仮題:守月スズミがアリウス出身だったなら 作:Another2
──その昔神という存在が居て、それが世界を創造したらしい。
・人が死んだ。
──神は、自身の複製として人間を作った……らしい。
・人が死んだ。
もし神が実在するならば、何故こんなにも苦しみが続くのだろうか、救いの手はまだ来ない。
『スズミはさ、世界がどうなってるか知ってる?』
私は、その時なんて答えたのだったか。
『見てこれ‼︎一番奥の建物から持ってきた本‼︎これに書いてる事が本当ならね──』
その子は、変わり者だった、私に親しくしてくれて、私が読めもしない本とかを色々持ってきて、外の世界の事を教えてくれた、別に頼んでいないのに。
『此処を出たらね、たくさん遊んで、知らない物を見に行って、それで誰よりも自由に生きるの‼︎』
そんな日々が続いた頃、あの子はそう言っていた、この薄暗い世界で誰よりも光り輝いて、未来を見ていた、そんな子。
『スズミ、貴女は生きて、誰よりも、自由、に……』
そんな子ですら、死んでしまった、私の目の前で。
──また、この夢だ。
薄暗く、冷たい世界の中で私は目覚める、身体は重いが動かすしかない、そうしなければ『処理待ち』になるから。
今日も訓練を行う、撃つ、叩く、切る、投げる……戦闘に必要な事は全て叩き込まれる、否が応でもだ、反抗するという思考は無い、過去に反抗した者が翌日射撃の的として用意されたからだ。
それでも──それでも、やっぱりあの時よりはマシな環境にはなったとは思う、今日を生きる為に資源を奪い合っていたあの頃に比べたならば今は言われた通りに動いていればとりあえず死にはしない。
──大丈夫、痛いのには慣れている。
情を排せよ、痛みを律せよ、無に徹せよ。
ただそれだけを教えられる日々、私達は兵士──戦闘に於ける最小単位だ。
故に心は不要、ただ目的に徹する、この世界には意味はなく、救いなど存在しないのだから。
ある日上官とも言える梯スバルに連れられ錠前サオリの前に私は居る、どうやら任務の様でその内容がトリニティに潜入するという物、その際手段問わず地理、組織、人材、其れ等の構成を抜き取り此方に流すのが私の役目らしい。
何故私なのか、曰く私が他の人よりも優れた成績を残している事と知恵が付いているから、らしい。
それはあの子が本の内容を読み聞かせてきたりして私も覚えたからであり、あの子が口酸っぱく勉強は継続させて初めて身につくと言っていたから自然とそうなっただけの事、尤もそんな事を今は言及しないが。
単独任務故に支援は不可、私の自己判断で作戦は行って良いとされるが定期的に連絡は寄越す事が最低条件とされた、随分と緩い条件だが恐らくスバルが譲歩させたのだろう、彼女は面倒見が良くて何かと甘い。
何はともあれ初めてアリウスの外へ出るが……トリニティに潜入という事はトリニティの生徒にならなくてはならないが、その辺りのツテはあるのだろうか?
……本当に大丈夫なんだろうかこの作戦。
冷たく暗い
そうして私は晴れて見張りの目のなく、アリウスの外の地を踏み締める事が出来た、これが任務じゃなければ素直に喜べたのだが。
ひとまずは当座の拠点を設営しなくてはならない、好都合な事にこの辺は放置されているのかどこか寂れた感じがする、それでもアリウスの建物より整ってる辺り流石はトリニティと言った所か。
中に屯していた人達を追い払って改めて拠点を確保した私は次なる問題を抱えていた。
それはやはりトリニティ内部に潜り込むにあたりツテがない事だろうが、無いものを強請っていても仕方がない、何もかもを現地調達する事になったのは予想外だったがひとまずは地理関係の情報から纏めていくとしよう、後早めに補給線は確保しておきたい、このままでは満足に銃火器を扱えない、
近頃のトリニティにて、一つの噂話がある。
それは半ば放棄された地区に住み着いていた不良達が一斉に居なくなった事。
あの地区の不良達は独自のコミュニティを築いており無駄に綿密な連絡によって連携が取れており、それでも互いに互いを蹴り落とす仲だがトリニティの生徒は共通の敵として認識しているのか、生徒達が襲われ手持ちの品が奪われた事例が幾つも報告されている。
流石に新入生が入ってくる時期が近付いて来たのもあり、本格的に正義実現委員会を出動させようと
思い当たる節は二つ……というか二人にして自由人達、片方は組織の長……というか正義実現委員会の次期トップなので歯止めは効くだろうがもう一人の方はダメだろう、アレも一応組織の次期トップなのだが
要は物凄く頭痛の種なのだ、
トリニティに出向いてそれなりに経った、ここを拠点としていた人達は他のグループ達との連絡を取り合っていたらしく其々分隊のような形で成り立っていたらしい、その為拠点を奪われた報復か数に物を合わせて向かって来たのだが其々の練度が低く、戦闘連携に関しても互いに足を引っ張り合う様子も見えたので完全な同志という訳でもないらしい。
当然、そんな杜撰な攻撃で私に勝てる筈もなく、あっさりと無力化し撃退、序でに弾薬も頂戴した、そんな事を暫く繰り返していたら遂に向こうが根をあげて完全に此処を捨てたらしく、翌日から襲ってこなくなった、最初からそうしてればよかったのに。
地形図や組織の名前は大凡纏まったがやはり詳細な情報が欲しい、最低でも組織のトップか突出した戦闘力を持つ生徒は抑えておかなくてはならない。
「へぇ……随分と集めた物ね、主要組織は全部抑えられてるじゃない、地形図も文句無しに使える代物、それをこの短期間でやれてる辺り結構優秀なのね」
ッ⁉︎侵入者⁉︎いつの間に居た⁉︎いやそれよりも、現地人に私が情報収集を行なっているのが露呈した‼︎コイツは排除しなくては‼︎情報が広がる前に‼︎
侵入者は真っ白な人だった、目線は持っている資料に行っているがそれ以外は私への警戒を怠っていない、それに立ち姿からこういう事には慣れていると察される、間違いなく強い。
「まぁまぁ、落ち着きなさいな、別に今すぐ通報する訳ではないわ、だからその殺気を抑えてくれる?弱くて臆病者でインテリな私にとってはキツいのよね」
よくそんな事が言えた物だ、“いんてり”という言葉の意味は知らないが本当に弱くて臆病者だというなら一人でこんな所に居ないだろう、第一私に悟られず侵入出来ている時点で気配を断つ術を高練度で会得しているのは立証されている様な物だ、巫山戯た事を吐かすのも大概にして欲しい。
「今トリニティじゃ貴女の事が噂になってるのよ、尤も貴女自身ではなくてここに居た馬鹿達が突然居なくなった……程度だけどね。
人攫いに遭っただとか、消されたとか、誰かに追い返されただとか、まぁそんな憶測ばかりが飛び交ってるのが現状、まだ貴女の事がバレた訳じゃない。
けどそれも時間の問題、
ふむ、どうやらこの人が言うにはあの連中はトリニティ上層部のちょっとした悩みの種であったらしい、それがいきなり全滅と来たのだから調査が入るのは当然か……
「そこでなんだけど貴女、私の所に来ない?住む場所とそうね……身分を証明する物位は用意できる」
怪しい。
「怪しむのも当然かしらね、でも私としてもこれ程情報を纏められる人材は惜しいのよ。
少なくとも
ふむ……拠点と身分証が得られるのはデカい、だが私の正体を明かす訳にもいかない、さて、どうする。
よし、ここは敢えて──。
これで行こう、この人はかなり頭が回る様子、これで伝わると良いのだが。
「何処の者でもない……?ゲヘナでもミレニアムでもない……アビドスの流れ者?いやアビドスは遠過ぎるし何より特有の砂の匂いもしない……となると自治区記録から消された場所……まさか、いや本当に?」
何やら小さくぶつぶつ言っている、今の内に荷物を纏めなくては、なんにせよ拠点を移さなくてはならないのだし、と言うかずっとこの人ウンウン呻いてる、いやぁとかマジでとか、言葉が空に散っていく。
「あー……うん、取り敢えず、貴女……一応
一先ずは私の自宅に来なさい、そこなら監視も盗聴も無いから、後
どうやら伝えたい事は伝わったらしい、それで何やら彼女の家に連れて行かれるとの事だが、私は彼女の名前を何も知らない、尤もそれは向こうもそうだが。
「改めて、私は白百合ランカ、一部の人間は
──エーデルワイズ……確か高貴な白を意味する言葉ですね。
「……驚いた、あの場所に居て言葉の意味を知れるなんて、あぁごめんね?貶している訳じゃないのよ?」
──お気になさらず、学習機会がないのは事実ですので、私の場合はその、教えてくれた人がいただけなので、忘れない様にしてるだけです。
「成程ね、それは大事になさい、それで?貴方の名前は?」
──守月スズミ、と、そう呼ばれていました。
私は簡潔にそう答えた、これが彼女……白百合ランカとの初邂逅であり切っても切れないトリニティとの縁の始まりだった。
「かなり散らかってるけれど、文句は言わないでね」
……不安だ。
本作は原作より一年と3〜4ヶ月近く前からスタート、従ってワイズさん筆頭三馬鹿は2年生でツルギ達は一年生です。
イチカ達に至ってはまだ入学すらしてません。
・守月スズミ(アリウス)
本作でも主人公、スズミの心境で人を呼び捨てなのは意図的、強さ的には旧作よりはまだ弱く、原作スズミとは比較にならない程の差がある(主に精神面)
地の文にもある様に大分神アンチのでシスターフッドとは絶対相容れない、それ以外のトリニティ生への感情は普通寄りの無
開幕で死んだ子の言葉が呪いになっている。
・白百合ランカ(別名義:エーデルワイズ)
色々な因果関係が捻じ曲がった結果最初に出会う生徒になった、この頃から既に自由人で校則なぞ知った物かと色々やってる、功罪で功績が勝り過ぎてるので処するに処さない上層部の悩みの種。
ゲヘナかアビドス生なら突き返したがよりにもよってな所属だったのでやむを得ず引き取る事に、後に彼女はこの時ほど頭を抱えた出来事も無いと供述している。
・開幕で死んだ子(死亡済み)
スズミの幼少期に共に居た極めて善良な子、よくポルタパシスに潜入しては本を掻っ払ってそれを読み聞かせるとか言うやべー経歴の持ち主、その知識は全てスズミが吸収した事によりアリウススズミの地頭が上がった。
実はオリ主の素質があった子、しかし運命力が足りなかった、運命力が足りないので名前も付けてないし今後出てくる事も無い。
アリウスの環境下で誰よりも自由に生きた上で後に託して死んだ、最後の言葉はスズミにとって呪いになった。