シャーレの先生の秘書兼お手伝いさん   作:泰二哀

2 / 3
ギヴォトスには『アビドス』という高校がある。かつてはキヴォトス最大にして最長の歴史を誇るマンモス校だったが、現在は砂漠化の進行と多額の借金により廃校の危機に瀕している。 所属生徒わずか5名で「アビドス廃校対策委員会」を結成し、学校を救うために奮闘している。今日はそこで起きたアイへの誤解が招いた一つの『事件』の話、、、


勘違い事件

ーアビドス高等学校ー

 

「うへ〜、よく来たね〜。まあ立ち話もなんだし入りなよ。みんないつもの部屋にいるよ〜」

 

「ありがとうございます。失礼しますね」

 

今日アイはアビドスの定時連絡と水が出なくなったという水道管の確認をしに来た。アイはホシノに案内されて対策委員会の部室へと足を運ぶ。部室のドアを開けると最初に出迎えてくれたのは水着に覆面を被った十六夜ノノミだった

 

「ん?あ!アイさんお久しぶりです!☆ようこそ我らが『覆面水着団』のアジトへ!☆」

 

「ん、いらっしゃい。入団届はそっちからね」

 

「いや入りませんし、ていうか何してるんですか?!もうそろそろ夏とは言えまだ六月の始めですよ?!」

 

どういうわけかシロコまで水着に覆面を被った姿でパイプ椅子に座っていた。

 

「ん、いらっしゃい。入団届はそっちからね」

 

「いやだから入らないって、、、なんで砂狼さんまで?!」

 

アイは基本こっちの世界のシロコを『シロコさん』と呼び、別世界のシロコを『砂狼さん』と呼び分けている。そして今二人とも同じ格好をしていたのだ。

 

「(シロコがアイの右腕をガシッと掴む)さあ早く」

 

「(同じく砂狼がアイの左腕をガシッと掴む)名前書くだけで良いから」

 

「ちょ、小鳥遊さん助けてください!」

 

「うへ〜、ごめんねアイ君〜、実はおじさんもそっち側なんだよね〜」

 

「え?嘘ですよね?」

 

「嘘じゃありませんよ〜♩先輩も立派な覆面水着団のメンバーです!☆」

 

アイは今四面楚歌に覆いやられていた。部屋から出ようとしてもドアはホシノとノノミに塞がれている。そもそもシロコ達に両腕を封じられているため身動きっが取れない。

 

「入りませんよ!ていうか覆面水着団ってなんですか?!」

 

「そうですね〜、例えば、、、アイドルですかね!☆」

 

「ん、銀行襲う」

 

「いや銀行を襲うアイドルってなんですか?!」

 

「大丈夫。みんな優しいから」

 

「いや優しさ以前の問題ですよね?!」

 

「、、、ただいま〜、、、って先輩達何してんの?!」

 

両手に何やらお菓子やマガジンが詰まった袋を持ったセリカとアヤネが部室の前で目を見開いていた

 

「えぇ?!なななな、なんでホシノさんとアイ先輩以外全員水着に覆面被ってるんですか?!」

 

「えっへん!私たちは覆面水着団です!☆」

 

ノノミは両手の親指と人差し指同士で輪っかを作り、両目に押し当てメガネを作る。

 

「先輩達まだあれを引きずってたんですか?!」

 

「とにかくアイ先輩を離して下さい!迷惑になってますから!」

 

「ん、ダメ。この人材を手放すわけにはいかない」

 

「僕に水着の需要ありますか?!」

 

「すみませんアイさん!今すぐやめさせますからね!」

 

「離さない」

 

「自分に同じく」

 

「、、、良い加減にしないと説教しますよ?」

 

アヤネがにっこりと微笑む。その笑みを見てダブルシロコは何かを悟ったのか名残惜しそうにアイから離れる

 

「いや〜アヤネちゃんの説教は怖いからね〜」

 

ホシノも引き攣った笑みを浮かべる。おそらく前にそうとう怒られたのが目に見えて分かる

 

「ふう、助かりました。ありがとうございます奥空さん」

 

「いえ謝らないでください!こちらこそ迷惑を掛けてしまいすみませんでした!あとでちゃんと『言っておきます』!」

 

『言っておきます』、、、これを聞いたダブルシロコとノノミ、ホシノは顔が青ざめる。この言葉の重みを知っているからだ。

 

「ア、アヤネちゃん?それってまさか説教じゃないですよね、、、?」

 

ノノミが恐る恐るアヤネに尋ねる。それに対してアヤネは恐怖を覚えるような笑顔で返す

 

「、、、そのまさかです」

 

四人がさらに顔色を悪くして力無く地面に座り込む。よほどに怖いらしい

 

「自業自得よ。しっかり怒られなさいよね」

 

「、、、それではアイ先輩。定時連絡の前に水道管を見てもらっても良いでしょうか?」

 

「はい、分かりました」

 

アヤネに案内してもらってアビドス高等学校の水道管をくまなく点検する。

 

〜数分後〜

 

「、、、原因が分かりましたよ。どうやら隙間から砂が入り込んで水を堰き止めていたっぽいです。もう砂は取り除いて隙間は塞いだのでこれで使えるようになりましたよ」

 

「本当ですか?!ありがとうございます!それでは少しこちらの部屋で休憩しててください。中にあるものはご自由に食べてもらって大丈夫ですからね!それだは少し『説教』をして来ますね」

 

ドアの隙間から四人が絶望した表情で地面に正座しているのが見えたが何も言わないでおく

 

「、、、あ、ありがとうございます。」

 

部屋に入りドアを閉める。すると隣の部屋から四人の叫び声が聞こえてくる。

 

「、、、絶対に怒らせないようにしよう。」

 

心の中でそう決心して、机の上にあった『as if blood』という真っ赤なジュースを手に取り飲む。すると同時に涙が出るような強い炭酸と感覚が麻痺するような辛さが口の中を支配する

 

「っ!ゲホッ!!ゲホッ!!」

 

痛みに耐えられず真っ赤な液を吹き出す。同時に部屋に半泣きのホシノが入ってくる

 

「うへ〜、結構怒られちゃ、、、アイ君?何それ?」

 

ホシノの顔から血の気が引いた。目を丸くしてアイを見る

 

「、、、いや!これは違くて!」

 

「君は無理し過ぎなんだよ。少しは弱ってる所を見せて欲しいっておじさんは思うな、、、」

 

ゆっくりとアイに近寄りそっとアイの頭に手を乗せる

 

「だ、だからこれはそういうのじゃ、、、」

 

「良いよ。アイ君の弱音でも愚痴でもおじさんなんでも聞いちゃうよ」

 

ホシノは完全に勘違いをしていた。アイが吐血をした。彼女はそう思っているが本当は辛すぎて吹き出してしまっただけというくだらない理由だった。そして被害は拡大してく、、、

 

「、、、アイ、、、先輩、、、?」

 

「、、、血」

 

部屋の入り口でアヤネが口元を抑え今にも泣き出しそうなのを必死に堪えていた。その隣でシロコが両耳をぺたんと倒した状態で覗き込んでいる。表情にはいつもの無表情と真剣さが混じっていた

 

「す、すぐに救急車を、、、」

 

「アイ、今は何も言わなくて良い。でもあとでちゃんと聞くから」

 

「だ、だからこれは誤解で、、、」

 

「誤魔化さなくて良い。今は休んで」

 

「今ならまだ救急騎士団が対応してるはず、、、」

 

「そ、それだけはダメ!」

 

アイが必死に叫ぶ。

 

「、、、なんで?もしかしてそんなに言えないぐらい重い病気なの?」

 

「ちょっと!どうしたのよ、、、って、、、せ、先輩?」

 

「それまさか、、、血じゃ、、、」

 

「、、、っ!」

 

大声を聞いたセリカ、ノノミ、砂狼が駆けつけてくる。この状況を見て察してしまう

 

「みなさん聞いてください!」

 

「あとで好きなだけ聞きますから今は横になって休んでください!」

 

弁明を言う隙がなく、状況は悪化していく一方だった。

 

(考えろ!この状況を打破する方法を!、、、そうだこれだ!)

 

アイは一筋の希望に賭けてジュースをホシノに無理やり飲ませる

 

「んぅ?!、、、んんんっ??!!」

 

ホシノの顔がみるみる真っ赤になり汗が滝のように流れる。

 

「ぷはっ!ゲホっ!ゲホッ!かっっっら!」

 

ホシノもアイ同様口から少量の液を吹き出す。そしてそれを見たシロコが何かに気づいた表情をする

 

「、、、もしかしてそれ、血じゃなくてシュース?」

 

「そう!その通りです!」

 

「、、、じゃあアイ先輩はどこも悪くないんですか?」

 

「はい、ただこの飲み物が刺激的すぎて吹き出しちゃったんですよ」

 

「、、、よ、よかった、、、本当に心配したんですから!」

 

「せ、先輩!紛らわしいことしないでよ!」

 

「でも良かったですぅ、アイ先輩が無事で、、、」

 

「ん、心臓に悪い」

 

「次からは気をつけて」

 

「もお〜おじさんびっくりしちゃったよ〜」

 

アヤネは安心したのか膝から崩れ、セリカは頬を染めながらそっぽを向き泣きそうな顔を隠す、ノノミは目に溜まった涙を拭き取り、砂狼は少し手を振るわせながら無表情を貫く、シロコは注意しながらも少しだけ口元が緩んでいる、ホシノはまだ顔は赤く汗もまだ垂れてきているが何時もの穏やかな笑みになる。

 

「す、すみませんでした、、、」

 

こうしてこの勘違い事件は幕を下ろしたのであった、、、

 

『後日談』

あの後、みんなは前よりもシャーレに訪れることが多くなり、みんな揃ってアイの体調を気にかけるようになった

 




『アビドス面々のアイに対する認識』
シロコ:優しく頼れる存在であり、背中を任せられる先輩。いろんな面でアイを尊敬している。『アイ』と呼んでいる。

ホシノ:優しく頼れる存在であり、背中を任せられる親友。なかなか自分のことを話してくれないので少し心配している。『アイ君』と呼んでいる

ノノミ:優しくノリの良い先輩。自分のことをそっちのけにしているのが少し心配なので、甘やかしてあげたいと思っている。『アイ先輩』と呼んでいる

セリカ:重度のシスコンで自分のことよりも妹の自慢話しかしてないが、嫌ではない。今回の一件で、少し優しく接しようかなと思っている。『先輩』と呼んでいる

アヤネ:優しく頼れる存在であり、自分の事になると雑になる先輩。無理をたくさんしているので休んで欲しいと思ってる。『アイ先輩』と呼んでいる

砂狼:優しいがいつか消えてしまいそうで怖い。正直言うと監禁してでも戦場に立たせたくないが彼の性格を知っているためそれができない。向こうの世界でアイは先生を最後まで守り抜こうとして戦うも、体が見るにも耐えない無惨な亡骸となって戦死した。『アイ』と呼んでいる

※キャラクターは基本原作設定のままです


『作者からのメッセージ』
『勘違い事件』を読んでくださりありがとうございます。なんか一日に2回投稿しましたが必ずともそうという訳ではありません。次回も投稿は未定なのでどうぞよろしくお願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。