ザ・ダイハード・マスターピース 作:EXTERMINATION
白銀禁止区域の中で、盤面は強制的に入れ替えられた。
朝霧海斗は二階堂麗華を守るためにここまで来た。
綾小路清隆は堀北鈴音を救うために中央制御区画へ辿り着いた。
だが、坂柳有栖はその配置を許さなかった。
守る者と守られる者。
信頼する者と信頼される者。
その関係を入れ替えた時、人はどのような判断をするのか。
それを観察するために、彼女は白銀禁止区域の通路と
隔壁と換気ダクトを操り、二組の配置を静かに組み替えた。
結果として、朝霧海斗の前には堀北鈴音がいた。
そして、綾小路清隆の隣には二階堂麗華がいた。
それは二人が望んだ配置ではない。
だが、二人が拒める配置でもなかった。
赤い非常灯が瞬く緊急搬送路で、海斗は堀北の足元に膝をついていた。
電子ロック式の拘束具に金属片を差し込み、
火花を散らしながら内部の留め具をこじる。
堀北は壁に片手をつき、痛む足を動かさないようにしていた。
「乱暴ね」
「急いでいる」
海斗は短く答えた。
「綾小路くんなら、もう少し静かに外すわ」
「なら綾小路を呼べ」
「呼べるならそうしているわ」
堀北の言葉には、いつものような棘があった。
だが、その声はどこか普段より弱かった。
当然だった。
拘束され、移動させられ、目の前で綾小路が司馬と戦い続けている。
そのうえ自分は、見知らぬとは言わないまでも、
親しいとは言えない朝霧海斗に救助されている。
堀北鈴音にとって、それは落ち着かない状況だった。
海斗はその揺れを指摘しなかった。
ただ、拘束具の構造を見て、最短で外す方法だけを探していた。
「痛むなら言え」
「痛まないわ」
「嘘だな」
「……痛くても、言う必要はないでしょう」
「必要がある」
堀北は海斗を見下ろした。
「どうして?」
「走れるかどうかに関わる」
堀北は一瞬だけ黙った。
そして、小さく息を吐いた。
「右足首が少し痺れているわ。拘束が強すぎたせいね。
骨に異常はないと思うけれど、全力疾走は長く続かない」
「分かった」
海斗は即座に答えた。
それ以上は聞かなかった。
慰めもしない。
心配そうな顔もしない。
ただ、事実として受け取る。
その反応は、綾小路清隆に似ているようで違っていた。
綾小路なら、堀北の状態を見て最初から把握していたかもしれない。
海斗は言葉にさせた。
必要な情報を本人から引き出した。
それは冷たさではなく、守るための確認だった。
カチリ、と音がした。
拘束具が外れる。
堀北の足が自由になった。
彼女はゆっくり立ち上がろうとする。
だが、数歩分の血流が戻る感覚に足元が揺れた。
海斗が肩を支えた。
堀北は反射的にその手を払おうとしたが、途中で止めた。
今は意地を張る場面ではない。
「……ありがとう」
「礼は後でいい」
「後で言う保証はないわよ」
「なら今のでいい」
海斗は周囲を見た。
通路の先は二手に分かれている。
左は中央制御区画方面。
右は補助発電区画方面。
非常灯が赤く明滅し、天井の配管から白い蒸気が漏れている。
遠くでは、断続的に銃声が響いていた。
それは海斗の来た方向ではない。
もっと奥。
おそらく、麗華が送られた側。
つまり、綾小路がいる方向だった。
堀北も同じ音を聞いた。
「綾小路くんたちの方ね」
「おそらく」
「行くわ」
「駄目だ」
海斗は即答した。
堀北の眉が動いた。
「どうして?」
「今のお前では足手まといになる」
堀北の目が鋭くなる。
だが海斗は視線を逸らさない。
「事実だ」
「分かっているわ」
堀北は低く言った。
「でも、だからといって見捨てる理由にはならない」
「見捨てない」
海斗は通路の右側を見た。
「合流ルートを探す。正面から戻れば坂柳の罠に乗るだけだ」
堀北は一瞬だけ言葉を止めた。
そして、海斗の視線の先を追った。
補助発電区画。
通常なら中央制御区画とは別系統の通路だが、
施設が破損している今なら、メンテナンス用の連絡路が開いている可能性がある。
坂柳が完全に管理している白い区画ではなく、
事故と爆発によって半ば制御不能になった赤い区画。
そこを通れば、坂柳の盤面から少しだけ外れられるかもしれない。
「なるほど」
堀北は小さく頷いた。
「あなた、単純な護衛役ではないのね」
「単純な護衛なら、ここまで来ていない」
「それもそうね」
二人は右の通路へ進み始めた。
海斗が前。
堀北が後ろ。
ただし、完全に守られる形ではない。
海斗は堀北に壁側を歩かせながらも、彼女の視界を塞がない位置を保っていた。
堀北もそれに気づいた。
自分をただの荷物として扱っていない。
状況判断に参加させる余地を残している。
それは、少し意外だった。
「朝霧さん」
「海斗でいい」
「そう。なら海斗くん」
「くんはいらない」
「そこは譲らないわ」
海斗は何も言わなかった。
堀北は続けた。
「あなたは二階堂さんを守るために来たのよね」
「そうだ」
「今、彼女を綾小路くんに任せて平気なの?」
海斗の足が一瞬だけ止まりかけた。
だが、すぐに進む。
「平気ではない」
その答えは、堀北の予想とは少し違っていた。
海斗はもっと冷静に、大丈夫だと言うと思っていた。
「だが、信じるしかない」
「綾小路くんを?」
「麗華を守るという点ではな」
堀北は横目で海斗を見た。
「随分と評価しているのね」
「評価している。だが、信用とは少し違う」
「どう違うの?」
「綾小路清隆は、必要なことをする」
海斗は短く言った。
「麗華を守ることが必要なら、必ず守る」
堀北はその言葉を聞いて、少しだけ複雑な表情を浮かべた。
それは確かに綾小路清隆という人間の説明として間違っていない。
だが、どこか寂しい説明でもあった。
必要だから守る。
必要だから助ける。
それは信頼できる。
だが、少しだけ遠い。
「あなたは違うのね」
堀北が言った。
「何がだ」
「必要だから守るわけじゃない。失いたくないから守る」
海斗は答えなかった。
沈黙が、その答えだった。
一方、中央制御区画へ続く隔壁の内側では、
綾小路清隆と二階堂麗華が並んでいた。
いや、正確には並んでいるというより、
綾小路が前に立ち、麗華がその後ろにいる。
隔壁の向こうからは重い衝撃音が響いている。
司馬が追っている。
月城が操作している。
坂柳が見ている。
敵は一人ではない。
この場所全体が敵だった。
麗華は足首を気にしながらも、必死に立っていた。
「本当に、海斗は大丈夫なの?」
「動いている限りは大丈夫だ」
「その言い方、安心しづらいんだけど」
「安心させるための言葉じゃない」
綾小路は通路の先を見ながら答えた。
「状況を正しく見るための言葉だ」
麗華は唇を結んだ。
冷たい。
本当に冷たい。
だが、不思議と嘘はない。
海斗は守るために安心させることがある。
綾小路は安心させるための嘘を選ばない。
そこが決定的に違う。
麗華は壁に手をつきながら歩いた。
「あなた、海斗とは全然違うのね」
「そうだな」
「でも、少し似ている」
綾小路は答えなかった。
麗華は続けた。
「海斗はあなたを知っていた。あなたのことを、ただの学生じゃないみたいに見ていた」
「そうか」
「驚かないんだ」
「驚く材料がない」
麗華は小さく笑った。
「海斗もそういうところがある。必要なことだけ言って、
必要じゃないことは言わない。でも、海斗はもっと分かりやすい」
「そうだろうな」
「あなたは、分かりにくい」
「よく言われる」
綾小路は足を止めた。
通路の先に、退学者が三人いた。
銃を持っている。
殺傷用ではないが、至近距離なら十分に危険な武器だ。
麗華が息を呑む。
綾小路は彼女を壁際へ下がらせた。
「動くな」
「うん」
銃口が向く。
「いたぞ!」
「撃て!」
発砲音。
綾小路はすでに動いていた。
弾が壁に当たり、破片が散る。
綾小路は床を蹴って斜めに入り、一人目の腕を取る。
銃口を上へ逸らす。
発砲。
弾は天井へ吸い込まれる。
二人目が横から狙う。
綾小路は一人目の身体を盾にはしなかった。
代わりに、一人目の腕を押し、銃の向きを二人目の足元へ逸らす。
二人目が反射的に下がる。
その一歩で射線が崩れた。
綾小路は間合いへ入る。
手首。
肘。
肩。
三点を同時に制御するような動きで、二人目の武器を落とす。
三人目が発砲しようとする。
麗華の位置から見れば、完全に撃たれるタイミングだった。
だが、綾小路は焦らない。
床に落ちた銃を蹴り上げる。
銃身が三人目の手首に当たる。
照準がずれる。
その瞬間、綾小路は踏み込み、相手の胸元へ掌を当てて壁に押し込んだ。
一瞬で三人が無力化された。
麗華は言葉を失っていた。
海斗の戦いは、守るために身体を張る戦いだった。
殴られ、受け止め、それでも前へ進む。
だが綾小路の戦いは違う。
そもそも相手に戦わせない。
撃たせない。
崩し、奪い、終わらせる。
そこに熱はなかった。
だが、恐ろしいほど安全だった。
麗華は小さく息を吐いた。
「……海斗と違う」
「そうだろうな」
「でも、守られている感じはする」
「それなら問題ない」
綾小路は落ちた銃を拾わず、弾倉だけを抜いて遠くへ滑らせた。
麗華はそれを見て言った。
「使わないの?」
「今は必要ない」
「今は?」
「必要になれば使う」
その言葉に、麗華は少しだけ背筋が冷えた。
必要になれば、綾小路は迷わない。
それは海斗にも似ている。
だが、やはり違う。
海斗は守るために選ぶ。
綾小路は勝つために選ぶ。
その差が、麗華にははっきりと見えた。
その頃、補助発電区画へ向かう通路では、
海斗と堀北が別の障害に直面していた。
通路の先が火花で塞がれている。
破損した電源ケーブルが床に垂れ、そこへ水が流れ込んでいた。
不用意に進めば感電する。
堀北はすぐに状況を見た。
「迂回する?」
「坂柳なら、迂回路に誘導している」
「つまり、ここを越えろということ?」
「そう見せて、越えさせたくない可能性もある」
「面倒ね」
「同感だ」
海斗は周囲を確認した。
壁に非常用の絶縁シートが収納されている。
ただし、扉はロックされている。
堀北がそれを見て言った。
「開けられる?」
「壊せる」
「また乱暴ね」
「急いでいる」
「その言葉、便利ね」
海斗は収納扉の隙間に金属片を差し込み、力を加えた。
扉が歪む。
だが開かない。
堀北は横から覗き込んだ。
「待って。力任せに開けると、中の固定具まで壊れるかもしれない」
「代案は?」
「右下の蝶番が錆びている。そこだけ外せば扉ごと開くはず」
海斗は視線を落とした。
確かに、右下の蝶番だけが劣化している。
施設の維持管理が完璧でも、非常設備の細部までは同じではない。
「よく見ているな」
「あなたが見なさすぎなのよ」
堀北はそう言ったが、少しだけ声に余裕が戻っていた。
海斗は右下の蝶番を壊し、扉を外した。
中から絶縁シートを取り出す。
それを床に敷き、堀北を先に渡らせる。
「先に行け」
「あなたは?」
「後から行く」
堀北は海斗を見た。
「また残るつもり?」
「違う。お前の足では、後ろから急かされるより先に渡った方がいい」
「……合理的ね」
「綾小路ならそう言うだろう」
「彼なら、もっと腹の立つ言い方をするわ」
堀北は絶縁シートの上を慎重に進んだ。
足に痺れが残っているため、動きは速くない。
海斗は背後を警戒しながら待つ。
その時、通路奥の扉が開いた。
退学者が現れる。
二人。
三人。
さらに後ろにもう一人。
銃を持っている。
「堀北、急げ」
「分かってる」
堀北は足を速めた。
だが、シートの上では無理に走れない。
退学者の銃口が向く。
海斗は床に落ちた金属板を蹴り上げた。
銃声。
弾が金属板に当たり、火花が散る。
海斗はその隙に前へ出た。
ただし、堀北から離れすぎない位置まで。
一人目の銃を持つ腕を払う。
二人目の膝を蹴る。
三人目が距離を取る。
海斗は追わない。
堀北の方が優先だった。
その判断を、退学者たちは利用する。
一人があえて後ろへ下がり、海斗の注意を引く。
別の一人が堀北へ銃口を向ける。
海斗の目が鋭くなる。
「堀北!」
堀北は振り返らなかった。
代わりに、足元の絶縁シートの端を蹴った。
シートがめくれ、床の水がわずかに動く。
退学者の足元へ水が広がる。
その瞬間、火花が走った。
退学者は反射的に足を引く。
発砲のタイミングがずれた。
海斗はその一瞬で距離を詰め、相手の銃を叩き落とした。
「助かった」
海斗が言った。
堀北は振り返り、肩で息をしながら答えた。
「あなたこそ、少しは感謝しなさい」
「今した」
「もっと分かりやすく」
「助かった、堀北」
堀北は一瞬だけ目を丸くした。
そして、わずかに口元を緩めた。
「それでいいわ」
退学者たちは戦闘不能になり、通路に倒れている。
海斗は武器を回収せず、弾倉だけを抜いた。
堀北はそれを見て言った。
「綾小路くんも同じことをしていたわ」
「そうか」
「あなたたちは似ているわね」
「違う」
海斗は即答した。
堀北は少し驚いたように彼を見た。
「そう?」
「似ている部分はある。だが、同じじゃない」
「自分で言うのね」
「同じなら、麗華はオレを必要としない」
その言葉に、堀北は何も返せなかった。
海斗にとって、二階堂麗華を守ることは役割以上のものだった。
それは仕事であり、誓いであり、存在理由の一部になっている。
だからこそ、彼は綾小路清隆とは違う。
合理性だけでは動かない。
失いたくないものがある。
その弱点を、坂柳は突いている。
だが、その弱点こそが、海斗を前へ進ませている。
中央制御区画側では、綾小路と麗華が別の通路へ出ていた。
そこは武器保管用の小部屋に近い場所だった。
壁際には破損したラック。
床には空の弾倉。
誰かがすでにここを荒らした後だった。
麗華は不安げに周囲を見る。
「ここ、危なくない?」
「危ない」
「即答しないでほしいんだけど」
「だが、通る必要がある」
綾小路はラックの奥を確認した。
一部の保管ケースが残っている。
ロックは壊れている。
中には銃器がいくつか残っていた。
ただし、状態は悪い。
弾がないもの。
部品が外れているもの。
明らかに囮として置かれたもの。
綾小路はその中から一つを取り出した。
ショットガン。
短銃身のものだった。
麗華は目を見開いた。
「使うの?」
「必要になった」
綾小路は銃の状態を確認した。
弾は少ない。
連射はできない。
だが、狭い通路での威嚇と制圧には十分な存在感がある。
もちろん、撃つことが目的ではない。
撃たせないこと。
近づかせないこと。
相手に選択を誤らせること。
それが目的だった。
麗華は思わず言った。
「海斗は、たぶんマシンガンの方を選ぶと思う」
「だろうな」
「分かるの?」
「性質の違いだ」
綾小路はショットガンを持ち、通路の先を見た。
「海斗は守る範囲を広げる武器を選ぶ。オレは通路を止める武器を選ぶ」
麗華はその言葉を噛みしめた。
確かに、海斗なら麗華や堀北を背後に置き、
複数の敵を近づけないために弾幕を張る武器を選ぶだろう。
綾小路は違う。
相手の進路そのものを潰す。
一発で状況を止める。
それが彼の選び方だった。
その頃、補助発電区画を抜けた先で、
海斗と堀北も別の武器保管ラックを見つけていた。
こちらは退学者たちが使用した後らしく、ほとんど空だった。
だが奥に、一丁だけ残っていた。
小型のマシンガン。
弾倉は半分ほど。
状態は悪くない。
堀北はそれを見て眉をひそめた。
「使うの?」
「状況による」
海斗はそれを手に取った。
重さを確認する。
残弾を確認する。
安全装置を確認する。
堀北は少しだけ不安そうに見た。
海斗はそれに気づいた。
「撃ち合うつもりはない」
「そう」
「ただ、通路を突破するには必要になる」
「綾小路くんなら、どうするかしら」
「ショットガンを選ぶ」
堀北は目を細めた。
「どうして分かるの?」
「広い場所ではなく、狭い通路を制圧するならその方が向いている。
あいつは無駄弾を嫌う」
「あなたは?」
「堀北を動かすために、敵を近づけない必要がある」
「私を荷物扱いしている?」
「怪我人扱いだ」
「どちらにしても腹が立つわね」
「なら早く走れるようになれ」
堀北は言い返そうとして、やめた。
確かに、その通りだった。
海斗はマシンガンを肩にかけ、通路の先へ進む。
堀北はその背中を見た。
綾小路とは違う背中。
だが、不思議と頼れる背中だった。
その時、施設全体に坂柳の声が響いた。
『そろそろ、配置に慣れてきた頃でしょうか』
海斗と堀北。
綾小路と麗華。
それぞれが足を止める。
『朝霧さん。あなたは堀北さんをどこまで守れるのでしょう』
坂柳の声は楽しそうだった。
『綾小路くん。あなたは二階堂さんを守る時、どこまで合理性を保てるのでしょう』
白い照明が点滅する。
赤い非常灯が混じる。
二つの色が施設の中で交互に揺れる。
『そして、二階堂さんと堀北さん。
あなた方は、守られるだけで満足できるのでしょうか』
その言葉に、麗華と堀北の表情が変わった。
麗華は綾小路の後ろで拳を握る。
堀北は海斗の背後で前を見据える。
二人とも、守られるだけで終わるつもりなどなかった。
坂柳はそれすら読んでいる。
読んだうえで、盤面に乗せている。
綾小路はショットガンを構え直した。
海斗はマシンガンの弾倉を確認した。
互いに別々の場所にいる。
だが、選んだ武器はまるで互いの性質を映しているようだった。
そして同時に、いつか入れ替わるための伏線でもあった。
通路の先で、複数の扉が開く。
退学者たちの足音が響く。
月城の声が混じる。
司馬の影が動く。
坂柳のチェス盤は、まだ終わっていない。
海斗は堀北を背後へ下がらせた。
「離れるな」
「命令?」
「警告だ」
「なら聞くわ」
綾小路は麗華に視線だけを向けた。
「壁沿いに進め。オレの前には出るな」
「分かった」
「足が痛むなら言え」
麗華は少し驚いた。
綾小路が、必要以上の確認をしたように聞こえたからだ。
「……痛む。でも走れる」
「それでいい」
綾小路は前を向いた。
海斗はマシンガンを構えた。
綾小路はショットガンを構えた。
二人は別々の通路で、同時に前へ進む。
守る相手は入れ替わった。
武器も違う。
戦い方も違う。
だが、目的は同じだった。
生きて合流すること。
堀北鈴音を守ること。
二階堂麗華を守ること。
そして、坂柳有栖の白いチェス盤を、盤面ごと崩すこと。
最初の銃声が響いた。
白銀禁止区域の中盤戦が、静かに、そして激しく始まった。
モチベ維持のために感想・評価をもらえると幸いです。