信仰宗教団体HOL編、中編です!
前回のラストで突き止めた、港区のダミー企業。
萌美総理から下された身の毛もよだつようなGOサインを受け、スレイとリルによる音のない「完璧な潜入と制圧」が始まります。
環萌美総理に事の顛末と兵站拠点の特定を報告した直後。
マリアの専用端末に、日本の最高権力者から極めて短く、血の凍るようなテキストメッセージが届いた。
『 kill them all (皆殺しにしなさい) 』
……深夜。港区の一等地にある巨大なオフィスビル。
その高層階に、大量の免疫抑制剤を合法的に仕入れているダミー企業が入っている。
スレイとリルは、清掃業者とビルメンテの作業員を装い、ビルの地下駐車場から裏ルートで潜入を開始していた。
少し離れた路地に停めた偽装ワンボックスカーの車内では、マリア、モニカ、そしてメイコの三人がモニター越しに彼らのバックアップとして待機している。
監視カメラの死角を完璧に抜け、目的の高層フロアに到達したスレイとリル。
エントランスの重厚なガラス扉には、洗練されたロゴと共に企業名が刻まれていた。
『 株式会社HOLY(ホーリー) — Medical Consulting — 』
『……なるほどね。組織名の「HOL」って、この「HOLY(神聖な)」の頭文字から取っていたのね』
インカム越しに、車内で映像を見ていたマリアが呟く。
『カルト宗教が裏で使うダミー会社としては、いかにもなネーミングね~』
メイコも同意して鼻で笑った。
『表向きは「神聖な医療による救済」を謳い、裏では貧困層の臓器を切り売りする悪魔の企業……。皮肉なものね』
モニカがプロファイラーとして吐き捨てるように言う。
「……名前などどうでもいい。中身(データ)を抜いて、ネズミを掃除するだけだ」
スレイが冷酷に通信を切り、静かにガラス扉の電子ロックを解除してオフィスへと足を踏み入れた。
オフィス内には、港区のIT企業にはおよそ似つかわしくない、プロの傭兵上がりのような屈強な武装警備員たちが多数配置されていた。
しかし、最強の暗殺者の前では、彼らもただの案山子に過ぎない。
スレイが暗闇に完全に溶け込み、音を立てずに背後から次々と警備員に接近する。
『ゴキッ』『ドスッ』
一切の悲鳴を上げさせることなく、圧倒的なCQC(近接格闘)で首を落とし、あるいは意識を刈り取っていく。
リルも完璧な陽動とサポートを見せた。自慢の小型ドローンを飛ばして監視カメラの死角を作り出しつつ、スレイの死角から現れた敵の背後に音もなく忍び寄り、高圧スタンガンで的確に無力化していく。
二人の息の合ったコンビネーションの前に、オフィスは瞬く間に完全制圧された。
『ばいや~! 2人とも強すぎでしょ~』
車内のモニターでその無双ぶりを見ていたメイコが、歓声を上げる。
安全を確保したスレイが、サーバー室のメイン端末にマリア特製の『物理ハッキングUSBドングル』を突き刺した。
『アクセス確認。こっちで引き受けるわ』
車内のマリアが即座にファイアウォールを叩き割り、データの吸い出しと解析を猛スピードで始める。
しかし、数分後。マリアが苛立たしげに舌打ちをした。
『……おかしいわ。免疫抑制剤の仕入れ記録や、ドナー(信者)の健康状態のデータは山のように出てくるのに、一番肝心なものがないわ』
「肝心なもの?」
サーバー室で警戒にあたっていたリルが、インカムに向かって首を傾げる。
『「顧客リスト(臓器を買うVIPの名簿)」や「資金の口座情報」が、このサーバーには一切存在しないのよ。……文字通り、ただの「在庫と物流(兵站)」の管理しかしていないわ』
『……徹底しているわね』
モニカが推測する。
『臓器売買なんて、バレたら一発で終わる極悪犯罪よ。万が一このダミー会社に警察のガサ入れが入っても、VIP顧客の情報だけは絶対に漏れないように、システムを完全に物理分断しているのね』
『ここでは手術はしていないんでしょ?』
メイコが、地図アプリを眺めながら口を挟む。
『だったら、手術する場所がどこかにあるはずじゃない。ドナーとお金持ちが直接集まる場所がさ』
『その通り。こんな人目の多い都会で、大規模な臓器摘出手術なんて行わないはずよ。おそらく海外の富裕層も想定して、クルーザーで直接アクセスできる海沿いね』
モニカがメイコの推理を補強する。
『顧客リストがないなら、ここから追うべき情報は一つね。……この会社が管理している大量の医療機器と「ドナー(信者)」たちが、実際にどこへ送られ、どこで腹を割かれているか(手術室の場所)よ』
マリアは即座に思考を切り替え、HOLY社の「物流配送データ」と「自社所有の車両のGPSログ」を照合し始めた。
『……見つけたわ』
マリアの声色が、ピンと張り詰める。
『医療物資を積んだトラックも、信者を乗せたワンボックスカーも、すべて深夜に「横須賀の私有地の小さな港」に集められている。……そこから、レーダーを切ったクルーザーに乗り換えて、海を渡っているわ』
『横須賀の港から、深夜の海へ? ……まさか』
モニカが息を呑む。
マリアが、車内のメインモニターに海図の座標を弾き出した。
『ええ。行き先は、東京湾に浮かぶ無人島……「猿島」よ』
深夜の海に浮かぶ、歴史ある要塞の無人島。
そこに、臓器売買シンジケートの真の中枢(解体処理場)が隠されていたのだ。
港区のダミー企業『株式会社HOLY』から得た情報を、PCUはすぐさま環萌美内閣総理大臣へと報告した。
深夜の東京湾、そして無人島『猿島』に隠された、臓器売買シンジケートの真の手術施設。
『……猿島ね。ご苦労様。引き続き頼んだわ』
通信の向こうで、萌美総理が満足げな声を響かせる。
『スレイ君が暴れたせいで、その港区の会社は今頃、血の海と気絶した男たちで滅茶苦茶になっているはずだね』
大物議員Aが苦笑混じりに言うと、総理は即座に指示を飛ばした。
『山田相姦の裏部隊を直ちに派遣して「掃除(証拠隠滅)」しなさい。猿島の本隊から連絡がきても誤魔化せるように、システムと通信の「なりすまし」も必要ね』
ダミー企業の事後処理(クリーニング)については完全に政府側へ任せ、裏の掃除屋たちは次なる戦場への準備を進めた。
――翌日。
新宿のアジトを出発し、レンタカーのワンボックスカーで南下すること数時間。
マリアは助手席でタブレットを開き、ナビの画面にポツンと浮かぶ小さな島を指差した。
「猿島……。かつて旧日本軍が東京湾の防衛拠点として使っていた、本物の『要塞の島』ね。今は観光地として綺麗に整備されているけれど、夜間は完全に立ち入り禁止の無人島になるわ」
「秘密裏に地下施設を建造したり、カルト教団が夜な夜な怪しい儀式や手術を行うには、これ以上ないほど『もってこい』の場所よ」
後部座席で、モニカがプロファイラーの目を細めて同意する。
そんな物騒な会話をよそに、窓の外に広がる海を見ていたリルが目を輝かせた。
「ねぇねぇ! 三浦半島の方に行くなら、『三崎マグロ』食べないの!?」
「マグロ以外にも美味しいもの沢山あるよ~! 海鮮丼とかマジ食べたいっしょ!」
メイコも便乗してキャッキャと騒ぎ出す。
「……あのねぇ、あんたたち。これからカルトマフィアの拠点にカチコミに行くのよ?」
マリアが呆れたようにため息をつく。
「マグロは、帰りに無事生き延びていたら食べなさい。……でもまぁ、腹が減っては戦はできないから、とりあえず手前の横須賀で『海軍カレー』を食べてから行くわよ」
「やったー!」
「マリアお母さん太っ腹~!」
「誰がお母さんじゃぁーーーッ!!」
マリアの鶴の一声で、一行は横須賀の港町に立ち寄り、スパイスの効いた名物の海軍カレーをペロリと平らげた。
そして、フェリー乗り場のある『三笠公園』へと到着する。
公園の岸壁には、日露戦争で活躍した巨大な記念艦『三笠』が堂々たる姿で係留されていた。
「わぁーっ! おっきいお船!! かっこいいー!」
カレーでお腹を満たしてすっかりご機嫌になったリルが、巨大な戦艦を指差してはしゃぎ回る。
「Nice boat(ナイスボート)!」
メイコがどこで覚えたのかわからないネットスラングを口にして、戦艦をスマホで撮影し始めた。
「……これから、あの猿島に上陸するぞ」
運転席から降りたスレイが、サングラスを押し上げながら、周囲の平和な観光客たちを鋭く一瞥した。
「猿島へのフェリーは、昼間しか運航していないわ。夜は島全体が封鎖されるからね」
モニカが周囲に警戒を配りながら、作戦の最終確認を行う。
「だから、私たちは『一般の観光客』を装って昼の便で島に渡るわ。そして、そのままフェリーの最終便には乗らず、森の奥の死角に身を潜めて『夜の侵入』を待つわよ」
「設定は、いつも通り『休日にBBQを楽しむ仲良し家族』ね」
マリアがポンッと手を打って、メンバーの配役(ロールプレイ)を発表する。
「お父さんがスレイ。お母さんが私で、娘がリルよ。……で、モニカが『近所の人妻』で、その娘がメイコ。二家族の合同BBQって設定よ」
「あら、私は人妻役なのね。悪くないわ」
モニカが妖艶に微笑む。
「……あぁ。了解した」
スレイが無表情のまま頷き、車の荷台から、巨大なクーラーボックスと大型のバーベキューコンロ、そしてやたらと重そうなテント一式を軽々と肩に担ぎ上げた。
その特大サイズの『BBQセット』の中身は、当然ながら肉や野菜、炭などではない。
中に入っているのは、大量のC4爆弾、分解されたアサルトライフル、閃光手榴弾、そしてマリアのハッキング用機材のフルセットという、島を一つ丸ごと制圧できるほどの殺戮兵器の塊であった。
スレイは無表情のまま、「……行くぞ」とだけ告げ、重火器の詰まったクーラーボックスを肩に担いで、フェリーのタラップを堂々と登り始めた。
「あっ、待ってよお父さん!」
リルが満面の笑みで、小走りでスレイの背中を追いかける。
「……誰がお父さんだ」
「えへへー、お父さーん!」
「もう、あんたたち置いていくわよ!!」
マリアが『世話焼きのお母さん』を見事に演じきりながら、二人の後を追ってタラップを駆け上がった。
かくして、どう見ても訳ありな『仲良し家族(重武装)』を乗せたフェリーは、穏やかな夏の波を立てながら、東京湾に浮かぶ緑豊かな要塞の島・猿島へと向かっていった。
――午後5時。
観光客たちの賑やかな笑い声で溢れていた猿島のビーチは、最終の帰り便フェリーが汽笛を鳴らして港を離れたことで、嘘のような静寂に包み込まれた。
島にはもう、PCUのメンバー以外、誰もいない。
露店のスタッフも、清掃員も、パリピの観光客も、すべてが本土へと帰っていった。
「……観光客、全員撤収したわね。島に残っているのは、私たちだけよ」
マリアがタブレットの熱源探知アプリを確認し、小さく息を吐く。
「もう少し、どこかの死角に隠れていましょう。……夜の手術に備えて、HOLの一味、あるいは移植手術を受けるVIPの『患者』が、すでに島に潜伏しているかもしれないわ」
モニカがプロファイラーの鋭い目を光らせ、油断なく周囲の森を警戒した。
鬱蒼と生い茂る原生林の奥深く。
一般客立ち入り禁止のロープを越えた、旧軍の砲台跡の暗がりで、マリアがハンディスキャナの電源を入れた。
「……偽装解除。これより、作戦を開始するわ」
その静かな合図と共に。
スレイが無表情のままバーベキューコンロの底板を外し、中から真っ黒なアサルトライフルのパーツを取り出して、目を瞑ったままでもできる手際の良さで素早く組み立てていく。
チャキッ、と。
冷たい金属音が、誰もいない無人島の森に鋭く響き渡った。
「ふふふっ、出番だね!」
リルも巨大なクーラーボックスを開け、愛用の高圧スタンガンと小型ドローン、そして大量のC4爆弾を引っ張り出すと、水着の上から羽織ったタクティカルベストへ嬉しそうに装着していく。
「ばいやー、マジでクーラーボックスの中身エグいっしょ……」
メイコが、その物騒すぎる『BBQセット(重火器の山)』を見て少し引きつった笑いを浮かべた。
「……島の地下施設の入り口は」
スレイが暗視ゴーグルを装着し、夜の気配が色濃くなってきた森へと漆黒の瞳を向ける。
「旧海軍の『弾薬庫跡』を利用しているはずよ。島の中心部、レンガ造りのトンネルの奥に、不自然な電磁波の漏れを検知したわ。……そこが、手術室への入り口ね」
マリアは手元の小型モニターに猿島の3Dマップを展開し、赤い光点でターゲットの座標を示した。
波の音と、風に揺れる木々のざわめきだけが聞こえる夜の無人島。
「……行くぞ」
スレイが低く告げる。
昼間の『休日の仲良し家族』の仮面を完全に捨て去り。一切の音を立てず、死神たちは猿島の暗闇の中へ、HOLの心臓部を目指して滑るように潜行を開始した。
月明かりだけを頼りに、旧海軍のレンガ造りの要塞跡へと足を踏み入れる。
巨大な砲台跡や、迷路のように入り組んだ苔むした弾薬庫のトンネル。しかし、マリアの座標の周辺を探っても、決定的な『地下への入り口』がなかなか見当たらない。
「……おかしいわね。座標はこの辺りのはずだけど……扉らしいものは何もないわ」
マリアが壁のレンガを叩きながら首を傾げる。
その時だった。
周囲の景色をキョロキョロと観察していたギャル大生のメイコが、ふと立ち止まった。
「……ん? ねえ、この一帯の草とか、なんか違和感があるんだけど」
「違和感?」
リルが不思議そうに振り返る。
メイコは持ち前のチート級の記憶力と観察眼をフル回転させ、足元の茂みを指差した。
「ほら、ここの草木。風で倒れたんじゃなくて、上から重いもので『踏み潰されて凹んでる』っしょ。しかも、不自然に土が削れてる。……最近、何回も重い荷物を乗せた台車か何かが通った跡だよ、これ」
「……流石ね、メイコ。おそらくそれが『通り道』よ」
モニカがメイコの鋭い観察眼を賞賛し、その微かな痕跡を辿って進むよう指示を出した。
凹んだ草木の跡を辿り、レンガの壁のさらに奥、蔦が密集した行き止まりへと向かう。
スレイがその分厚い蔦の壁をナイフで強引に切り裂くと……そこには、周囲の石壁と巧妙にカモフラージュ塗装された、分厚い『鋼鉄のハッチ』が隠されていた。
「……見つけたわ。間違いなくここよ」
マリアがハッチの隙間にスキャナを這わせ、確信する。
「開けるぞ。下がれ」
スレイが分厚い鋼鉄のハッチに分厚い指を掛ける。
電子ロックの類ではなく、内側から重い閂(かんぬき)が掛けられている物理的なハッチだったが、最強の暗殺者には関係なかった。
『ギギギギギッ……! ガァンッ!!』
スレイが岩のような腕力を解放し、金属がひしゃげる凄まじい音と共に、無理やりハッチの閂を破壊して持ち上げる。
その下には、冷たいカネと血の匂いが漂う、地下深くへと続く暗い階段が、ぽっかりと不気味な口を開けていた。
「……マリアたちは俺の後に控えていろ。リル、行くぞ」
分厚いハッチの奥に続く暗い階段を見下ろし、スレイが低く指示を出す。
「は~い! まずはドローンで中の偵察だね!」
リルがバックパックから手のひらサイズのドローンを取り出し、嬉しそうに起動音を鳴らした。
マリアやモニカも、自衛のためのハンドガン程度なら十分に扱える。だが、ここは最前線。まずはドローンで安全を確認し、最強の死神が露払いをし、そのサポートをリルが行うという手順で進むのが、裏の掃除屋の基本戦術(筋)というものだ。
リルが手慣れた手つきでコントローラーを操作し、ドローンを音もなく地下の暗闇へと滑り込ませる。
マリアが手元のタブレットに、ドローンのカメラ映像を大写しにした。
「……うわ。ここだけ急に別世界になるね~」
モニターを覗き込んだメイコが、目を丸くする。
内部は、外の湿った森の空気や、旧軍の苔むしたレンガ造りの要塞とは打って変わり、煌々とLEDライトが照らされた、空調の効いた無機質なコンクリートの空間だった。
「最初の見張りが2名……いや、奥にもう1名で合計3名ね。その奥の部屋の構造は扉があって不明だけれど、通路の広さからして、大量の部隊が待ち構えているわけではないわ」
モニカが映像から瞬時に敵の配置と空間をプロファイリングする。
「よし。マリアたちはそこで待機だ」
スレイとリルが顔を見合わせ、音もなく階段を降りて内部へと侵入していく。
通路の先。
電子ロックの掛かった重い鉄扉の前に、アサルトライフルで武装したHOLの傭兵(見張り)たちが立っていた。
退屈そうにあくびをした一人が、暗がりから突然現れた金髪の少女の姿にビクッと肩を揺らす。
「っ! 誰だお前!」
「どうもー! お届けの『臓器』を持ってきましたー!」
リルが満面の笑みで、手を振りながら堂々と近づいていく。
「なっ……今日だとは聞いていないぞ!?」
「急なお届けものですから!」
男たちが怪訝な顔でライフルを構えようとした、その瞬間。
『——シュッ!!』
彼らが気づくよりも早く。
リルの背後の闇の中から、漆黒の死神(スレイ)の巨躯が一瞬で距離を詰めた。
『ドスッ!! バキッ!!』
一切の無駄がない、純粋な暴力。
スレイの重い手刀が一人目の首筋に叩き込まれて頸椎をへし折り、同時に振り返った二人目の顔面を、岩のような拳が容赦なく粉砕してコンクリートの壁に叩きつける。
「なっ……侵入しゃ――ッ!?」
三人目が慌てて銃の安全装置を外した瞬間、彼の背後から死角を突いたリルが軽やかにジャンプし、高圧スタンガンを首筋に深々と突き立てた。
『バチバチバチッ!!』
「あがぁぁぁぁっ!?」
男は泡を吹いて白目を剥き、崩れ落ちた。
「は~い! バチバチでーす!」
リルが倒れた男の頭をポンポンと叩いて笑う。
その鮮やかな制圧劇を、ハッキングした監視カメラの映像で見ていた女性陣が安堵の声を上げた。
『終わったみたいね~。さすがスレイとリルたそ!』
メイコがガッツポーズをする。
『ええ。あとは中ね……油断はしないようにね』
モニカはモニターを見つめながらも、後方(背後の森)にもプロファイラーとしての警戒の目を光らせていた。
「安全は確保した。降りてこい」
スレイの通信を受け、マリア、モニカ、メイコの三人も、暗い階段を降りて地下施設へと足を踏み入れた。
合流したマリアは、気絶した警備員の懐からカードキーを奪うと、近くのセキュリティ端末のカバーを強引に引き剥がし、自らのハッキングデバイスを突き刺した。
「……よし。これで内部の監視カメラのループ処理(偽装映像へのすり替え)と、すべての電子ロックの解除が完了したわ。これで私たちの動きは、連中のモニターには一切映らない」
天才ハッカーがキーボードを叩き、涼しい顔で宣言する。
「行くぞ。……ネズミ(HOL)の巣の最深部だ」
スレイが無表情のまま、重い鉄扉を開け放つ。
裏の掃除屋たちは、生きた臓器が売買される吐き気を催す悪魔の施設――そのメインフロアへと、静かに足を踏み入れた。
中編、お読みいただきありがとうございました。
辿り着いた真の拠点は、なんと東京湾に浮かぶ要塞の無人島。
重武装を「BBQセット」に偽装して乗り込む、スレイお父さんとマリアお母さん(?)
遂に地下の秘密施設へと足を踏み入れ、見張りを無力化したPCU。
いよいよ明日は後編\の解決編です。
【お知らせと次回予告】
『境界線PCU~多様性ワールドへようこそ~6月は毎日20時更新』
6月は毎日20時に最新話を公開していきます。明日の20時もぜひお待ちしております!
▼イラスト・設定資料について▼
劇中の挿絵や、キャラクターの詳細な設定資料をPixivにて公開しています。
【Pixiv】https://www.pixiv.net/users/124951524
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