虚ろと悦び   作:めめ師

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概念は思いついた。キャラクターは作った。ストーリーはアドリブ。
いざゆかん!
(作者は雰囲気スタレプレイヤーです。作中設定と矛盾があっても悪しからず)


無に染まる

静寂が支配する世界で、私は目を開けた。

 

空は星1つとして見えない黒に染まっている。

上半身を起こしてみると辺りには建物はおろか、木々のひとつも見えなかった。

それどころか、大地すらも。

 

ふと、地面についた手を見てみると、黒い液体の様なものに浸かっていた。

腕を上げてみると、黒い液体は滑らかに滑り落ちていく。

持ち上げた右手は湿ってすらおらず、それが私の周りを囲む液体がただの水なんかではないことを表している。水と言うには些か黒すぎる為、分かっていたことではあるが。

 

どうして私はこんなところに居るのだろうか?

記憶を遡ってみようと頭を動かすが、直前の記憶が一切無い。

 

いや、直前どころか。

いくら考えても、考え込んでも、思い出せるものは、何ひとつとして。

 

やがて思い出すのを諦めた私は、なんとなく後ろを振り向いた。

 

 

 

そこにあったのは周囲に光を纏った、と言うよりは光を飲み込んでいるかのような、巨大な真っ黒い半球だった。

 

 

 

 

はっ、と気づいた時には、私は灰色の荒野に一人佇んでいた。周りには朽ち果てた木々と、多分家だったと思える瓦礫の山々。

 

さっきの世界はなんだったのか、考えても分からない。

それに、いつの間にかいたここすらも、何処かわからない。

状況からして何かの怪物か、災害に襲われた村だったもの、なのかなと推測した。

 

辺りに散らばる瓦礫をどかしてみても、何も無い。

枯れきった木々の間から遠くを眺めても、何も無い。

人も、動物も、虫も。およそ生物と呼べる存在は、始めから存在などしなかったかのように。

 

ここは何処で、私は誰で、ここで何が起きて、これからどうすればよくて...

 

疑問は尽きない。

しかし考えたところで答えも出ないため、私は何かを探して適当に決めた方向へ歩き出すのだった。

 

 

 

 

 

あれから3日ほど経っただろうか?

世界は朝と夜を繰り返すことなく、ただひたすらに灰色に染まり続けている。大量の雲が空を覆い、枯れ果てた大地が眼前に広がる。

どれだけ歩き続けても、その景色が変わることはなかった。

 

私の腹からぐうぅぅぅ...と音が鳴る。空腹を訴える生理現象だと、私の知識が告げる。

喉の奥が張り付きそうな感覚を覚える。水分を欲しているのだろうと、推測する。

でも、それらを解決する術は持ち合わせていない。

食べられそうなものも、飲めそうなものも、一切がこの世界では見つからない。

 

視界がぐらついて足がもつれてしまい、私はその場にしゃがみ込んだ。

もうずっと歩き続けている。

 

私はどうして歩き続けているのか、私は何かを探しているのか、何かを見つけたところで私はどうするべきなのか。

何も分からない。何も思い出せない。

 

そもそも、何かをしなくてはいけないのか。

そもそも、思い出さなくてはいけないのか。

 

今の私にあるのは、ただぽっかりと空いた心の穴だけで、それは果たして喪失感なのかと考えるも、違うような気がする。思い出したいとは、別に思わなかった。

 

生きたいとも死にたいとも思わない。

何も無いが故に、何かをしてみたというだけ。

歩けなくなったのなら歩く必要はなくて、そもそも最初から歩く必要なんてなくて...

 

「あれ、生きてる人いるじゃーん!第1村人発見!」

 

そんな時、急に聞こえてきた声に振り向いた。

そこに立っていたのは、三日月型と言うには不自然に吊り上がった形の口と目を貼り付けた仮面を被る女性の姿だった。

彼女は私に近づくなり言う。

 

「何?そんな辛気臭い顔しちゃって!笑いなさいよ!

こんな暗い世界でも、笑ってりゃなんだってできるのよ?」

 

これが、私と彼女の初めての出会い。これから長い時を共にする人生で唯一の、友との邂逅だった。

 

「あなたは...」

 

仮面を被った彼女から飲み物と食べ物を分けてもらった私は、補給を終えるなり彼女に尋ねた。

 

「私?私はハッピー・トラベル!ベルって呼んでちょ♡」

「じゃあベル。ここが何処か分かりますか?」

「うん?あなた記憶喪失?

...あー、なるほどね!あなた"虚無"に飲まれちゃった口だ!」

「虚無...?」

「言われてみれば確かにこの世界なんか辛気臭い!私バカンスに来たはずなのに!こんなのバカンスどころじゃないじゃん!」

 

聞き慣れない言葉に聞き返してみるもベルは私を無視して、辺りを見回しながら叫んでいた。

 

「えー...せっかくのバカンスがー...」

「...あの」

 

明らかに落胆するベルに、少し躊躇いながらも私は声をかける。

 

「...まあしょうがないか!切り替えていこう!

あなた名前は?分かる?」

「...ごめんなさい、分からないです。」

「だよね!記憶喪失だもんね!じゃあ...あなたは今日から、ソラね!」

「ソラ...分かりました。」

 

急な名づけにびっくりはしたが、まあ特に呼び名にこだわりがあるわけでもないしいいか、と承諾した。

 

「よしじゃあソラ!あんたも行くわよ!」

「行くって...どこにです?」

「あんたそのままここにいてもやることなんもないんでしょ?だったら私と一緒に行きましょ!このままじゃ飢え死によ?」

 

飢え死にする、と聞いても別に何も思うことはなかったが、ベルが私のやることを決めてくれるというのなら、まあそれでいいかと思った。

 

ベルについて行くと、やがて背の低い円柱型の機械が見えてくる。

 

「あれが私の宇宙船、ハッピー号!さあさあ乗って!中はちゃんと広いから!」

 

ベルに促されるままに乗り込む。

中は見ていても全くわからない数字やらグラフやらが表示された画面で埋め尽くされていた。

 

「あー戻ってきた。せっかく準備したのにぃ。バカンスの口になってたのにぃ...いや待てよ。それならいっその事、夢にでも浸りに行くか!よし行くぞソラ!」

 

ベルが慣れた手つきでモニターを操作すると、やがて宇宙船が振動を始めた。次いで浮遊感。

それを受けて私は、この不毛の土地から別の場所に向かってとんで行くのだと、ようやく理解した。

 

「...?」

 

この土地に、この世界に、思い出なんて、記憶なんて無いはずなのに。

空っぽの心を貫かれたような痛みが、私を襲う。

その理由を、意味を、私を考えることもせずに、段々と小さくなっていく灰色の星を、窓越しにずっと眺めているだけだった。

 

やがて自動操縦モード、とやらにしたベルがリビングのような場所に私を案内した。そのままソファに二人で座るとベルが話し出した。

 

「さあそれじゃあ、改めて自己紹介をしようか!

私はハッピー・トラベル!ただのしがない仮面の愚者よ!

そしてあなたはソラ!全てを失った自滅者よ!」

 

流れで私の事まで言い出して、果たしてそれは自己紹介なのだろうかとも思ったが、それ以外に分からない単語が多くて、押しとどめた。

 

「仮面の愚者...自滅者...?」

「あ、分かんないよね。

仮面の愚者っていうのは"愉悦"の行人のこと。私のこれみたいに仮面をつけてるのが特徴ね。要するに何でもかんでも楽しんじゃおー!ってのが私たち愚者の目的なの!」

 

ベルはひとりで何やら盛り上がっていた。説明の最後で腕をおおきく振りあげたまま固まってしまったが、一体どうしたのやら。

 

「...こういう時は乗るものよ、ソラ。ほら、一緒に手を振りあげて、おーっ!って。」

「...おー...」

 

言われた通りにすると、ベルは満足そうに頷いていた。これでいいらしい。今後は同じようにするとしよう。

 

「次に自滅者は"虚無"に飲まれた人のこと。虚無に飲まれちゃった人は存在の意味を失ってしまうの。

例えばあなたは...記憶と感情、かしら?」

 

たしかに私は、知識の中にある感情と呼べるものを、1度も感じなかった。

 

「あなたのいた星の名前はウェスウィウス。元々はバカンスでそこそこ有名な星だったんだけど、何があったのやら、私が到着した時にはあの有様だった。」

 

それを言われても、特に何も思い出せなかった。

それよりも...

 

「存在の意味を失った私を、どうしてベルは助けたんですか?」

 

助けてくれた、とかではなく。

たしかに私は、存在の意味を失った自滅者なのだろうと納得した。

だって私にとっては、自分の生死すらも関心を呼ぶ材料にはならなかったのだから。

そんな私の質問にベルは即答する。

 

「だってあなたは虚無に飲まれて感情を失ったんでしょ?そんなあなたを私が笑わせられたら、それはつまり一介の愉悦の行人が虚無の星神(IX)を超えたということになる!そんな面白そうなこと、やるしかないでしょ!!」

 

仮面があるため表情は見えないけど、腕を大きく広げて大袈裟なジェスチャーをしている辺り多分ベルは今、ものすごく笑顔なんだろうなぁ、と思う。

あぁ、そういえば。

 

「...おー。」

「今はいらないわよ。」

 

さっき言われたように手を振りあげて言ったのだが、なにやら間違っていたらしい。

ううむ、難しいものだ。

 

「そのための第1歩!はいこれ!」

 

ベルから渡されたものを、受け取って眺める。

 

「これは...ベルの仮面?」

「予備のやつよ。その仮面にはね、辛いことなんて忘れて笑顔になっちゃおー!っていう愉悦の力が込められてるの。それであなたを蝕む虚無に対抗しようって寸法よ!さあさあ付けて付けて!」

 

そしてベルに促されるままに仮面を顔につける。

仮面に穴とかは空いてなかったのに、視界は良好だし息苦しくもない。一体どうなっているんだろうか。

 

とはいえ、特に何かが変わったようには感じられなかった。

そのことをベルに伝えても「そりゃ簡単に打ち消せなんてしないわよ。だって私使令でもなんでもないんだもん。」と言われた。さっきまでの説明はなんだったのか。

 

「そんなことよりもこれからよ!今私たちが向かっているのは宴の星、ピノコニー!」

「宴の、星...」

「そう!ピノコニーでは夢の世界に入って、なんだって自由にできていくらでも遊べちゃうのよ!そんな夢の様な...ううん、夢の世界でなら、ソラも笑顔になれちゃう!...かもしれない。

どう!興味湧いてきた!?」

 

顔をずいっと近づけてくるベルに、若干後ろに下がりつつも、私は正直に答える。

 

「興味は、別に。でもベルが行くと言うなら、ついて行きます。」

「ありゃ残念。ま、実際にどんな所かは到着してのおっ楽っしみ〜♪ってとこで!

...まあ私も初めて行くから知らないだけなんだけどね。ソラの分も予約しておいたから〜!」

 

そう言って鼻歌交じりに部屋を出ていったベルの背中を眺めたあと、私は外へと目を向けた。

 

宴の星、ピノコニー。

果たしてどんなところなんだろうか。

 

 

 

その場所に、私の空っぽの心を埋められる何かは、あるのだろうか。




スタレの二次創作を書くにあたって色々と調べた結果わかんないことが多すぎる!このゲームむずくない?

とりあえず中心になる愉悦と虚無周りを重点的に調べていきます。
愉悦周りはアッハだからなぁで納得できるのが楽でいい。いちばんわからんのは知恵。
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