目線が50センチほど上がりました。
ジョナサンが私を持ち上げたのです。
先ほどの謝罪は何だったんでしょう。
「何してるんですか!?」
「敵に位置はバレてるんですよ? それに、さっき投げた時、なんかいけそうだったんです。失敗しても幽体ですし、安心してください」
そう言って彼は、やり投げのように私を抱えなおします。
普段なら腹筋が耐えられない体勢ですが、幽体なので大丈夫そうです。
って、そんなこと考えている場合じゃありません。
このままでは、逆バンジージャンプを味わうことになります。
「心の準備が――」
「時間ないんで!」
「ふっぃ」
直後、地面が一気に遠ざかっていきました。
恐怖に息が詰まります。
昔乗った、一気に上昇するアトラクションよりも何倍も空高く。
ジョットコースターよりも速いスピードで景色が入れ替わりました。
失禁ものですが、生憎と出すものがありません。
引き攣った顔を戻せずにしていると、視界上に紺色の校舎が見えて。
一瞬で視界がブラックアウトしました。
手に地面の感触がしたので、とにかく立ち上がりましょう。
世界に戻りました。
どうやら地面に頭が埋まっていたようです。
わたしはゲームのバグですか。
校舎は目の前にありました。
見上げると、校舎から黒い筒のようなものが生えています。
狙撃銃のノズル部分です。
ジョナサンの投擲技術は素晴らしいですね――許しませんが。
早くしないとわたしの本体が危険なので、急ぎましょう。
壁を透り抜けて、駆け足で階段に向かいます。
途中に見えた黒板には相合傘が書かれていました。
青春ですね。
全力で走っているのに全く疲れないので、余計なことを考えてしまいました。
記憶通り階段があったので、二段ジャンプで上ります。
部活の練習で使った階段です。
少し若返った気分になったりします。
いつもは閉まっている屋上への扉は開け放たれていました。
全然荒くない息を整えながら、扉の先に向かうと。
前方にカーキ色の服を着た人間の尻が2つ見えました。
絶対にあれですね。
ゆっくりと狙撃手の横に移動します。
集中しているようで、彼はびくともしません。
早速、スコープを覗く目を人差し指でつつきます。
――1分経っても反応がありません。
――効いてます?
「うっ」
効果はあったようです。
しかし成果はイマイチですね。
例えるならば、扇風機の強風を真横から当てられるくらいでしょうか。
わたしはそれが大嫌いだったので、過大評価をしていました。
無線機特有の砂嵐音が鳴ります。
『こちらCP、指定区画にアレン分隊が接近中。どうぞ』
「了解。目標に動きは見られない。蹴散らしてやれ。どうぞ」
『了解。そのまま監視を頼む』
無線は切れました。
かなりまずいです。
死にたくありません。
何とかしないと。
適当に狙撃手の頭をパンチしてみました。
思った通り、拳は透り抜けます。
直後、彼は糸が切れた人形のようにぱたりと倒れました。
「え?」
こちらを見つめる瞳は瞳孔が開いていました。