剣と魔法の世界から提督(?)が着任しました。 作:ラバウルユーザー
如月さんェ・・・
転移魔法で、白く塗り潰された視界が元に戻る。
次の瞬間、ほんの僅かな浮遊感とともに、俺の身体は落下していた。
「...っ!?」
シールド魔法は張ってあったが、流石に空に放り出されるのは想定外だった。
たが、慌てることもない。
俺の魔法スキルは陸海空すべてを網羅している。
「“レビテーション”!」
その言葉とともに、身体の落下スピードが緩やかになる。
この風魔法は、魔力を供給し続ける限り発動し続ける。落下速度も自在だし、咄嗟のときは使い勝手がいい。
とりあえず、当面の心配事はなくなったから現状把握といこう。
「・・・“ステータス”確認」
小さく呟くと、視界の端に、
|ユート 迷宮冒険者(異世界漂流者)|
|LV --- |
|HP --- |
|MP --- |
| |
|現在の経験地 ∞ |
|次のLVまで 0 |
こんな文字が映る。
これは俺が、異世界に移動して出来るようになった技能の一つ。
まるで昔のゲームみたいだと思ったのは懐かしい。
まぁ、色々やって現状自分のステータスはバグみたいになってるんだが。異常なのが通常なので、これで良し。
「さて、次は・・・っと?」
『ダンジョン・シーカー』と戦った時から持ちっぱなしの剣を背中に背負い直す。
このまま、ただ落下してても仕方ないので、どこかに移動しようかと思ったが、
「なんだりゃ・・・?」
ステータスの一部に不可解な文字。
『仲間が追加されました。』
仲間?・・・転送前は単独だったし、こんな空中で仲間とはこれ如何に。
ふと、右肩に何か居るのがわかった。
視線を向ける。
「・・・」(ニコニコ)
なんかちっさい女の子?みたいなのがめっちゃニコニコしながら乗っている。
更にもっと小さい猫みたいなのを、両手でぶら下げていた。
「君・・・何?」
「・・・」(ニコニコ)
問いかけてみるがニコニコしたままこちらを見ているだけだ。
これはどうしたものか。
その瞬間、ステータスの別の機能を思い出す。PT(パーティ)機能だ。
これはゲームのように仲間の状態を表示する機能。仲間になったならここに名前や職業なんかも表示される。
「・・・“パーティ”表示」
案の定、そこにはこの少女(?)の名前が載っていた。
|パーティ 1 |
|LV1 妖精さん エラー猫 |
| |
どうやら彼女(?)は、妖精さんというらしい。
職業は「エラー猫」?・・・そんな職業は聞いたことがない。
そもそも、職業「エラー猫」とは一体何なのか。謎は深まるばかり。
「ま、考えても仕方ないな・・・」
仲間になってしまったなら仕方がない。
とりあえず、よろしくと言いつつ人差し指を差し出してみる。
「・・・♪」(ニコニコ)
どうやら俺の言葉は分かっているのか、頷いて指先に触れた。ぶら下がった猫の腹で。
猫はビクッっとしているが、大丈夫なのだろうか?・・・俺には判断出来ない。
まぁ、挨拶も済んだことだし、いい加減ここから移動しようかと思った矢先、
「・・・」(クイッ)
妖精さんがこちらの襟を引っ張る。
俺が視線を向けると、何やら下の方を見ているようだ。
そちらを見ると、どうやらここは海の上空らしく、見える範囲は一面の海だ。
チラホラ島の影は見えるが、少し遠い。
妖精さんが見ているのは、海面の上。
何かが動いている。
「・・・“千里眼”発動」
狩人という職業で使えるようになる、遠視スキルを使う。
これも『ステータス』で使えるようになったものだ。
様々な職業を経験することで、その職業のスキルが使えるようになる。
今回は、その中で狩人のスキルを使った訳だ。
「なんだ?・・・砲台みたいなの背負った女と・・・魔物か?」
『千里眼』で強化された視界に映るのは、真っ黒な謎の魔物らしきヤツと戦う巫女みたいな格好をした女だ。
その女はあろうことか、砲台らしき物を背負い、海の上をまるでスケートするかのように動いている。
周囲には同じ格好をした女がもう一人いるが、そっちは仰向けになって海に浮いている。やられてしまったのだろうか?・・・動く様子はない。
いくつかの黒煙を上げる魔物の死骸、それと他にも砲台を背負った女の子らしき姿が見える。
どの子もやられて海に浮いているようだが。
「アレを助けろって?」
妖精さんにそう言うと、
「・・・!」(コクコク)
勢いよく頷く。
まぁ、目の前で女性がやられるのをただ見ている趣味はない。
少し距離があるが、何とかなるだろう。
「しっかりくっ付いて居ろよ?・・・“ゲイル”!」
そう妖精さんに言って、強風の風魔法を発動させる。
『レビテーション』と併せて、すっ飛んだように俺の身体は動く。
風の抵抗は、事前に張った『シールド』で相殺されているので、ぶれたりすることもない。
一直線に巫女の女の前へ飛び込む。
丁度、間一髪だったのだろう。
諦めたように動きを止めた巫女の女に、対峙していた魔物(驚いたことに女のような外見をしている)が砲撃を放つ。
その砲弾が届く寸前、
「“ストップ”!」
俺の身体を空間魔法で強制的に女の前で止め、砲弾を『シールド』で弾く。
―――キャィン!
そんな音を残して弾かれる砲撃。
突然現れた俺に、驚いたように目を見開く魔物。
油断なく、背負っていた剣を抜いて構え、
「まだ戦うなら相手になるぞ・・・?」
相手が人型の魔物のようなので、言葉にしてみる。
人型のヤツは例外を除いて、それなりに言葉を理解したりするからな。
俺には、常時発動型のスキル『異世界言語』もあるし、通じないこともないだろう。
「・・・」
無言で睨み合うこと数秒。
相手は、こちらから視線を外すことなく、そのまま後退して行く。
どうやら引いてくれるようだ。
『シールド』を突破できないような攻撃なら心配ないとは思うが、後ろに庇った女も居るからな。
それに、この女の仲間らしき子たちの回収もしなきゃならんだろうし。
魔物の姿が見えなくなって、とりあえず気を抜くと、
「貴方は・・・どなた?」
そんな言葉が後ろから聞こえてきた。
振り向くと、呆然とこちらを見つめる女。
さて、何と言ったものか。とりあえず、
「俺の名はユート。・・・お節介なおっさんだよ」
そう自己紹介するのだった。
肩の上で、妖精さんがどや顔で猫を吊るしているようだが、それは全力でスルーした。