あのシャワーの後の侵入者事件、うさちゃん下着の悲劇から数日、軍の通信網(※主に兵士たちのクソみたいな口コミ)は、私に対するさらなる無慈悲な追撃の手を緩めなかった。
『おい聞いたか、カーニャ大尉の例の件……』
『ああ。大尉はあの……その、特殊な持ち味のある体型ゆえに、普段から最新鋭の補正下着の愛用者でもあるらしいな』
『マジかよ。寄せて、上げて、限界まで盛ってもなお、あのアトラスの地表のごときオンリーワンの平坦さが勝ってしまうのか?』
『戦場ではワーカー・ゲリラと戦い、プライベートでは下着メーカーの最先端技術と血みどろの戦いを繰り広げている大尉殿……いくら何でもワーカホリック過ぎだろ、ワハハ!』
『こんな話を知ってるか? 何年か前、珍しく休暇を取ってドースンダビーチにいた大尉を情報局の男が見かけたらしいんだが、寝ている大尉の水着の胸の高さを観測したら…』
……全・部、事実無根だァァァーーッ!!
確かに! 確かに私は、人型装甲歩兵(テイヘンズ)のコクピットが激しく衝撃を受けた際の「戦闘時のダメージ回避(耐衝撃防御)」のために、胸部にがっつりとしたハードガードパッドが内蔵されたミリタリー仕様の下着を愛用してはいる。
だがそれは! あくまで現場の戦闘部隊指揮官としての、極めて合理的かつ実用的な労災対策、命を守るための自己防衛なのだ! 決して豊胸などという、涙ぐましい欺瞞(ぎまん)が目的ではない!
……いや、まぁ、鏡の前でそれを装着した際、心のどこかで、
(お、ガード用だけど、意外と盛れててラッキーじゃん♬)
などと、ほんのちょっぴり浮かれた乙女心が15%くらい混ざっていたことは否定しない。
だが、それがすべてではない! 15%だ! 残りの85%は純然たる防弾・対破片・耐衝撃目的であると、現場指揮官としての私の名誉に賭けて誓う! 断じてだ!!
……まぁ、私に賭けるべき「名誉」や社会的尊厳なんてものが、このクメソ王国の熱風・毒虫、目もくらむ誹謗中傷が走る大地に、すでに一滴も残っていないような気がしないでもないのだが。
やっと取れた休暇で一日だけ近くのビーチに行ったのは2年前か。行ってすぐマットに寝っ転がったら疲れでそのまま熟睡して一日潰してしまったが。
そして「観測」だと! 情報局の奴は、何を調べているのか。
(また有給休暇が欲しい……切実に……)
【カーニャ大尉が休暇を取ってビーチ復讐戦に挑み、今度は当日の夕方まで寝過ごしてしまい、西日の射す部屋で呆然とするまで、あと七十五日…】。
※胸部ガード付き下着。狭い装甲歩兵のコクピット内で胸部をぶつけたり破片で負傷しないようガードパッド付。
※ドースンダ・ビーチ。車で1時間半~2時間ほどの美しいビーチ。朝着いたカーニャは美しい夕陽を見ることができた。それ以外の時間は寝落ちしていた。
※75日後。カーニャは休暇前にワクワクしながら午前3時に就寝して、いつもなら5時に起きるところ、地(谷)の底に棲む神が「寝ないとまた死ぬぞ」と気を利かせてくれたので、「夕方の5時(17時)」に起きてその日の夕陽に照らされた自室を見ることができた。ビーチには行けなかったが、14時間眠れた。