深夜の事故現場での検証を終え、スレイたちは全ての点と点を線で繋ぎ合わせていた。
「たぶんだけど、青年は何も知らずにただのアルバイトとして荷物を運んでいただけ」
リルが推測を口にする。
「でも、ふとした拍子にカバンの中身が法に触れるヤバい代物だと気付いてしまい、正義感から警察署へと進路を変えた」
メイコが後を引き継ぐ。
「だが、最近の配達アプリは、配達員の現在のGPS位置情報が運営側にリアルタイムで追跡可能よ」
マリアがハッカーとしての知識を添える。
「ルートを外れて警察署へ向かう青年の光点をモニターで確認した反社組織は、即座に追手を放ち、彼を口封じのためにトラックで轢き殺したという流れね」
モニカが冷徹に締めくくった。
「……一旦、首相感貞に戻ろう。作戦の練り直しだ」
スレイの低い声に従い、裏の掃除屋たちは夜の街を後にした。
――首相感貞・特別地下室。
重苦しい空気を纏って戻ってきたスレイたちを出迎えたのは、ジャンクフードの暴力的なまでに食欲をそそる匂いだった。
円卓の奥で、この国の最高権力者である環萌美総理が、美しいルージュの唇で巨大ハンバーガーを上品に頬張っていたのだ。
両手でバーガーを持つその姿すら、絵画のように麗しい。
「あら、おかえりなさい。……夜食に出舞姦で頼んだのよ。普段は専属シェフの料理ばかりだけど、こういう〇ァックドナルドみたいなジャンクなのも、たまにはね」
「私はレズバー〇ーのテリヤキにしたよ。夜中に食べる背徳感がたまらないんだ」
総理の隣では、大物議員Aがオタク特有の早口でニコニコとパロディ全開のハンバーガーをかじっている。
「はぁ〜、お肉の匂い……おいしそう!」
「確かに! アタシたちも、なんかお腹減ってきたっしょ!」
凄惨な事故現場から帰ってきたばかりだというのに、リルとメイコが、その匂いに釣られて元気よくお腹を鳴らした。
「……ちょうどいいわ。まずは、例のプレシャスギフト食堂に、私たちも直接注文してみましょう」
マリアが、二人の食欲を捜査に利用する形で提案する。
「そうね。相手のシステムを知るには、客になるのが一番早いわ」
モニカが頷く。
マリアが手元のタブレットを操作し、追跡不可能な適当なダミーアカウントを即座に作成して、例のゴーストレストランのページを開いた。
しかし、その画面を見たマリアは怪訝そうに眉をひそめた。
「……何これ? フードデリバリーの店なのに、オムライスしかメニューにないわ」
「えっ? 食堂って名前なのに、オムライス一択なの?」
リルが目を丸くする。
「プレシャスギフトって、貴重な贈り物とか大切な贈り物みたいな意味だよね」
メイコが首を傾げる。
「胡散臭い買取業者みたいなネーミングよね。とりあえず、そのオムライスを注文するしかないわね」
モニカがため息をつく。
裏組織のフロント企業であることは、もはや疑いようがない。
マリアはとりあえず、その不自然なオムライスを5つカートに入れ、受け渡し場所を感貞の近所の公園に設定して注文を確定させた。
数十分後。
配達の追跡アプリが到着を知らせたが、顔面凶器の男(スレイ)が深夜の公園に受け取りにいけば、どんな配達員でも一発で怪しんで逃げ出してしまう。
そのため、今回は外で待機していた山田相姦の優秀な部下に、ただの一般人を装って受け取りに行かせた。
やがて、会議室の円卓に5つのプラスチック容器が並べられた。
スレイが警戒しながら蓋を開けるが、中に入っていたのは、良くも悪くもただのオムライスだった。モニカが簡易的な検査キットで調べるが、毒や違法薬物が混入されている形跡もない。
とりあえず、全員で一口ずつスプーンで食べてみる。
「……んー。まずい訳じゃないけど、可もなく不可もなくって感じ?」
リルがもぐもぐと咀嚼しながら、正直な感想を漏らす。
「これ、絶対に店で作ってないわね。業務用の冷凍オムライスをレンジでチンしただけね」
マリアが一刀両断する。
「あははっ! マリア、これよく見たらアプリの評価が★2だよ〜! ひっく〜!」
メイコがタブレットを指差して大笑いする。
「……このクオリティの冷凍オムライスに、1980円はありえないわ」
マリアが冷徹にコストパフォーマンスを切り捨てた。誰がどう見ても、まともな飲食店としての経営は成立していない。
「……つまり、普通に注文しただけじゃ、ただのぼったくりオムライスが届くだけ。裏の本命の品を引き出すには、何か特殊な注文方法があるはずよ」
モニカが推測する。
「ああ。配達アプリを使っている以上、俺たちのように何も知らない一般人の誤注文も少なからずあるはずだからな。組織の人間は、それと明確に区別をつける必要がある」
スレイが颯爽と食べ終わり、紫煙と共に結論を吐き出した。
その会話を聞いていた萌美総理が、優雅に口元をナプキンで拭いながら微笑んだ。
「そうなると、古典的だけど確実な暗号(コード)ね。……アプリの注文画面にある、備考欄なんかに打ち込むための」
ただの冷凍オムライスが、ヤバい代物へと変わるための魔法の言葉。
裏の掃除屋たちは、殺された青年が運んでいた大切なギフトの正体を引きずり出すため、その暗号の解読へと挑む。
「一般人から注文が入ってしまった場合は、ただ業務用の冷凍食品をレンジでチンしてパックに詰め、配達員に普通に届けさせる」
マリアがシステムを読み解く。
「当然、味は美味しくないからリピーターはつかないよね」
リルが続く。
「そしてレビューも荒れるよね。結果、一般ユーザーからの注目度(アプリ内の検索順位)は常に低いまま保たれ、目立たなくなるね」
メイコがマーケティングの視点で分析する。
「……なるほど。意図的に★2の低評価を維持することは、裏稼業の連中にとって、むしろ周囲の目を誤魔化して営業しやすいという、完璧なカラクリね」
モニカが、その悪知恵に感心したように呟いた。
「むしろ、低評価をお望みということか」
スレイが低く笑う。
「とりあえず、そこのウーバイブ・イーツとかいうデリバリー会社の全履歴を見れるよう、裏から手配するわ」
環萌美総理が、優雅にファッ〇ドナルドのポテトをかじりながら、国家権力を使ってあっさりと民間企業の強固なセキュリティの扉を開け放った。
「助かるわ、総理」
マリアが即座にその特権IDを使ってサーバーの深部へ潜り込み、プレシャスギフト食堂の過去の注文データを片っ端からメインモニターに展開していく。
「うわっ! 見て見て、この人、オムライス10個も頼んでる!」
リルが、ズラリと並んだ注文履歴の異常な数字を指差す。
「ばいやー! こっちの奴なんて、オムライス20個っしょ! どんだけ卵好きなの!」
メイコも目を丸くした。
「……ただの団体客という線もあるけれど、個数が異常に多い客の備考欄を重点的に見てみましょう」
モニカの的確な指示を受け、マリアが検索条件を絞り込む。
「……出たわ。全員ではないけれど、大量注文している客の備考欄には、ある共通された言葉が入力されているわね」
マリアがエンターキーを叩き、その不自然極まりないテキストを画面に大写しにした。
『 ケチャップ不要。味噌多めで。つまようじ希望。 』
「……はぁ?」
リルがぽかんと口を開ける。
「オ、オムライスに味噌……?」
メイコも理解不能といった顔で首を傾げた。
明らかに不自然だ。和食の定食屋ならともかく、洋食のオムライスを頼んで味噌多めなど、一般の客が絶対にオーダーしない狂った内容である。
「特定の隠語(暗号)はこれだろうな」
漆黒のコートを着たスレイが、タバコに火をつけて断言した。
一般人が間違えて入力する確率がゼロパーセントの、完璧な合言葉だ。
「そうなると、もう一度実験ね。この隠語(暗号)を備考欄に入れて、もう一度注文してみましょう」
マリアが先ほどのダミーアカウントを使い、今度は5つのオムライスと共に『ケチャップ不要。味噌多めで。つまようじ希望。』と入力してオーダーを飛ばした。
――しばらくして。
外で待機していた山田相姦の部下が、再び指定された公園での置き配を回収し、地下室へと戻ってきた。
見た目は先ほどと全く同じ、プラスチック容器に入った5つの冷凍オムライスだ。
「見た目はさっきと変わらないね~。中に仕込んでありそう?」
リルが覗き込む。
蓋を開けて、スプーンで卵の端を少し裏返したモニカが、鋭い声を上げた。
「……中に何かあるわ」
ケチャップライスの底に隠されるようにして、小さな密閉袋が仕込まれていたのだ。
モニカがピンセットでそれをつまみ上げると、中には怪しげな化学的な色をした錠剤が、それぞれのパックにつき1錠ずつ、合計5錠入っていた。
「あっ、やっぱり何か変なの出てきた!」
リルが声を上げる。
「……オムライス1個につき、1980円。それがこの錠剤1つの値段ということね」
マリアが冷ややかな声で計算を弾き出す。
「1980円……。それって、裏社会のクスリにしては、ずいぶん安いっしょ」
メイコが不思議そうに言う。彼女の父親である大物議員Aが知るような、富裕層向けの違法ドラッグは、一回の取引で数万から数十万が飛び交う世界だ。
「ええ。このプレシャスギフト食堂の客層は、VIPや富裕層ではないわ」
モニカが、プロファイラーとして錠剤の流通ルートを読み解く。
「安価で手を出せる、不特定多数の半グレ、不良外国人……そして、夜の街を彷徨う家出少年少女たちよ。この庶民的なドラッグは、社会の底辺に向けてばらまかれているようね」
萌美総理が冷酷に分析する。
「客層を考えると、むしろフードデリバリーだからこそだね」
メイコが頷く。
デリバリー特有のシステムである置き配(非対面受け取り)。
これを利用すれば、売人(反社)と客が直接顔を合わせるリスクを完全にゼロにできる。さらに、運んでいる配達員自身も、まさか自分がドラッグの運び屋にされているとは夢にも思わない。
昨今の便利なアプリにただ乗りして、システムの死角を完璧な隠れ蓑にする。
それが、あの純朴な青年を無惨に殺してまで守り抜こうとした、裏組織のシノギの正体だった。
「……クズ共が」
スレイが、サングラスの奥で冷たい怒りの炎を揺らした。
便利になった現代社会の裏側で、命を消耗品のように使い捨てる悪魔のシステム。
裏の掃除屋たちは、この最悪のギフトを配り歩く元凶を叩き潰すため、いよいよ反社の拠点(プレシャスギフト食堂)へと牙を剥くのであった。
「……そうなると、次はあのプレシャスギフト食堂のほうへ直接出向くことになるわね」
マリアが、モニターに映る雑居ビルの住所を指差して言った。
「だね! 誰が黒幕なのか、直接聞きにいくしかないよ」
リルが腕をまくる。
「あそこのキッチンで、冷凍オムライスにヤバい錠剤を混入しているのは間違いないようだしね」
メイコも、ゲームのダンジョン攻略に挑むような顔で頷いた。
「待って。ただ正面から乗り込むんじゃなく、まずはクレームの線でいきましょう」
モニカが、逸る仲間たちを冷静に制止する。
「先ほどの注文番号を使って、商品に変なものが入っていたとクレームをつけて乗り込むのよ。そうして相手を油断させ、言葉の端々から元締めや組織の規模を聞き出す……これが一番スマートな手順よ」
「なるほどね。証拠を突きつけて、相手が動揺した隙を突くのね」
マリアも、そのプロファイラーらしい理知的な作戦に賛同した。
かくして、モニカの完璧なクレーム作戦を胸に秘め、スレイとリルの二人は現場へと向かった。
残りのメンバー(マリア、モニカ、メイコ、そして萌美総理と大物議員A)は、首相感貞の特別地下室に残り、リルが服に仕込んだ小型カメラの映像をモニター越しに見守りながら待機することになった。
――都内某所、プレシャスギフト食堂。
指定された住所は、飲食店が立ち並ぶ華やかな通りではなく、裏路地にひっそりと建つ薄汚れた雑居ビルの一室だった。
看板すらない、まさにゴーストレストランだ。
スレイが廊下の死角に身を潜める中、リルが鉄の扉の前に立ち、容赦なく呼び鈴を連打した。
『ピンポーン! ピンポンピンポーン!!』
「……あぁ? なんだよ、うるせぇな」
ガチャリと扉が開き、中から面倒くさそうに頭を掻く、ガラの悪い適当な男が出てきた。エプロンなど着ていない、絵に描いたようなチンピラだ。
「すいません! さっきそちらでデリバリーを注文した者なんですけど、届いたご飯の中に変なものが入ってました!」
リルが、モニカの台本通りに、純真な一般客を装ってクレームを突きつける。
「あ? 変なものぉ?」
男は舌打ちをし、相手が小柄な少女だと侮ったのか、鼻で笑った。
「おっと、配達の途中で別の客の荷物と間違えたのか? えーと、そっちの注文番号は?」
「XXXーYYYです! ちゃんと確認してください!」
リルが胸を張って答えると、男は「チッ、めんどくせぇな」とぼやきながら、奥のPCがある部屋へと引っ込んでいった。
モニター越しに見守るモニカとマリアが、(よし、ここで相手がドラッグの誤配に気づいて動揺すれば……)と固唾を呑む。
数秒後。
「おい、やっぱり間違ってねぇじゃねぇか!」
男が戻ってくるなり、怒鳴り声を上げた。
「注文の備考欄に、ちゃんと味噌って書いてあるじゃねぇか! 何クレームつけてきてんだガキが!」
自分たちが仕込んだ暗号(味噌=ドラッグ)の注文だと信じて疑わない男が、強気でリルを追い返そうとした、その瞬間。
「……オムライスに味噌は、邪道だッ!!」
スレイの怒声が響く。
『――ガシッ! ボカァッ!! バキィィィッ!!!』
「あべばぁッ!?」
死角から突如として姿を現したスレイが、男の顔面を鷲掴みにし、そのまま扉の鉄枠へと全力で叩きつけた。
「えっ……」
モニター越しに見ていた全員の思考が停止した。
ドラッグの誤配に対する追及でも、元締めを聞き出すための心理戦でもない。
ただの『純粋な料理に対する個人的な怒り(物理)』による、理不尽極まりない先制攻撃だった。
「がはっ……て、てめぇら何者だ! おい、野郎どもッ!!」
顔面を血に染めた男の悲鳴を聞きつけ、キッチンの奥から、柄の悪い男たちが鉄パイプや包丁を手にして数名飛び出してきた。
しかし、スレイの背後からひょっこりと顔を出したリルが、手に持った高出力スタンガンのスイッチをカチッと入れた。
「は〜い、こちらクレームのスタンガンになりま〜す!」
『――バチバチバチバチッ!!』
「ぎゃあああああああッ!?」
「味噌は日本人の心だ!」
怒りの鉄拳が男たちを容赦なく襲う。
「クレーム内容は、美味しくないオムライスと変なトッピングでーす!」
リルが宣言する。
『――バチバチバチバチッ!!』
「ぎゃあああああああッ!?」
スタンガンの青白い稲妻が男たちを容赦なく襲い、さらにスレイの丸太のような腕が、残った敵の顎を次々と砕き割っていく。
一瞬の出来事だった。言葉の駆け引きなど一切ない、ただの純粋な暴力による一斉制圧。
「……さて。この薬は、いったいなんだ?」
数分後。床に転がり、ピクピクと痙攣する男たちを見下ろしながら、スレイは静かに安物のタバコに火を点けた。
「吐け。誰に作らされている」
『ドスッ! ゴキィッ!』
「ぎぃぃっ! や、やめ……」
スレイの容赦のない革靴が、男たちの腹を蹴り上げ、容赦なく肋骨を踏み抜いていく。
一方、そのあまりにも非道で一方的な惨劇をモニター越しに見せられていた首相感貞では。
「……スレイ! クレームでの手順、全く意味ないじゃんこれじゃ!」
「モニカの完璧な作戦が、開始5秒でただのカチコミになったわね……」
プロファイラーとしてのメンツを完全に粉砕されたモニカと、呆れ果てるマリアが、頭を抱えていた。
「うふふ、いいのよ別に」
しかし、この国の最高権力者である萌美総理だけは、紅茶のカップを傾けながら、モニターの向こうで繰り広げられるスレイの極上の暴力を、まるで映画でも見るかのように嬉しそうに眺めているのであった。
――プレシャスギフト食堂(という名の雑居ビルの一室)。
スレイの無慈悲な鉄拳とリルのスタンガンによって、完全に心をへし折られた男たちは、涙と鼻水にまみれながらあっさりと全てを吐き出した。
「ひぃぃっ! や、薬物は俺たちが作ってるんじゃねぇ! 全部、上の元締めから供給されてるんだよぉッ!」
床に這いつくばった男が、スレイの革靴に怯えながら叫ぶ。
「……オムライス味噌の注文が入った場合は、どうする」
スレイが問う。
「お、俺たちの仕事は、オムライスに錠剤を混ぜて、配達アプリのGPSで配達員の現在地を監視することだ! もし指定のルートを外れた場合は、すぐに元締めに連絡を入れる手順になってる!」
「先日、ルートから外れて元締めに連絡したことあった?」
リルが尋ねる。
「あったあった! あ、あのガキが勝手に警察署に向かおうとしたから、俺たちはただ元締めに報告しただけで……ッ!」
「……そして、元締めが放った追手(トラック)が青年を轢き殺した。そういうことだな」
スレイの氷のような声に、男はヒィッと喉を鳴らして何度も頷いた。
「元締めの居場所を言え」
「し、知らねぇんだよ! 俺たちは下っ端で、決まった時間に薬をお届け(補充)に来る奴から受け取ってるだけで……っ!」
「……次のお届けはいつだ」
「あ、明日の夜19時だ……! 頼む、命だけは……っ!」
「じゃあ、明日19時に成り代わるしかないね」
リルがスレイを見上げる。
元締めのところに、青年を轢き殺してカバンを奪った実行犯がいるはずだ。
そうなると、カチコミの続きは明日の夜19時、この場所でお届けを待ち伏せするのがよさそうだ。
その報告をインカムで聞いていた首相感貞のモニカが、スピーカー越しに冷静な疑問を投げかけた。
『……しかし、明日の夜19時までの間、アプリに入ってくる注文はどうするの? 休業にしたら、元締めに怪しまれるわよ』
『それは、美味しくない冷凍オムライスをチンして、山田部隊に配達を頼むしかないわね』
マリアが、ため息混じりに即席のダミー営業プランを提案する。
『えーっ、でももし、その間に裏の客から味噌オムライスの注文がきたらどうすんの? 薬の在庫ないっしょ?』
メイコが懸念を示すと、環萌美総理が優雅に鼻で笑った。
『うふふ。やましい薬の取引なんだから、万が一商品が届かなくても、表沙汰にしてクレームを入れてくる客なんてそうそう来ないわ。適当にスルーしておきなさい』
『そっか! 薬が入っていませんなんて、ウーバイブ・イーツのレヴューに書き込めないもんね』
メイコが納得する。
かくして、明日の夜までの店番(冷凍オムライスの温めと配達)という地味すぎる任務を、山田相姦の優秀な部下たちに押し付けることが決定した。
ほどなくして、武装した山田部隊が雑居ビルに到着し、床に転がる男たちを合成麻薬取締法違反の現行犯で次々と連行していった。