風の千雨   作:掃き捨て芥

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 今回の話ではアンチの暴力描写があります。苦手な方はご注意下さい。


第6話 橋の上の激突

氷爆(ニウイス・カースス)

 

 ガキ教師がマクダウェルの放った氷の魔法で吹き飛ばされる。

 

「ハハハ。どうした逃げるだけか。もっとも呪文を唱える隙もないだろうがな!

リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 来れ氷精 大気に満ちよ

白夜の国の凍土と氷河を――こおる大地(クリユスタリザティオー・テルストリス)

 

「わーーッ」

 

 再びマクダウェルが強大な氷の魔法を放ち、ガキ教師を吹き飛ばす。

 

「ふ……なるほどな。この橋は学園都市の端だ。私は呪いによって外に出られん。ピンチになれば学園外へ逃げればいいか……。意外にせこい作戦じゃないか。え? 先生」

 

 なるほど、マクダウェルは学園都市の結界に囚われている。それを利用して逃げようという作戦か。あのガキにしては悪くない。

 

「これで決着(ケリ)だ」

 

 マクダウェルがガキに近づく。私はまだ現場に到着していないが、いよいよとなったらこの距離から風を発してマクダウェルを攻撃してやる。

 

 パシイイィイン!

 

 ガキに近づいていたマクダウェルの足下から光りが迸った。

 

「なっ……!! こ これは……捕縛結界!?」

 

「あ……や……やったーーっ。エヘヘヘひっかかりましたね。エヴァンジェリンさん。

もう動けませんよエヴァンジェリンさん。これで僕の勝ちです!さあ おとなしく観念して

悪い事も もうやめてくださいね!」

 

 どうやら私はガキ教師をみくびっていたらしい。学園都市の外に逃げると見せかけて、マクダウェルを捕縛する結界にまでおびき寄せていたのだ。

 

「…………やるなあぼうや。感心したよ。ふ……アハ。アハハハ」

 

「な 何が可笑しいんですか!? 御存知のように この結界にハマれば 簡単には抜け出れないんですよっ」

 

 しかしマクダウェルの余裕は崩れない。確か600年以上生きているという吸血鬼だ。力が封じられていると言っても隠し球の二つや三つあるのだろう。

 この時私は勘違いしていたが、マクダウェルの力はとっくに解放されていたのだ。だが魔力を

感じたりする事が全く出来ない私にはマクダウェルの解放された魔力を感じ取る事が出来なかったという訳だ。

 

「そうだな 本来ならばここで私の負けだろう。茶々丸」

 

「ハイ。マスター。結界解除プログラム始動。すみませんネギ先生……」

 

「な……え!?」

 

「15年の苦汁をなめた私が この類の罠になんの対処もしていなかったと思うか」

 

 いや対処って自分の力で捕縛結界を解くとかじゃねーのかよ! 従者頼みかい!

 

 パキャアァン

 

「この通りだ」

 

 マクダウェルの体を雁字搦めにしていた結界が破壊された。

 

「えっ……そ、そんなウソ。ずるいッ」

 

 何がズルいってんだ。真剣勝負なら何もズルい事なんかねーだろ。やっぱまだガキなんだな。

 

「ぅうっ……ラス・テル あうっ」

 

 呪文を唱えようとしたガキ教師が、絡繰 茶々丸に杖を取り上げられる。確か魔法使いは魔法

発動体って奴が必要なんだろ? あれを取り上げられたら……。

 

「フン。()の杖か」

 

 ポーンとマクダウェルはその杖を橋の下、川の方へ投げてしまった。

 

「ああっ。うわーんひどいー。あれは僕の何よりも大切な杖…………」

 

 確かあの杖はあいつの父親の杖なんだっけ? 学園長がそんな事を言ってた気がする。私が学園長に抗議した後の厳重注意では携帯する事を禁じられていた筈だが。

 

「ひ ひどい。ひどいですよーエヴァさん。本当なら僕が勝ってたのにーー。ズルイですよ。

うあ~~~~んっ一対一でもう一回勝負して下さい~~っ」

 

 泣くなよ。仮にも魔法学校を卒業したんだろう。マクダウェルの事も吸血鬼と分かっていて

挑んだんだろう。……いや、これはさすがに厳しいか。私も10歳なんてただのガキだったしな。泣いてもしゃーねーか。だがマクダウェルはそう思わなかったようだ。ガキ教師の頬を張って

きつい言葉を投げかける。

 

「一度闘いを挑んだ男がキャンキャン泣き喚くんじゃない。この程度でもう負けを認めるのか!? お前の親父ならばこの程度の苦境笑って乗り越えたものだぞ」

 

 いや、それはどうよ。父親がそういう事が出来たからって、子供も同じ事が出来ると思うのは

筋違いじゃないか?

 

「う……いや……」

 

 ガキ教師は頬張られても泣きべそをかいていて、完全に闘志を失ったらしい。

 

「だが今日は良くやったよぼーや。一人で来たのは無謀だったがな。さて……血を吸わせて

貰おうか」

 

「……あ。あの マスター。ネギ先生はまだ10歳です。……あまりひどい事は……」

 

「心配するな。……別に殺しはせん。女、子供は殺らん。それにこのぼーや自身にも興味が

出てきた所だしな……」

 

 ……そこまでだッ!

 

「マクダウェルーーッ!!」

 

 私は風の精霊を使ってマクダウェルに自分の言葉を伝える。彼我の距離は約100mといった所か。これなら十分間に合うな。

 

「……? この声……長谷川 千雨か?」

 

 ガツッ

 

 派手な音がしてマクダウェルの体が吹っ飛ぶ。どうやら私の使う風でも、マクダウェルの魔法

障壁とやらは突破できたらしい。

 

「ぐっ。貴様――あれ?」

 

 私は風の精霊で空気の屈折率を変化させ、姿を隠している。探しても無駄だ。私は姿を隠した

まま、一方的に攻撃を加えた。

 

「がっぐっきっきさまぁっがっ」

 

 風の砲弾を放って殴り続ける。私の持つ風の攻撃方法は二種類だ。鋭く研ぎ澄ませて刃物のように切るか、空気を固めて砲弾のように放ち殴打するか。私は後者の手段を選んだ。前者の方法ではやりすぎてしまう可能性があるからだ。いかに不死身と言われる吸血鬼だとはいえ、クラスメイトの体をなますのように切り刻みたくはない。

<大気の拳(エーテル・フィスト)>――高密度に圧縮された空気の塊が、亜音速で叩き込まれる。激突の瞬間、およそ百分の一に圧縮された空気が瞬時に――しかも指向性を持って――復元する際に発する衝撃波は、ヘビー級プロボクサーのフィニッシュブローを遙かに凌駕する。そして<連撃(ラッシュ)>――狙いを定めて射出された弾丸は肉を抉り、骨を砕き、マクダウェルを叩き伏せた。

 私は言葉も交わさずに一方的にマクダウェルを殴り続けた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「なめるなよ。小娘がぁっ!!」

 

 10発ほど殴打を加えたぐらいで、マクダウェルが吼えた。と同時にそれまで通じていた空気の砲弾が見えない壁に遮られて届かなくなる。……障壁を強化したのか。

 既に私は全力で攻撃を放っている。それが通じなくなったという事は、以降の私の攻撃は一切

通じなくなった事を意味する。仕方ないか。

 私は風の膜を取り払い姿を現した。

 

「マクダウェル……」

 

「長谷川……千雨」

 

 奴は私を強く睨み付けた。だが私だって引いちゃいられない。心を強く持つとマクダウェルを

強く睨み返した。

 

「貴様……どういうつもりだ? 事と次第によっては許さんぞ」

 

 ……その言葉が、勘に障った。

 

「事と次第によっては許さない? それはこっちの台詞だ。クソ野郎! てめえ、どういうつもりで一般人の生徒を巻き込みやがった!!」

 

「……む」

 

「てめえとそこのガキの父親に因縁があるってのは聞いてる。だけどそれと、てめえが血を吸った佐々木達は何の関係もねーだろうが!! それを、てめえとそこのガキのくだらねえ諍いに一般人を巻き込みやがって! ふざけんな!」

 

 私が怒っているのはそれだ。魔法使いであるガキと戦いになっても私の知った事じゃない。

だけどこいつは私の目の前で一般人を巻き込みやがった。魔法使いの事情で、一般人を!!

 

「てめえさっき女と子供は殺らんとか何とか言ってやがったな。殺しさえしなけりゃ何をしても

いいってのかよ!」

 

「…………」

 

 マクダウェルの奴は黙っている。そりゃそうだろう。奴が何を言おうと、佐々木達の血を

吸って、その体を操った事はまぎれもない事実だからだ。今回のガキとの戦いにそれが必ず必要だった訳でもない。奴は遊んでいたのだ。佐々木達とガキを戦わせて。

 

「てめえの声を拾ったぜ。風術でな。『アハハハ。本当によくやるじゃないかあのぼーや』

だと!? てめえは何様のつもりだ!! 佐々木達とガキを戦わせて高みの見物をしやがって! その後の戦いを見れば佐々木達なんて必要がないのは丸わかりじゃねーか! てめえは遊んでいやがったんだ。ただの遊びの為だけに佐々木達を巻き込んだんだ」

 

「……否定はしない」

 

「なら、てめえは私の敵だ!」

 

 私は風を巻き起こすとマクダウェルに向かって行った。

 

「千雨君! やめるんだ!」

 

 そこに割り込みが入った。高畑先生だ。その他に多数の魔法教師も居る。全力のマクダウェルと戦って勝てるなんざ思っちゃいない。事前に風術を使って連絡しておいたのだ。

 

「千雨君、エヴァ。やめるんだ。同じ学校の君達が争って何になる」

 

「タカミチ、余計な真似はするな」

 

「高畑先生、こいつは私の目の前で一般人を巻き込みやがったんだ。許すことはできねえ」

 

「それでもだ。この場は僕に免じて収めてくれないか」

 

 三者共お互いの都合を優先しようとする。その時絡繰が叫ぶ。

 

「いけないマスター!」

 

 橋の上で大きな光が瞬いた。

 

「予定よりも7分27秒停電の復旧が早い!! マスター!!」

 

「ちっ。ええいっ。いい加減な仕事をしおって!」

 

 バシンッ

 

 マクダウェルの体を激しい光が襲った。

 

「ど どうしたの!?」

 

 いつの間にかガキ教師の傍に来ていた神楽坂が問いかける。

 

「マスター……! 停電の復旧でマスターへの封印が復活したのです。魔力がなくなればマスターはただの子供。このままでは湖へ……あと マスターは泳げません」

 

 ちっ仕方ねえ。私は風を操ると飛んでいた空から落っこちたマクダウェルをすくい上げてやった。

 

「エヴァ!!」

 

 高畑先生達も飛び込もうとしたが、私が風でさらった事に気づいたのだろう。その場に押しとどまった。

 

「……なぜ助けた?」

 

 マクダウェルが聞いてくる。

 

「私はあんたを許せない。だからと言って死んだりしていいなんて思っちゃいねーよ」

 

 クラスメイトを死なせて平気な顔をしていられる程冷酷じゃねーよ。

 

「…………バカめ……」

 

 マクダウェルはそう小さく呟いた。

 

 




 完全なるエヴァアンチ。こんな文章を書いている私ですが、エヴァの事はそこまで嫌っていません。ただ今回の事件に限っては、まき絵ちゃんや他の女子生徒を巻き込んだ事は完全にエヴァが
悪いと思っているだけです。
 吸血鬼にされて可哀想。
 その後色んな魔法使いとかに命を狙われて可哀想。
 3年という約束だったのに15年も麻帆良に縛り付けられて可哀想。
 それは確かにその通りです。でもエヴァに襲われたまき絵含む、桜通りの吸血鬼事件の
被害者には何の関係もないよね? って話です。

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