私の本体があるところまできました。
「あいつがいない」
「あいつ? 狙撃手さんのことですか」
「ああ。もう先に行ったのかもしれない」
「かなりまずくないですか?」
「だね」
ジョナサンは顎に手を当てます。
次に周りを見渡して、私の頭で止まりました。
「私の顔に何かついてます?」
「その頭のてっぺんの線ってなんなんです?」
触ってみますが、髪の毛があるだけです。
「なんか蜘蛛の糸のような線で、どこかに続いてますよ」
「そんな気持ち悪いものが」
寄生生物みたいなの苦手なんですよ。
あれ? 長い線、幽体離脱。
「もしかして生命線では。つまり、これを辿れば私の本体に帰れるのでは」
「夏目さんって頭回りますね」
「ジョナサンさんはもう少し考えてほしいですね」
「……」
「あ、すみません。忘れてください」
彼はだいぶしょんぼりしていました。
そして切り替えるように手を叩きます。
「じゃあ建物の間を通っていきましょうか」
「そ、そうですね」
視点変わります。
足が重い。しかし歩くたびに、背中の感触が力をくれる。
『おっぱい!』
もちろん声に出してはいない。敵に居場所を特定されるから。
お尻が急に、生暖かく濡れた。
ああ、幸せだ。人生で聖水を浴びる日が来るなんて。
そしてこれは人助けだ。倒壊寸前の家屋で気絶していた少女を避難区域まで救出しているだけである。
そう、
素晴らしい。これほど素敵な言葉があるだろうか。
そして俺は神に味方されている。
なぜなら、俺の周りの敵が倒れるからだ。
あれはもう奇跡の枠を超えている。神業だ。
――その調子でジョナサンが生き返ったりしないかな。
直後である。
「お、わ!」
後頭部から声がしたのだ。
体が強張って、バランスが崩れた。
「ちょ」
衝撃。視界が揺れる。
大きな声がした。
「夏目さんの身体になってる!? 興味本位で生命線触っただけじゃん」
「いたた、うわ、意識戻ってる!? す、すみませんでした!」
「なんで誤って……ああ、そうか。童貞だからね」
「なぜ、それを」
「言わない方がいいよ。本人いるから」
本人? 何を言っている。
「夏目さん。どこも触らないんで! すみません!」
彼女はどこかを見て謝罪した。 そこには誰もいないのに。
頭がおかしくなってしまったのか。
にしても、この懐かしい感じは何なのだろう。
「はい! 絶対です!」
「漏らしてるのは俺のせいではないです」
「だから、それは夏目さんの体質の――なんでもないです」
「泣かないでください。まだ戻れるチャンスはありますって」
本当に何なんだ。