剣と魔法の世界から提督(?)が着任しました。   作:ラバウルユーザー

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おっさんはこの世界の現状を把握しはじめました①

「なるほどな。・・・扶桑たちはそれなりにお偉いとこの所属か」

 

「はい。・・・私たちは大本営肝入りで創立されたエリート育成鎮守府の第一期所属です。提督も優秀な方です」

 

「の、割には全滅寸前だったようだが」

 

「そ、それは。・・・私の旗艦としての実力不足で」

 

「まぁ、確かにまだまだ慣れてない感じも有ったが。・・・それ以上に艦隊として、チームとしての連携不足が目立っていたと思うがな」

 

拠点の外で作業しながら扶桑と話す。

扶桑の仲間たちである、山城、青葉、衣笠、赤城、加賀。

彼女たちを一先ず部屋に寝かせて、俺はまだ大丈夫だと言う扶桑と共に、外で拠点の隠蔽工作をしている。

この拠点、海から丸見えだからしばらくすれば深海凄艦とやらに襲われる可能性が高い。

そこで、俺が持っている各種結界石で陣地強化している。

敵避けから欺瞞、流石に透明になる物は無いのでそれ以外で使えそうなのは全部使う。

魔力を込めるだけで発動するので、基本的に置いとくだけでいい。しかし、ただ置いておくと不慮の事態で壊れるかもしれないから、それなりに考えて配置する。錬金で配置場所の強化も忘れてはいけないな。

その最中、この世界や扶桑たちの立場などについて教えてもらっている。

彼女らは、第二次世界大戦で沈んだ船の魂が具現化した存在らしい。俺が元いた世界で一番近いのは物質化した精霊、ニンフとかそこら辺か。

そして、彼女たちは所謂エリート部隊の一員だと言う。それにしてはレベルが低すぎる気がするが。

 

「提督は・・・提督の作戦は本当に素晴らしいと思います。それを完璧に実行出来ない私たちに問題があることも。・・・私たちに身体や心があるのがいけないのでしょうね」

 

扶桑が俯き加減でそんなことを言っている。

 

「提督が本当に必要なのは、ただ指示を確実にこなす兵器。・・・提督は私たちに必要なこと以外何も仰ってはくれません。作戦指示を出し、装備を決め、目標をこなせとしか」

 

「・・・」

 

まぁ、所謂典型的頭でっかちと言うか、俺様思考と言うか。エリート意識高すぎて誰も頼れないんだろうな、と漠然と思う。

いや、誰かに頼るという発想がないのかも知れない。俺が元居た世界の貴族階級や騎士団の連中を思い出す。

『俺が一番だ!』みたいなのばっかだったし。

 

「目的を達成は当たり前。・・・失敗すれば冷たい目で見られ、事細かに責められる。鎮守府の雰囲気は日に日に悪くなってしまって・・・あ、すみません。なんだか愚痴ばかりになってしまいました」

 

扶桑は寂しげに笑っている。

 

「まぁ、気にするな。・・・愚痴くらいいくらでも聞いてやる」

 

気にしてないと伝え、作業を続行する。

彼女に言ってやりたいことはいくつかあるが、俺がアドバイスしても直にどうにかなる問題ではない。

根本的に、その提督とやらの思考を変える以外に道はないだろう。こればっかりは扶桑とその鎮守府に所属する全艦娘の役目だ。

俺が直接乗り込んでOHANASIする訳にもいかないからな。

彼らの総指揮官が居る場所、そのエリート部隊と敵対したなんてなったらとんでもなく面倒にしかならん予感しかない。

この世界の通常戦力を含め、武力がどうなってるか分からないが、負けないにしても世界を敵に回してなんてのはゴメンだ。

いくら俺がお人よしでもそこまでの苦労を背負い込むのは困る。

助けておいてなんだが、そもそも、元の世界に帰れるか不明な状況で色々不確定要素を増やしすぎた感はある。

目の前で女に死なれるのは嫌ったから助けたことに後悔はまったくないけどな。

 


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