D-Gray Man -The Metal Exocist in 2031   作:zwart

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日本人は長大な西洋剣を両手で己が首筋から抜き放ち、大気をなぶる。束の間剣の軌道は真空と化す。

ドイツ人は首に掛けた鉄十字を発動し大剣へと形を変えた。その剣は以前よりも確実に禍々しく輝き、右手一本に垂らした切っ先に触れた大地が死んでゆく。

 

距離は約15メートル。どちらからとも無く、踏み込み――

当然の如く地面すれすれの空中で二人は打ち合った。打ち合った勢いのままに互いに背後に着地して、大剣使いはその場で一回転して横薙ぎに西洋剣使いは上段から叩きつける様に振り下ろす。一瞬の硬直、片手と両手の違いで押し負けるが、ここで大剣使いは左手を刀身に添えた。鋼鉄の左腕はその材質以上に、存在として強化されて、刀身に触れる事が出来る。――聖遺物であるが故に。

拮抗は崩され、西洋剣使いは後ろに飛ばされた。ちなみに始まってから今まで、1秒半程度しか経っていないが、既に地面は陥没して、そこら一帯がひび割れを起こしている。何より全ての生物は最初の打ち合いで死滅していた。

 

二人の距離が開く。

 

その表情は、しかし吹き飛ばされた日本人の方に余裕が覗えた。

 

 

 

 

重い空気はすぐに消えたが、その代わりに同じ方向から轟音が断続的に響いてきている。途中でリナリーと合流して、今は一緒にその方角に向かっている。今更だが、クレイヴ・ダウンは今何処にいるのだろうか。

もっとも、既に彼が喫茶店から居なくなって数時間が経ち、日も暮れかけている。町から出てしまっている可能性もある。本当に今更だ。こんな事は今考えるべき事ではない。これは現実逃避だ。

 

足取りが、重い。

 

近づくにつれビルが崩れるみたいな轟音が聞こえてくるし、地面がどんどん荒れて歩きにくくなっているし、なんか一緒に凄い暴風が吹いてくるし、何よりお腹が空いて仕方がない。諸々の理由で全然前へ進まない。

ああ、でもやっと見えてきた。でもあれは、アクマじゃない?

 

「アレン君、あれって・・・」

 

頭上からリナリーが話しかけてくる。僕もそれに答えて、左目で向こうを見据えた。

 

「アクマ・・・じゃないですね。魂が見えないですから。」

 

「あ、そっか。アレン君には分かるんだっけ。」

 

ええ、分かります。あと此処へ着く途中の列車で話した気もします。

でも、アレがアクマでないのなら何なのだろう。これだけの破壊を起こす存在をアレンはアクマ以外には知らない。いや、師匠なら出来るかもしれないが・・・。

 

アレコレ考えている間にもう大分良く破壊の中心に近付いてきた。もうイノセンスで顔を庇わないと風圧で凄く痛い。てか、放射能とかないですよね・・・?

 

兎に角、見えてきた。其処では二人の人間が剣で打ち合っている。否、殺しあっているという表現が適切だろう。そして、彼らの片方には見覚えがあった。つい数時間前まで探していた人物だった。

――何故クレイヴさんが此処に?

 

 

 

 

 

このままでは負ける。確実に死神は迫ってきている。それはヤツの振るう聖遺物であり、劣悪になった足場であり、己の体力の限界だ。

ヤツの首筋を狙ってくる斬撃を横薙ぎに弾いて、そのままの勢いで側頭部に叩きこむ。一撃入れれば必ず致命傷となる剣は、だが手の甲に弾かれる。ヤツは存在まるごと聖遺物に喰われている。それは聖遺物の力と自己の同一存在化、究極のチカラの獲得と自我の消滅を同時に意味するが、伯爵に飼われる事で己を繋ぎとめている。元々ヤツの実験に使われた聖遺物があっち側の神の物だった事も有るだろうが、気に喰わない物は仕方がないし、伯爵の元にいる者を駆逐するのに理由など要らない。

 

「クッ!」

 

ヤツには俺の剣は一度も届かない。それどころか疲労すらしていないだろう。ただ俺にだけ切り傷が増えて行く。

明らかに源氏輝にクレイヴ・ダウンは敵っていない。

 

次元が違うのだ。聖遺物の活性化率が違いすぎる。

勝つには自分の聖遺物を更に活性化させるしかない。より深く浸食させるしかない。

 

――だが、扉はまだ開かれない。

 

 

 

 

 

詳しく調べてみて、二つ問題の有りそうな情報が出てきた。ちなみに調べるのに掛けた時間は8時間程、これだけの長時間コムイの集中力が続くのは、仕事をしている場合としては異例だろう。

 

さておき

 

一つ目は、実験のためにヴァチカンやその隷下の教会から大量の聖遺物を借りている事、更に幾つかはそのまま頂戴してしまっているということだ。信仰の象徴を片っ端から冒涜しているようなものである。当時の教皇がブチ切れたのかもしれない。

 

そして二つ目、こちらの方が余程問題だろう。ヴァチカンや教会が保有する聖遺物とは、あくまでキリスト教に纏わるとされる品であり、殆どは実際に神には無関係だったりする事が多いらしい。(計画の資料からの非公式データだ。ヴァチカンがそんな情報を漏らすワケが無い)

しかし神の力を内包している聖遺物があったとして、それがどちらの神の力か判断できないらしい。つまりその聖遺物で実験が成功し使徒が誕生しても、それはイノセンス側の神の使徒かもしれないし伯爵側の使徒かもしれないということだ。

 

この事に関して記述されていたレポートは膨大な枚数を誇っていた。これほどの記述があるということは、作ってしまったのだろう。

 

 

 

――――敵の使徒を。

 

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