【私】の為の恋物語   作:タク-F

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なんだか自分で書いておいて本作のリーフがやべぇ奴にしかなりませんね。


旅の始まり

 ポケモン図鑑を貰う約束の日のマサラタウンの朝は静かだった。鳥ポケモンの鳴き声がして窓から差し込む日差しが心地よい。そんな日には快眠出来るのも理解出来る。でも今日だけは……

 

「サトシがよく寝坊する曜日だもんね。ツイてないといえばその通りなんだけど」

 

 だから私はサトシを起こしに行く。

 

「サトシ────!! 起きなさーい!」

 

 そして私の響き渡る絶叫が響き渡る。

 

 ──-

 

 

 

ドンドンドンドン!! 

 

 二階の扉を激しく揺らす。でも部屋の中では、布団に埋もれたサトシが幸せそうに眠っていた。

 

「むにゃ……ポケモンマスター……」

 

「寝言言ってる場合じゃないでしょうが!!」

 

【ガチャッ】と扉を開く。仁王立ちする私。

 

 時計を見て、額に青筋が浮かぶ。

 

「8時45分! 完全に寝坊じゃない!」

 

 旅立ちの日にオーキド研究所でポケモンを受け取る予定時刻はとっくに過ぎていた。

 

「……」

 

 故に私は静かに布団を掴む。そして……()()()()()()()()()()()()()()()()。次いでサトシをベットから蹴り落とす

 

「ぎゃああああ!?」

 

 床に転がるサトシがようやく目を覚ます。

 

「リ、リーフ!?」

 

「起きた? 寝坊助さん?」

 

 笑顔だった。自分でも想像のつく程に怖いくらいの満面の笑顔だった。

 

「何時だと思ってるの?」

 

「え?」

 

 サトシは時計を見て固まる。数秒後現在の状況を理解する。

 

「うわああああああああ!!」

 

 マサラタウン中に響く悲鳴だった。

 

 ──-

 

 15分。研究所へ全力疾走する私達。

 

(予想通り)

 

 そう心の中で私は呟く。こうなることは昨夜の時点で予想済みだった。旅立ち前日ともなれば緊張や興奮で眠れなかったのは想像に難くない。夜更かしになるのも必然的だ。

 

「寝坊するとは思ったよ? 」

 

 でも今日だけは100パーセント起きると思っていた。だから7時から監視していた。

 

「まっ……自宅が研究所のシゲルには負けるけど私だって待ちきれないからね……」

 

 だから早くに到着してサトシよりも先にポケモンを受け取った。そして窓の外からずっと……ずうぅっとサトシを見守っていたし本人は知らないし知らなくていいことだ。

 

 ──-

 

「待ってくれよリーフ!」

 

「待ってるのはオーキド博士よ!」

 

「うぐっ!」

 

 正論だったがサトシには効いたようなのでこのまま急ぐ。

 

 ──-

 

 研究所に到着したサトシは扉を勢いよく開けた。

 

「博士ー!!」

 

 室内にはオーキド博士。だがそこには空になったモンスターボール置き場しか無かった。それを見てサトシは凍り付いた。

 

「あ……」

 

 嫌な予感がしたのだろう。

 

「全部……」

 

 オーキド博士が苦笑する。

 

「なくなっちゃったあぁぁ!!」

 

 サトシの絶叫が響いた。

 

 ──-

 

 その様子を見た私は横で小さく息を吐く。

 

(知ってた)

 

 昨日確認済みだった。1番最初にシゲルシゲルが来て1体受け取った。次に私が到着して同じくポケモンを受け取った。少し遅れて他の新人トレーナーが最後の1体を受け取った。当然だが受け取り順まで全員分把握済み。

 

「でもそれがサトシらしい」

 

 だから驚かないがサトシだけが驚いている。ある意味ではいつも通りの日常だから。

 

 ──-

 

「じゃあ私はこれで」

 

 準備と目的を終えた私は先に出ることにした。

 

「手間をかけたなリーフ。準備は終わったか?」

 

 研究所の奥からモンスターボールが運ばれてくる。

 

「君の相棒だ。大切にするんじゃぞ?」

 

「ありがとうございます博士。行って来ます」

 

 ボールが開き白い光が出てくる。そして現れたのは【フシギダネ】だ。

 

「ダネー!」

 

 ポケモンを……フシギダネを受け取った私の顔が自然と緩む。しゃがみ込み視線を合わせる。

 

「今日からよろしくね」

 

 フシギダネが嬉しそうに鳴いてくれた。その様子を見ていたサトシが呟いていた。

 

「いいなあ……」

 

 私に先を越されたサトシが肩を落とす。その姿を見て私は少しだけ胸が痛んだ。

 

「それじゃあ私は先に行ってるね?」

 

 本当はサトシと一緒に旅立ちたかった。最初のポケモンだってサトシと一緒に始めたかった。

 

「でもここから先はサトシの世界。その一線だけは絶対に私が越えたら駄目だから」

 

 ずっと昔からこうなると思っていた。そしてサトシはサトシだ。こういうところも含めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──-

 

 

 

 

 

 

 

 

 マサラタウンを出てから数時間。

 

「良い調子で進めてるね♪」

 

 舗装された道が途切れ、自然の匂いが濃くなっていく。既に1番道路も抜け終えそうだ。トキワシティへと続く道が……その先にはトキワの森が広がっている。

 

 

 

 ──-

 

 

 

 私はゆっくりと歩いていた。

 

 肩には小さなバッグを掛け腰には貰ったモンスターボールがある。憧れたポケモントレーナーになれた嬉しさが溢れてくる。そして足元にはフシギダネがいる。

 

「ダネー♪」

 

 ご機嫌な様子で歩いている。

 

「楽しそうね」

 

 私が微笑むとフシギダネも嬉しそうに鳴いてくれる。今はまだ旅立ったばかり。これから先は私知らない景色が広がっていくのだろう。

 

「知らないポケモン……うん! 胸が高鳴る」

 

 それが旅に出て最初の実感だった。

 

 

 

 ──-

 

 

 

 本来ならサトシも隣にいるはずだった? そんな考えが一瞬だけ頭をよぎったがすぐに消した。まだ日は高い。今頃サトシはようやく研究所でピカチュウと格闘している頃だろう。

 

「なんでだろう? 想像するだけで笑える」

 

 ──-

 

「たぶん今頃……」

 

 私は図鑑を取り出して画面を開く。タウンマップのアプリを起動すればそこには地図機能が表示されている。サトシを起こした時服に仕込んだ発信機も無事に作動している。

 

「この為に仕込んで良かった♪」

 

 当然ながらサトシの位置も確認済みだった。数時間まではオーキド研究所にいた筈だ。その後はマサラタウンで旅支度を整え飛び出したのだろう。

 

「現在は……うん! やっぱり1番道路に向かって来てるね!」

 

 予想通りのほぼ完璧なタイミングだった。

 

「追いつくの早いわね」

 

 その様子を想像すると思わず笑みが溢れちゃう。

 

 

 

 ──-

 

 

 

 普通のトレーナーなら気にしないことだろう。しかし私には大切なことだ。

 

【サトシが今どこにいるか?】【何をしているか?】【元気か?】【怪我をしていないか?】

 

 それが何よりも心配で気になることだ。今まで続けてきただけに今ではそれが自然と気になる。

 

「でもそれは呼吸をするように当たり前なことだもの」

 

 

 

 ──-

 

 

 

「ダネ?」

 

 フシギダネが首を傾げる。

 

「なんでもないよ。それじゃあ陽が落ちない内にトキワに急ごう!」

 

 スマホを閉じて旅を再開する……その時だった。

 

ガサガサッ

 

 草むらが揺れる。そうだ……ポケモンが出てくる! 飛び出してきたのは──

 

「コラッタ!」

 

 野生のコラッタだ! 。

 

「フシギダネ! バトル準備だよ!」

 

「ダネ!」

 

 旅立って最初のバトルに私は少しだけ緊張した。だが不思議と恐怖はない。隣にいるフシギダネを信じているから。

 

「【たいあたり】!」

 

「ダーネ!」

 

「コラッ……」

 

 フシギダネの先制攻撃がコラッタを弾く。でもまだバトルは始まったばかり。

 

「ラッタ!」

 

「ダッ……」

 

 反撃の【たいあたり】がフシギダネを弾く。飛ばされ方的にはコラッタの方がダメージは大きい……でも! 

 

「【なきごえ】!」

 

「ダネ! ダネダネ!」

 

「ッ……!」

 

 フシギダネの【なきごえ】にコラッタが後ずさる。たたみかける! 

 

「そのまま【たいあたり】!」

 

「ダネ!」

 

 先程よりもきれいな【たいあたり】がコラッタを弾く。そして木にぶつかったコラッタは目を回していた。

 

「ラタ〜〜」

 

 勝負は決した。コラッタを捕まえるなら……

 

「行け! モンスターボール!」

 

 たったボールがコラッタを吸い込む。1回……2回……3回と揺れてその動きを止めた。

 

「コラッタをゲットだね!」

 

「ダネ!」

 

 フシギダネは胸を張っていた。

 

「よくやったわ」

 

 頭を撫でる。嬉しそうな鳴き声を聞いて実感する。

 

「よろしくねコラッタ」

 

 私も自然と笑顔になる。

 

 ──-

 

 その頃数キロ後方でサトシはピカチュウに電撃を浴びせられていたけどもちろん私は識っている。今はまだいがみ合う関係だけど必ず唯一無二の相棒になるために必要不可欠な過程だということを。

 

 

「今夜は荒れそう……かな」

 

 私は小さくそう呟いた。

 

 

 

 ──-

 

 

 

 夕方には街に到着した。街の先には目の前に巨大な木々が集まる場所見えてくる。

 

 あれが【トキワの森】。カントーでも有名な大森林。今まで何度も来てる場所なのに不気味な雰囲気さえ感じる気がする。あの森には多くの虫ポケモンが生息する。初心者トレーナーが最初に越える難所だ。

 

「今日はもう休もうね?」

 

 見えた森の入り口で風が吹いて葉が揺れている。森の奥は当然薄暗いが何よりも嵐が怖い。

 

「ここからが本番だよ……乗り越えてねサトシ……」

 

 私は帽子を押さえた。まずはポケモンセンターで身体を休め準備をしよう。

 

 

 

 ──-

 

 

 

 

 宿泊する部屋で私はまた図鑑を開いた。サトシ位置を確認すると道中のポケモンセンターには辿り着けていないのだろう。きっと今もピカチュウとオニスズメに襲われている。それでもサトシはきっと挫けない。

 

「そうだ……日記をつけないと」

 

 

 

【€月∌日 嵐

 

 

 サトシの……私達の旅が始まった。相変わらず初日から寝坊するし遅刻する。欲しいポケモンにも巡り合えず博士も手を焼く問題ピカチュウと旅を始めた。未来の相棒は未だ反抗的で信頼感を感じない。何ならボールにすら入ってくれない。そんな中でオニスズメに襲われて相棒共々早速の大ピンチだ。同じ旅立ちのライバルには先を越され身も心もボロボロだ。だけどサトシはきっとこう言うのだろう……

 

「コレが俺達の冒険だ。ポケモンマスターに必ずなってやる!」

 

 と。頑張れサトシ……私はどんな時でもサトシの絶対の理解者だからね? 】

 

 

 

 私は【サトシ日記 旅の始まり】を閉じて付箋を付ける。ふふっ……

 

「明日はどんな日記を書けるかな……?」

 

 サトシはまだ後方。まだ1番道路を抜けてはいない。だけど必ず追いついて来るだろう。バトルしてわかったがフシギダネも気合十分でこれからが楽しみだ。日記が終わると、ようやく満足したようにノートを閉じる。今夜は良い夢が見られそうだ

 

 

「心配はしてないからね?」

 

 その背中は堂々としていた。だが胸の奥では、旅立ったばかりの幼馴染の存在が常に意識の片隅にある。知らない土地へ進みながらも私の地図の中心にはいつだってサトシがいるんだから。

 

 

 

 

 

 




本作では主要な道路は【○○道路】【○○水道】とゲーム版の設定を一部活用しながら展開していきたいと思います。アニメの道中にある【○○タウン】【○○シティ】に該当するイベントはその場所を、明言が無ければ【○○道路】【○○水道】の中の出来事として解釈頂ければ幸いです。

本作ではポケモン図鑑にタウンマップの機能が内蔵されています。

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