D-Gray Man -The Metal Exocist in 2031 作:zwart
弾幕を避け続けるクレイヴだったが、右足と左の脇腹に瓦礫が突き刺さっていた。伯爵の打ち出した段幕に抉られた墓地の舗装が後ろから弾幕と成って襲って来ているのだ。ここで補足しておくが、教団製のコートはどんなに勢いよく衝突したところで、ただの瓦礫が刺さる程ヤワに出来ていない。どう考えても瓦礫に伯爵が干渉していた。
ホント、人間辞めてやがるな。人間に見えないけど!
聖遺物保持者の再生能力はたかが瓦礫で出来た傷程度を修復出来ないモノではないが、そのためには刺さった瓦礫を抜かなければならない。だがそんな暇など目の前の弾幕が与えてくれないし、勝手に抜けるのを待っている状態だった。
…なんて考えていられる余裕が本人にあるかは別として。
「ムッ」
「あ?」
不意に伯爵の弾幕が止んだので弾幕を避けるのに夢中になっていたクレイヴは一瞬フリーズした。見ればクレイヴ以外の三人はそれぞれの敵を殲滅し終えていた。
「アクマも新しい手駒も全部やられてしまいましたシ、出直しますカ」
伯爵は手に持つふざけた傘を広げ、ふわりと空へ舞い上がった
「伯爵!」
「ですがお前達はまだほんの序章を見ただけ…これからが本当の終焉劇の始まりでス。」
エクソシストを見下ろしながら、
「我輩はアクマ製造者千年伯爵」
自分を追えるならやってみろと嘲笑しながら、
「汚れた神を調伏しアクマと共にこの世界を終焉に導く者」
本当にふざけたくらいゆっくりと、
「神の使徒エクソシスト、あなた達がどうあがこうと世界はを救えませン。」
去っていった。
「絶対にネ。」
置き土産に特大のほうげきを落としながら。
結果から言うと、ジャンを含めて全員助かった。
エリンが砲撃に対してありったけの砲弾を撃ち込んで威力を削り、(恐ろしいことに彼女の聖遺物はガトリング砲だけでなく150ミリ程の砲にもなる)リナリーが黒い靴で蹴って(微妙に)弾道を逸らし、全員で墓地の外までしこたま逃げて、最終的には男二人(アレンとクレイヴ)がそれぞれ左腕で受け止めた。
故にアレンとクレイヴの左腕はボロボロである。コムイに修理してもらう必要があった。
「コムイに直してもらうしかねーな、こりゃ。…アレン、顔色悪いぞ?」
「し、死んだ…」
まだコムイの修理地獄を知らないクレイヴだった。因みにクレイヴの左腕の義手は聖遺物という特性の都合でそう簡単に外せなかったりする。
ロンドン郊外における戦闘報告
敵戦力:千年伯爵とその協力者一名、レベル1アクマ多数。
教団側戦力:エクソシスト(アレン・ウォーカー、エリン・フォートレス、クレイヴ・ダウン、リナリー・リー)
戦闘結果:伯爵の協力者と参戦した全てのアクマを殲滅に成功。伯爵はその後撤退。教団側の被害はエクソシスト二名軽傷。
備考:今回の戦闘で千年伯爵には直接戦力と成りうる人間の協力者が存在することが判明。また本人の戦闘能力も少なくとも元帥と同等かそれ以上と推定された。
損害賠償:墓地被害額,約1800ギニー 周辺住宅被害額,約2500ギニー 総額,4300ギニー
受領印
2031.6.18 黒の教団室長 コムイ・リー
報告書を提出し終えたクレイヴは、なにをするでもなく自室のベットに寝転がっていた。負傷は実質左腕の損傷だけだったので、医療班のお世話になるのは免れた。
戦闘から一夜明け、現在午前3時くらいである。今寝てしまうと朝食を逃すことになりそうなので寝ないでいるのだ。
そんな、微妙な時間に来客があった。
「誰だ」
扉をノックする相手に、時間を考えて来いと思いながら、相応にぶっきらぼうに応える。
「エリン・フォートレスです」
「…」
「…何か」
「いや、何でも無い。何の用だよ。」
「眠れません」
「……」
「眠れません」
「……それで?」
「一緒に寝て下さい」
なにコイツそういうキャラだったっけ?
「怖いから一緒に寝て下さい」
あぁ、怖いってそういうことか。さっき伯爵のところの同類殺したのがトラウマってる訳だ。でもだからって俺んところに来るか?そういえばコイツ俺以外とロクに話して無いな俺もそんな話してないけど。仕方ないたか。
「リナリーの部屋に案内するから、それでいいか?アイツなら多分拒絶はしないから」
「分かりました」
とりあえずコートを羽織って部屋を出た。教団は標高が高いから部屋の外は極寒だ。普段着では少々心許ない。
俺の先導で俺達はリナリーの部屋の前に来ていた。
「起きているか分からないな」
そんなどうでもいいことを呟きながら俺は扉をノックした。因みに俺が覚えているのは今までに会ったことのあるエクソシストの部屋だけなので、消去法でここになった。
「誰?」
お、起きてた。
「クレイヴだ。夜分にすまない」
扉が少し開いてリナリーが顔だけ覗かせた。
「クレイヴ?それにエリンも、どうしたのこんな時間に」
「悪りーがコイツにちょっと付き合ってくれるか」
見ればエリンも頭を下げていた。
「?いいけど」
「頼むわ。じゃな」
「ぇあ、ちょっとクレイヴ!」
スタコラサッサ
何故逃げるかって?恐らくシスコンがリナリーの部屋の前に隠したレーザー機銃が俺の頭に照準されてたからさ。
7時になり、いい加減メシ食いに行くかと思って食堂へ行ったら大抵いるモヤシっぽい大食漢が居なかった。変わりにエリンとリナリーと、あと初めて見る赤毛のエクソシストがテーブルを囲んでいるのが目に入った。
「隣いいか」
ジェリーから朝食を受け取って、例の赤毛に声をかける。
「いいさ」
かわった語尾だな。
席に着いた途端に質問される。
「お前新人エクソシストだろ?名前なんていうんさ?あ、俺ラビな」
「神田だ」
「え、マジで!?」
「嘘だ。本当はクレイヴだ。よろしく」
「よろしくさー。にしてもお前面白えさー。」
ラビが握手を求めて来たので、右手で応じた。ついでに話のタネを投下する。
「そりゃどうも。ところでリナリー、アレンは任務か?」
「そうだよ。南イタリアのマテールってところまで」
「神田も一緒なんさー」「オイオイ大丈夫かよあの二人で」
そんなことを喋っている間にもエクソシスト達の多めの朝食は確実に消えていった。