担架に乗せられて、痛みが少し和らいだ。
しかし振動が来るたびにさすような痛みがする。
「ゆっくり。ゆっくり頼むぞ」
周りが灰色の壁に囲まれて、拠点に入ったことを理解する。
こもった声が壁越しに聞こえた。
「第一班からの通信途絶」
「……。第二班を向かわせろ」
「了解」
第一班って俺らだよな。
てことは、3人は。
「なぁ、衛生兵。いったい何があったんだ」
「はぁ、お前もあの声を聴いただろう?」
衛生兵が止血帯を俺の足に巻き付ける。
「ああっ! ふ、ふぅ。こ、声ってなんだ?」
「2人の大声が、2秒くらいで急に途切れたんだ。1人は、目の前で倒れたよ……」
衛生兵は思い出したのか、顔を顰めた。
「アルムは、ぶ、無事なのか」
「わからない。……知らない」
衛生兵は、俺の腕を持ち上げて、注射器を刺してくる。
注射器の痛みは怪我の痛みに負けた。
もう、アルムに会えないのか。
だけど決まったわけじゃない。
最後まで、信じよう。
またこもった声がした。
「第二班が目標施設を確保。目標は排除できず。第一班の生存者なし。外傷がなかったようです」
――え?
「外傷がない? ……了解した。第二、第三班に目標を探させろ。絶対に逃がすな」
「了解しました」
さっきまで、アルムとしゃべってたじゃないか。
そんなすぐ、いなくなるわけが……。
「うっ、うっ」
気づけば、嗚咽が出ていた。
「分隊長が倒れた! 敵襲!」
だけど一気にあたりが騒がしくなって、弔うこともさせてくれない。
「拠点が強襲を受けています! 指示を!」
「わかってる! 敵の居場所は!」
「ジェームズ、敵はどこから――」
「わ、あ、わぁあああ!」
発狂しながら、よく知らない味方が部屋に入ってくる。何だ!?
だが躓いたのか、うつ伏せにばたりと倒れる。
びくとも動かなくなった。
「こいつ、死んでないか?」
横を見ると、衛生兵はいなかった。
こもった声がする。
「ノア、外の確認を」
「了解しました。隊長は逃げてくだ――」
バタッ、ガシャーン。ガタ。
誰かが転んだような音がした。
拠点に静寂が訪れる。
俺はただ理解ができず、動けずにいた。
エリス視点に変わります。
(私は、なんてことをしてしまったんだろうか)
簡易死検室で、エリスは目じりを震わせました。
エリスは、顔見知りの将校から連絡を受けてここに来ました。
『もしかしたら、君にしかわからない事案かもしれない』
将校――ウィリアムは、エリスの実験中止に反対した人です。
彼がいなければ、実験はすぐに中止できたといっていいでしょう。
しかし彼は、自分のせいで死者が出たにもかかわらず、反省する素振りも実験を中止することもありませんでした。
だからエリスは考えに考え抜いて、ある考えに達しました。
(幽霊を消滅させればいいんだ)