風の千雨   作:掃き捨て芥

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 書いていて自分でも、何の山もない話だなぁ……と思ってしまいました。
 ……精進します。


第10話 修学旅行3日目午後

 シネマ村から脱出した私・桜咲・近衛は困り果てていた。というのも桜咲は近衛を抱えて、私は風を使って走ってきたのだが、朝倉・綾瀬・宮崎・早乙女に追いつかれてしまったのだ。

 

「こんなコトもあろうかと桜咲さんの荷物にGPS携帯放り込んどいたから。位置は

バッチリ♡」

 

 てなわけだ。朝倉は一度魔法を見ているがガキ教師が記憶を消したので魔法について認識して

いないのだ。魔法を認識していないのは私にとって嬉しい事だが、それは危険性を認識出来ない事と同じなのだ。

 

「お帰りなさいませ。このかお嬢様ーーッ」

 

 そして私達は既に救出されたガキ教師達と合流すべく、関西呪術協会の本山に来ていた。

 

「うっひゃーコレみんなこのかのお屋敷の人? 家広――いっ」

 

「いいんちょ並みのお嬢様だったんだねー」

 

 関西呪術協会の総本山はそのまま近衛の実家でもある。今実家に近づくと近衛が危険だと思われていたのだが、シネマ村ではそれが裏目に出てしまった。だからいっそのこと実家に飛び込んで

しまおうという訳だ。

 

「なんかスゴイ歓迎だねーーこりゃ。うひゃひゃ♡」

 

「これはどーゆーコトですか?」

 

「は はい 実は僕、修学旅行とは別に秘密の任務があってここへ……」

 

 おいガキ、それは言っちゃ駄目な裏の事情だろーが。何さらっと言ってんだよアホかお前。

 

「お待たせしました。ようこそ明日菜君。このかのクラスメイトの皆さん。そして担任のネギ

先生」

 

「お父様♡ 久しぶりやー」

 

 近衛が関西呪術協会の長――自分の父親に抱きつく。久しぶりに会ったんだろうから

甘えたいのも道理か。

 

「あ あの長さんこれを……東の長麻帆良学園学園長近衛近右衛門から、西の長への親書です

お受け取り下さい」

 

 だから、一般人がいる前でやるなっつーのにこのガキ。そういうのは後でコッソリ渡せよ!

 

「……いいでしょう。東に長の意を汲み私達も東西の仲違いの解消に尽力するとお伝え下さい。

任務御苦労!! ネギ・スプリングフィールド君!!」

 

 だからさぁ……西の長までこんな感じかよ。ちょっとは機密とかに考えが及ばないのか? 朝倉達は「何かわかんないけどおめでとー」等と言っているが、彼女らの前でやっちゃダメだろ。

 

「今から山を降りると 日が暮れてしまいます。君達も今日は泊まっていくといいでしょう。歓迎の宴を御用意致しますよ」

 

 歓迎……ね。任務が終わって、近衛の安全も確保されたなら私は旅館に帰って眠りたいんだけどな。さすがに一人だけ固辞するのも空気読めてないようで気まずい、か。

 

「あっ……でも僕達修学旅行中だから帰らないと……」

 

「それは大丈夫です。私が身代わりをたてておきましょう」

 

 身代わり? 妙な言い方だな? 普通は連絡を入れるだけって言わねーか?

 

 そしてどんちゃん騒ぎの宴が始まった。私はこういう席苦手だな……早く終わらねーかな。

 

「刹那君」

 

「こ これは長。私のような者にお声を……」

 

 長が桜咲に話しかけてくる。

 

「ハハ……そうかしこまらないで下さい。昔からそうですねー君は。……この2年間このかの護衛をありがとうございます。私の個人的な頼みに応え、よくがんばってくれました。苦労をかけましたね」

 

 桜咲が護衛を頑張っていたねぇ。それはどうかな。学生寮の部屋も別々だったし、つきっきりの護衛という訳じゃなかったからなぁ。そんなに護衛していると思わないのは私だけか?

 

「ハッ……いえ。お嬢様の護衛は元より私の望みなれば……もったいないお言葉です。

し しかし申し訳ありません。私は結局 今日お嬢様に……」

 

 守れなかった、か。それを言うなら私もだ。いや守ろうとしたら桜咲が先走ったんだけどさ。

 

「話は聞きました。このかが力を使ったそうですね」

 

「ハイ。重傷のハズの私の傷を完全に治癒する程のお力です」

 

「……それで刹那君が大事に至らなかったのならむしろ幸いでした。このかの力の発言のきっかけは君との仮契約(パクティオ―)かな? ネギ君」

 

「ブフォッ」

 

 仮契約!? 何してくれてやがんだあのガキ!? 近衛は裏を知らない一般人だっつーのに。

 

「あう えっ!? 何で知って……そ そ そ そうなんですか!? あの僕っ……

す す すいませっ」

 

「ハハハいいのですよネギ君」

 

 いいんだ。……まあ私としては思う所あるが、本人の親がそれでいいと言ってるん

だったら納得するしかねーな。

 

「このかには普通の女の子として生活してもらいたいと思い 秘密にしてきましたが……いずれにせよ、こうなる日は来たのかもしれません。刹那君 君の口からそれとなくこのかに伝えてあげてもらえますか」

 

「長……」

 

 近衛はこっち側に来る事になるのか。……それは本人の為になるのだろうか?

私は一人そんな事を考えていた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 私と神楽坂、桜咲の三人は風呂に入っていた。

 

「あの……神楽坂さん実は……」

 

「え。あーあの……何か……明日菜でいいよ 私。言いにくいでしょ私の名字」

 

「あ……そうですね。じゃあ私も刹那で……くす」

 

 何だよ。何こっち見てんだよ。

 

「分かった分かった。私も千雨でいいよ。んで明日菜に刹那って呼べばいいんだな?」

 

 な、何か恥ずかしいな。

 

「あの……明日菜さん。千雨さん。色々と話したい事があるので……あとでこのかお嬢様と一緒にこのお風呂場に来て頂けますか?」

 

「え……? うん。いいけど……」

 

「私も構わねーけど……」

 

 一体何だ? 改まって。

 

「ハハハハ。しかし10歳で先生とは やはりスゴイ」

 

「いえ そんな」

 

(あの声はネギとこのかのお父さん)

 

(なっ……あわわどうしましょう明日菜さん千雨さん)

 

(どうしろったって……こうするか)

 

 私はいつものように風を使って私達三人の姿を隠した。その上で岩場の影に隠れる。

入って来た二人にはどうやら気づかれていないようだ。

 

「この度はウチの者達が迷惑をかけてしまい申し訳ありません。昔から東を快く思わない人はいたのですが……。今回は実際に動いた者が少人数で良かった。後の事は私達に任せて下さい。生憎

どこも人手不足で腕の立つ者は仕事で西日本全域に出払っているんですが……明日の昼には各地

から腕利きの部下達が戻りますので奴らをひっ捕まえますよ」

 

「は……はい! それで……彼らの目的は何だったんですか?」

 

「彼ら……天ヶ崎 千草のコトですか。彼女には色々と西洋魔術師に対する恨みのようなものがあって……。いや 困ったものです……」

 

 西洋魔術師に対する恨み……か。私はかつて私の両親を殺した、麻帆良に侵入した奴の事を思い出していた。あの男も西洋魔術師に恨みのある西の人間という事だったな。

 

「何故 このかさんを狙うんですか」

 

「切り札が欲しいのでしょう」

 

「切り札?」

 

「ええ ネギ君も薄々お気づきとは思いますが……。やんごとなき血脈を代々受け継ぐあのこには凄まじい呪力……魔力を操る力が眠っています。その力は君のお父さん。サウザンドマスターをも凌ぐ程です。つまり このかはとてつもない力を持った魔法使いなんですよ」

 

 知っていた。学園長から聞かされていたからな。近衛が潜在的に凄まじい力を

秘めているってのは。

 

「その力を上手く利用すれば西を乗っ取るどころか東を討つことも容易いと考えたの

でしょう。ですからこのかを守る為に安全な麻帆良学園に住まわせ、このか自身にも

それを秘密にして来たのですが……」

 

 近衛自身にも秘密に……か。それにしちゃー魔法使いであるあのガキと同室にしたのはどういう事なんだ? 学園長は近衛が魔法を知っても構わないと思っていたのか?

 

 その後、話はガキ教師の父親、サウザンドマスターの事に移っていった。の、のぼせるから早く出ていって欲しいんだけどな。

 

 




 変な所で切りましたが、次の話との長さなどを考えると、ここで切るのがベターだったのでそうしました。 


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