アンソニーの図書館接待記録【Library Of Ruina】 作:ハンノーナシ
目覚め、ローラン
「……何処だ、ここ?」
──俺は目を覚ます、場所は新品同然の新しく建てられたような施設。
とある入社した『翼』に良いように利用され、最終的には他部門の死線を潜り抜けた仲間達と戦わされ。
何とか生き延びた俺は最終的に出血多量で力尽きた……と、言う事は覚えている。
「本当に目覚めたのか?おい、お前……」
──黒髪の男が俺に呼びかける。
クソッ、頭が痛む……血の匂いがする。
男は手を差し出す、俺はその手を弾く事もなく……手を借りる。
好意は素直に受け取れと死んだじいちゃんからよく言われていた。
ここで罠だったら、とか考えてたらキリが無い。
そっちのが長く生きやすいんだろうけど。
「起きてるって……俺はどうなってんだ?」
「そりゃあ、あの血の塊みたいな奴と戦ったら、お前が本から目覚めたんだよ」
「血の塊……幻想体か?なんで俺が本なんかから……」
黒髪の男は困った様に頭をかくと、向こう側にいる女に目を向ける。
あれは……アンジェラ様か?
随分と雰囲気が変わったな、俺達に命令を出す時の声色の雰囲気とは大分違う。
少し気が立っている様な雰囲気がするというか……少し不思議だ。
「貴方は幻想体と共に本の中で眠っていたのよ。はぁ……本来の体は死んでいるけど、あなたのその体は私が作ったの。感謝しなさい」
「……ありがとうございます、でいいんですかね?……他の奴らは?」
「じきに本の中から目覚めるわ」
はぁ……一体、どういう状況なんだ。
わけもわからない内に説明の連続が来て、理解が追いつかない。
体を作って貰ったって……どういう原理だよ、義体か何かか?
なんかよくわかんないけど頭にそういうのダメ〜って奴、あった様な。
……確か、人間に寄せすぎた義体はダメって奴だったか。
じゃあ俺、ヤバくね????
「これって、義体関連の頭の規則とかには……」
「知らないわ、そんな物」
終わった。
確実に終わった、頭が飛んでくるのが秒読みだ。
頭を抱えながらせっかく目覚めたと言うのに、将来の絶望に頭を支配されている。
「ローラン、貴方はこれから総記の階の司書、そしてこの良いように使われていたロボトミーコーポレーションの元職員と……司書補として『接待』を行って貰うわ」
接待?
なんか酒でも飲みながら話でもすんのか?
よくわからん……ロボトミーコーポレーションに新入社員として入った時もそうだったが、専門用語が多すぎて頭が狂いそうだ。
『ローラン』と呼ばれた男はこちらを見ると、握手をしようとする。
この男はなんでこんな場所にいるんだ?
そんな疑問が湧きながらも、手を取り……握手をする。
「俺も巻き込まれた身なんだよ……だから、アンジェラの機嫌取り、頑張ろうぜ?」
「四肢をもう一度引き剥がされたいの?」
「そんな事ありませんって、館長様!」
もう一度という事は四肢を引き剥がされた事が一回あるのか……?
恐怖感を覚えながらも、総記の階の司書補となった俺。
はぁ、またこき使われるのか……やんなるな。
──────……
「お前の名前、なんて言うんだ?」
「アンソニー。平凡な名前だろ?平凡過ぎて仲間からは『アー』とかクソみたいな略称で呼ばれてた……」
「苦労人そうだなぁ。アンジェラが言ってた接待って奴、まだわかんないだろ?まぁ……簡単に言えば『殺し合い』だな」
「は?」
俺は困惑で喉の奥からの声が漏れる。
接待が『殺し合い』と?意味がわからん。
「まぁ、アンジェラが言うには……この図書館で人が死ねば、厳密には死なずに本になる。その本は感情が高まる程情報が濃密になっていく……って感じらしい。そんで、アンジェラが満足するまでそれを続けろって話さ」
「人を殺して本に?はぁ……俺が人殺しをしろと?清廉潔白に生きてきて、パニックになった仲間と幻想体になった仲間以外殴った事のない俺が?……そういや、E.G.Oも無しで?!!」
そうだ、今考えれば。
E.G.Oが無い。
あれがあったから幻想体達やロボトミーコーポレーションの侵入者達とマトモに、ある程度対等に戦えていたのに。
戦える気がしねぇ……どうするんだ?
「あ、一応……俺も知らないんだが、一応有利に物事を進める為に『幻想体』の力と『本』の力を借りるらしい。さっき、お前を起こす為に裏路地のネズミ……マンチだったか?の本を借りて戦ったんだが、アイツの能力や耐久力がある程度使えるみたいで……血の風呂って幻想体の殴りがマシだったんだ」
「本を外付け装備に使うって事か?幻想体の力を借りるって事は……E.G.Oも使えるかもしれないぞ!」
少し希望が湧いてくる。
正直俺本人の力はミジンコ程度でしかない。
素の殴り合いで勝てるのは戦闘経験の差があるトーシロ野郎位しか思い浮かばない。
本の力を借りて戦う、か。
随分とファンタジーだなぁ、ファンタジーな所は幻想体とそんな変わらんか。
あまり戦いは好かないが、生き残る為に戦うしかない。
「あと、そうだ。こっちは接待の最中死んでも生き返る。でも、接待中はその事を忘れる……お互い、感情を高め合って戦う訳だ」
「……こっち死なねぇの?!!相手に理不尽過ぎんだろ……」
「俺もそう思うが……アンジェラにとっては対等なんだろう、ここから出る為、俺達は従うしかないさ」
接待とは言うが、実態は大の真逆なんだろう。
こちらの養分にするという欲求がガンガン垣間見えている。
「とりあえず……俺たちは戦うしかないんだろ?」
「あぁ、それしかない。しがない9級フィクサーには荷が重いぜ……」
「あんた、フィクサーなのか?9級でこんな大仕事なんて、不幸なもんだな」
「一応昔はちょっと偉かったんだぜ?問題を起こして降格されたんだ。まぁ本当に些細な問題だから、気にしないでくれ」
会話を続ける中でローランの人としての成り立ちが目に見える。
都市に住む人特有の諦めを持ちながら、希望を持っているような。
この先に待つ何かに期待している様な口ぶりだった。
接待が始まるまで極力ゆっくりしておこう。
死ぬ恐怖には慣れたけど……やっぱり、もう一度死ぬ恐怖に立ち向かうとなると覚悟が居る。
あまりにも毎日に息をする様に死の危険が迫っていたロボトミーコーポレーションの生活よりかは、遥かにマシかもしれないが。
黒く鋭い警棒の様な武器を眺めながら、時間を潰す。
他の奴らも本の中で眠っている……早く起こしてやらなきゃ。
後は、謝ってもらわなきゃな。
ビナーの奴に従っていた奴らは特に。
そう言えばマルクトやイェソド等のセフィラ達はどうしているんだろう。
姿を見ない……俺達を守る為に奮闘していた彼、彼女らが無事な事を祈る。
そんなこんなで時間を潰していると……召集がかかる。
アンジェラ様が接待の準備を整えた様だった。
最初の接待相手は……『ユン事務所』の代表とそのフィクサー達。
初っ端から底辺とは言え事務所の代表か。
勝てるか不安だが……やるしかない。
「ちゃんと息吸ってけよ?緊張で呼吸が詰まったら元も子もないからな」
ローランに忠告され、しっかりと息を吸う。
総記の階の接待広場に移動して……先程言われていた本の『ページ』の力を試してみる、
ネズミのページは一撃が重視されている物が多い様だ。
マンチと言う奴の技……技とも言えるかはわからないが。
相手の頭をトンカチで叩く様な技をこの武器で応用する事にした。
あとは……経験に任せよう。
そうして、俺の初めての接待が始まる。
人を殺す事には……抵抗しかないが。
やるしかないのだ、俺は。
俺達は。
アンソニーくんの見た目とか欲しい?欲しいなら……本編から持ってくるけど……。
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くれや
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俺達の想像に任せろ