します。
「課題? ですか」
「そうじゃ。彼には一つ課題をクリアして貰おうかの。才能ある
「どんなもの何ですか?」
喫茶店での昼食を頬張りながら近右衛門に尋ねる。中学から学生寮になった事で心配
した学園長がこうして交流の場を設けてくれているのだ。
「うむ。次の期末試験で、二-Aが最下位脱出できたら正式に先生として採用してあげようというものじゃ」
「相っ変わらず、魔法使いと何の関係もないですね」
単純に教師としての能力を測られているだけじゃねーか。それも正規の教員である高畑先生が
成し遂げられなかった事をやれ、というね。
さてどーなる事やら。
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「えーーと皆さん聞いて下さい。今日のHRは大・勉強会にしたいと思います。次の期末テストはもう すぐうそこに迫ってきています。あのっそのっ……実はうちのクラスが最下位脱出
できないと大変な事になるので~~。皆さん頑張って猛勉強していきましょ~~~~」
必死だな。そりゃそーか。この期末テストの結果如何によって、卒業試験の結果が決まるんだもんな。でも自分の為に生徒に勉強させるってのは教師としてどうなんだ。それって「お前らが良い点数取らないと俺の評価が上がらないんだよ」とか言うダメ教師と何が違うんだ?
「はーーい♡ 提案提案」
「はい! 桜子さん」
椎名 桜子が何やら提案があるらしい。
「では!! お題は『英単語野球拳』がいーと思いまーーすっ!!」
ずるっと音を立てて机から滑り落ちそうになった。ダメなのは教師だけじゃなくて生徒もか。
あははそれだーっじゃねーっつーの!
「じゃあそれで行きましょう」
OKしちゃったよ!? あのガキ野球拳がどういうものか知らねーだろ! そのガキはクラス
名簿……多分成績表を見ている。その間にもクラスの奴らは野球拳を進めて服を脱いだりして
やがる。あ、頭が痛い。
「悪いけど付き合いきれねーや」
私はその言葉を残すと、HRを抜けて保健室に急ぐのだった。
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ああ、生き返るな。風呂は命の洗濯だよ。私は今学生寮の大浴場に入っていた。
「アスナーーアスナーー大変やーー」
「何? このかー」
「お ちょーどバカレンジャーそろっとるな♡ 反省会か? 実はな噂なんやけど……
次の期末で最下位を取ったクラスは……」
何だ?
「えーーっ。最下位のクラスは解散~~!?」
またずるっと音を立てて風呂の中を滑った。……んなことある訳ねーだろ! アホか。
「そのうえ特に悪かった人は留年!! どころか小学生からやり直しとか……!!」
「え!?」
いやだから、ありえねーって。確かにウチの学校は魔法がまかり通る不思議学校だけど。それ
以外は基本的に普通の学校なんだっつの。
「――ここはやはり……アレを探すしかないかもです……」
「夕映!? アレってまさか……」
「何かいい方法があるの!?」
「『図書館島』は知っていますよね? 我が図書館探検部の活動の場ですが……」
綾瀬 夕映が何やら発言している。
「一応ね。あの湖に浮いているでっかい建物でしょ? 結構 危険な所って聞くけど……」
図書館島か、あれもまた不思議がまかり通っている施設なんだよな。
「実はその図書館島の深部に――読めば頭が良くなるという『魔法の本』があるらしいのです。
まあ大方 出来のいい参考書の類とは思うのですが……それでも手に入れば強力な武器になります」
あ。
「もー 夕映ってばアレは単なる都市伝説だし」
「ウチのクラスも変な人多いけどさすがに魔法なんてこの世に存在しないよねーー」
「あーー アスナはそーゆーの全然信じないんやったなー」
そうだそうだ信じるな。
「いや……待って……行こう!! 図書館島へ!!」
「え……」
待て待て待て待て! 図書館島の深部へ行くのも、魔法の本を信じるのもオススメしねーぞ!
私は慌てて立ち上がるとバカ話している奴らに近づいた。
「神楽坂、それからお前ら。魔法の本なんてものは存在しねーよ! バカな事言ってないで
真面目に勉強しろ!」
「な、何よう千雨ちゃん。そんな強く言わなくたって」
「お前らがバカな話してるから叱ってるんだよ。……仮に魔法の本なんてものがあったとして、
そんなズルしてお前ら嬉しいのか?」
「え?」
「期末テストを受ける皆は真面目に勉強してるんだ。なのにお前らはズルしてテストの点だけ
取るのか? そんなズルして嬉しいのかよ?」
「…………」
「私から言えるのは一つだけだ。ズルなんかしないで真面目に勉強しろよ」
私は言いたい事だけ言うとその場を立ち去った。
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時間が飛んで期末テストになった。私は学園長に養って貰ってる身としては真面目にやらざるをえない。勉強はいつも真面目にやっているのだ。今回もそれなりの点数は取れるだろう。そう言えば結局あのメンバーは図書館島には行かなかったらしい。少しは自分の言葉が通じたんだろうか?
それと、あのメンバー皆で集まって勉強会を行ったらしい。ガキ教師が音頭を取ってやらせた
らしい。真面目に勉強しているならそれが一番だよ。
期末テストの数日前、2-Aが最下位を脱出しないとガキ教師がクビになるという話が持ち
上がった。学園長からの説明では「脱出できたら正式な先生にする」というものではあったが、
できなければクビなんて初めて聞いたぞ。どこで情報がねじ曲がったんだ?
そんでテスト当日になった訳だが……あのバカ共は何をしてるんだ?
「もう予鈴が鳴ってしまいましたわよ! あの
バカレンジャー達が何故か教室にやってこないのだ。
「あっ見て!! バカレンジャー達が来たー!!」
「ハアハアちっ遅刻ーッ」
「最後の悪あがきに徹夜で勉強したら遅刻アルーー」
「1時間で起こしてって言ったのにー」
何やってんだか。そう思いながらも少し嬉しかった。地道に勉強してたみたいだな。
遅れて来た遅刻組は別教室で試験を受けるようだ。
「み みなさん 試験がんばって!!」
ガキ教師も応援している。まあ今回の試験に限れば自分の進退がかかっているんだから応援ぐらいするか。どうも私はあのガキに対して見方が厳しくなっちまうな。
いかんいかん。私は私で自分の試験に集中しよう。その時だった。
「ラス・テル・マ・スキル――フラーグランティア・フローリス・メイス・アミーキス・
ウイゴーレム・ウイーターリターテム・アウラーム・サルーターレム・レフエクテイオー」
魔法!? 私の感知する範囲内で魔法の使用が感知された。風の精霊を動かす魔法だ。これは……あのガキ! また魔法を使いやがった!
あのガキ、普段は携帯を禁じられている杖を持ってきていやがった。
しかもこれは……対象者を覚醒させるタイプの魔法だ。あのガキ、遅刻組に対して頭をスッキリさせる為にこの魔法を使いやがったんだ。人を攻撃するような魔法じゃないなら使っていい訳じゃねーっての。私は事後なので効力がほとんどないと知りつつも、その魔法を散らす、効力を無くすように風を操ってみた。
あのガキめ! 確かに遅刻した彼女らを心配する気持ちは分からないでもないが、特定の人物にだけ覚醒の魔法をかけるなんて許される事じゃない。それを認めるのであれば、試験の監督官が
生徒に対して「夜遅くまで勉強して疲れているだろう。特別にこの教室の者だけこの栄養ドリンクを飲んでガムを噛みながら試験を受けていいよ」ってやるようなもんだ。ふざけんな。
私は後で学園長に報告してやるからな、と強く思いつつ、自分の試験に集中するのだった。
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あの後、結局ガキの魔法はさほど問題にはならなかった。一度かけた魔法を解く訳にもいかないし、魔法をかけられただけの生徒から、試験の点数を引く訳にもいかない。ガキに厳重注意が
下っただけで終わった。何か凄く納得いかねえ。
そして今は成績発表の時間だ。モニターの中で成績を発表される。
「下から三番目の22位――2-A!!」
我らが2-Aは無事(?)に最下位を脱出したのだった。
二次小説を読んでいる人には勘違いしている方がいらっしゃるかも知れませんが、ネギに与えられた課題は「最下位脱出したら正式な先生にしてあげる」というものです。クビとか何とかはコミックス2巻、9話で突然出て来たものです。多分話を聞いた生徒達が話を膨らませたんじゃないかなぁ。
アスナ達は図書館島には行きませんでした。千雨に叱られたのもありますが、ネギが原作ほど
魔法を使っていないので、魔法に頼る意思が強まらなかったのでしょう。
ネギが遅刻組に使った魔法に対してのツッコミ。当時マガジンを読んでいて一番納得がいかない場面でした。読んだ瞬間「はぁっ!?」と声が出たくらい納得がいきませんでした。本編に書いた通り、特定のクラスだけ栄養ドリンクとガムを配るようなもんですよ。
そして結果発表。最下位だけは脱出できました。そんだけです。学年トップ? そんな簡単に
なれる訳ないじゃないですかー。