ザ・ダイハード・マスターピース 作:EXTERMINATION
校門の向こう側から拡声器越しに放たれた警官隊の声は、
それまでこの学校の内部だけで閉じていた暴力と判断と駆け引きの連鎖へ、
外側から無理やり楔を打ち込むように強く響き渡る。
その音はただの警告ではない。
ここまで積み上がってきた全てを
強制的に終わりの方向へ押し戻そうとする力として、
この場にいる全員の意識へ同時に叩きつけられていた。
『武器を捨てて、その場で動くな!』
同じ言葉が、今度はさらに強い調子で繰り返される。
ライトが揺れる。
複数の白い光が校門内側へ差し込み、
煙と粉塵を照らし、そこに立つ人間の輪郭を一斉に浮かび上がらせる。
それは命令だった。
明確で、単純で、
そしてこの学校の内部でこれまで交わされてきたどんな駆け引きよりも、
圧倒的に正しいはずのもの。
だが――
その正しさが、この場にいる誰一人の行動を止めることはなかった。
立ち上がった龍園が最初に笑った。
「ハッ……今さらだろ」
その笑いには、外の秩序を真正面から否定するような乾いた嘲りが含まれており、
同時にここまで来た以上もう引き返せないという覚悟が、露骨な形で滲み出ていた。
「ここまで来て止まれるかよ」
その言葉と同時に、龍園の背後で構えていた連射班の銃口がわずかに持ち上がる。
撃つかどうかではない。
いつでも撃てる位置に入ったということだ。
宝泉も同じだった。
むしろ警官隊の声を聞いたことで、
逆に体の奥に溜め込んでいた衝動が一気に解放されたように重心が前へ沈み込み、
その場の空気を押し潰すような踏み込みの予兆がはっきりと見える。
「関係ねえな!」
低く言い捨てる。
「先に終わらせるだけだ!」
その一言が落ちた瞬間、地面を踏み抜くような一歩。
空気が鳴る。
ただの前進ではない。
到達するまで止まらない直線。
坂柳は、そんな二人の動きを見ながら、ほんのわずかに目を細めた。
警官隊の配置、射線、距離、介入タイミング、
そして龍園と宝泉の衝動的な加速、
それに伴って崩れるであろう全体のバランスを一瞬で計算しているのが、
その静かな表情の奥に見て取れる。
「……時間がなくなりましたね」
その一言は誰かに向けられたものではなく、
この場そのものの状態変化を言語化しただけのものだった。
七瀬だけが、明確に揺れる。
「……もう、ここで終わりにするべきです」
その声はこれまでよりも強い。
命令ではない。
任務でもない。
純粋に止めたいという意思が滲んでいる。
「これ以上は――」
だが、その言葉は途中で切られる。
天沢だった。
「終わりにしたいなら、最初からこんなことになってないでしょ」
軽い声。
だが、その軽さとは裏腹に、言葉の中身はあまりにも現実的だった。
「ここってさ、途中でやめるって選択肢が最初から存在してないんだよ」
七瀬は言葉を失う。
否定できないからだ。
その沈黙が生まれた瞬間――状況が動く。
綾小路はすでに理解していた。
警官隊の声は終了条件ではない。
ただの制限時間の宣告だ。
あと数分。
あるいは、それより短い。
その間に決着をつけるか、逃げ切るか、あるいは潰されるか。
選択肢はそれしか残っていない。
「堀北」
綾小路が低く呼ぶ。
「外周を切る。校門の正面は避ける」
堀北は即座に頷く。
「ええ、分かってる」
軽井沢、一之瀬、平田、ひよりはすでに外周側へ散っている。
完全に安全ではない。
だが、少なくともまとめて撃ち抜ける標的ではなくなった。
つまり――
この場で再び一点に収束する標的は、綾小路ただ一人になる。
龍園が動く。
「逃がすな!」
その声と同時に、激しいマシンガンの連射が走った。
乾いた連続音が夜を裂き、
弾丸が地面と壁と植え込みを叩きつけるように跳ね、
土と葉と細かな破片が一斉に宙へ舞い上がる。
狙っていない。
だが外してもいない。
動きを止めるための射撃。
その圧が一瞬で場を支配する。
「来るわよ!」
堀北が叫ぶ。
堀北が鋭く叫んだその声は、ただ接近を知らせるだけの警告ではなく、
前方を塞ぐ警官隊のライトと背後から押し寄せる追手たちの気配とが、
ついに同じ一点へ収束しきったことを告げる引き金のように、
綾小路の意識をさらに深い集中へ沈めるだけの強さを持っていた。
綾小路はその声が終わるより早く、すでに足へ力を込めていた。
校門正面へまっすぐ飛び込めば警官隊の制止と照準の只中に晒され、
かといってそこで立ち止まれば背後から迫る
龍園と宝泉に挟み込まれることも理解していた彼は、
わずかに右へ進路を切り、花壇の縁石を蹴り越えながら、
植え込みの陰と校門脇の死角とを
無理やり一本の細い逃走路へ繋ぎ合わせるような軌道で身体を滑り込ませた。
その直後、背後で銃声が走った。
最初の一発は探るような単発だったが、
綾小路たちが本当に校門正面ではなく右側の死角へ逃げると判断した瞬間、
龍園側の射撃はためらいを捨て、今度は長い連射となって
植え込みの上端と花壇の土と校門脇の壁面を容赦なく叩き、
弾丸そのものよりも、逃げる側の呼吸と判断を
乱すための圧として空間を塗り潰してきた。
堀北は綾小路の半歩後ろで身を低くしながら走り、
枝葉を掠めて飛ぶ破片と、
土を弾いて顔の横を散る細かな砂粒に目を細めつつも、決して足を止めなかった。
ここで一歩でも躊躇えば終わることを、彼女自身も理解していたからであり、
その理解が彼女の動きを恐怖ではなく、むしろ冷えた判断で支えていた。
「伏せて!」
次の連射が今度はさらに低く、
足元を削るような角度で走ってくるのを察した堀北は、
叫ぶのとほぼ同時に自分の身体を地面近くまで落とす。
綾小路もまたその声に合わせるように横へ転がる。
植え込みの影と花壇の縁石が作るわずかな窪みへ身体を沈めたが、
そのすぐ頭上を裂くように弾丸が走り抜け、枝が千切れ、葉が舞い、
夜の湿った空気に乾いた破裂音が鋭く重なった。
だが、その射撃は仕留めるためというより、動きを縛るためのものだった。
綾小路は耳に残る反響の中からそれを即座に聞き分ける。
龍園がこちらを撃ち倒すことよりも、
宝泉が届くまでの数秒を稼ぐために射線を敷いていると理解する一方で、
その理解が正しかったことを証明するように。
次の瞬間には植え込みの向こうから、
重量そのものが突っ込んでくるような重く速い足音が一直線に迫ってきた。
宝泉だった。
煙も、ライトも、警官隊の怒号も、龍園側の射撃も、
そのどれもが彼の突進を一瞬たりとも鈍らせる要因にはならない。
むしろ視界の悪さすら利用して最短距離だけを信じて走ってくるその姿は、
ここまでの戦いで何度も綾小路を苦しめてきた考えるより先に届く圧そのものだ。
「捕まえたぞ!」
宝泉の声が炸裂するように響いた直後、
その巨体が植え込みの影を破って飛び出し、
綾小路の目の前で一気に間合いを詰めてきたため、
普通なら反射的に下がりたくなる場面だったが、
綾小路は逆にその場で足の位置だけを小さくずらし、
真正面で受けるのではなく、
突進の軸をわずかに外へ逃がすためだけに身体の角度を変えた。
それでも、完全には殺しきれない。
宝泉の腕が肩口を掠めただけで重い衝撃が全身を揺らし、
綾小路の体勢は一瞬だけ後ろへ持っていかれ、足元の土が滑り、
視界がぶれるが、それでも彼は膝を折らず、倒れず、踏み止まり、
そのまま宝泉の進行線から半歩だけ身体をずらしきった。
「逃げ場ねえぞ!」
宝泉は獲物を追い詰めた側の確信を隠そうともせず、
むしろその圧を言葉ごと叩きつけるように笑ったが、
その瞬間、横から別の影が乱暴に割り込んできたことで、
綾小路にかかっていた圧はほんの一拍だけ歪んだ。
龍園だった。
彼は宝泉に綾小路を独占させるつもりなど最初からなく、
ここで宝泉が真正面から押し切る前に、
自分の手で盤面を奪い返すつもりで踏み込んできたのだろうが、
その強引な割り込みは結果として宝泉の直線と正面衝突し、
二人の進路は狭い植え込み脇の通路で醜くぶつかり合うことになった。
「そこどけ!」
龍園が怒鳴る。
だが、その声に返ってきた宝泉の反応は、先ほどまでのような拒絶ではなかった。
「なら遅れんなよ!」
低く吐き捨てる。
その瞬間だった。
龍園はマシンガンを肩へ引き寄せたまま引き金を絞り込み、
宝泉は真正面から地面を踏み抜くように加速する。
同時。
完全な同時攻撃だった。
乾いた連続音が夜気を裂く。
マシンガンの激しい掃射が花壇広場一帯を横薙ぎに走り、
赤い銃口炎が断続的に明滅するたび、
植え込みとコンクリートと鉄柵が火花と破片を激しく噴き上げる。
龍園は綾小路を直接撃ち抜こうとしているのではない。
回避先を削っている。
逃げ場を消している。
その圧で動きを縛り、その間に――
宝泉が来る。
真正面から。
一直線に。
「逃げんなぁ!」
咆哮とともに、宝泉の拳が空気を裂いて叩き込まれる。
綾小路はそれを真正面では受けない。
半歩だけ横へ。
だが避け切らない。
宝泉の腕が肩口を掠め、その衝撃で制服が大きく揺れる。
同時に龍園の掃射。
弾丸が綾小路の背後を裂き、花壇の縁石を粉砕しながら火花を撒き散らす。
逃げ場が狭い。
一瞬でも判断を誤れば、宝泉の拳か龍園の掃射、そのどちらかへ飲み込まれる。
だが綾小路は止まらない。
むしろ、二人の攻撃の隙間へ入り込むように動く。
龍園が掃射を右へ振る。
綾小路はその射線が動くより早く左へ滑る。
そこへ宝泉が踏み込む。
綾小路は地面を蹴って身体を沈め、宝泉の拳の下を抜けるように潜り込む。
次の瞬間、龍園の弾丸が宝泉の背後すれすれを掠めた。
「チッ、邪魔だ!」
龍園が怒鳴る。
「当ててみろやぁ!」
宝泉が笑う。
だがその言葉とは裏腹に、龍園の掃射は明らかに鈍っていた。
宝泉がいる。
つまり、撃ち抜けない。
そこを綾小路は逃さない。
一気に踏み込む。
龍園との距離を潰す。
龍園が即座に銃口を下げる。
発砲。
だが綾小路はその瞬間、左手で銃身を外側へ弾き飛ばしていた。
連射音。
弾丸が校門脇の鉄柵へ突き刺さり、激しい火花を噴き上げる。
「っ――!」
龍園が反応するより早く、綾小路の膝が腹へめり込む。
鈍い衝撃。
龍園の身体が沈む。
だがそこへ宝泉が割り込む。
拳。
重い。
綾小路は龍園を押し込むように利用しながら半歩引き、宝泉の拳を空振りさせる。
その勢いのまま宝泉の腕を掴み、逆方向へ流す。
宝泉の体勢が崩れる。
そこへ龍園が舌打ちしながらマシンガンを再び構え、
至近距離から掃射を叩き込んできた。
綾小路はそれを腕で受け流して弾丸の雨を躱す。
それだけでは止まらない。
綾小路は逆に龍園の懐へ入り込み、肩を押し込むように体重をぶつける。
龍園の重心が浮く。
そこへさらに宝泉が突っ込んでくる。
完全な乱戦だった。
銃撃。
格闘。
怒号。
火花。
すべてが狭い花壇広場で同時に炸裂している。
だが、その中心で綾小路だけが冷静だった。
龍園の連射。
宝泉の直線。
二人とも強い。
ただの喧嘩ではなく、生命を賭けた死闘であればその実力は上昇する。
だが二人とも綾小路を自分の手で潰したいという一点でしか噛み合っていない。
だからこそ、連携には必ず綻びが生まれる。
綾小路の視線が一瞬だけ横へ流れる。
文化祭準備で使われていた長ハシゴ。
壁際へ倒れかけたまま放置されていたそれを、綾小路は足先で強引に引き寄せた。
龍園が気づく。
「チッ――!」
だが遅い。
綾小路はそのまま長ハシゴを横薙ぎに持ち上げると、
頭上高く張られていた文化祭用の巨大横断幕の支柱へ思い切り叩きつけた。
金属音。
固定金具が外れる。
次の瞬間、巨大な布が一気に落下した。
「ッ!なにしやが――ッ!」
龍園の怒声が途中で潰れる。
横断幕が真正面から覆い被さったのだ。
視界が塞がれる。
腕へ絡みつく。
さらに布がマシンガンへ巻き付き、龍園の動きを一瞬だけ完全に止めた。
「クソがァッ!!」
龍園が乱暴に振り払おうとする。
だがその間に、宝泉との位置がズレる。
ほんの半歩。
綾小路はそこへ踏み込む。
横断幕から脱した龍園が再び銃を構える。
その瞬間、綾小路は宝泉の肩を押し込み、無理やり龍園の射線へ滑らせた。
「っ、おい!」
龍園が反射的に引き金を止める。
その一瞬。
綾小路の拳が龍園の顎へ突き刺さる。
龍園の頭が跳ねる。
さらに振り返りざま、今度は宝泉の腹へ鋭い打撃を叩き込む。
宝泉の巨体が揺れる。
だが止まらない。
「舐めんな!」
宝泉が吠えながら掴みかかる。
綾小路はその腕を逆に利用する。
掴ませる。
そのまま身体を捻り、宝泉の勢いを龍園側へ流す。
龍園が避けきれない。
二人の身体が激しく衝突する。
その瞬間だった。
綾小路のハイキックが、まず龍園の顔面へ叩き込まれる。
鈍い衝撃。
龍園の身体が後方へ吹き飛ぶ。
続けざま、綾小路は踏み込み直し、宝泉の顔面へも真正面から拳を突き刺した。
重い衝撃音。
宝泉の頭が大きく跳ね上がる。
二人の身体がほぼ同時に崩れる。
龍園は花壇脇のフェンスへ叩きつけられ、
マシンガンを滑り落としながら崩れ落ちる。
宝泉は植え込みへ半ば突っ込む形で倒れ込み、土と枝葉を激しく巻き上げた。
ほんの数秒。
だが、その数秒で花壇広場の勢力図は完全にひっくり返っていた。
そして――
だが、その破綻こそが綾小路の待っていたズレだった。
ほんの一瞬、ほんの僅かな乱れではあったが、
宝泉の進行線が龍園に押されて外へ流れ、
龍園自身も宝泉の肩を受けて踏み込みの深さを失ったことで、
本来なら逃げ場のない狭い帯状の空間に、
綾小路と堀北が抜けるための細い裂け目のようなものが生まれる。
綾小路はそれを見逃さなかった。
足元の砂を大きく蹴り上げ、
ライトと銃声と怒号で飽和した視界へさらに土埃を混ぜ込み、
龍園と宝泉の目線をほんの一瞬だけ下へ引きつけると、
同時に堀北の手首を強く掴んで反対方向へ身体ごと引き寄せて、
そのまま二人分の重心をまとめて死角側へ滑らせた。
「今!」
その一声には説明も確認もなく、
ただここしかないという一点の確信だけが込められており、
堀北もまたその意図を完全に読み切ったように一切の迷いを見せず、
弾けるような勢いで綾小路と同じ方向へ走り出した。
背後で立ち上がりつつある龍園の舌打ちが鋭く響く。
痛みにもがき苦しみながらも宝泉の咆哮がそれに重なる。
さらに一拍遅れて銃声がまた走るが、
今度の射撃はさきほどまでのように正確ではなく、
土埃と味方同士の衝突で視界を乱されたせいか、
花壇の縁石と鉄柵と植え込みの上端を荒々しく削るばかりで、
綾小路たちの足を完全には止めきれない。
距離が開く。
決定的な安全圏ではない。
だが追手が最短の形で届く距離でもなくなった。
その微妙な差こそが、生き残るかどうかを分ける最後の余白だった。
やがて前方に校門が見える。
赤色灯が規則的に明滅し、その脈動が夜の地面へ赤い影を落としている。
警官隊のシルエットも見える。
だが同時に、その前にはバリケードが組まれ、
校門正面からそのまま飛び出せば保護されるのではなく、
まず停止と制圧の対象として扱われることが一目で分かるような、
明確な封鎖線が敷かれていた。
「やっぱり……」
堀北が短く息を呑み、その視線の先で現実の冷たさを確認する。
「そのままは通れないわね」
「分かってる」
綾小路は減速しないまま返し、校門の真正面へ向かうふりすら見せず、
そのさらに右側、フェンス沿いへ強く進路を振った。
そこは通路と呼ぶにはあまりにも細く、
植え込みの張り出した枝と鉄柵の隙間が
辛うじて人ひとり分だけ空いている程度の狭さしかなく、
しかも足元も平らではないため、
普通なら逃走路として真っ先に切り捨てるような場所だった。
だが、だからこそ龍園側も坂柳側も本命ではないと見なす可能性があり、
警官隊からも死角になりやすい。
つまりこの局面においては、最も危険であると同時に最も生き残る道でもあった。
「そこ通るの!?」
堀北が思わず叫ぶが、その声に含まれているのは否定よりも驚きであり、
綾小路が選んだ時点で、それがもう唯一の現実的な道だと理解している。
「通るしかない!」
綾小路は短く返すと、身体を横へ薄くしながら先にその隙間へ滑り込み、
服の袖を枝に擦らせ、肩を鉄柵へぶつけ、
足元の土を鳴らしながらも無理やり前へ進み、
すぐ後ろから堀北も同じように身体を捻りながら続いた。
その瞬間、背後から銃声。
今度は近い。
弾丸が鉄柵へ直接ぶつかり、甲高い金属音とともに火花が散り、
その熱い破片が一瞬だけ夜の視界へ鋭い線を描いたが、
綾小路も堀北も止まらない。
止まれば詰まる。
詰まれば追いつかれる。
それだけは二人とも完全に共有していた。
そして、狭い隙間を抜けた先で視界が一気に開ける。
植え込みの陰から飛び出したその場所には、
すでに白いライトの束が待ち構えていた。
目の前に、警官隊がいる。
一斉にライトが向く。
銃口が揃う。
「止まれ!」
怒号が飛ぶ。
その声はこれまで校内で浴びてきたどんな怒鳴り声とも違い、
感情や衝動ではなく、外の世界の手順と責任によって裏打ちされた、
容赦のない現実の圧だった。
綾小路はその場で完全には止まらない。
ただ無謀に突っ込むわけでもなく、
制圧対象と誤認されるほど大きく動くわけでもなく、
ぎりぎりの位置で一歩だけ前へ出る。
堀北もその隣へ並ぶ。
そしてその背後には、まだ校内側の足音が迫ってくる。
全員がここまで辿り着く。
それはもはや確信に近かった。
つまり――
ここが最後の境界線だった。
校内の戦場と、外の秩序が真正面から衝突する一点。
逃げる側も、追う側も、止める側も、
全員がその意味を理解したまま立ち尽くすしかない、今夜ただ一つの終着点。
その境界の上に、綾小路清隆は立っていた。
■活動報告
今日から完結編である第四部の執筆作業に入りました。
現在進行している「ザ・ダイハード・マスターピース」は第一部です。
第二部から衣笠先生の別作品「暁の護衛」とのクロスオーバーになります。
第二部のタイトルは「ザ・ガンスリンガー・マスターピース」となります。
原作を知らない方でも楽しめるように書いているので安心して読めます。
よろしくお願いします。
【挿絵表示】