装甲歩兵テイヘンズ TS転生・労働生命体カーニャ   作:水辺ロープ

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降り注ぐ芋煮。飛び交う丼。

がんばれボイコツ納涼市民祭りで、
地元メディアを呼び集めた戦災孤児の屋台が燃える。

圧倒的、ひたすら圧倒的なばかばかしさが蹂躙しつくす。

思いつきと悪乗り、
ささやかな憂さ晴らしの難癖、
芽生えた連帯、絆。
けなげな希望。

老いも若きも、男も女も、
昨日も明日も飲み込んで走り出す、さっき思いついた千年前からのイナヅマ伝統イベント。

鉄の腕の鏡開きに、音を立てて酒の雨が降る。

次回「騒乱 がんばれボイコツ納涼市民祭り」

酔っ払いは、アルコールを浴びて蘇る。


閑話4 騒乱 がんばれボイコツ納涼市民祭り

ある夏の日のことだ。

 

ボイコツの街で納涼市民祭りとやらがあるとかで。そこでの戦災孤児支援の話がたまたま流れてきたので「これ、ウチが乗り出したら支援になって、ウチのイメージ思い切りよくなる、双方に利益がある組み合わせじゃないすか~?」とクルツ司令に軽く推してみたら。酔っ払いの相撲カーいやスモーカーは「面白いな! カーニャ大尉、お前に一任する」とか投げてきた。

 

まあ夢にも思わなかった。あんな……の発端になるなんて。

 

仕事の合間を縫ってジョー・ヤブーキよろしく「へへっ…よっ!」と戦災孤児支援施設に顔を出して話し合う。

 

イベントは立って並んで募金呼びかけとかではなくて、屋台をやってアピールしながら、売り上げを戦災孤児支援の資金にする云々…というカジュアルな方向性になった。

 

出しものは、パンに肉や野菜を挟んで特製タレをぶっかけたフランスパンサンドっぽいのと、野菜と肉をぶち込んで素材の出汁で手早旨いスープにしたものを出すことにした。身もふたもない表現だと、水牛肉のドネルケバブ(回転焼肉)を挟んだバイン・ミーと、パクチーを入れた水牛肉の芋煮みたいなものだ。

 

芋煮は前世で小学生の炊事遠足でもできると保証済みである。調理や売り子に戦災孤児施設の子供らと、エッセンシャルの隊員を補佐につける感じでやれないかと。

 

途中で面倒くさいことにガキどもが「エッセンシャルの象徴の装甲歩兵を展示してくれ!!(≧∇≦)b」とか言い出した。

うっかりその声をクルツ司令が聞いてしまって「装甲歩兵の砲撃戦闘演習をつけると良い!」とか話を転がす。あんた、私に一任するって言ったのでは?

 

これは危険がアカンと思ったので、会議の場で「それなら装甲歩兵を調理出動(!?)させたら?」と半笑いでジョークを飛ばしたら、クルツ司令から施設のスタッフから子供たちまでが(!)「それが良い!! さすが!!」とかネジの飛んだような大賛成をしやがった。

 

ジョークを飛ばした私も、それを本気で採用するとは夢にも思わなかった。あいつら普段から何を考えて生きていやがる。

 

何はともあれとんとん拍子で決まってしまって。

 

わたしはうさぎの耳をつけたボーリングビートル「ホワイトラビット№9」の砲撃装置を改造した機械で肉野菜をスライスし、手持ちガトリング砲を改造した回転串でドネルケバブ(回転焼肉)を焼き、鍋をかき混ぜたりしている。

 

どうしてこうなった!?

 

まあ、私の「改善提案?」が珍しく採用になってしまった「自業自得の墓穴」なんだが。

 

あと、エッセンシャルに来てから、色々でマシンを乗り換えるのは9台目ということも付け加えたい。ルーデル閣下のように足を失ったりもせず、我ながらよく生きている。幸運のうさぎの加護かも知れないな!

 

フランスパンサンドには、子どもたちや、エッセンシャルの精神年齢子どもたちでも何とかできるよう、パンの焼き加減のサンプルや肉野菜の量、ソースの量、完成形のサンプルを置いた。真似して作れというわけだ。

 

鍋にしても同様で、肉野菜をどの位計って私の調理用装甲歩兵に渡すか、調味料の量、鍋を火にかける時間のタイマー、使い捨て容器に何グラムよそうかの設定だけでなく見た目で多い少ないがわかるサンプルもおいた。これも真似して作れ、である。

 

サンドやスープの盛りも装甲歩兵でバンバンやれるのだけれど、ここの主役は戦災孤児たち。子どもたちが前に出てアピールするべきだろう。

 

ネックになりかねない部分のサポート遊撃隊として我がエッセンシャルの良心サロ・サリア、それからクルツ司令の秘書セシリアを無理やり引っ張ってきた。

 

衛生に無頓着なジョルジョには食品に触れさせないよう、看板を持たせて街中での宣伝をさせて、ヤツが現場に来たら必ず誰かがついて手洗いをさせてアルコール消毒までやらせる「ジョルジョ特別対応ルール」を作った。

 

クルツ司令とセシリアが手を回して、地元テレビ局が取材に来て、「配信者」とやらもやってきた。アピールは万全だ。あと正規軍情報部、政府官邸に近いマソダムな伊達男サヴィツキィと部下たちもカメラを回していた。

 

セシリアとサロ・サリアにそつなく応対させ、私もひきつった笑顔を浮かべながら装甲歩兵で肉を焼いて見せたりした。大男のルイス、喧嘩っ早いティン・ウッズマンも子どもたちと黙々と働いている。

 

ただし、いつも通りにフランコがなあ⋯。

 

子どもらと一緒に作業しながらちらっと境遇を聴いたらこの酔っ払いが人目もはばからず大泣きを始めて(当然、自他の屋台の酒を隠れて呑みまくっていた)。気づいたカメラが集まりだす。

 

子どもらがサービスのつもりで肉大盛りにしたり、ソースを多めにかけたりしたら、ハレの日なのにそのことにわざわざ文句をいいに来るクレーマーはいるわけで。あっちより盛りが少ないだの、逆に多いから食べにくいんだがどうしてくれる、商売ってレベルじゃねえぞ誠意を見せろだの、子どもたちを詰めようとする姿に、メディア人どもが何が起こりそうだとこれにもカメラを向け始める。

 

フランコが跳ねるように飛び出して、子どもたちを背にクレーマーたちの前に立った。歯を食いしばった、イイ笑顔。いつものだ。

 

私は即座に「ヤツを止めろ!」と叫んだけれど、誰も間に合わなかった。

 

ヤツは予備動作小さくいきなり起動。クレーマーどもに水牛芋煮をぶっかけて、丼でぶん殴り、倒れたところを蹴りまくったり、放送禁止的な軍隊隠語を喚き散らしながら大暴れを開始した。カメラの前で。どうしてこう、あいつは堪え性が無いんだ。

 

それに対してクレーマー仲間が集団で逆襲する。サリアとセシリアは子どもたちと客を避難させ、ルイスとウッズマンは殴り合いに参戦。収拾がつかない大騒ぎになった。

 

「撮れ高だ!」

メディア人は大喜びだ。フランコは期待を裏切らない。

 

私は一応テロ対策で持ってきていた50口径ヘビィマシンガンで、フランコやルイスたちとクレーマーどもとメディア人どもを「緊急対応」と名付けてまとめて消し飛ばしたら気持ちいいだろうなあ、と思った。

 

ただ、フランコはアレでも毎週5%、5ヶ月でほぼ基地の兵員数が死ぬエッセンシャルで5年もの刑期…じゃなかった契約を2度更新した腐れ縁だ。お互い20回は死んでるところを潜り抜けてきたわけで。

私?私は刑期…契約を二回更新した「永遠の19歳?」の美少女?である。

よくわからないが、ヘビィマシンガンはやめた。

 

その代わり頭に来たので、並べてあるサトウキビウィスキー(?)の樽を、鏡開きのように「ホワイト・ラビット」の拳で次々とブッ叩いた。酒飛沫、酒柱が思い切り吹き上がる。

 

「……」

 

スコールのように酒を浴びた辺りが、停まって沈黙した。やった私がやり過ぎたかと焦ったのだが、周りはもっとビビったらしい。

 

全員、土下座させてぶん殴った。さらに警察に引き渡す。何故か不思議なことに「戦災孤児が頑張っている場に、彼らの親を殺したゲリラと工作員の手先が難癖をつけてきた!」という噂が流れたので、完全に我々のホーム。事実はわからないがチンピラクレーマーどものアウェイである。私がサヴィツキィやメディアクルーに囁いたわけでもないのに摩訶不思議。

 

フランコやエッセンシャルのろくでなしどもも、逆恨みされないよう、周りへのアピールで形だけぶん殴る。

 

「子どもらを守った男たちも、不当にも喧嘩両成敗でぶん殴られた」ことで、民衆の怒りと正義は更に燃え上がる。

 

ビビったチンピラクレーマーどもが周りに責任転嫁と正当化を叫び始めて火に油を注ぐ。周りは彼らを吊るしかねない大騒ぎ。可哀そうだがガキどものためだ!

 

私はぶん殴る芝居をしながら、フランコに「このろくでなしの酔っ払いめ! だが、ガキどもを守って良くやった」と囁いた。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

…後日。

悪のクレーマーが暴れまわるのを、正義の大魔神…じゃないホワイトラビットが覚醒して酒をふるまって皆が満足して落ち着いた…ようなストーリーがテレビで放映され、そうではない現場の実際をハイシン者どもが「うさぎ大魔神のボイコツ酒かけ祭り」と悪ふざけで垂れ流した。市民祭りのエッセンシャルが参加した戦災孤児支援屋台は一躍、クメソ全土のトピックになったらしい。

 

この悪ふざけのバズりは、出展をやろうと言い出したクルツ司令と支援施設のスタッフ、あと「装甲歩兵がイイ!!(≧∇≦)b」とか言って聞かなかったガキどもの責任だと、私は思う。

 

そもそも私が「参加したら?」と言い出して?「装甲歩兵を調理出動(!?)させたら?」と半笑いでジョークを飛ばしたのが原因だって?

 

そんなことがあったなんて初耳だよ。

あなたも祭りで、酒に酔っていたのではないか?




【テイヘンズ補足小事典】

●装甲歩兵で調理出動
重機で芋煮を作るようなもんです

●ジョー・ヤブーキよろしく
カーニャは過労で手が震えてシャツのボタンを留められなかったりする時があります。この1/1カーニャのキットに「好きなのよ! あなたが!」と言ってくれるスポンサーのセシリアお嬢さま、眼帯のクルツトレーナー、鼻から酒を吹く同僚フランコ、瘦せこけたライバル・ジョルジョの背後霊、「ミュージック、スタート!」と叫んで殴り合うプルートゥは、ついてきません。

●水牛肉のドネルケバブ(回転焼肉)を挟んだバイン・ミーと、パクチーを入れた水牛肉の芋煮
祭りの日に誕生した、千年前からのボイコツ伝統郷土料理。特に芋煮、芋の子汁は、他の地方には無く、手早く出来て美味しいと人気。ボイコツの飲食店にはこの伝統郷土料理を扱う店が増えている。ボイコツにはこれ目当ての観光客も来るようになった。

●5年の刑期…契約を2度更新した永遠の19歳?の美少女?
それは、19を超えた永遠の2 9歳というか既に30代?(事実陳列罪)

●サトウキビウィスキー(?)
要するにラム酒なんですが、名前は「ウィスキー」です

●「うさぎ大魔神のボイコツ酒かけ祭り」
千年前、屋台で水牛ドネルケバブのバイン・ミーと水牛の芋煮(どちらもイベント前にカーニャがでっちあげたメニュー)を売る子どもたちに難癖をつけて来たチンピラどもに対して、装甲歩兵(千年前に存在したOOPArts)が月に誓ったパワーからうさぎ大魔神として目覚めて、辺りに祝福の酒吹雪を振らせて、皆を酒と料理で仲直りさせ騒ぎを鎮める。酔っ払いが書いたような筋書きの「伝統民話」と「千年前から続く祭り、メニュー」という素敵な地方起こしの起源(?)である。

来年も、カーニャと1001年祭に付き合ってもらう!!
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