当然現れた熊のぬいぐるみは私たちの混乱も驚きも何もかもを差し置いて、まるで遊園地のマスコットみたいに身振り手振りを交えて話し始めた。
「えー……コホンコホン。それではそれでは」
壇上のぬいぐるみが白い紙をぺらッと広げる。
「えー、オマエラ! ご入学おめでとうございまーす!
ボクは学園長兼、生活指導担当のモノクマでーす!
以後、お見知りおきを!
さてさて、希望に満ちあふれた超高校級のみなさん!
ようこそ、才能の楽園──希望ヶ峰学園へ!
……って言いたいところなんだけど、残念でしたー!
オマエラは今日から、この学園で一生共同生活を送ってもらいまーす!
もちろん、学園の外に出ることはできません!
窓は全部封鎖済み! 通信機器も圏外! 助けなんて来ませーん!
でも安心してね!
食堂にランドリー、売店に宿舎! 生活に必要な設備はちゃーんと用意してあるから!
病気になっても大丈夫! ケガをしても安心!
ここは一生暮らすのにピッタリな、夢の学園なんだよ!」
今されてるのってつまり誘拐したからここで一生暮らしてねってこと?
「……え? 一生?
うぷぷぷぷ……いい反応するねぇ!
そう! オマエラは一生ここで暮らすんだ!
ただし!
どうしても外に出たいって言うなら、特別に卒業制度を用意してあげました!
その方法は、とーっても簡単!
仲間を一人、殺すこと!」
あ。ダメだ、理解できない。何を言ってるんだろう。殺す? この中の誰かを?
その瞬間にスッと頭にもやがかかったみたいになって、言葉がどこか遠く、耳を通り抜けるような感じになった。
「そして、その犯人だと誰にもバレないこと!
誰かが殺された場合、生き残ったみんなには『学級裁判』に参加してもらいます!
学級裁判では、事件の証拠を集めて議論し、『クロ』──つまり犯人を探し出してもらうよ!
もしオマエラが正しい犯人を指摘できたら、クロだけがおしおき!
でも、もし間違えちゃったら……?
クロは無事に卒業!
そして、犯人を見抜けなかったオマエラ全員に──とびっきりスペシャルなおしおきをプレゼントしちゃいまーす!
ちなみに、校則違反も厳禁だからね!
暴力、設備破壊、ルール違反──ボクがダメって言ったことをしたら、例外なくおしおき!
平等こそがルールだから!
才能あふれる超高校級なんだから、つまらない真似はしないでよ?
友情、努力、勝利……はたまた希望に絆に信頼に
そんなキレイごとが、この極限状態でどこまで通用するのかな?
希望は絶望に勝てるのか!
それとも、絶望が希望を喰らい尽くすのか!
うぷぷぷぷ……今から楽しみで仕方ないよ!
それじゃあ、張り切っていきましょう!
ワクワクドキドキのコロシアイ学園生活──スタートです!
紙をパラっと壇上において、モノクマは何か質問ある? とでも言いたそうにみんなのことをきょろきょろと見まわしている
誰も言葉を発しない、発せない人もいるんだと思う、私みたいにまだ飲みこめてない人が。
「これよぉ、裁判で勝ち残ったとして身の安全は保障されんのか?」
最初に口を開いたのは枯山くんだった、裁判の後の事。つまりは犯人が勝ち残った後のことを聞いている
「もちろん! 五体満足でそのまんまキレーな体で卒業させてあげるよ! インディアンとクマは嘘つかないからね!!」
「食堂や……売店はまだ理解できますが……。宿舎やランドリーなどはいささか普通の高校には無いような設備だとおもうのですけれど」
「そりゃあここは希望ヶ峰学園だからね!! って言いたいところだけど、まあこの共同生活に向けてちょーっとだけボクが改築しちゃいました! 匠だね! 劇的ビフォーアフター!
あ。ちなみにオマエラ全員分に電子生徒手帳は配ってると思うけど、そこで校内のMAPは確認できるから各自しておいてねー」
最初に見たあのタブレットと端末の事かな? 見た時は鍵のマークで何も見れなくなっていたはずだけど……
確認するように私はもう一度端末の電源を付けた。
売店にランドリーに保健室に視聴覚室、言われた通りに食堂もあって本当にここだけで生活が出来そうなくらいの設備がある、
「じゃあ質問はここらへんで出尽くしたかな? まあボクが丁寧に夜なべして生徒手帳の中身も充実させておいたからキチンと校則も読んでおいてよね!
それじゃあオマエラ素敵なコロシアイ学園生活を! 定期的に様子も見に来るからね! うぷぷぷぷ」
モノクマはそれだけ伝えてピョンッと壇上から飛び降りて消えてしまった
残されたのは私達16人だけ、さっきみたいに誰かが誰かと話しているわけでもなくて、重苦しい沈黙だけが場に蔓延している。
「と……とりあえずウチは寄宿舎にでも行ってみよかなー。ここでたむろしてても何もならへんやろうし」
道頓堀さんが最初と変わらない様子で、誰に話しかけるわけでもなくそういって体育館を一番最初に出て行ってしまった。
ピコンッ
「ですね、電子生徒手帳の機能も解放されたようですし、私も少し校内を見てみようと思います」
次は清木くん。どこからか電子音みたいな音が鳴った後に生徒手帳を見ながら体育館を出て行った
それを皮切りに残された私達14人は行くアテもなく、足取り重くぞろぞろと体育館を後にする。
私はこれからどうしよう。とにかく寄宿舎? にいって校則をみてさっきのモノクマが言ってたこと、少しでも理解しておかないといけないかな?
いや、別にもう今見てしまった方が良いかもしれない……。こういうのは早いに越したことはないと思うし
1 生徒達はこの学園内だけで共同生活を行いましょう。
共同生活の期限はありません。
2 夜10時から朝7時までを”夜時間”とします。
夜時間は立ち入り禁止区域があり施錠されてしまいますので、注意しましょう。
3 就寝は寄宿舎に設けられた個室でのみ可能です。
他の部屋での故意の就寝は居眠りと見なし罰します。
4 希望ヶ峰学園について調べるのは自由です。
特に行動に制限は課せられません。
5 学園長ことモノクマへの暴力を禁じます。
監視カメラの破壊を禁じます。
6 仲間の誰かを殺したクロは”卒業”となりますが、
自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。
7 生徒内で殺人が起きた場合は、その一定時間後に、
生徒全員参加が義務付けられる学級裁判が行われます。
8 学級裁判で正しいクロを指摘した場合は、
クロだけが処刑されます。
9 学級裁判で正しいクロを指摘できなかった場合は、
クロだけが卒業となり、残りの生徒は全員処刑です。
電子生徒手帳の「校則」の欄を押すと音もなくぶわっと別の画面が広がった。
おしおきっていうのは処刑ってことらしくて、処刑っていうのは……言葉通り殺されちゃうってこと?
規則正しくきちんとしたテストの問題文みたいに毅然と描かれているその文書を見ても、何も理解ができない
むしろ見れば見るほど頭がこんがらがって、現実感が薄れていくような気持ちになってしまう。
「……えっ」
そんな時だった、電子生徒手帳がピコンッと音を鳴らしたのは。
『6日目までに殺害が起きなかった場合は 誰か一人を 殺害してください ボクと 手を組みましょう
裁判も トリックも 凶器も 特別に ボクが 手を貸してあげるよ うぷぷぷぷ~』
スマホの広告みたいに突然画面に大きく表示されたその画面にはモノクマのマークが大きく書かれていて──―
私は急いで周りに誰もいないことを確認して、生徒手帳をポケットの中にしまい込んだ。
こんなの誰にも見られちゃいけない、見せてはいけないような気がしたから。
、