風の千雨   作:掃き捨て芥

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 クライマックスです。ですが私の小説に、盛り上がりなんてありません。


第16話 誰もが過去を背負ってる

「これで……良かったんでしょうか? (チャオ)さんが驚くくらいの作戦じゃなければ勝てないと思うのですが……」

 

 ネギ先生が弱気に呟く。私はそれを宥めるように言葉をかける。

 

「でも、現状で今以上の作戦は思いつかなかったんじゃしょうがないでしょう?」

 

「それは……そうです。ですけど僕、超さんが本当に間違っているのかまだ……」

 

 どうやらネギ先生はまだ超に対して迷っていたらしい。

 

「……あ!? 何だよ先生。まだ悩んでたのかよ!? 力には力を!! 言ってもダメなバカは

ぶん殴ってでもわからせる。世の真理だぜ!! 何が悪い!? リーダーがウジウジ悩んでんじゃねーぞ。男なら腹決めてドーンとしてろってんだ!!」

 

 私はもう先生に協力するって決めてるんだ。そのリーダーがうじうじ悩んでいては始まらない。

 

「あうう。で でも……せめてもう一度話し合いを――……」

 

「アホッ」

 

 そこに綾瀬が口を挟んできた。

 

「……主義主張相容れぬ者が『力』を行使してきた時、既にそこに『話し合い』の場などなく、『力』に対するは同じ『力の行使』か『力を後ろ盾とした交渉(・・)』が基本……確かに世の真理です。でも悩む事が悪いとは思わないです。自分が正しいと思ってしまえばそこで全ての回路は閉じて

しまうですから。少なくとも貴方は間違っていないと思うですよ。ネギ先生」

 

 そうだ。私は両親を魔法使いに殺された。その過去があったから私は人一倍魔法使いが一般人に魔法を使う事にこだわっている。一般人が犠牲になったから。その過去があるから今の私になった。過去が、自分を作った。その私が、超を止める。確かに救われる人間も出るのかも知れない。だが超のやり方は余りに性急すぎる。やつは混乱などは自分が収めると言っていたが、私は無理だと思う。一般人に迷惑がかからない訳が無いのだ。それに奴の計画だと強制認識というちょっと

したものではあるが、魔法使いが一般人に魔法を使う事になる。それは私にとって許せない。

 だから、奴を止める。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 ことここに至ってもまだ「話し合い」か。確かにあんたは先生だよ。ネギ先生。だが私は話し合いなんてするつもりはない。無駄に話をするつもりなんてなく、一発で勝負を決めるつもりだ。

 そうこうしてたら麻帆良湖湖岸に大量のロボット兵器群が出現した。魔法先生達は対応に追われている。私は中空に風を使って浮かびながら周囲を把握していた。

 魔法先生達、学園長に私達の持っている情報は全て渡してある。未来から戻って来たなどと荒唐無稽な事ではあるが、学園長は何とか信じて対応してくれた。

 

 すると全高30m以上はある巨大ロボが出現した。こいつが現れたという事は、学園

結界が破られたって事だな。超の奴計画を早めたのか。巨大ロボに認識阻害がかかった

魔法先生達が立ち向かう。巨大ロボはある程度のダメージを与えなければ封印処理

出来ないらしい。その作業は主に高畑先生がやってくれている。さすが高畑先生だ。

 その時、高畑先生の前の空間に衝撃が走った。風で察知した所何か(・・)が飛んできて高畑先生が拳圧でそれを防いだらしい。

 

「どうした高畑君!?」

 

「狙撃です! 気をつけて」

 

「何!? 例の特殊弾とか言うアレか! 全員 魔法障壁全力展開!! 障壁貫通弾の

可能性がある打ち合わせどおり対抗策忘れずに。封印処理続行急げ!!」

 

 今の狙撃はシビアだった。高畑先生だから防げたようなもんだ。そう言ってたらまた

狙撃だ。巨大ロボの処理班の人が狙われた! 処理班の人の背後で弾が止まっている。

対物魔法障壁か。

 

「処理班大丈夫か!?」

 

「大丈夫です障壁で……!?」

 

 言葉の途中で止まっていた弾が広がり、撃たれた人間を覆い尽くした。黒い闇色のそれに

捕らわれた人間は、直径2mほどの黒い球が掌サイズに縮みキュンッという音と共に空間に消えて

しまった。どうやら狙撃手の弾は魔法障壁ごと飲み込む武器みたいだ。みたことのないその武器は、魔法先生や生徒を連続で撃ち抜いていく。狙撃手は……龍宮か!

 

「今のは多分強制転移魔法だ!! 撃たれた皆は無事だよ!! しかし 弾丸にそんな力を込めても転送距離はせいぜい3kmのハズ。そんなことをして 何の意味が……」

 

「その通りネ。戦場ならともかく今 この状況で3km先に転送した所で戦略的にさほど意味は

ない。しかしそれが3km先ではなく……3時間先(・・・・)だったら……どうカナ?」

 

 超! 現れやがったな!

 

(チャオ) 鈴音(リンシェン)!!」

 

「超さん!!」

 

 その場に居た桜咲と神楽坂も臨戦態勢を取る。

 

「ちなみに魔法ではなく科学だがネ」

 

「3時間先……だって?」

 

 距離じゃなく時間を飛ばす弾丸だってのか!

 

「よくぞ私の罠を抜けて戻てきた。明日菜サン刹那サン」

 

「ぬけぬけと……貴様の方から現れてくれるとはな」

 

 桜咲が刀に手をかける。

 

「おっと刹那サン止めた方がいいヨ。昨夜の二の舞ネ。……ネギ坊主はどこカ?」

 

「ネギはいないわこのバカ鈴音!! あんたは今から私達がブッ倒してやるわよ!!」

 

「フフ……元気がいいネ明日菜サン。いいだろう。だが今の私にわずかでも対抗できる

可能性があるのはネギ坊主だけと思うガネ」

 

 バシンッと激しい音と共に超の拳が神楽坂の腹を撃ち抜いた。私の風でも高畑先生でも知覚できない瞬間移動……間違いない。やはり奴はタイムマシンを短時間単位で使用してやがる。

 

「元気なだけではダメなようネ」

 

「貴様ァッ」

 

 

 

「ネ? 昨夜の二の舞ネ」

 

 また瞬間移動した超は桜咲の背後に回っている。桜咲がやられる!

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「さすが高畑先生ネ。圧倒的な能力差がありながらここまで粘るとは……これが戦闘経験の

違い……いや 踏んできた場数の違いということカナ?」

 

「例え君が 今日一人の犠牲を出さなくとも一度世界に魔法の存在が知れれば、相応の

混乱が世界を覆う事となる。それは分かっているのか? 超君」

 

 神楽坂と桜咲が倒れた場で、高畑先生が言葉で説得を試みる。

 

「もちろん承知ネ。だが この方法が最も混乱とリスクが少ない。それは高畑先生も分かっている

ハズ。そして今後十数年の混乱に伴って それでも起こりうる政治的軍事的に致命的(フェイタル)な不測の事態については私が監視し調整する。その為の技術と財力は用意した」

 

 技術と財力で一般人の混乱を収めようってか。私はそれでも全てをカバーするのは無理だと

思うな。犠牲は必ず出ると思う。

 

「なるほど……しかしそれは危険なやり方であり考えだ。そういった考えを抱いた者に

成功者はいない。ましてや 世界の管理などと……」

 

「世界が安定を得るまでの僅かの期間ヨ。安心してほしい。私はうまくやる(・・・・・)。それに貴方のような仕事をしている人間には分かるハズ。この世界の不正と歪みと不均衡を正すには、私のようなやり方しかないと。どうカナ高畑先生。私の仲間にならないカ?」

 

 超がまた瞬間移動……いやタイムトリップか? で背後に回られた高畑先生は超の弾丸を

食らってしまった。

 

「隙アリ。僅かに動揺したネ」

 

 黒い球体が発生し高畑先生を飲み込む。このままじゃ……。

 

「ではまた高畑先生。3時間後私の計画の成功後の世界で」

 

 ……随分と調子に乗ってるようじゃねーか超。だがな、あんたの全てを観察し続けた私がまだ

ここにいるぜ。私がいる限りてめーの思い通りにはさせねー。 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「も もう撃ってこないみたいよ!? 今のウチに行った方がいいんじゃない!?」

 

「いや ダメだ。動けば撃たれる。今は身を潜めるしかないでござる」

 

 (クー)、長瀬、早乙女、宮崎、綾瀬らの仲間達に、ネギ先生が合流した。どうやらネギ先生は魔力の枯渇から回復できたらしいな。

 

「楓さん!! 何か打つ手はないのですか!?」

 

 綾瀬が声を荒げる。

 

「周囲1kmの気配を探ったが狙撃手らしき者はいない。ただの人間のスナイパーならば打つ手もあるでござるが……相手があの真名ならば生半可な目くらましは通用しない。今動けば確実に全員消されるでござる」

 

(長瀬、みんな。任せろ。龍宮の大まかな位置は既に特定してある)

 

 私は風を使ってみんなの元に声を届けた。

 

(敵を欺く為にも、私の声なんて聞こえてないってフリをしてくれ。龍宮の位置は左手

前方に見える高い塔だ。そこに奴はいる)

 

「……このまま隠れてれば大丈夫なんじゃ……」

 

「確かにやられはしないかもですがそれではダメです。敵の目的は我々の足止め。このまま

動けずにいれば……」

 

「そのとおり君達の負けだ綾瀬」

 

 ネギ先生達が潜んでいる電車に電波を乗っ取って通信してきた。舐めてやがるな。

 

「た……龍宮隊長!! 何故超さんに協力を!? やっぱりお金……し……仕事だから

ですか?」

 

「……ああそうだ。……いや違うな。それだけではない。君に対して嘘を言うのはやめにしよう。私は超の志に共感し、彼女の計画に賛同し協力している。君にならわかってもらえると思うが、私は私の信念に従い行動している。君に対して恥じる事は一つとしてない。フフ……もっとも報酬もしっかり頂いているがな。君達との根比べを楽しみたい所だが、生憎 他にも仕事がある。悪いが君達にはここで消えてもらおう。じゃあ……元気でなネギ先生」

 

「イカンネギ坊主!! 電車を出ろ」

 

龍宮の銃砲から発射された弾丸が電車を包んだ。間に合わなかったか……?

 

「着弾した瞬間周囲の空間ごと3時間後へと送り飛ばす強制時間跳躍弾(B・C・T・L)。超 鈴音曰く『最強の

銃弾』だそうだ。(もっと)も22年に一度、数時間しか使えない期間限定品だがな。魔法障壁も剣での防御も無駄。大きく回避するか遠距離で打ち落とす他ない。ひとたびこの銃弾を喰らったが最後、あの闇の福音ですら 脱出は不可能……だそうだ」

 

 大きく回避するか、遠距離で打ち落とす? それなら……私ならその銃弾を防げるんじゃないか?

 

「そっ そんな……ネギ君達が……」

 

「ハルナ殿、電車の中は危ない外へ出るでござるよ」

 

 早乙女と長瀬は外に出ていて無事だったらしいな。良かった。

 

「位置は掴んだでござる」

 

 どうやら長瀬の方でも龍宮の位置は特定出来たらしいな。

 

(長瀬、私が援護しようか? 私の力なら龍宮の弾丸を防げるぜ。多分な)

 

(……いや、千雨殿は控えていて欲しいでござる。千雨殿はこちらの切り札。今真名と

対峙しては千雨殿の位置がバレてしまうでござる)

 

「ケホッコホッ」

 

「な 何が起こったんですかー」

 

 電車の辺りを覆っていた煙が晴れた。そこに居たのは……。

 

「ネギ君!!!」

 

「ネギ坊主!! なんと……」

 

 ネギ先生達だ。どうやら奥の手を使って回避できたらしいな。

 

「驚いたな……今 何をしたんだ、ネギ先生?」

 

「企業秘密です龍宮隊長」

 

 その時、ネギ先生の持つ懐中時計がバチッバチッと音を立てる。

 

「ネギ先生」

 

「兄貴ッそれは……」

 

(しっ隊長に聞かれます。どこで壊れたのか……一週間の長距離時間跳躍で無理がかかったのかも あと何回使えるか分かりません。今のは何とか切り抜けましたが……。超さんとの戦いもあります。もう 今の脱出技は使えません)

 

 次は無いって事か……。すると長瀬が前に出た。

 

「ここは拙者が。龍宮 真名は拙者が引き受ける。いけネギ坊主」

 

「でっでも楓さん……」

 

「拙者を信じろ」

 

 信じる……か。私の風と長瀬の体術なら龍宮を倒せるかも知れないが、私達の目的は

龍宮を倒す事じゃない。世界への強制認識魔法を止める事だ。それを優先しろって訳か。

 

「龍宮さん。龍宮さんそれでも僕は……貴方達の計画を止めさせてもらいます!!」

 

「……そうか」

 

「いきます!」

 

 ネギ先生がその場を去ろうとする。と、綾瀬が言葉を挟んだ。

 

「しばしお待ちを! ……龍宮さん一つだけお聞きしたい事があるです。超さんが変えようとしている不幸な未来とは地球……或いは人類の存亡といった究極的事態に関係しているのでしょうか?」

 

 綾瀬が龍宮に質問する。確かにそれは私も気になっていたんだ。

 

「いや……そんなSFめいた大袈裟な話はないさ。奴の動機の源泉は今現在も この世界のどこかで起こっているありふれた悲劇と変わりはないだろう」

 

 ……そうか。そうなのかよ。だったら……奴だけ特別に、タイムマシンで過去を変えるのなんて認める訳にはいかないな。この世界には悲劇によって苦しみ喘いでいる人が山ほど、腐るほど居るのだ。その中で奴だけ特別扱いは出来ない。この世界に生きていて家族を事故や病気などで失った人が「時間を戻してくれ!」と叫んだとしよう。だがその願いは叶えられる事はない。時間跳躍なんて出来ないんだから。その中で奴だけ「特別」に、「1人だけ」過去に戻って過去を変えて幸せになろうだなんて許される事じゃない。それをやるならあんたの持つ知識を世界中に公開して世界中の人間に時間跳躍が出来るようにしろってんだ。

 私は超を止める決心を更に固めた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 その後もネギ先生は各所の襲撃を他の生徒に任せて先に進んだ。こちらの切り札は二人。

ネギ先生と私だ。タイムマシンを持つネギ先生、そして一瞬の即時定点攻撃が可能な私。両名が、どちらかが超を止められれば僥倖という事だ。なので私達は今二手に別れている。真っ直ぐに超を狙うネギ先生と、中空に浮いて姿を消している私に。だから私からネギ先生への手助けは最小限にとどめている。安易に手を出して共倒れしたらシャレにならないからな。

 しかしマズイ……な。世界樹の魔力溜まり六箇所、その内五つのポイントが敵に占拠された。残る世界樹前広場を占拠されてしまえば全て終わり。私達の負けだ。

 だが、もう少しだ。大魔法発動は7時37分辺り……。あと20分程度だ。その時間になれば敵は数十分の複雑な儀式と呪文詠唱をする必要がある。それを私の風かネギ先生が止められれば……! どこかの屋外に、直径3kmの魔法陣の上で呪文の詠唱に入るハズなのだ。発見はある程度容易だと思われる。

 

 その時だった。上空……地上から4kmほど離れた空に飛行船を感知した。早速風で詳しく探査する。……超の姿を見つけた! 魔法発動の場所はどうやらこの飛行船で間違いないようだ。私は空を飛んで超の元へと急いだ。

 

 だが前方がチカッと光ったかと思うと、周囲に張っていた風の障壁に引っかかった。黒い球体、強制時間跳躍弾か! だが私は先の龍宮の言葉を聞いてから周囲50m範囲で風の結界を張っている。私には通用しねーぞ。一般の魔法使いの使う障壁、対物魔法障壁というんだったか? は術者の体の周り、せいぜい1mくらいしか守っていないだろう。だから強制時間跳躍弾にやられたのだ。だが私は、風の精霊に特化した私の障壁は数十m単位で障壁を張れる。これなら跳躍弾に巻き込まれずにすむって訳だ。いや、跳躍弾は当たってるけど私の障壁が大きすぎて囲めないと表現

した方がいいか?

 

 弾を撃ってきた敵は……絡繰の同タイプ、妹か。空戦タイプみたいだな。だが風を操って即時定点攻撃できる私の敵じゃない。私は相手がロボだという事で手加減の必要がなくなったのもあり、風の斬撃を次々と放った。空は私の独壇場だぜ。スピードは精霊術の中で最速だ。敵が行動するより先に精霊を召喚始め、相手が充分に力を蓄えられない内に攻撃する。そのタイミングさえ読み切れば負けはない。

 

 私の放った攻撃を受けたロボは、次々と体を切り離されて墜落していった。私は一直線に超の元へと向かっていた。後ろをネギ先生が着いて来ているのが分かる。だがネギ先生が辿り着く前に

決着がつくだろうな、と私は他人事のように考えていた。

 

 飛行船には超の他に葉加瀬も居た。どうやら呪文を詠唱しているのは葉加瀬のようだ。……私は少しばかり心に抵抗を感じた。詠唱しているのが葉加瀬という事は、彼女を物理的(・・・)に止める必要があるからだ。葉加瀬は恐らく魔力も気も使えない一般人だろう。その彼女に攻撃する事に、引っかかりを感じた。だがやらなければならない。ここでやらなければ世界中に魔法がバレてしまうのだ。世界中の人に魔法が掛けられてしまうのだ。

 

「地球上12箇所の聖地及び月との同期完了です。後は残る世界樹前広場の占拠を待つのみ……

いよいよですね――」

 

「よし……ハカセは儀式の最終段階、最後の呪文詠唱に入るネ」

 

「仕上げの呪文は11分6秒です。大丈夫でしょうか――?」

 

「大丈夫ヨ。初めてクレ」

 

「……でも本当にいいんですか――超さん。この計画を完遂して……」

 

 超と葉加瀬が会話している。余裕……なのか?

 

「……ああ。いや……この場面において計画の可否を決めるは、どうやら私ではなく……彼女ネ」

 

 私は、飛行船の上に到着した。既に姿は隠していない。向こうから私の姿は空の青を

バックに良く見えているハズだ。

 言葉はない。必要ないのだ。私には戦いの前に敵と言葉を交わす趣味なんて無い。

だから決着はこの後、一瞬後につくはずだ。超がある程度の武術を習っている事は古に聞いて

知っている。もしかしたら魔法もある程度使えるかも知れない。だが私の風を防ぐ事は出来ない。何故なら私の風は一瞬で行える定点攻撃だからだ。

 既に私は呪文詠唱をしているのが葉加瀬だと「知って」いる。だから私の側としては

葉加瀬に攻撃して呪文詠唱をやめさせれば良いのだ。葉加瀬の頭か胸にでも空気の弾丸を放ち気絶させる。それで終わりだ。

 私の風術は発動するのに時間を要しない。攻撃する、という意識を働かせるだけでいい。反則的なまでの速さ。それが風術だ。

 魔法使いの使う障壁は1m程度しかカバーできない。だから超がもし魔法を使えたとしても、葉加瀬の体をカバーしようと思ったら葉加瀬に抱きつくような形で葉加瀬を守らなければならない。だが、今超と葉加瀬は数m離れた場所に立っている。超と葉加瀬両方に向けて定点攻撃を行えば、

それで事は終わる。この騒がしい夜も終わりだ。

 

「は――」

 

 ゴッ!!

 

 それで終わった。

 

 


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