剣と魔法の世界から提督(?)が着任しました。 作:ラバウルユーザー
とある古参艦娘の言葉
―――状況は最悪だった。
羅針盤妖精の機嫌が悪かったのか、道中余計な戦闘が増えてしまった。
その為、燃料、弾薬がギリギリの状態でこの海域の中核部隊と戦う羽目に。
味方の正規空母は中破で、索敵と開幕の発艦以降は十分な戦闘を行えない。
旗艦の私は、妹のおかげもあって無傷でいられるが、その負担が全て彼女へ圧し掛かってしまっている。
司令官は撤退を認めてくれない。
功績の為に必死すぎて、大破進軍は当たり前。
私たち艦娘は代わりの利く兵器、沈んでも敵を倒せといつも言っている。
沈んだらそこまで、でも命令は絶対。
(最低の状況だわ。・・・でも、やるしかないわね)
悔しいけれど、やっぱり私たちは軍艦を模した兵器なのだ。
敵である深海凄艦を倒して安全を守らなければならない。
それが私たちの存在理由なのだから。
そんなことを考えていると、偵察機を発艦させた正規空母から、敵機動艦隊発見の報告。
物思いに耽るのもここまでのようだ。
「敵艦隊を補足。・・・全艦攻撃態勢!・・・主砲、副砲、撃てぇ!」
―――敵艦隊と戦闘開始してからどれ位経っただろう。
弾薬は残り僅か。
燃料に至っては、第一戦速維持なんてとっくに不可能。
もはや、回避行動も満足に出来ない。
あの子は、妹は、私を最後まで庇って大破した。
辛うじて轟沈はしていないようだけれど、それも時間の問題。
正規空母の2人はどうなったのだろう。
敵戦艦タ級の集中砲撃を受けてから連絡が途絶えている。
重巡の2人は、あのお騒がせ者の姉と苦労人の妹のコンビは、囮となると言って敵の正面へと向かっていた。
彼女たちが稼いでくれた貴重な時間、その間に私の主砲が命中した敵のタ級1隻は撃沈したけれど、あの2人は戻って来ていない。
敵は、まだ2隻のタ級が残っている。
もう逃げることも不可能。
いえ、あの子を置いて逃げるなんて選択が出来ようはずも無い。
(いよいよ私も・・・やっぱり私、沈むのね。あの子ともう一度逢えるといいのだけれど)
空はあんなに青いのに、やっぱり私、
「・・・不幸だわ」
タ級の砲撃が迫る。
観念した私は、目を閉じてその時を待った。
(・・・?)
いつまで経っても、敵の砲撃が着弾しない。
不思議に思ってそっと目を明けると、目の前になんともおかしな格好をした男の人が居た。
ボロボロのマントを着けて、大きな剣のような物を片手で持ち、海面に立っている。
そう、この人は海面に立っている。
艦娘でも、深海凄艦でもない、男の人が、だ。
先ほどまで轟沈を覚悟していた私は、その心境のまま、不思議な状況と、このおかしな人に、とても穏やかな気持ちで尋ねた。
「貴方は・・・どなた?」