装甲歩兵テイヘンズ TS転生・労働生命体カーニャ 作:水辺ロープ
「ラーダさんよ、気に入らないな」
紳士が声をかけた。いつの間にか紳士の背後にいるジョルジョ。怖いんだが、ヤツがいれば心強い。ルイスもウッズマンもいる。サリアは私と遠間から周りを観察。フランコは⋯裏口のチェックに回して正解だった。ヤツがいたらジョッキかボトルで殴って真っ先に口火を切っているところだ。
ルイス、ウッズマン、曹長が間に入ってラーダと詰め寄る紳士との二人の距離を作ろうとする。
「俺の住んでいたボイコツの外れでは、ゲリラが周りの人間を捕まえて無理矢理従わせていた。彼らの組織の権力には逆らえなかった。理由もわからず、人々が見せしめに殺されたりもした。俺の身内もだ。そんな連中の仲間が、降伏したからって名誉ある捕虜だってのが、気に入らないな。彼らの魂が、それで落ち着くと思うか? 彼らの死を体験した俺の心もだ」
市民の一人が、悲運の美女として歓迎されているラーダに、酒の勢いで抑えきれなくなったのか、まくし立てた。そのまま殴りかかる。
「サシで、勝負だ! そこをどけ!」
紳士が間に入っている連中に叫ぶ。
ラーダが応えるように、曹長とルイスとウッズマンを制して前に出る。ラーダは退かない曹長に容赦ないボディブローをくれて退けた。
ドレスにヒールの筋肉質美人 vs タキシード紳士のステゴロ決闘なんて、前世の格闘ゲームかアクションRPGみたいだ。
体格と筋力で劣る女性が勝つには純粋な個体戦闘力だけではなく、実戦ならではのさまざまな要素があったほうが良いのに、ラーダは相手への誠意か脳筋か両方か…真正面から行っている。まあ、全身強化したスーパー・ソルジャーだからな。男相手でも互角以上、いや冷静さを忘れたオッサンが散々な酷い目に遭わされないか?
飛び込んで制止するタイミングを早くしないと。レフェリーのバイトまでやらされるとは!
公になったラーダのプロフィールがどこまで本当かわからないが、停戦間際のどさくさで中立宙域を力で心理占領してのけた惑星シドシス出身ということは実体験も入っているはずだ。原作ではラスティ・ショルダーに彼女が周りを虐殺された体験が、過剰な戦意と殺意を持つスーパー・ソルジャーにしていたのだ。そしてラーダが相手の怒り、憎しみや憤りに共感できることは想像できる。相手の悲しいそれを癒すために、あえて立ち会っているのかもしれない。正面から。
ラーダが紳士に頭や胴を殴られたのは故意だろう。故意に殴らせている。頭は回してスリップさせて打撃を流しているようだけれど。
真正面から組んで、力比べ。紳士が強引に投げに行く。ラーダは急に力を抜いてわざと投げられ、同体で倒れ込んだと思ったらぐるんと回って上を取る。「際の寝技」だ。
暴れる紳士がさらにまた上を取ろうと回転⋯しているうち、気がついたらラーダが背後を取って締めに入っていた。念のいったことに紳士の片腕には足を絡ませて封じて、もう片腕も万全には動かせないようにしている。
仰向けにされた紳士が抵抗し続けて⋯指からフッと力が抜けた。私はすぐさまラーダの肩を叩いて止めた。紳士は目を開けたまま意識が落ちている。私はウッズマンと紳士の顔をはたいたり胴を締めて活を入れている。紳士はすぐ回復した。無駄なケガをさせずに、ラーダの完勝だ。
クメソ情報部のサヴィツキィとナメルキャ情報部のシェーンベルクが、グラスを傾けながら冷徹にラーダの格闘を観察しているのは私も見ていた。
「畜生、まだだ。まだ終わっていないぞ!」
意識を取り戻した紳士男がまた文句を言い始めた。呼応して、男の仲間か、見ていて興奮した心情的に男に近かった連中が、騒ぎ始めた。
ただ今度は、紳士が熱くなった周りを「待て!」となだめに入っている。
まあ、何にしろ先は読める。パーティ会場での大喧嘩だ。映画によくある酒場の大喧嘩みたいなものだろう。
男の一人が料理ごとテーブルをひっくり返してウッズマンに殴りかかり、一人がやっぱり食器の乗ったテーブルを吹っ飛ばしルイスに突進、二人がジョルジョにテーブルを吹っ飛ばし椅子をかざして襲いかかった。紳士は制止していたがやっぱりラーダに突進する。横からサロ・サリアが抱きすくめるようにして方向を変えさせ、制止に入る。
うわあ、由緒あるマジェスティックパレスホテルのパーティ会場でこんな乱闘が始まったのは、ホテル史でも初めてのアトラクションでは?
ラーダの部下の曹長とグエン軍曹が、ラーダをガードして距離を取らせる。レスリング好きなウッズマンが投げたり寝技で転がるとまた家具調度が壊れる。ジョルジョが相手を殴ったり避けたりして調度を壊す。ルイスが相手を柱や壁、窓に放り投げて壊す。紳士とサロ・サリアが土俵際の力士のようによろけて回り込み、人々を巻き込む。
古びたマジェスティックパレスホテルのちょっと由緒ある建築は、補修できる機会がどんどん増えてます(良い方に言い換えてみた)。つまり破壊されてます。
裏口がバーンと開いた。まずい。私は走り出した。
「わ〜お!」
目を輝かせたフランコが、酒のボトルを振りかぶって立っている。
やめぇ! 私は飛び込んでヤツの手首を抑えて止めた。ドレスとヒールじゃ走りにくいわ! なんで私だけ、味方のはずの人間と取っ組み合いしてるんだ!?
そしてバランスを崩してスッポ抜けたボトルが飛んでゆく先はシャンデリア⋯。高そうなヤツがぶっ壊れた。真下に人がいなかったのが幸いだ。
のっぽのルイスさん?、ルイスさん?乱闘の中でわたくしの優雅な動きを(ざまあポイント)チェックしてらっしゃいませんこと?
男の仲間が暴れ続けている。私はフランコを殴りつけると、壁際の消火器に飛んだ。一気に噴射!
「貴様ら!高級な調度品を壊すな! 賠償金はどこから出ると思ってるんだ!」
静かになりました。
よし、OKだ。
ルイスが横で冷静に、言いやがった。
「隊長殿、消火剤で汚れたホールの修復にも、修繕費と賠償がかかるのでは?」
貴様、影でまたざまあポイントをカウントか!
◆ ◆ ◆
私が消火剤をぶっかけて白けた乱闘は一応、ノーサイドということになった。
何となく、一同まとめて乱闘の後味の悪さを流すためにファントム・クラブになだれ込み、酒が入る。
私は思いついて時間を見る。社畜ならやれる。こっそり手配をセシリアに頼み、店から市内に電話してもらった。
歌姫ミントが歌い出す。パワフルなナンバーで引き込み、ムードある歌から、聴かせる歌、パンチのある歌に、スイングする歌、そして持ち歌『バイナラグッバイ』を店主カカオのピアノで。聴衆の心を操る動きも手慣れたものだ。
そのうちラーダが招かれて、ピアノを響かせ始めた。これも上手いなあ。クメソ民謡のアレンジや、軽く転がる曲などなど。
私は「仕掛け」がいつ来るかと時計を繰り返し見る。
「お前に一つやって欲しいことがある」
クルツ司令が私に声を掛けてきた。
「お化け屋敷ショーのキャストならやりません!」
「何を言っておる。ノーサイドを示すために、ラーダの合わせでお前が立って何か歌え。先の騒ぎを当事者が閉めれば落ち着くだろう。歌は任せる」
うわあ、宴会のリーマンか学生かよ。
「鉢巻代わりにネクタイ巻きましょうか?」
「何を言っている?」
ノーサイドを示すのに引っ張り出されたわたくし。頭が混乱しておりますが、咄嗟に一曲。メロディを軽く口ずさむとラーダがすぐ応じる。綺麗なピアノ伴奏。
「…おらはくたばった…♪」
わたくし、咄嗟の選曲『出戻ったヨッパライ』が酒場に響く。
テネシーワルツ風の洒落たジャズ伴奏に「くたばったおらが何だかで帰ってくる…」の歌詞。酒場が一気に冷えた気がする。エアコン強いよ。ラーダも戸惑い気味だ。セシリアが吹き出している。コンチクショウ。
しかし、簡単にメロディを聴かせてから無茶振りしても、綺麗にぶっつけの即興伴奏を聴かせるラーダ、育ちと才能が凄いな?
私の仕掛けまではまだ時間がかかる。ノーサイドを示すためにも、しばらく歌とピアノを聴かせないと⋯。
「我々は誰かを失い、残された者たちは彼や彼女らに届くよう、或いは我々もまた逝った時にせめてささやかな土産話を聴かせてやりたいと、日々を生きます。それがささやかな努力に過ぎないとしても。そして今の喜怒哀楽と努力や歌が、あの世の彼らに届きますようにと。今これからの歌は、先に楽園に渡った彼らのため、また今を生きる我々自身の痛みを癒すために歌います」
2曲目。某ヴォルフガング・Mの『アヴェ・ヴェルム・コルプス』のような曲。
次。クメソなんだし、シャンソンも良いか。エディット・某の『愛をたたえる歌』のような歌。ラストで神は愛する者同士をあの世でひとつにして下さる、と歌われる。
まだか。
3曲目。某『アメイジングな恩寵』。
私のような、かつては何も分からなかった地を這う虫けらで、多くの苦しい運命や罠の中を生きてきた我々にも、救いが届き何かが見える。そして恩寵が、我々をあるべきところへ導く⋯。
私は前世で、たまたま縁があり地方合唱団の端にいたことがある。それが解散する前に、団は奮発して何回か、熟練の指揮者を招いて歌った。そのときのある一人。『炎の』とニックネームがつく某K師が熱くぶつけてきた言葉…だったかもしれない?を、私は今表そうとしていた。
『あなたたちの最上の精神と技術で、作詞者と作曲者の精神をこの場に顕し、あなたたち自身と聴くものを、その最上の高みへ連れてゆきなさいっ!!』
確かそんなことを。私は私たちの今までの喜怒哀楽を、私たちの失った人々に届くよう歌う。この場の全ての人々の痛みが思いが、我々を見守ってくれていると信じる一度この世を離れた者たちに届くように歌う。そのことで私、いや全ての人々、前世で気が付いたら死なれていた男女の同僚たち、先ほど引っかかりから喧嘩を売ってきたボイコツの紳士どもとラーダ(と曹長たち)の痛みと傷を癒すよう、『あなたたちの最上の精神と技術で顕す』ようにつとめていた。
私の歌はいつしか涙としゃくりあげで震え、音程も外れ転んでさえいた。しかし無様であっても止めるわけにはいかない。この世での母や姉、弟、万歳三唱して逝ったオヤジに歌いながら、ラーダ、喧嘩した紳士ども、酒場の人々へと思いを伝えていた。
「うおおおおーーーっっっッづづッ!!」
物凄い咆哮が響いた。あの喧嘩を売ってきた紳士が、周りに支えられながら、抑えきれない叫びを上げて震えて泣いていた。
届いたのだ、と私は感じた。彼の失った人々に、彼は今この場で思いを伝えているのだと。彼の身も世もない慟哭、叫びとともに、私も震え、泣きながら『アメイジングな恩寵』の歌を最後まで歌い続け……そして、終えた。泣きながら吠え震える彼の叫びもまた歌だった。
⋯やらかした。呆然とした酒場が今に在った。いつの間にかついたセシリアに背を擦られながら、紳士は身体を震わせて泣きながら必死で叫びを抑えており、またあちこちで目や鼻を赤くして手やハンカチで抑える人々がいた。お化け屋敷ショーのキャストさんたちまでもだ。
私の「仕掛け」、戦災孤児支援施設の職員に導かれたガキども一団も揃って呆然と立っていた。気が付かなかった。途中からこの場にいたに違いない。
「⋯大尉、来ました⋯」
場に、職員の声が静かに落とされた。私はしゃくりあげ震える自身を統制しようと試みながらガキどもに伝えた。
「お前ら、余暇に私と練習してきたな。あれを、あの歌の精神を、お前らの最上の精神と技術でこの酒場に顕すぞ。お前ら自身とこの酒場にいる人々を、歌を作った人の祈り、高みまで連れてゆくんだ⋯」
ホテルパーティ会場の怒り、悲しみが、苦悩を通った歓喜へ。
「……なあラーダ、こんな歌知ってるか? これを頼む、合わせてくれ」
私は手書きの楽譜のコピーを渡し、ある歌を繰り返し口ずさみ始める。時代も国も、敵も味方も隔てられた者たちが、多い祈り、高みへの思いと救いの手により、束の間「兄弟姉妹」となる歌。
ラーダが私の口ずさむメロディから即座にコードを読み取り、荘厳で温かいピアノの和音を響かせる。
来た! 私がまず歌い始める
『おお、歓喜よ…!』
私がテノールパートでリードからの、今の流れを子どもたちが合唱につなげる。某シルレルの詩に、ルートヴィヒ某による、第九番あたりの音楽。テノール、ソプラノ、アルト、ベース。ソロは私が全て受け持って誤魔化した。
星々の上、彼方、天に、届け。
施設職員が、酒場の中に楽譜と歌詞のコピーを配る。
酔っ払いどもも最初はポカンと聞いていた。店内のクルツ司令とセシリア、市長や御曹司や実業家、ご婦人たち、サヴィツキィ、シェーンベルク、兵隊ども、そして曹長と、昼間決闘を挑んだ男たち、お化け屋敷ショーのキャストさんたちまでもが、ともに歌詞を口ずさみ歌い始める。酒の勢いと歌詞の美しさ、込めた思いと力、それを表す技術、メロディの美しさに惹かれて、肩を組み始める。
過去のある本番指揮者は「最上の心と技術で」と教えてくれた。またある本番指揮者は「今回は、ビアホールでそんな人々が肩を組んで意志を一つに歌うような、心の在り方でやってみよう」と教えてくれた。合わせ技だ。ラーダの即興のピアノが熱と祈りを込めて歌いあげる。私はラーダの肩に手を置いて歌う。
『星々の上に、彼方におられるあなたの大いなる力が、時代が厳しく斬り、離した人々を一つにする。全ての人々がその大いなる柔らかな翼のもとで兄弟姉妹となる。抱き合え、百万を超える人々よ、その祝福の口づけを全世界に! 祝福の口づけを全世界に! 全世界に!』
歌い終わり静まり返る余韻の中、紳士がつきものが落ちたような表情で歩み寄って、ラーダに握手を請う。二人がしっかりと手を握る。それから紳士は私にも手を差し出してくる。
『歓喜よ!美しき神の光よ!!』
今夜の「ファントム・クラブ」には、国籍も過去の憎しみも全部、酒の勢いで叫ぶ歌でチャラにして、店内全体での大合唱が在った。短い間の勘違いにしろ、そこには一つになった人々の姿があったのだ。
◆ ◆ ◆
翌朝。
猛烈な二日酔いの頭痛で目が覚めるわたくし。
あの人々の力を合わせた美しい時間を過ぎて。
私は酒場からたどり着いた戦災孤児支援施設で寝ていた。
「うぐっ……頭が割れる……精神の高みどころか、胃酸が喉まで逆流している………」
周りには施設のガキどもが鈴なり。そして子供の肌が熱く、そしてなんか冷たい。ドキッときた。やられた。兄弟姉妹の力を合わせたムナグラ川の大氾濫が身体の下のシーツにあった。
「起きろ⋯お前ら。貴様らのダムが壊れて、大洪水だぞ⋯」
純白のドレスのまま寝落ちしていたわたくし。ドレスが黄色い迷彩柄になっている。ガキどもを起こす。顔をしかめたり泣いたりするガキども。
扉がガンガン叩かれる。頼む、静かなドラムにしてくれ、ガキどもの甲高い声と合わせて頭に響く。しかし私の思いを無視してドアはまだまだガンガン叩かれる。
「エッセンシャル№10,グエン軍曹です! カーニャ大尉殿はおられますでしょうか!」
ど畜生め。ナイフにガンを持って出る。グエン軍曹の声…の気がする。
「⋯おー…私だ。いるよ⋯」
伝令だ。グエン軍曹に間違いなかった。
「クルツ司令から、出動準備にかかれとの命令です」
私はずり落ちた肩ひもを上げながら、かっちりと敬礼するグエン軍曹から書類を受け取る。
「⋯は?」
昨夜あんなに肩を組んで歌った至上の精神と連帯から、私はいま地上に戻った。いや、地下かも知れない。
マジェスティックパレスホテルと、何故か『ファントム・クラブ』からの分厚い「乱闘による店舗の損害賠償請求書、及び飲食代」、そしてクルツ司令からの「ムナグラ川・斬首作戦の出撃命令書」が一緒になっている。『ファントム・クラブ』の飲食代全部がこちら持ちになっているのは何故だ!? アイスクリームから兵器まで揃えるあの守銭奴め!
またドレスの肩ひもが外れてストンとずり落ちるが、上げる気力もない。
「⋯なあ、私⋯、逃げちゃ、だめか⋯?」
「……大尉がいないと作戦が回りません。大尉あっての我々ですから…」
パリッとした軍服の襟元におしゃれな絹のスカーフをしたグエン軍曹が、白と黄色のしわくちゃドレスの私を見る。
後ろでガキどもが泣き(真似をし)始めた。
「うえーん、大尉が漏らした~っ! 冷たいよーっ!」
「⋯ガキども。人のせいにする、こずるい知恵ばかり身につけやがって! 風呂だ、洗濯するぞ」
泊まりの職員さんたちが起きて来て、ムナグラ川の大水害に「うわあ…」と声を洩らしている。
私はグエン軍曹に声をかける。
「⋯軍曹、丁度良いところに来た。貴様の、続きの、任務は?」
「はあ…特に指示されておりませんが…」
嫌な予感がしているのか腰が引け気味のグエン軍曹を押し切る。
「ちょっと、手伝いを、頼む。大丈夫、すぐ終わるから⋯(本当はちょっとじゃない)」
鎮痛剤を飲んでよろよろと、ガキどもを脱がせ、風呂に入れ、寝具を洗濯して、寝具を干して、合間にトイレで吐く。
ドレスがダメになるかもしれないので、私のドレスは脱いで洗ったりしていない。着替えがないし、着たままだ。基地に帰ったらクリーニングに出すが、子どものおしっこと洗剤と自分の反吐にまみれてしわくちゃで、乱闘にあちこちほつれて。これも高額請求されるかも。
「⋯よし⋯基地まで、送れ⋯」
ずぶ濡れで身体に貼り付くドレスが気分悪さを25%くらい増している。グエン軍曹の車に乗り込んだ。シートに構わず、濡れたケツを下ろす。鎮痛剤は段々効いてきている。
「⋯風を切って走れ! ⋯止まると、ガキどものおしっこのにおいが立ち上るからな。⋯給料もらって、滅多にできない面白い体験ができるんだ⋯特等席で⋯。お得、か⋯?(半疑問形)」
前世のブラック社畜時代にたどり着いた境地を伝えると、グエン軍曹が何とも言えない苦笑いをしながら天を仰いだ。
車は風を切って走り始めた。
【テイヘンズ補足小事典】
● ドレスにヒールの筋肉質美人 vs タキシード紳士のステゴロ決闘
某ストリートファイターや某餓狼伝説、あるいは某鉄拳の合わせ技といったところでしょうか。
● 壁際の消火器に飛びついて噴射!
乱闘する集団が相手なら、覇O翔吼拳(という名の消火器)を使わざるを得ないのである。
● 歌姫ミントが持ち歌『バイナラグッバイ』を、店主カカオのピアノ伴奏で披露
酒場の歌なので当然、飲みながら歌っています。(『ボトムズ』で、飲まされた状態で歌ったという収録時の逸話のように)
● カーニャの歌
日本語、ラテン語、フランス語、英語、ドイツ語……そうした言葉を、この世界に存在する似た言語へと置き換えたのかもしれない? ――整合性を考え始めたら試合終了ですね。
● 白と黄色のしわくちゃドレスのカーニャ大尉……
昨夜までは、白いドレスに紫のおかっぱ髪、ハイヒール姿。某Fateなゲームの間〇桜さんが、〇ルトリアさんの白いドレスをお借りしたかのような、ちょっと素敵な雰囲気を漂わせていたのかもしれない。――そう、昨夜までは。
いまや子だくさんの若いお母さんのような、はたまた戦い疲れた戦士のようなお姿になられています。
●某九番っぽい音楽
ラーダと神聖クメソ王国軍部隊(仮)の捕虜たちが、これを演奏して捕虜生活の資金を稼ぐことが始まり、そこからクメソ王国に広まり定着したらしいです。酔っ払いどもの肝機能の歌ならぬ、歓喜を讃える歌ですね
●…(前回掲載の予告より)酒を飲み肩を組んで歌え、いずれ還らぬ世の中だ
千余年前のペルシアで、オマル・ハイヤームが四行詩で嘆いたように