TS転生・労働生命体カーニャ   作:水辺ロープ

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いわゆる「水着回」で、溺れた少年を助けてボーっとされたり、イケオジに声をかけられたりの、忘れられないアヴァンチュールです。嘘は言っていない。たぶん


閑話3:『底辺労働者(テイヘンズ)のビーチ休暇リベンジ』

私だ。某「装甲歩兵テイヘンズ」の無能生命体カニュー大尉……の女性版、カーニャ大尉である。

 

本日は1日休暇を取り、何度目かになる「ビーチ・リベンジ」の当日だ。

この日を完全空ける(デバッグする)ために、諸々の軍務作業を深夜残業で前倒し処理してきた。当然徹夜明けだが、非常に気分が良い。

 

先日は見回りで訪れたボイコツの街の飯屋の前で、

「お兄さん、食べていかない?」

と客引きしている美人のねえちゃんに男性と間違われたが、休暇の決まった今の私は気が大きいので微塵も気にしない。軍服に短髪、そもそも女性将校が少ないという軍の現実からして、男と間違われるなど珍しくも何ともないのだ。

 

それにどうせ中身はTS転生した元・底辺労働者。今さら性別の誤解なんぞ気にはならない。

 

――ならないのだ。

「ヒュー、ストン」だとか「棒人間」みたいだとか言われても、私は一切気にしていない(※ここに強い強調のパッチを当てておく)。

 

せっかくテイヘンズ世界の片隅にTS転生したのだ。職場(ブラック現場)しか知らないままで「あんたは、人間のクズだな!」と「ざまあ」されて死ぬのは御免である。聖地巡礼をして世界を見て楽しみたいものだ。私とて、前世では「テイヘンズ」ファンの最低野郎の一人だったのだから。

 

だが、一人で行くには道中の安全(治安バグ)が気になる。

そこで今回は、職場でよく顔を合わせる女性将校、エッセンシャル基地のクルツ司令の秘書であるセシリアと一緒の休暇だ。

 

彼女も相当ストレスが溜まっているらしい。

気がつくと昼から酒を飲み始め、強烈に匂う葉巻をくゆらせているクルツ司令を、24時間体制でコントロールし続ける仕事だ。過重労働の大変さは身に染みてよく分かる。

 

私は以前、ビーチで夕方まで寝過ごしたし、なんならビーチに行くはずの当日に家で夕方まで寝ていたという前科もある。しかし今回は、しっかりとテイヘンズ世界の美しい自然を満喫するつもりだ。

 

移動に軍用のジープを使おうと考えたのだが、公私混同はよろしくない。コンプライアンスの観点からセシリアの愛車で行くことにした。

高級将校の秘書だし、さぞ豪華な車かと思えば、出てきたのは丸くて可愛い軽自動車(※装甲はペラペラ)だった。しかも、仕事が忙しくてずっと乗らずに放置していたらしい。

 

嫌な予感がする。久しぶりの稼働からの長距離ドライブ。

案の定、道中でパンクした。

汗だくでスペアタイヤと交換した。

 

よし出発、と思ったら次はエンジンが動かん。バッテリーだろうか。

護身用にサブマシンガンと拳銃、手榴弾という「いつもの三種の神器」は持ってきたが、残念ながらそれで車の修理(デバッグ)はできない。

 

私とセシリア秘書は、必死に鉄の塊を押した。

1時間後、奇跡的にエンジンは回復した。ちなみに目的地の目の前だった。この時点で既に勤務1直ぶんくらいの体力を消耗している。

 

さらに、ビーチに着く寸前で激しいスコール。マジか。車を押しながら二人して綺麗に濡れそびれた。

 

「……水も滴るいい女、というやつだ」

「ワールド・ストロンゲスト・ウーマン・コンテスト。休暇でも自分磨き(物理)を忘れない、ね」

 

いつも通り、飛び込み事案にそんな無理やりな社畜ジョークで限界の空気を乗り切ろうとした私を見て、セシリアはしみじみと言った。

 

「あんたがクルツ司令の無茶振りに耐えて、エッセンシャルで生き延びてる理由がわかったわ。神経の構造が違う。ホンモノね」

 

ホンモノの何だ、と訊き返したが、セシリアはニヤリと笑うだけで返事はなかった。……嫌な笑いだね。

 

ビーチに着いても豪雨はやまない。だが、ここまで来て引き返せるか。

雨宿りがてら、着替えテントでファッションショー(水着の兵装チェック)を執り行う。

 

セシリアは見栄えのする完璧でカラフルなビキニ。本当に見栄えがする、誰もが振り返って二度見するレベルの美女だ。

対する私は、スポーティな黒のセパレート。上はともかく、下はショートタイツ型を着用し、さらに上からカーキ色の短パンを穿くという完全防壁(ガード)スタイルである。

 

並んで鏡を見ると、驚くほどの対比が映えていた。

セシリアの黄金色の長髪に、私の紫の短髪(おばあちゃんの白髪染め色)。

豊かな胸に引き締まったウエスト、メリハリあるボディラインで芸術彫像のようなセシリア。水着は華やかだ。

 

対して、真っ直ぐなコンクリートブロックのような棒ラインの私。それなりに美人ベースではあるが目の下には明確なクマ、顔色は悪く、水着も単調な暗色。

 

……対比が映えてしまっている。

もの凄く映えてしまってはいるが、悔しくなんかない。

 

幸いにもスコールが止んだ。

「泳ぐか。私は水泳(潜入)が得意なのだ」

「カーニャ大尉、波で水着をMIA(作戦中行方不明)にしないでね」

 

セシリアが不穏なことを言うが、上は被り型、下はタイツ型に短パンの私にミリ単位で未帰還(ロスト)となる可能性もない。完全武装なのだ。

 

意気揚々と海に入る。澄んだ水、熱帯魚がカラフルで目を奪われる。

最高だ、私も今だけは魚だ! 楽園を泳ぐ自由な魚なのだ!

 

そうやってハイになって泳いでいたら、野生のアシカ――ではなく、現地の野生のクソガキどもが猛スピードでぶつかってきた。

クソガキどもは飛び込み台やマットレス、ボートから飛び込みまくり、浮き輪やボディボード勢も入り乱れて縦横無尽に活動している。私は泳いでいる最中に何度も衝突され、顔面やお腹を容赦なく蹴られた。

 

物理的に痛い。景色は天国だが、生態系は野生動物の地獄だ、ここは。

 

辟易していたその時、浮き輪をつけたクソガキの一人が、潜るように頭を下げて腰を上げる変な格好でバタバタし始めた。バランスが崩れて頭が水中に突っ込んだ姿勢から回復できず、溺れ始めている。

 

職務ではないが、見過ごせば寝覚めが悪い。

私は近寄り、浮き輪ごと無理やり引っ張って岸へと引き上げた。

チェック。意識なし、呼吸なし、だが脈はある。

 

「誰か来てください! そこのあなたは監視所へ走って助けを呼んできて! セシリア、一緒に人工呼吸を!」

 

クソガキに水を吐かせ、敷いたタオルの上に寝かせてセシリアと連携して救命措置を開始する。幸い、クソガキはすぐに呼吸と意識を取り戻した。

 

集まってきたクソガキどもは一応私に礼を言っていたが、その目は完全にセシリアのダイナミックなビキニ姿に集中して釘付けになっていた。鳥や猫をスポットライトでからかうと丁度あんな感じだ。

 

「お前、良いな。あんな美人のおねーさんにチューされたんだぜ」

「……おう。結婚してもらいてえ……」

 

……それだけ盛んに対象を追いかけ回せるなら問題なかろう。あとお前は十年早い。そして「美人のおねーさん」に私は入っていないようだ。

 

TSもののお約束パターンである「助けた少年が私に憧れて懐く」といった神展開にシフトすることもないまま、仲間を助けた大恩人たる私の存在は、あらゆる意味でアピールが強いセシリアの残像に隠れて綺麗に抹消された。

あいつらは野生動物だからな。感謝や憧れといった人間並みの情緒を、正しい対象に向かって出力することを求めてはいけないのだ。仕方がないのだ。

 

救命に成功したことは良かったが、完全に水を差された。ほうほうの体で海から上がり、パラソルの下でゆったり休む。

 

するとセシリアが日焼け止めローションを塗り、あろうことかビキニのブラジャーを外して、豊かな胸を晒して日光浴を始めた。いわゆるトップレスで日光浴というやつだ。流石は惑星ナメルキャでも美しさで有名なビーチリゾート(※戦さえなければ)、開放感が違う。

 

「セシリア、コリほぐし、やるかい?」

「あー……お願い……」

 

眠そうな返事だが、取り掛かろう。

私は重度の頭痛・肩こり・腰痛持ちのトリプルスレットだ。そのため普段からセルフケアを欠かさないし、親しい人間の身体の滞りを見るとデバッグせずにはいられない悪癖(職業病)がある。前世でも先輩や同僚、後輩、それに元カノなんかにもよく施術をしてやったものだ。

 

あの彼女は普通の勤め人(ホワイト環境)だったため、お互いの生活リズムが1ミリも噛み合わなかった。こちらは土曜出勤は当たり前、日曜も当然のように緊急呼び出し。最悪の時期は「30連勤(※4週間ノンストップ勤務)」を叩き出し、丸1ヶ月顔を合わせることすらできないバグが発生した。

たまの旅行でも、彼女が有給を使って優雅に3泊4日を予定している中、私だけは休めず、なんとか余裕を作った週末の一泊二日で弾丸合流し、先に一人で新幹線に飛び乗ってオフィスへ引き返す……といった限界ムーブを繰り返していた。

 

そんな有様だから、「将来結婚しよう」などという責任あるコミットメント(プロポーズ)は口が裂けても言い出せなかった。

「後任の担当が決まったら、今度こそこの会社を辞めて……」と裏で転職活動を試みていたものの、後任は一向に決まらず、時間だけが摩耗していった。

最終的に、どちらが切り出すでもなく「……」「……」と、静かに合鍵を手渡して私たちのシステム(交際)は終幕した。

 

まあ、お互いを嫌いになったわけではないので、その後もよくメールのやり取りをして、時々会ったりもする「いい友人」であり続けてはいたのだが。まだちょっと綺麗に吹っ切れてはいない、そんなセンチメンタルな前世の未練メモリが、潮風と共に頭をよぎる。

とにかく、改めて宣言するが「コリ」は私の敵(ターゲット)である。

 

セシリアの足の裏からマッサージを開始し、徐々に位置を上げていく。彼女の芸術的に美しい背中の両側、特に疲労が溜まる腎臓のあたりを肘と拳でじっくり押し込む。肩甲骨から首筋のラインを捉え、今度は仰向けにさせて腹部、肝臓のあたりへパッチを当てる。

 

さらに、あれだけ見事な乳を支えていれば当然凝るであろう左右の脇、その上部、鎖骨のあたりを的確に指圧。手指から腕、血流が滞りがちな腋窩、 痛点となる肩へ。

最後に、髪と化粧が崩れるのをロジカルに了承させてから、あご、ほお骨、鼻や眼窩の周り、耳から頭部全体を徹底的に揉みほぐし、全身の血流の流れを限界突破させてやった。

 

セシリアもやはり、激務のストレスからくる首・肩こり、および頭痛持ちだったようだ。たぶんクルツ司令のいい加減極まる日常と、目を離すとすぐ酒と葉巻に逃げるクソムーブに、日々ギリギリと歯を食いしばって耐えてきたに違いない。

 

あとは骨と筋肉の周りももう一度強めに。腎臓と肝臓もだ。主観だが、疲れの取れ方が絶対に違う。

 

「……痛っ!? ちょっとカーニャ、そこ、今ものすごい音がしたわよ!?」

「気にするなセシリア。構造上のバグ(コリ)を物理的に破砕しているだけだ。耐えろ。上司の理不尽に耐える日々に比べれば、この程度の圧、実質ノーダメージだろう」

「そんなコンプライアンス無視のロジックがあるか……ッ! でも、絶望的に気持ちいい……」

 

あとは坐骨神経痛対策などか。ちょっと高度なワザでセシリアの機能を完全回復させてやろう。

 

「クッ、ちょっとカーニャ……! あなた私の背中に乗って……何する気……っ!?」

 

私は頑丈なセシリアの腰の上に立って、かかとでコリの拠点をピンポイントで狙い撃ちした。

 

「動くなセシリア。お前のその重厚な肉厚フレームなら、私の今の軽量な総重量(体重)をかかとに一点集中して受けてもバグ(損壊)は起きない。計算通りだ」

「計算の前提がおかしいわよ! 痛い、痛い痛い! かかとが、お尻の奥の神経にダイレクトに刺さっ――」

「これが、効くんだから、我慢しなさいいっ!!」

 

私は過重労働のせいで絶望的に軽くなった体重をグッと乗せ、セシリアのお尻のあたりに仁王立つ。

 

「ひぎぃっ……!?」

 

セシリアは声にならない悲鳴を上げて硬直していたし、客観的に見て絵面もちょっとよろしくないかもしれないが、坐骨神経痛で立ち居振る舞いに支障が出るようになるよりはマシだろう。

 

前世で30連勤を乗り切るために、自分で自分の身体を限界まで刺激して血流を無理やり通していた私の狂気のセルフケア精神が、セシリアの上で炸裂した結果。

 

「……信じられない。プロのマッサージ師を雇ったみたいに身体が軽いわ。世界が明るくて、輝いてる!」

 

セシリアは劇的なデバッグ効果に大層喜んでいた。

すっかり気分が良くなった彼女は、自分の分と、マッサージの報酬として私の分の冷たいドリンクを買いに席を離れた。

 

一人残り、私はセシリアへの施術成功と喜びに釣られて、なんだか思考が緩んできた。

「軍の作業服のせいで白黒の見事な斑になった上半身だ。ここの均一化(デバッグ)を狙うのも、ロジカルに考えて悪くはあるまい」

 

そう合理的に判断し、私も上の水着を脱ぐと日焼け止めを塗りたくった。セシリアに負けずとトップレスで日光浴である。首を軽くほぐしてからサングラスを装着し、うつぶせや仰向けになって砂浜に横たわる。連勤明けの身体に潮風が心地よく、思わず深い眠りに落ちかけた――その時だった。

 

ザッ、ザッ、と砂を踏む足音が近づいてきた。セシリアが戻ってきたかと思ったが、妙に足音が重い。

 

「ハーイ、そこのキミ。1人かい?」

 

薄く目を開けると、そこには彫りの深い格好良いイケオジ(現地人)が立っており、私に声をかけていた。

これがいわゆる、世に聞く『ナンパ』というヤツか!?

さっきのクソガキどもは野生動物枠なのでノーカウントとしたが、今度こそ私にもTS転生モノの主役らしい、甘やかなイベントの針が振れたのか――と思ったが、どうにも会話のパラメータが噛み合わない。

 

「美人のおねーさん」とかそういう定番の単語は一切出てこず、オジサンはやたらと熱い視線で私の鎖骨や筋肉の付き方を褒めちぎってくる。

 

「……キミ、素晴らしいよ。その無駄な脂肪を極限まで削ぎ落とした『胸板』、および美しく浮き出た前鋸筋! 実に引き締まった最高の若者だ!」

 

……胸板。胸板?

わざわざ上の水着を外して解放(デバッグ)した私の平坦な上半身は、痩せて筋が浮いたファッションモデルが過剰に筋トレして胸がさらに平らになってしまったような見た目であり、現地の本職のゲイおじさんからすれば「仕上がっている美少年の胸筋」にしか見えなかったらしい。

 

彼は私を男だと100%勘違いして口説いている。彼が親指で指さす方向を見ると、波打ち際で筋肉隆々のお仲間たちが「こっちへ来いよ!」と熱烈に手招きしている。ブルータスよ、お前らもか!

 

……それはちょっと、システム要件的にどうでしょう?

 

「トップレスで胸がなくてッ! 男に間違われてッ!! ナンパされたのがゲイおじさんでッ!!! 胸板を絶賛ッ!!!! む、胸板ッッ!!!!」

 

ドリンクを持って戻ってきたセシリアに、過呼吸で緊急搬送されるレベルで爆笑された。

 

ちなみに、ボイコツの街でもねえちゃんに男性将校と間違えられた前科があるが、あの件は決してセシリアに知られてはならない「SSS級の軍事機密」だと心に深く誓った。

(※なお、この先セシリアと一緒に赴いたボイコツの街で、普通に『お兄さん』と呼びかけられて即座に機密漏洩するまで、あと1週間である)

 

気を取り直して、飯屋に往こう!

事前に有能な私が徹底リサーチしておいた、ロケーション最高の海沿いレストランだ。

たまには「じゃがいも(ポテチ)にソーセージ(魚肉)にビールという、ドイツ式底辺定食」ではないもので、心身の英気を養いたい。

 

まずは冷えた酒から飲み始め、最高のツマミがテーブルに届いた。魚だ、海老だと私の期待値が過労死ラインの3倍に達したその瞬間――。

 

厨房から「火事だァァァー!」と悲鳴が上がった。

 

なんと、低賃金と過重労働にブチ切れたバイト(思想がゲリラ寄り)が、腹いせにバックヤードに放火したらしい。テイヘンズ世界の労働環境、末端の闇が深すぎる。

悲しいかな、身体が勝手に動き、即座に一般客の避難誘導ヘルプ(仕様変更対応)を開始する。消火活動は本職の消防チームが到着したので、手伝う気力もなくそのまま店を離れた。

レジャーと仕事が交互に超高速でノックしてくるのは、これ一体何かの訓練かね?

 

レストランの屋根の下から離れた瞬間、タイミングを完全に合わせたかのように、本日二度目の最悪なスコールが激しく降り注いだ。

 

「ふん、無料の天然のシャワーも良いもんだね……」

 

強がってそんな軽口を叩いてみたものの、徹夜明け+疲労の身体は一瞬で体温を奪われ、ガタガタと歯を鳴らしてその場から動けなくなった。完全なるフリーズである。

 

見かねたセシリアにおぶわれ、ほうほうの体で海の家へと避難する。

マッサージをしてやり、今度は命(体温)を助けられ、これで貸し借りゼロ。プライベートでの親睦を深めて得るものは非常に大きい……はずだ。

 

「あんた、本当に脂肪が足りないのね……そんな身体で大丈夫なの?」

 

某ゲーム『エル・ツャダイ』のルシフェノレのように尋ねるセシリアが私の首や肩、そして一瞬だけ胸のあたりに視線を走らせ、気まずそうにスッと目をそらしたのを、私は断じて見落としていない。

私は震えによる歯の噛み鳴らしで応えた。「No problem. Everything's fine.(大丈夫だ、問題ない)」。前衛的なモールス信号である。

 

そう、私はこの装備(胸部装甲)で断じて問題ないのだ!

(※あるいは、「私にはこれしかないんだ。だからこれがいちばんいいんだ」である……)

 

そして帰り道。

追い打ちをかけるように、セシリアの可愛い軽自動車がスコールの湿気の影響か、何度もエンスト(不具合)を起こした。

騙し騙し乗り続けたものの、無情にもエッセンシャル基地のわずか手前で完全に沈黙した。また故障か!

 

結果。

私たちは深夜の暗い夜道を、一歩一歩、豪雨に打たれ泥まみれになりながら、肩を喘がせ、ぬかるんだ大地を、重い鉄の塊を必死にひたすら押して帰った。嘲笑っていただろう月は、豪雨の雲に隠れて見えなかった。

 

せっかくの休暇(ビーチリベンジ)だったのに、

普段の残業の5倍くらい疲れた。

 

もちろん、翌朝からはまた、死んだ魂を疲れた身体に無理やり詰め込み、「生まれ変わった新しい私(※ゾンビの意)」で脳内麻薬麻痺の恍惚とした光に包まれながら元気に軍務に戻った。

これほど生気がないと、そのうちボイコツの街の「ファントム・クラブ」のお化け屋敷ショーからキャストとして引き抜きのスカウトが来そうな気がするが、これ以上の過重労働(ダブルワーク)はコンプラ的に絶対にやめておきたい。




【テイヘンズ補足小事典】
⚫️当然徹夜明けだが、非常に気分が良い

いつもの心身SOSからの脳内麻薬出まくりで誤魔化しているヤバい朝を、休暇で海に行ける!という情報で勘違いしているだけです


●30連勤(以上)

現代の日本であれば労基や警察に通報したら激怒間違いなしの違法パッチ。なお、当時の我が社の労働組合(労組)は、上層部に睨まれ組織から物理的に追い出されて既になかった。デバッグの盾は、最初から存在しなかったのである。


●「……そんな身体で大丈夫なの?」「大丈夫だ、問題ない」 

さて、この後の運命は…。

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