛宮邸の守りと中の気配を探ろうとしたんでしょう」
「でも、入っては来なかった」
桜が小さく言う。
凛は頷いた。
「入れなかったのよ」
凛は庭を見回した。
「普通の結界なら、使い魔の一つや二つ、抜け道を探せば入れる場合もある。でも、この庭は違う。ライダーが土地そのものを清めている。あの紙片は、塀を越えようとしただけで焼かれた。だから外から魔力の糸を伸ばして、何かを探ろうとしたんでしょうね」
「それが、土蔵に触れた」
「たぶんね」
凛は苦々しげに士郎を見た。
「結果として、眠っていた召喚陣を刺激した。最悪ではないけど、面倒なことになったのは確か」
「最悪じゃないのか」
「最悪なら、敵が土蔵に侵入して、あなたが殺されて、セイバーも奪われてるわよ」
「……それは確かに最悪だな」
「でしょう」
凛はため息をついた。
セイバーは庭の空気を感じ取るように目を細めた。
「結界ではなく、土地そのものを清めているのですか」
「そう。しかも本人はたぶん、普通にやってるだけ」
凛がライダーを見る。
ライダーは首を傾げた。
士郎には、その仕草が少しだけ得意げに見えた。
「規格外にも程があるわ」
凛はぼやいた。
セイバーはライダーを見たまま、静かに言った。
「これほどの清浄な場を作れるサーヴァントが、聖杯戦争に召喚されているとは……」
「驚くところはそこだけじゃないわよ」
凛は指を折って数え始めた。
「まず、桜がライダーのマスター。しかもライダーは神霊級。次に、衛宮くんが今セイバーを召喚してマスター化。そして私はアーチャーのマスター。つまり、この家には今、三人のマスターと三騎のサーヴァントがいる」
凛はそこで一度、言葉を切った。
「聖杯戦争としては、完全に異常事態よ」
誰も否定できなかった。
土蔵の前で、士郎は改めて周囲を見た。
自分の隣にはセイバー。
桜の前にはライダー。
凛の背後にはアーチャー。
つい数日前まで、士郎にとって聖杯戦争は存在すら知らないものだった。それが今、衛宮邸の中に三騎のサーヴァントを集めている。
現実感がなかった。
それでも、右手の令呪が現実を突きつけてくる。
凛は真面目な顔になった。
「ここから先、バラバラに動くのは危険すぎるわ」
「同盟ってことか?」
士郎が聞くと、凛はすぐには頷かなかった。
「同盟、というほど綺麗なものではないわね。私たちは本来、別々の陣営よ。聖杯戦争のルール上、最後には戦う可能性もある」
桜の顔が少しだけ曇る。
士郎も眉を寄せた。
凛はそれを見て、言葉を続ける。
「でも、今すぐ敵対するのは論外。ランサーにはこの家の場所を知られている。キャスターらしき陣営にも探られた。桜はまだ回復途中。衛宮くんはマスターになったばかり。セイバーも状況把握が必要。だから、少なくとも当面は協力する」
「当面って、何をするんだ」
「まず情報共有。次に衛宮邸の防衛強化。桜の回復を優先。衛宮くんはセイバーのマスターとして最低限の知識を覚える。私は結界と周辺警戒。アーチャーは外周。ライダーは桜の護衛。セイバーは衛宮くんの護衛」
凛は一息で言った。
「異論は?」
士郎は首を横に振った。
「ない」
桜も小さく頷く。
「私も、大丈夫です」
セイバーは士郎を見た。
「マスターがその方針を認めるなら、私も従います」
ライダーは短く鳴いた。
桜が少しだけ笑う。
「ライダーさんも、いいそうです」
凛はアーチャーを見る。
「あなたは?」
「合理的な判断だ。少なくとも、今この場で争うよりは遥かに良い」
「よろしい」
凛は頷いた。
「じゃあ、暫定協力体制。あくまで暫定よ」
士郎はその言葉に少しだけ引っかかった。
暫定。
いつか終わるかもしれない協力。
それでも今は、その形しかないのだろう。
その後、茶の間へ戻って改めて話し合いが行われた。
セイバーは正座に少し戸惑っていたが、すぐに姿勢を整えた。桜はそれを見て、小さく座布団を差し出す。セイバーは一瞬迷った後、丁寧に礼を言って座った。
ライダーは縁側の外に伏せている。
藤ねえには白い大型犬に見えるが、セイバーには当然、本来の姿が見えている。セイバーは時折、ライダーへ視線を向けていた。警戒というより、存在の大きさを確かめているようだった。
凛は湯呑みを置き、ふと重大なことに気づいたように顔を上げた。
「……待って」
「どうした、遠坂」
「セイバー。あなた、霊体化できる?」
その問いに、セイバーは静かに首を横に振った。
「できません」
士郎は思わず聞き返した。
「できない?」
「はい。私は通常の英霊とは召喚状態が異なります。霊体となって姿を消すことは不可能です」
凛の表情が固まった。
「……つまり、明日の朝、藤村先生が来たら普通に見えるってこと?」
「そうなります」
「最優のサーヴァントなのに、そこだけ不便すぎない!?」
凛は頭を抱えた。
士郎は状況を想像して、顔を引きつらせる。
明日の朝、藤ねえが来る。
茶の間に桜がいる。
庭にライダーがいる。
そこまでは、まだいい。桜は体調不良で泊まっているという説明が通る。ライダーも藤ねえには白い大型犬として見えているし、もう「ライダーちゃん」として認識されている。
だが、金髪の甲冑少女は無理だ。
どう説明しても無理がある。
凛はセイバーを上から下まで見た。
「とにかく、まず鎧をどうにかしましょう」
「鎧を?」
セイバーは不思議そうに凛を見る。
「私はマスターを守るために召喚されました。戦闘に備えるなら、この姿が最も適しています」
「一般人の前に甲冑姿で出る方が危険なのよ!」
凛が即座に言った。
「明日の朝、藤村先生が来た時に、金髪の女の子が甲冑を着て士郎の家にいたら、説明できないでしょうが!」
「しかし、敵襲の可能性は」
「敵襲より先に日常が崩壊するわ!」
セイバーは納得していない顔だった。
「では、どうするのです」
「服を着替えるの」
凛は自分の鞄を探り始めた。
桜が少し驚いたように見る。
「遠坂先輩?」
「桜用に持ってきた着替えがあるわ。しばらく衛宮邸にいるなら必要になると思って、最低限だけだけど」
「私の、ですか」
「ええ。……まさかセイバーに使うことになるとは思わなかったけど」
凛は畳んだ服を取り出した。
桜が普段着そうな、落ち着いた色の服だった。華美ではない。けれど、セイバーからすれば甲冑とは正反対のものに見えたのだろう。
セイバーはそれを見て、はっきりと眉を寄せた。
「これは戦う者の服ではありません」
きっぱりと言った。
凛が目を細める。
「今、戦う場面じゃないの。一般人に見られても怪しまれないことが大事なの」
「防御にもならず、動きやすいとも言い難い。敵襲があった場合、即応に支障が出ます」
「甲冑のまま茶の間に座ってる方が支障だらけなのよ」
「私は騎士です。マスターを守るために召喚された以上、戦える姿でいるべきです」
「その格好で外に出たら、戦う前に警察を呼ばれるわよ」
「警察?」
「この時代の治安維持組織よ。つまり、一般人に見られた時点で面倒になるってこと」
セイバーは黙った。
まだ納得していない。
凛はこめかみを押さえる。
「衛宮くん」
「なんだ」
「何か言いなさい」
「何かって……」
「マスターでしょ。セイバーを説得して」
士郎は困ってセイバーを見た。
セイバーは差し出された服を前に、不満そうに眉を寄せている。確かに、それは戦う服には見えない。防御力もないし、鎧とは比べものにならない。セイバーの言い分も分からなくはなかった。
けれど、甲冑姿で藤ねえの前に出るわけにはいかない。
それは確かだ。
士郎は服を見て、セイバーを見た。
そして、思ったことをそのまま口にした。
「いや、すごく似合ってると思うぞ」
セイバーの表情が止まった。
「……似合っている、ですか」
「ああ。たぶん」
「たぶん?」
「いや、絶対似合う」
セイバーは一瞬、言葉を失った。
それから、じわりと顔を赤くする。
凛が横で半眼になった。
「あなた、そういうところだけ妙に真っ直ぐよね」
「何か変なこと言ったか?」
「変じゃないけど、無自覚なのが問題なのよ」
桜は口元を手で隠して、少しだけ笑っていた。
ライダーは縁側の外からこちらを見て、ふん、と鼻を鳴らす。どこか面白がっているようだった。
セイバーは服を見て、士郎を見て、もう一度服を見た。
「マスターが、そう言うのであれば」
小さく息を吐く。
「着替えます」
凛は勝ち誇ったように頷いた。
「よし。じゃあ、こっち。桜、少し手伝って」
「あ、はい」
桜が立ち上がる。
セイバーはまだ少し赤い顔のまま、服を手に取った。
「ですが、敵襲があった場合は即座に鎧へ戻ります」
「それでいいわ。普段は現代人らしくして。お願いだから」
凛は本気で疲れた声だった。
セイバーと桜が隣の部屋へ向かう。
士郎はその背を見送った。
そこで、ふと思う。
セイバーはサーヴァントだ。
戦うために召喚された存在だ。
だが、今は普通の服に着替えようとしている。
それは妙な光景だった。
戦争の中に、日常が混ざっている。
桜がいて、ライダーがいて、セイバーがいる。
この家は、どんどん普通ではなくなっている。
それでも、普通の朝は来る。
藤ねえは来る。
朝食を作らなければならない。
士郎は右手の令呪を見た。
まだ実感は薄い。
だが、もう後戻りはできないのだろう。
桜が太陽を呼び、士郎は剣を呼んだ。
衛宮邸は、聖杯戦争の中心に近づきすぎている。
それでも今夜だけは、少しだけ静かだった。
少なくとも、明日の朝までは。
しばらくして、隣の部屋の襖が開いた。
着替え終えたセイバーが姿を見せる。
甲冑ではない。
凛が持ってきた桜用の服に身を包んだセイバーは、先ほどまでの騎士の印象とは少し違って見えた。鋭さは消えていない。けれど、どこか年相応の少女のようにも見える。
士郎は思わず黙った。
セイバーが不安そうに眉を寄せる。
「マスター。やはり不自然でしょうか」
「いや」
士郎は首を横に振った。
「やっぱり似合ってる」
セイバーの顔がまた赤くなった。
「……そう、ですか」
凛は大きくため息をついた。
「はいはい。これで藤村先生対策は一応どうにかなったわね」
「一応?」
「藤村先生だから、まだ油断できないってこと」
士郎は何も言い返せなかった。
庭のライダーが、短く鳴いた。
どこか面白がっているような声だった。
【CLASS】
ライダー
【真名】
◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎◾︎
【属性】
秩序・善
【性別】
不明
(たまに見せる仕草は雄のようにも見えるが……?)
【身長・体重】
約150cm・約40kg
【マスター】
間桐桜
皆さまの感想をお待ちしております