ザ・ダイハード・マスターピース 作:EXTERMINATION
船は揺れていた。
大型クルーズ船の内部に響く重い振動。
それは波の揺れではなかった。
船内のどこかで起きている爆発。
ジャンボーが撃ち続けるM60の轟音。
敵が起動しようとしているエネルギー干渉装置。
その全てが、海上の城を内側から軋ませていた。
綾小路清隆、朝霧海斗、七瀬翼の三人は、
劇場区画を抜け、上層通信室へ続く非常階段を駆け上がっていた。
赤い非常灯。
白い壁。
金属製の階段。
足音が狭い空間に反響する。
海斗は息を切らしながら言った。
「ホテル、海、森、港、船……そろそろテーマパーク一周したな」
綾小路は前を見たまま答える。
「まだ通信室が残っている」
「真面目に返すなよ」
七瀬が後方を警戒しながら言う。
「敵の足音が近づいています。下から六人、上にも反応があります」
海斗がベレッタを確認する。
「弾が少ねぇってのに」
綾小路もガバメントの残弾を確認した。
多くはない。
ここまでの戦闘で、装備はかなり消耗している。
それでも止まる選択肢はなかった。
上層通信室が落ちれば、敵はクルーズ船から島の研究施設へ再接続し、
エネルギーコアのロックを突破しようとする。
そうなれば、麗華が守っている技術も、
島の電源制御も、避難民の安全も危うくなる。
無線に坂柳有栖の声が入った。
『綾小路くん、通信室まであと二層です。
ただし、敵がその手前のラウンジ区画を封鎖しています』
堀北鈴音が続く。
『通信室へ向かうルートは三つ。正面ラウンジ、外部デッキ、乗員通路。
乗員通路はすでに敵に爆破されているわ』
麗華の声も入る。
『外部デッキは海風が強い上に、上から狙われる。
けれど、正面より敵は少ないはずよ』
海斗が叫ぶ。
「外に出るのか?」
綾小路は即答する。
「出る」
「だと思った」
七瀬が少しだけ苦笑する。
「高所の外部デッキで銃撃戦ですね」
海斗が肩をすくめる。
「豪華客船らしくなってきたな」
「らしくはない」
綾小路は非常階段の扉を開けた。
外部デッキへ出た瞬間、強烈な海風が三人を叩いた。
夜の海。
遠くで燃えるコンテナ港。
船体の下では波が白く砕けている。
デッキにはガラスの手すり、救命ボート、照明、観光用のベンチが並んでいる。
その奥に、通信室へ続く上層ラウンジの入口が見えた。
だが、予想通り敵がいた。
甲板の左右に四人。
上部通路に二人。
さらに、救命ボートの影に一人。
三人が出た瞬間、敵が銃を向けた。
「侵入者!」
銃声。
海風の中、弾丸がデッキを跳ね、ガラス手すりを砕く。
綾小路はベンチの裏へ滑り込み、
海斗は救命具収納箱を蹴り倒して遮蔽物にする。
七瀬は即座に片膝をつき、上部通路の敵を狙う。
一発。
敵のライフルが弾かれる。
二発。
もう一人の通信機が砕ける。
海斗はベレッタ二丁を抜き、左右の敵を同時に牽制した。
「風強すぎだろ!」
綾小路が返す。
「弾道が流れる」
「冷静に言うな!」
敵の一人が救命ボートの影からグレネードを投げた。
綾小路が気づく。
「伏せろ!」
グレネードはデッキ中央で爆発した。
火花と破片が飛び散り、救命ボートの一部が吹き飛ぶ。
爆風でガラス手すりが砕け、破片が海へ落ちていく。
七瀬が体勢を崩す。
海斗が腕を掴む。
「落ちるな!」
「ありがとうございます!」
綾小路は爆煙の中を走り、グレネードを投げた敵へ接近する。
敵が銃を構えるより早く、綾小路は手首を蹴り上げ、肘を入れて倒した。
同時に海斗が敵の足元へ連射。
敵が後退した隙に、七瀬が上部通路の残る敵の銃を撃ち落とす。
デッキの敵は制圧された。
だが、その奥のラウンジ扉が開く。
盾を持った敵部隊が出てきた。
大型の防弾盾。
その後ろから銃口が覗いている。
海斗が顔をしかめる。
「盾持ちか」
綾小路は周囲を見る。
救命ボート。
固定ワイヤー。
デッキ照明。
そして、海風で揺れる大型の日除けパネル。
「七瀬、右上の固定具」
七瀬は即座に狙う。
一発。
日除けパネルの右側固定具が弾ける。
綾小路が左側を撃つ。
パネルが風に煽られ、大きくめくれ上がった。
海斗が叫ぶ。
「いい風だな!」
海風を受けたパネルは盾部隊の側面へ叩きつけられた。
盾持ちがバランスを崩す。
そこへ海斗が走る。
ショットガンの轟音。
盾が横へ弾かれる。
綾小路は隙間を抜け、盾の後ろの敵の武器を撃ち落とした。
七瀬が最後に後方の敵の足元を撃つ。
ラウンジ入口が開いた。
三人はすぐに中へ飛び込む。
上層ラウンジは、豪華な展望空間だった。
天井まで続くガラス窓。
海を見下ろすソファ席。
バーカウンター。
ピアノ。
シャンパンタワー。
本来なら夜景を楽しむ場所。
今は敵の通信中継拠点に変わっていた。
テーブルにはノート端末が並び、壁には仮設アンテナ用ケーブルが張られている。
数人の技術兵が端末を操作していた。
そして、奥の扉の向こうが通信室だった。
麗華の声が緊迫する。
『そのラウンジから通信室へ入れる!
でも、敵が干渉装置を起動し始めているわ!』
坂柳が続ける。
『あと五分以内に止めないと、研究施設側のロックが破られます』
海斗が舌打ちする。
「五分かよ」
綾小路は言う。
「十分だ」
「その十分は信用できるか?」
「五分ある」
「答えになってねぇ」
敵技術兵がこちらに気づく。
「侵入者だ!」
ラウンジ内で銃撃戦が始まる。
綾小路はソファの裏へ入り、敵の端末を撃たないように動く。
必要なのは破壊ではなく奪取。
海斗はバーカウンターを盾にして敵を引きつける。
弾丸が酒瓶を次々と割り、床に酒が広がる。
七瀬はガラス窓側から回り込み、敵の武器だけを撃つ。
敵の一人が端末を破壊しようとする。
綾小路が先に撃った。
敵の手元から銃が飛ぶ。
海斗が叫ぶ。
「端末壊すなよ!」
「分かっている」
「お前に言ったんじゃねぇ!」
敵がバーカウンター側の照明へ撃ち込み、火花が散った。
床に広がった酒に火がつく。
青白い炎が走る。
海斗が顔をしかめる。
「今度はこっちが燃やされる側か!」
綾小路はすぐにスプリンクラーの手動弁を撃つ。
水が降り注ぎ、炎が弱まる。
同時に水煙が広がり、視界が白くなる。
七瀬がその中から敵の足元を撃ち、綾小路が接近して制圧する。
海斗はカウンターを飛び越え、最後の敵を蹴り倒した。
ラウンジの敵は沈黙した。
だが、奥の通信室から重い機械音が響いている。
麗華の声。
『干渉装置の出力が上がっている!』
綾小路は端末へ接続機を差し込む。
「坂柳、麗華、入れるか」
坂柳の声が返る。
『接続確認。麗華さん、認証を』
麗華が即座に答える。
『入ったわ。船内ネットワークの一部を奪えた』
堀北が言う。
『通信室のロックを開けられる?』
麗華が少しだけ間を置く。
『敵が内側から固定している。外部ロックだけでは無理』
海斗が扉を見た。
分厚い防火扉。
「壊すか」
七瀬が言う。
「爆薬が必要です」
綾小路はラウンジの壁にある非常用装備を見た。
消火斧。
救命具。
非常用工具。
そして、敵が置いた小型爆破装置。
「敵の爆薬を使う」
海斗が笑う。
「返却だな」
綾小路は爆破装置を確認する。
殺傷用ではなく扉破壊用。
使える。
七瀬が周囲を警戒する。
「敵が来ます。下層から増援」
海斗はベレッタを構えた。
「時間稼ぎは任せろ」
綾小路は爆薬を扉へ設置する。
麗華の声が入る。
『扉の左側は通信ケーブルが通っているわ。
そこを壊すと端末も落ちる。右側のヒンジ部分を狙って』
「了解」
綾小路は爆薬の位置を変える。
七瀬が敵増援を撃つ。
海斗はラウンジ入口で敵を止める。
銃弾がソファを裂き、ピアノの鍵盤を砕く。
ピアノが不協和音を鳴らしながら壊れていく。
海斗が叫ぶ。
「高そうなピアノだぞ!」
綾小路が返す。
「敵に請求だ」
「船ごと請求だな!」
爆薬のセットが終わる。
「下がれ」
三人が遮蔽物へ飛び込む。
爆発。
通信室の扉の右側が吹き飛び、重い金属扉が傾いた。
海斗が体当たりで押し開ける。
「開いたぞ!」
三人は通信室へ突入した。
内部は巨大な機械室だった。
壁一面の通信機器。
衛星アンテナ制御端末。
島の研究施設へ干渉するための大型装置。
中央には黒い箱状の装置があり、青白い光を放っている。
それがエネルギー干渉装置だった。
装置の周囲には技術兵が数名。
さらに、奥に一人の男が立っていた。
コマンダーだった。
今回は重火器を持っていない。
だが、腰には拳銃。
背中にはショットガン。
片手には葉巻。
そして、いつものように笑っていた。
「よう、来たな」
海斗が顔をしかめる。
「またお前か」
「俺の船だからな」
綾小路は静かに言う。
「この船はお前のものじゃない」
コマンダーは笑う。
「今夜だけは借りてる」
七瀬がライフルを構える。
「装置を止めます」
コマンダーは肩をすくめる。
「止められるならな」
技術兵たちが端末を操作する。
麗華の声が無線で叫ぶ。
『出力がさらに上がった!綾小路くん、その中央装置を止めて!
ただし完全破壊すると逆流が起きる可能性がある!』
海斗が叫ぶ。
「壊せばいいってわけじゃねぇのか!」
坂柳が答える。
『停止コードを入力する必要があります。
麗華さんが解析していますが、時間が必要です』
堀北が言う。
『その間、装置と端末を守って』
コマンダーが大笑いした。
「つまり、俺が邪魔すればいいわけだ!」
彼はショットガンを抜いた。
銃声。
通信室内の端末が火花を散らす。
綾小路はすぐに前へ出る。
「端末を撃たせるな!」
海斗がコマンダーへ向かう。
「こっちだ、うるさい筋肉!」
コマンダーが笑う。
「呼んだか、護衛さん!」
二人の撃ち合いが始まる。
狭い通信室。
遮蔽物は機械と端末。
壊せないものが多い。
海斗は派手に撃てない。
コマンダーもそれを分かっていて、端末の近くを動く。
海斗が舌打ちする。
「嫌らしい動きしやがって!」
「俺も馬鹿じゃないんでね!」
「嘘つけ!」
「馬鹿は認めるが戦場では賢い!」
「面倒くせぇ!」
綾小路は中央装置へ向かう技術兵を制圧する。
七瀬は通信室奥の高いキャットウォークへ上がり、敵の武器だけを狙う。
技術兵の一人が停止コード入力用端末を破壊しようとする。
七瀬が先に撃つ。
銃が弾かれる。
綾小路が接近し、床へ押さえ込む。
「麗華、コードは」
『まだ……あと二分!』
海斗がコマンダーのショットガンをかわしながら叫ぶ。
「二分が長ぇ!」
コマンダーが笑う。
「じゃあ短くしてやる!」
彼は床へ小型爆弾を投げた。
狙いは装置ではない。
通信室の天井配管。
綾小路が気づく。
「上だ!」
爆発。
天井の配管が破裂し、高温の蒸気が噴き出す。
視界が白くなる。
装置の警告音が鳴る。
麗華の声がさらに焦る。
『冷却系が乱れてる!このままだと装置が暴走する!』
坂柳が言う。
『冷却バルブを手動で戻す必要があります。通信室右奥です』
七瀬が位置を確認する。
「私が行きます」
綾小路が言う。
「敵がいる」
「分かっています」
七瀬はキャットウォークから飛び降り、蒸気の中を走る。
敵が撃ってくる。
七瀬は低く滑り込み、銃弾を避ける。
一人の武器を撃ち落とし、もう一人を足払いで倒す。
バルブへ到達。
両手で回す。
固い。
動かない。
七瀬が歯を食いしばる。
「動いて……!」
その時、無線から森下の声が響いた。
『七瀬翼!右回しです、たぶん!』
ツキがすぐに言う。
『藍ちゃん、たぶんで船を救おうとしないで。左だから』
『えっ、左ですか?』
『画面に書いてある。藍の自信はなぜいつも根拠を追い越すのでしょう』
『才能かもしれません』
『危険な才能』
『履歴書に書けますかね』
『おすすめしない』
『残念です』
尊徳の声が少し砕けた丁寧さで割り込む。
『七瀬さん、左へ回してください。彩様が図面で確認しています』
彩の声も続く。
『はい!左です!』
七瀬は即座に左へ回した。
バルブが動く。
蒸気の噴出が弱まった。
麗華が言う。
『冷却安定!助かったわ!』
七瀬は息を吐く。
「ありがとうございます」
ツキが軽く言う。
『藍ちゃんのたぶんを止めた成果です』
森下が叫ぶ。
『私も応援しました』
海斗はコマンダーと撃ち合いながら思わず笑った。
「向こうは向こうで忙しそうだな!」
コマンダーが言う。
「仲間が多くて羨ましいねぇ!」
「そっちは部下が多いだろ!」
「部下と仲間は違うだろ?」
海斗は一瞬だけ目を細めた。
「分かってるじゃねぇか」
コマンダーは笑った。
「だから面白いんだよ、お前らは!」
彼はショットガンを撃つ。
海斗は横へ飛び、ベレッタ二丁で反撃する。
コマンダーの肩装備が弾ける。
だが、コマンダーは止まらない。
綾小路は端末へ到達した。
麗華の声。
『停止コード、出たわ!入力する!』
端末に文字列が走る。
だが、敵技術兵が非常停止を妨害しようと別端末へ手を伸ばす。
綾小路が撃てない角度。
七瀬も間に合わない。
その瞬間、ジャンボーのM60が通信室の壁の外から火を噴いた。
壁の一部が穴だらけになり、敵技術兵の手元の端末だけが粉砕された。
三人が一瞬止まる。
通信室の反対側の扉が吹き飛ぶ。
ジャンボーが入ってきた。
M60二丁。
無表情に近い顔。
だが、目は中央装置を見ている。
「……うるさい機械だ」
海斗が叫ぶ。
「お前も十分うるせぇよ!」
ジャンボーは反論しない。
コマンダーが顔をしかめる。
「おいジャンボー!船を壊すなって言っただろ!」
ジャンボーは低く言う。
「……船が森を焼く」
「だから使うんだよ!」
「なら壊す」
ジャンボーがM60を構える。
コマンダーがショットガンを構える。
一瞬、戦場の構図が変わった。
コマンダー対ジャンボー。
綾小路、海斗、七瀬はその隙に中央装置へ向かう。
麗華が叫ぶ。
『停止コード入力開始!十秒!』
坂柳が続く。
『その間、端末を守ってください!』
コマンダーが走る。
「止めさせるか!」
海斗が前へ出る。
「行かせねぇよ!」
ジャンボーのM60がコマンダーの進路を塞ぐ。
コマンダーは横へ跳び、ショットガンを撃つ。
ジャンボーの肩をかすめる。
ジャンボーは怯まない。
二丁のM60の片方で敵兵を抑え、もう片方でコマンダーの足元を撃つ。
通信室内は滅茶苦茶だった。
端末は火花を散らし、蒸気が漂い、警報が鳴り、銃声が反響する。
七瀬は残った技術兵を制圧。
綾小路は端末前で防御。
海斗はコマンダーを牽制。
ジャンボーは機械と敵をまとめて黙らせようとしている。
麗華の声。
『五秒!』
堀北の声。
『持ちこたえて!』
一之瀬の声も入った。
『みんな、お願い……!』
軽井沢。
『負けんな!』
ひより。
『帰ってきてください』
森下。
『綾小路清隆!朝霧海斗!七瀬翼!
ジャンボーさんも……えっと、頑張ってください』
ツキがすぐにからかう。
『森下藍、ついに敵味方不明の怪物まで応援し始めた。守備範囲が広い』
『ありがとうございます』
『褒めてない』
『違うんですか』
『違う』
『では訂正します』
『どうぞ』
『守備範囲が異常に広いです』
『より悪化した』
『進化です』
『退化かもしれない』
『難しいですね』
海斗が思わず叫ぶ。
「ちょっと味方っぽいって何だよ!」
ジャンボーは小さく言った。
「……少しだけだ」
海斗が驚く。
「反応した!?」
その間にコード入力が進む。
麗華。
『三、二、一……停止!』
中央装置の青白い光が消えた。
低い駆動音が止まる。
警告音も止まる。
エネルギー干渉装置は停止した。
坂柳が息を吐く。
『研究施設への干渉、遮断されました』
麗華の声が震える。
『エネルギーコア、無事よ……!』
堀北も安堵する。
『よかった……』
通信室に、一瞬だけ静寂が訪れた。
だが。
コマンダーはまだ笑っていた。
「やるじゃねぇか」
彼はショットガンを下ろし、ゆっくり後退する。
海斗が銃を向ける。
「逃げる気か?」
「逃げるんじゃねぇ」
コマンダーは笑った。
「ステージを変えるんだよ」
綾小路が警戒する。
「次はどこだ」
コマンダーは上を指差した。
「最上甲板」
七瀬が言う。
「まだ何かあるんですか」
コマンダーは肩をすくめる。
「この船には最後の花火が積んである」
麗華の声が鋭くなる。
『まさか、船の自爆装置?』
コマンダーは笑う。
「正確には、自爆じゃない。派手な撤収用だ」
綾小路はすぐに理解した。
「証拠隠滅と撤退路確保か」
「ご名答」
ジャンボーが低く言う。
「……船が沈む」
コマンダーは煙幕弾を床へ叩きつけた。
白煙が一気に広がる。
海斗が撃つ。
だが、コマンダーの姿は煙の中へ消えた。
遠くで扉が開く音。
そして、彼の声。
「最終ラウンドだ!最上甲板で待ってるぜ!」
煙が晴れる。
コマンダーはいない。
ジャンボーは無言で扉の方を見る。
綾小路は端末を見る。
停止装置は守れた。
だが、船内の危機は終わっていない。
坂柳の声が入る。
『船内上部で新たな熱源反応。爆薬と思われます』
堀北が言う。
『最上甲板へ向かう必要があるわね』
麗華が続く。
『船が沈めば、乗っている全員が危険になる。敵も、あなたたちも』
海斗がベレッタをリロードする。
「結局、最後まで走るのか」
綾小路もガバメントを確認する。
「ああ」
七瀬がライフルを背負う。
「行きましょう」
ジャンボーはM60を肩に担いだ。
海斗が見る。
「お前も来るのか?」
ジャンボーは短く答えた。
「……船を止める」
海斗は少し笑った。
「なら、ちょっと味方っぽいな」
ジャンボーは海斗を見る。
「騒がしい」
「はいはい」
四人は通信室を出た。
目指すは最上甲板。
コマンダーが待つ死のステージ。
海上の城は、さらに激しく揺れ始めていた。