あれから、少しばかりの時間が過ぎた。私達の活動は遅々として進まない。まず魔法使いの
皆に理解を求める必要があるからだ。そんな時間を過ごしながら、私達は中学校を卒業しようと
していた。
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卒業式を終えた私達は、魔法使いのオコジョ収監所に来ていた。あいつを迎える為だ。あいつの出所の日がこの日だというのは学園長の計らいがあったのかもしれない。結局あいつは魔法バレを行った訳ではなくて、未遂だったのも大きかったのだろう。規模はとても大きかったが。
「もうここには来るなよ」
「お世話になりましたネ」
出所する所を見るというのも……何というかアレだな。
「
「……! 長谷川サン、か。それにみんなも」
「ああ、みんなで、迎えに来たぞ」
「超! 久しぶりアル!」
「久しぶりね。元気にしてた?」
私達はみんなで声を掛ける。
「みなさん、超さんもいきなり会いに来られて混乱しているでしょうから、どこか落ち着ける場所に行くです」
綾瀬が提案する。そうだな。どこか落ち着ける場所で話そう。
少しばかり移動して、手軽な喫茶店に入った。
「それにしても久しぶりね! オコジョって生活とかどうなってるのよ」
神楽坂が聞く。そういうデリケートな話題を普通に聞けるのはこいつの人徳だよな。
「ああ、それはネ……」
それから私達はお互いの近況などを話し合った。
「しかし今日は一体どうしたネ? 迎えに来てくれるのは嬉しいが随分と盛大ではないカ」
「ああ、お前が転校したって扱いになってからみんな寂しがってな。本当なら卒業記念に全員で
会いに来ても良かったんだが、魔法の事情を知っている人間は限られているからな」
「そうか、みんなも元気でやっているカ。しかしそれはそれとして、長谷川サンが来たのは予想外だったネ」
「ああ、それはな。お前に話があったんだよ」
「話? はてどんなコトかネ?」
そこで私は超に話した。自分が魔法を一般人の世界に認識させる活動を始めた事を。
そしてここにいるメンバーが参加者になっている事も。
「長谷川サン……」
「それでな、私がここに来たのはお前も誘いに来たからだよ。……なあ、超。また世界樹が発光する21年後まで、お前は未来に帰れないんだよな。だったら、私達の活動に参加してくれないか。お前もメンバーになってくれよ」
「…………」
「超、あんたは未来からやってきた人間だ。でも今はこの時間で生きてるんだ。だから、この時間で、『生きて』みないか? 私達と、一緒に」
「…………。フ……、それも、悪くはないかもネ」
超は僅かに微笑んでくれた。未来は変えられるか分からない、でも、
ここから、始めよう。
彼女達の活動が実を結んだか、それは誰にも分からない。何故ならこの物語はここで幕を閉じるからだ。彼女達の行く先がどうなったか、それはそこに吹く風だけが知っている。
ただ、風だけが――。
風の千雨 fin
これにて風の千雨は完結です。おつきあい頂き、ありがとうございました。