境界線PCU~多様性ワールドへようこそ~   作:トナカイ粉砕

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いつもお読みいただきありがとうございます。
冷たい番号編、中編です!

被害者である会計士が命懸けで遺した、不可解な数字の暗号。
PCUの面々がその謎に挑みますが、そこには思わぬ“若さという名の暴力(ジェネレーションギャップ)”が大人たちを待ち受けていました。
暗号の先へと急行するスレイたちの活躍にご注目ください!


境界線012-冷たい番号編(中編)

モニターに映し出された四回の不自然な振込額『3571』『13968』『1014』『9852』を前に、裏の掃除屋たちは頭を悩ませていた。

 

「この数字、まずは振込額という事実から離れて、ただの文字列として紐解いてみるとしよう」

スレイが腕を組み、メンバーに視線を送る。

 

「そうね……数字の語呂合わせ、いわゆる『ポケベル打ち』ではなさそうね」

マリアがキーボードを叩きながら、かつて一世を風靡した暗号方式を口にする。

「ええ。変換してみても全く意味がわからない文字列になるものね」

モニカも同意して頷いた。

 

しかし、その二人の大人の会話に対し、ポテチを齧っていたメイコが、純粋な疑問符を頭に浮かべて首を傾げた。

 

「……ポケベルうち? なにそれ。美味しいの?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「「…………ゴフゥッ!!」」

 

その悪気のない純度100%のジェネレーションギャップは、見えない音響兵器よりも鋭く、マリアとモニカの心(とプライド)に致命的なダメージを与えた。

アラフォーのマリアとモニカ。生まれた時からスマートフォンが存在していたZ世代のメイコやリルにとって、ポケベルなど歴史の教科書に載っている化石ツールに等しいのだ。

 

 

(……くっ、若さという名の暴力……!)

(……部屋の空気が、急に冷たくなったわね……)

 

目に見えて肩を落とし、静かに吐血しそうになっている(既にしている?)年上組の二人をよそに、金髪の少女がモニターの数字を指差して元気よく声を上げた。

 

「ねえねえ! わたし、最後のは『暗証番号』じゃないかなって思う!」

「おっ、リルたそ冴えてるっしょ!」

メイコがパチンと指を鳴らす。

「4回目の『9852』は4桁だしねー、パスワードとして全然ありえる! ってことは、その前の数字は『場所』を示してるんじゃない? 宅配ボックスとか、コインロッカーとか!」

 

「場所……。数字だけで示せる場所……そうなると、『緯度』と『経度』ね!」

若者たちの柔軟な発想にハッとさせられ、モニカが即座にプロファイラーの思考を取り戻す。

 

「調べてみるわ!」

マリアも気を取り直し、1回目と2回目の数字を座標データとしてマップに入力した。

「緯度『35.71』度、経度『139.68』度……。出たわ! 場所は東中野駅の構内よ! しかも、被害者のGPSが途絶えた三鷹駅からは、総武線で一本で行ける場所だわ!」

 

三鷹で追っ手に気づいた会計士が、総武線に飛び乗り、東中野駅で『何か』を隠した。そして、その場所と開錠番号を、家族への少額振込という形で必死に遺したのだ。

 

「1回目と2回目が緯度と経度。4回目が暗証番号だとすれば……3回目の『1014』は、ズバリそのままコインロッカーの番号だな」

スレイがサングラスの奥で鋭く目を細める。

「まずはそこに行ってみよう。犯人たちに気づかれる前に回収するぞ」

 

――数十分後。

スレイたちは急行した東中野駅の構内で、目的のコインロッカー群の前に立っていた。

 

「……なるほど。最近の駅のコインロッカーは、ほとんどが交通系のICカード(物理キーなし)で開け閉めする最新式になっているけれど……」

マリアが周囲を見渡し、彼らの目の前にある古いタイプのロッカーを撫でた。

「ここにあるのは、昔ながらのテンキーで『暗証番号』を入力する旧式のコインロッカーね」

 

「被害者の会計士は、ここに旧式のコインロッカーがあることまでわかっていたから、あえてこの駅を選んで隠したのね」

モニカが、死者の冷静で優秀な判断力に静かに感嘆する。ICカード式では、カードそのものを家族に託さなければ荷物を取り出せないからだ。

 

スレイが『1014』番のロッカーの前に立ち、テンキーに『9852』と入力する。

 

ガチャッ、と。

電子音と共に、冷たい金属の扉が開いた。

 

「……さて、命に代えても守りたかった中身は、何だ」

スレイがロッカーの中に手を入れる。

そこに置かれていたのは、現金でも書類でもなく、ただ一つの小さなUSBメモリだった。

 

「……これ一つか」

スレイがその無機質なメモリを指先で摘み上げる。

この小さな記録媒体の中に、彼が命を狙われることになった『巨大な不正(冷たい番号)』のすべてが詰まっているに違いない。

 

「一度、首相感貞に戻ろう。総理とピエールも待っている」

「ええ。私のシステムで、中身を完全に丸裸にしてやるわ」

 

裏の掃除屋たちは、死者が遺した最も重い証拠品(USBメモリ)を懐に収め、足早に東中野駅を後にした。

 

――再び、首相感貞・特別地下室。

 

持ち帰ったUSBメモリをマリアのメインコンソールへと接続し、解析を開始した。

 

「……なるほどね。ただのデータファイルじゃないわ」

厳重なプロテクトの壁をいくつか叩き割ったマリアが、モニターに表示された中身を見て目を丸くする。

 

「これは『コールドウォレット』ね。……中身の暗号資産(仮想通貨)のレートを現在の日本円に換算すると、おそらく数億円はあるわよ」

 

「コールドウォレット? 冷たいお財布なの?」

パイプ椅子に座っていたリルが、首を傾げて不思議そうに尋ねる。

「ばいやー。冷たい財布って、なんかお給料日前の『借金』みたいじゃない? 懐が寒い的な」

メイコもポテチを齧りながら、ギャルらしい(しかしある意味的を射た)感想を漏らした。

 

「ふふっ、物理的に冷たいわけじゃないわよ、二人とも」

情報屋のモニカが苦笑しながら、プロファイラーとしての知識を補足する。

「コールドウォレットというのはね、暗号資産の『秘密鍵』を、インターネットから完全に切り離された(オフラインの)環境で管理する保管方法のことよ。ハッキングや不正アクセスによる遠隔からの盗難リスクがほぼ皆無になる、最高レベルのセキュリティを誇るお財布ってこと」

 

「……なるほど。ネットワークに繋がっていない以上、そのUSBメモリという『物理的な現物』を持っている人間しか、数億円の金を引き出せないというわけか」

スレイが漆黒のコートの懐で腕を組み、冷たく光るUSBメモリを見下ろした。

「正規の企業間取引で、わざわざそんな足のつかないコールドウォレットを使うはずがない。……おそらく、ロクな金じゃないな」

 

「ええ。政治家への裏金か、組織のマネーロンダリングの終着点か。いずれにせよ、被害者の会計士は監査の最中にこの『冷たい番号(数億円の秘密鍵)』を見つけてしまい、正義感から自分の手で持ち出したのね」

マリアが死者の無念を思い、キーボードを叩く手に力を込める。

 

しかし、暗号資産の壁は厚い。

「問題は、ブロックチェーン技術で匿名化されたこの暗号資産自体からは、犯人の組織や口座の持ち主を『物理的に追跡できない』ということよ」

モニカが渋い顔で首を振る。

 

金はある。だが、この金の持ち主(会計士を殺した犯人)の正体は、このUSBからは直接割り出せないのだ。

 

「……ねえ、総理。金がここにあるなら、犯人は血眼になってこのUSBを探しているはずよ」

モニカが、円卓の奥で優雅に紅茶を飲む環萌美内閣総理大臣へと視線を向ける。

「これは、総理のお得意の『すり替え作戦』の出番じゃない? 偽物のUSBをロッカーに戻しておいて、犯人が絶望する顔を拝むっていう……」

 

「それができれば苦労はしないのだけれど」

総理が答える前に、解析を続けていたマリアがモニカの提案を遮った。

「このUSB、極めて厄介な『デバイス制限』がかけられているわ。つまり、あらかじめ登録された特定のPC(犯人の組織のパソコン)に挿し込まないと、中のウォレット自体が起動しない仕組みになっているのよ。ただデータを別のUSBにコピーしてすり替えても、相手のPC側で弾かれてしまうわ」

 

「……完璧なセキュリティね。流石は数億円を隠すだけのことはあるわ」

モニカが忌々しそうに舌打ちをする。

 

犯人を捕まえるためには、犯人にこのUSBを使わせ、アクセスした瞬間の足跡を逆探知するしかない。だが、すり替えが不可能となれば、本物の数億円を一度敵の手に渡さなければならない。

 

しかし。

日本の最高権力者である萌美総理は、その厄介な制限を聞いて、むしろひどく楽しそうに、妖艶でドSな笑みを深めた。

 

「……ならば、その本物のUSBを、東中野のロッカーに『戻さないと』ね」

 

「戻すのか?」

スレイが眉をひそめる。

「ええ。犯人たちを安心させて、自分たちのアジトのPCにこのUSBを挿し込ませるのよ。……ただし」

総理の妖しい視線が、天才ハッカーのマリアへと向けられる。

 

「ただ大人しく返すわけないわよね? ……USBを犯人のPCに挿した瞬間、相手のネットワークを内部から食い破るような『えげつない仕込み』はできるでしょう、マリア?」

 

その総理の極悪な問いかけに対し。

マリアもまた、ハッカーとしての最上級のプライドと悪意を滲ませ、総理と全く同じ、ひどく悪い笑みを浮かべた。

 

「……もちろんですとも。最高の『お土産』を仕込んでおきますよ、総理」

 

「ふふっ、頼もしいわ」

 

暗号資産の強固なセキュリティの壁を前にして、ひっそりと交わされる女たちの悪巧み。

(……敵に回したくない女ツートップが、また何か最低なウイルスを仕込む気だ……)

スレイは静かにため息をつきながら、これからこの冷たいUSBメモリを拾うことになるであろう犯人組織の絶望的な未来に、ほんの少しだけ同情するのであった。

 

コールドウォレットの強固なセキュリティを逆手に取る作戦が決まった直後、環萌美総理はマリアの耳元へと顔を寄せ、何事かを小さく耳打ちした。

 

「……なるほど。そういうことですね、総理」

総理の囁きを聞いたマリアは、極悪なハッカーの顔でニヤリと笑い、即座に手元のキーボードを叩いてUSBメモリに『ある仕込み』を施した。

 

「よし、完了よ。犯人たちはそのうち、血眼になってこのUSBの隠し場所に辿り着くはず。さっさと東中野のロッカーに戻してきましょう」

 

スレイたちは再び東中野駅へと向かい、暗証番号『9852』の旧式コインロッカーの中に、仕込みを終えたUSBメモリをそっと戻した。

そして、その周辺の死角となる位置に、マリアのお手製である超小型の監視カメラと赤外線センサーを設置する。これで、誰かがこのロッカーに近づき、扉を開ければ即座にアジトへ通知が飛ぶ完璧な罠が完成した。

 

「さて、罠は張った。アジトに戻ろう」

スレイが周囲への警戒を解き、静かに踵を返す。

「そうね! アジトで何か美味しいものでも食べましょうよ!」

マリアの提案に、リルとメイコも大賛成で声を弾ませた。

 

――新宿のアジト。

リビングのテーブルには、奮発して出前で取った特上の『高級寿司』がズラリと並べられていた。

 

「わぁー! 大トロだー! いただきまーす!」

リルが目を輝かせて寿司を口に運ぶ。

その横ではメイコが嬉しそうにイクラの軍艦巻きを頬張っていた。

キャッキャとはしゃぐ若い二人の姿を、スレイ、マリア、モニカの大人三人は、温かいお茶をすすりながら静かに見守っていた。

 

裏社会でしか生きられなかった自分たちには、普通の青春も、華やかなお祝いも家族もいなかった。だからこそ、目の前で美味しそうに寿司を頬張るリルとメイコの笑顔が、ひどく眩しく、絶対に守るべき日常に思えるのだ。

 

――そして、翌日。

 

『……スレイ! 東中野のコインロッカーの赤外線センサーに動きありよ!』

モニターを監視していたマリアの鋭い声が、アジトの空気を一気に仕事モードへと切り替えた。

 

画面には、東中野駅の構内に現れた数人の不審な男たちの姿が映し出されている。

犯人グループと思われるその男たちは、手に持った特殊なセンサーのような機器で周囲の電波や痕跡を探り、迷うことなく『1014』番のロッカーの前で立ち止まった。

そして、周囲の目を盗んでバールのようなもので強引に扉をこじ開け、中から例のUSBメモリを奪い去っていったのだ。

 

「食いついたな」

スレイが低く呟く。

「ええ。これでやつらがアジトに戻って、あのUSBを自分たちのパソコンに挿し込めば位置はわかるわ。挿した瞬間に私のプログラムが起動するからね」

 

マリアが勝利を確信してキーボードに手を置く。

すると、その横で画面を見ていた情報屋のモニカが、ジト目でマリアを見つめて尋ねた。

 

「……ねえ、マリア。そのUSBの仕込みって、まさかまた『同人誌』とか『ホモ雑誌の画像データ』とかを大量に入れておいたわけじゃないわよね?」

かつて、環萌美総理が誘拐犯に渡した身代金のUSBで実行した、最低すぎる精神攻撃(物理容量の圧迫)のトラウマである。

 

「バカ言わないで。今回はあの変態総理の仕業でも、そんな下品な仕込みはしないわよ」

マリアが呆れたようにため息をつく。

「数億円のデータが入っているコールドウォレットよ。そんなふざけたデータが混ざっていたら、警戒してすぐに通信を遮断されてバレるわ。……今回は、もっと気付かれない、静かでえげつない罠よ」

 

(……総理が絡んでいる時点で、ろくな罠じゃないことだけは確かだがな……)

スレイは無言でツッコミを入れつつ、マリアのハッキングの腕を信じて静かにその時を待った。

 

しばらく、アジトに沈黙が降りる。

やがて。

 

『ピピッ!』

マリアのメインコンソールが、けたたましい電子音と共に、一つの座標をモニターに弾き出した。

 

「……反応あり! 敵がUSBをPCに挿したわ!」

マリアが目にも留まらぬ速さでキーボードを叩き、逆探知した位置情報を地図上にマッピングしていく。

 

「場所は……新宿区の下落合にある、古い雑居ビルよ! 座標を特定したわ!」

「下落合……。死体が捨てられていた『神田川』のすぐ近くじゃない!」

モニカがプロファイラーの勘を弾けさせる。

三鷹駅で追い詰め、東中野に隠させ、そして下落合の雑居ビルで殺害し、すぐ裏の神田川に死体を捨てた。すべての経路(ロジック)が、一本の冷たい線で完璧に繋がった瞬間だった。

 

「場所は下落合の雑居ビルよ」

マリアからの報告を通信機越しに聞いた環萌美内閣総理大臣は、満足げに艶やかな声を響かせた。

 

『――そう、ご苦労様。流石ね、マリア。今回は敵を泳がせる必要はないわ。……直ちに踏み込んで、会計士を殺した連中を叩き潰しなさい』

 

総理の冷徹なGOサインを受け、スレイはアジトの武器庫から愛用のハンドガンと予備の弾倉、そして鋭利なサバイバルナイフを抜き出し、漆黒のコートの下へ手際よく仕込んでいく。

 

「さて、下落合の雑居ビルに乗り込むとするか」

スレイがサングラスの奥で冷たい殺意を瞬かせる。

「ええ。コールドウォレットの秘密鍵を追っていた連中のアジトよ。あのUSB以外にも、何か事件に繋がる手がかりは必ずあるはずだわ」

モニカもプロファイラーの顔を引き締め、スレイとリルの後を追った。

 

――深夜。新宿区・下落合。

神田川の冷たい水面に近い、古びた無機質な雑居ビル。その薄暗い階段を、裏の掃除屋たちは音もなく駆け上がっていく。

 

目的のフロアの扉の前に到着すると、後方でタブレットを開いていたマリアが、即座にビルのセキュリティシステムへと侵入を開始した。

 

「……よし。フロアの監視カメラはすべて無効化して、無人の『ループ映像』にすり替えておいたわ。赤外線センサーの類もなし」

マリアがハッキングの完了を告げ、スレイとリルに向けてウインクを飛ばす。

「さあ、準備は完璧よ。存分に暴れてきていいわ」

 

そのGOサインを受けた金髪の少女は、ニコニコと無邪気な笑みを浮かべながら、ためらいなく敵のアジトのインターホンを押した。

 

『ピンポーン』

 

「あぁ? こんな夜中に誰だ……」

中から、警戒に満ちた男の野太い声が響く。扉がガチャリと僅かに開いた瞬間、リルがその隙間へと元気よく顔を突っ込んだ。

 

 

「どうもー! 性濃運輸(せいのううんゆ)でーす!!」

 

「……はぁっ!?」

男がその最低なパロディ企業名(と深夜の配達員が子供であること)に思考を停止させた瞬間。

 

『バチバチバチッ!!』

 

「ガアアアアッ!?」

リルの手から放たれた高圧電流のスタンガンが男の首筋に突き立てられ、一瞬にしてその意識を刈り取った。

崩れ落ちる男の体を踏み越え、スレイが漆黒の旋風となって部屋の中へと突入する。

 

「なっ、なんだ貴様ら――!」

「ひぃっ! 銃を、銃を出せ!」

 

奥の部屋でPCを操作していた数人の男たちが慌てて立ち上がるが、最強の暗殺者の前ではひどくスローモーションに等しい。

スレイは一切の無駄のない動きでハンドガンを抜き放ち、男たちの急所(手足の関節)を的確に撃ち抜いていく。血しぶきと悲鳴が飛び交う中、ものの十数秒で、アジトにいた数人の男たちは全員床に這いつくばる結果となった。

 

「……終わりだ。拍子抜けするほど数が少ないな」

スレイが硝煙の立ち上る銃口を下げ、冷たく言い放つ。

「ふふっ。リル、最近その挨拶、お気に入りなのね」

後から悠然と入ってきたマリアが、スタンガンを片手にドヤ顔をしているリルを見てクスリと笑った。

 

スレイとモニカは、床でうめき声を上げる男たちを即座にロープで縛り上げ、冷酷な尋問(物理)を開始した。

 

「吐け。お前たちが三鷹からあの会計士を追い込み、神田川に沈めたんだな。……裏で糸を引いているのは誰だ?」

「ぐぁっ……! し、知らねえ! 俺たちは本当に何も知らないんだ!!」

 

スレイのナイフを突きつけられた男は、恐怖に顔を引きつらせて泣き叫んだ。

「俺たちはただの末端だ! 上からの指示で、指定された口座から口座へ『洗浄した資金(マネーロンダリング)』を送る作業をしていただけだ! ボスの顔も名前も、本当に知らないんだよぉぉ!!」

 

「……どうやら、これ以上は本当に何も知らないようね」

モニカが男の瞳孔や発汗の様子を観察し、プロファイラーとして「嘘をついていない(ただのトカゲの尻尾である)」と結論づける。

 

「チッ、ただの資金洗浄の実行部隊か」

スレイは舌打ちをし、縛り上げた男たちを、後から駆けつけた表の警察(山田相姦の裏部隊)へと引き渡した。

「山田相姦。こいつらの身柄はあんたに任せる」

「ああ、引き取ろう。……だが、末端とはいえ、これで連続不審死(自殺偽装)の実行犯の尻尾は掴んだぞ」

 

山田の部隊が男たちを連行していく中、スレイたちの視線は、部屋の奥に残された「真の戦利品」へと向けられていた。

 

「人間は口を割らなくても、データは嘘をつかないわ」

マリアが、男たちが先ほどまで操作していた数台のPCと、ファイルに綴じられた膨大な紙の書類を手際よく回収していく。

 

「ああ。本命の証拠はこっちだ。……一度、萌美総理の待つ首相感貞に戻ろう。このPCと書類を丸裸にすれば、必ず『冷たい番号』の出処に辿り着くはずだ」

 

裏の掃除屋たちは、資金洗浄の拠点から押収したPCと書類の束を抱え、夜の下落合から首相感貞の特別地下室へと帰還するのであった。




数字のプロが遺したメッセージの先で、ついに回収された「数億円の秘密」。
相手の強固なセキュリティを逆手に取るため、萌美総理とマリアの手によって、とんでもない“お土産”が仕込まれることになりました。

そして、罠に食いついた犯人たちのアジトへ容赦なく突入(お掃除)!
いよいよ明日の解決編では、組織の元締めを炙り出すための前代未聞の通信戦、そして激闘の後の「ご褒美バカンス(水着回)」をお届けします。
最後に明かされる最悪の真実まで、ぜひ見届けに来てください!

【お知らせと次回予告】

『境界線PCU~多様性ワールドへようこそ~6月は毎日20時更新』
6月は毎日20時に最新話を公開していきます。明日の20時もぜひお待ちしております!

▼イラスト・設定資料について▼
劇中の挿絵や、キャラクターの詳細な設定資料をPixivにて公開しています。
【Pixiv】https://www.pixiv.net/users/124951524

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