一刀がいなくなった世界の乙女たち ―― 魏国再臨 前日譚 ――   作:無月

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背負い 決断する者 【華琳視点】

「あの子も随分、変わったわね」

 桂花に半ば強制的に休憩に出されたあの日、私の足は無意識に一刀の部屋へと向かっていた。

「どうしてかしらね・・・

 小休止の際、何故かここに来てしまうのはあなたが私に残した呪いなのかしら?」

 扉の前でおもわず溜息が零れ、私はかつてのように扉を叩きかけ、それが意味のないことだと気づき、手を降ろす。

 扉を叩いても返事などなく、開いた先に書簡に向かい合う彼は居ない。

 驚いたような声も、どこか頼りない笑顔も、誤字だらけの書簡も、そんな彼の元で笑む愛しい将たちの姿もありはしない。

 それでも私は一年経った今ですら、月に数度必ずここを訪れてしまう。

「愛する者を失った女は強く、そしてとても弱いものね・・・」

 この部屋に入る時、私は一刀がいた時の『華琳』になりかける。

 だが私はもう、あの頃の『華琳』ではない。

 王となった際に捨てる筈だった『華琳()』は、彼が居たからこそ生きていた。

 だから一刀と別れたあの日、私は一度死んだ。

『少女』としての『華琳』は死を迎え、ここに残るのは『覇王』としての『曹操』。

 けれど、それでいい。

 後の世に残るは『覇王』としての『曹操』であり、乱世を、三国を創り上げた英雄として歴史に刻まれる。

 華琳を知るのは、愛しい部下と彼だけでいい。

「入るわよ、一刀」

 あの日と変わらない言葉と共に、私は扉を開けた。

「おや、華琳様でしたか。

 こんな時間にこの部屋に来るということは、さては桂花ちゃんにでも部屋を追い出されてしまいましたか?」

 扉を開ければ、箒とはたきを持った風が掃除を行っていた。

「えぇ、そんなところよ」

 これは一刀がいなくなってすぐの頃に、この子たちが自主的に行いだしたこと。

 侍女たちにすらその人柄から好かれていた一刀の部屋を掃除することに対して、文句をいう者などいなかった。

 けれど、この子たちがやりたいということを押し切ってまでやろうとするような強者は侍女の中には居なかった。多忙の身にもかかわらず、それぞれが非番の日をやりくりし、この部屋の主がいつ帰ってきてもいいようにと維持され続けている。

「フフフ、桂花ちゃんは否定するでしょうが、お兄さんにベタ惚れな上に長く傍に居たということもあって、影響を受けていますからねー。

 いやはや、なんだか妬けてしまうのですよ」

「そうね、私はどちらに妬けばいいのかわからなくなりそうだわ」

 話しながらも手を止めることもなく作業する風は、寝台へと腰かけて肩をすくめる私を見ると楽しげに目を細めた。

「フフフ、そうですねぇ。

 それはそうと、華琳様は最近大陸を行き交っている噂についてご存知ですかー?」

 いつもと何も変わらない口調で、これはただの世間話だと言うように楽しげに話題を振ってくる。

 言葉の中に隠された気遣いに、私の口元は自然と笑みを浮かべていた。

 仕事()としてでなく、ただここに居る私としての意見を聞いてくれる。

 この子は本当に・・・ 仕えたあの日の言葉通り、私を支えてくれようとする。

 風だけでなく、私を懸命に支えてくれる将が、兵の全てが、この国に生きる民が愛おくてたまらない。

 一刀、彼女たちの全ては私のものだけど、あなたが残してくれたものよ?

 私が『曹操』のままであったなら得られなかった、『華琳』がいたから得られた。あなたが居たから、ここにあるもの。

 あなたは名実ともに、魏の柱石だった。

 大陸の誰が否定しても、この私(魏王)が認めてあげる。

「えぇ、稟からいろいろと報告書があがっているわ」

 地図を完成させるため、運送業を円滑に進めるため、そして今回流れている噂に関しての稟の考察・推察がまとめられた報告書。

 けれど、噂にされている張本人がいたならなんというか、どう対応するかが瞬時に脳裏に浮かんでしまった私には、この噂も、彼女たちの真意も些事でしかなかった。

「所詮は民の噂、その出所がどこであろうと私達がすることは変わらないわ」

 この国を、大陸を守ること。

 文化を、歴史を、この名を。彼がいる千年、二千年先へと残すこと。

 それがここに居る私達の役目。

 そして、その全てはいつかまた遠い遠い場所で、一刀と再び出会うため。

 そんな私の想いを察したのか、風はしばらく私を見つめて満足げに頷いた。

「ですね。

 では、風は稟ちゃんの止め役になることにしますかねー」

「えぇ、任せたわよ。風」

 風の返事を聞きながら、私は気まぐれに彼が使っていた本棚へと手を伸ばす。

 そこに並んでいるのは書きかけのいくつかの書簡、おそらくは勉学に使っていたのだろう書。いつでも彼が帰ってきてもいいようにと、そのままで維持することを目標としている現状ではあまり触れる機会のない場所だった。

「あぁ、お兄さんの本棚ですかぁ。

 お兄さんがいた頃、寝台の近辺や本棚を細工して艶本があったので、あまり触れないようにしていたのですよー。

 季衣ちゃんたちの目に触れるのもあれですし、暴くにしてもお兄さん本人がいないのなら、面白みに欠けますしねー」

 艶本、ね。

 それとこれとは違うと理解していても、いざ自分がされると面白くはないものだわ。

「なら、これを機にいろいろと見ておくのも面白いかもしれないわね」

 どんなものを持っていたかによっては、いろいろと言いたいことがあるもの。

「あははははー、華琳様は知識欲が旺盛なのですねー。

 そして風は、そんな華琳様を補佐するためにあるのですよー。

 一番下の段、左隅の壺をどかしてみてくださいー」

 風の言葉通り左隅の壺をどかすと、何故か一番下の段のみ丁寧に布がかけられていた。装飾として違和感はないが、何かを覆っているようにも見える。

「その布を剥ぐと、あら不思議。

 ちょっと押すと横に動く、不思議な扉が出てくるのです」

 木の板は落ち、隙間に指をさしこみ横に動かすと下には空間が出来ていた。

 よく考えられているわね、外見上からは飾りにしか見えない箇所をこんな風に有効活用させる。発案者の発想も悪くないし、作成者の腕を信頼してなければこんな発想は出来ない。

 けれどそれを、艶本を隠すために利用するなんて本当に・・・ 呆れて言葉も出てこないわね。

「そこだけ何故か一冊分くらいの書簡が入るような仕組みになっているのですよー。

 そしてお兄さんは、そこに自分のとびっきりの物を入れておく習慣があったのです」

 風の言葉通り、そこから出てきたのは一冊の書簡。

 だがそこに書かれていたのは、『三国同盟(仮)後 催し案』。それも、隠していただろう当人の字で。

 私がそれを迷いもなく開けば、そこに広がっていたのは彼の夢。

 彼が残した、あの日の想い。

「馬鹿ね・・・・」

 発案をしたのなら、責任を持って仕事をまっとうするのがあなたの務めでしょう?

 案だけを残し、他を全て丸投げなんて・・・ あなたは一体何様なのかしらね? 一刀。

 

『みんなと、華琳とずっと一緒にいたいなぁ』

 

 あなたは覚悟していたじゃない。私を残して、逝くことを。

 それでもあなたは、ここに居たかったのね・・・

 三国の将の名をほぼすべてを覚えて、私達にとって注意点でしかないところを良さとしてまで見ていたことに驚かせられながら、私はそっと書簡を閉じる。

 一刀、あなたは私以上に強欲で、女好きだということがよくわかったわ。

 三国の平和(全て)が、あなたはそんなに欲しかったの?

「馬鹿よ、あなたは本当に・・・ 三国一の大馬鹿よ」

 膝に落ちた雫の感触に、私は自分が泣いていることに気づかされた。

 涙なんて、あの日に使い果たしたと思っていたのに。

「華琳様ー? どうかされましたかー?

 さてはお兄さんが巨乳な艶本でも・・・」

 私の様子を見て不思議に思ったのか、傍へと寄ってきた風へと書簡を渡し、涙を拭いながら、熱を帯びた目頭へと手を当てる。

 まだ零れだそうとする涙を堪えようとしても止まることはなく、涙を追うように次々と彼との思い出が脳裏に蘇ってくる。

 哀しみも、喜びも、苛立ちも、全て、思い出していく。

 彼への想いが溢れて、とまらなかった。

「私の感情を乱れさせるのは、いつもあなたなのね・・・・」

 完全に不意打ちだった。

 まさか一年越しにこんなものを私に見せるなんて、想像出来る筈もなかった。

 あの体調で、あの状況下で、彼が何かを残す余裕などあるとは思ってなどいなかった。

 まったく、いつもの仕返しのつもりかしらね?

「お兄さん・・・ まさか、こんなところに仕込んでおくとは不意打ちが過ぎますよー。

 心臓に悪いのです。断固抗議ものですよ。ぷんぷんです」

 書簡から目を逸らすことなく、頬を膨らませて怒ったかと思ってみていれば、風は書簡を大切そうに抱きしめた。

「ですが、流石にこの不意打ちは・・・・ 効きますねー」

 風が、泣いていた。

 無理もないわ、これは不意打ちすぎるもの。

「まったく、もし誰も探さなかったらどうするつもりだったんでしょうね~」

「私達なら見つけると思っていたんでしょうね」

 あるいは見つからずとも、私達ならこの書簡に書かれていることを行うと信じていたのかもしれない。

「さぁ、風。

 これから忙しくなるわよ」

「はいですよー。

 まったくお兄さんは、居なくなっても手のかかる困った人ですねー」

 風の言葉に同意の代わりに笑い、私達は桂花が仕事を行っているだろう執務室へと駆け出していた。

 

 

 

 そんなことがあったのはもう半年近く前のこと、あの後私達は一刀が残した案を具体的に詰め、真桜に説明書の解読及び作成を一任。その一方で私達は土地の確保から、細々とした決め事の詳細を詰めるなど、やることは山のようにあった。

 それをやっている間にも他の仕事はあり、蜀へのいくつかの問題に関する返答、呉への医術提供。西涼の老将・韓遂への依頼、幽州の領主へと復帰した公孫賛とのやり取り。涼州への工作隊派遣と、荊州への季衣と流琉の派遣。

 そして・・・

「華琳様、蜀へと向かった風達から文が届きました。

 おそらくは今回の報告書だと思われます」

 いくつかの書簡を抱えた桂花が手渡してきたのは一つの手紙、それは風と稟の字で書かれていた。内容は伝言を口頭で伝えたこと、孔明たちの今回の目的及びそれを知った上で桃香が下そうとしていたことなど、事細かに書かれている。

「本日、劉協様から蜀へ下す罰を軽くしてほしいという嘆願書まで届いています。

 また、劉協様から孔明から文が来ていたことも判明し、その内容も確認させていただきました。劉協様をそそのかし、我々を狙った行動も明らかになっています」

 続けざまに渡された劉協様からの文へと目を通しつつ、言葉の節々に一刀の影が見え、おもわず笑ってしまう。

「たった一日任せただけで劉協様にまで手を出していたのね・・・

 一刀には本当に困ったものだわ」

「そこですか?! 華琳様!」

「えぇ、今回は何もなかったもの。

 国どころか、誰か一人を罰することもない。

 民の中で生まれ、民の中で一つの噂が消えたというだけのこと。

 付け加えるとするのなら、噂を気にかけすぎた国の一つが治政を疎かにしてしまった。というところかしらね」

 驚く彼女に私は肩をすくめてみせると桂花どこか不満を残した顔をし、言葉にしようか迷っているのがよくわかる。

 この子も稟ほどは激しくはないにせよ、怒っていることには変わりはないのだから。

「これで、よろしかったのですか?」

「本人があの噂を聞いてなんて答えるか、あなたにもわかるでしょう(想像できるでしょう)? 桂花」

 笑い飛ばし、どうして彼女たちがそうしたかを考え、ない頭で考えてもわからないと判断したら、すぐさま行動に移す。

 きっと、本人がいたなら無意識に彼女たちを誑し込んでいたことでしょうね。

「そう、ですね・・・ あの馬鹿ですもんね・・・

 それに自国の治政も出来ず、この程度の噂を流すことしかできない蜀なんて罰する価値もないですよね!」

「そういうことよ」

 罰する価値もなく、罰したところで何も満たされはしない。

 蜀という国を滅ぼしても、孔明たちを言及し罰しても、意味などない。

「所詮は恋を知らない女未満の者たちに、この気持ちなんてわかる筈もありませんしね」

 桂花から出たとは思えない言葉に目を丸くすれば、顔を赤らめながらも堂々としている姿を見て私は噴き出してしまった。

 まさか、この子にここまで言わせるなんてね。

 やるじゃない、一刀。

「本当にそうね」

 出会い、歩み寄り、恋をして、愛を知り、共に見たいと願った未来(さき)があった。

 それこそが私達にはあって、彼女たちになかったものだろう。

「一刀がこの大陸へとやってきたのは、天の知識を与えることでも、歴史という別の私達を伝えることでもなく、私達に争いのない平和な未来を描く力を与えるためだったのかもしれないわね」

「あんな馬鹿にそれほどの力はあるとは思えません。

 華琳様の手腕あっての大陸であり、覇王たるあなた様の功績です。

 ・・・・まぁ、あいつがしたこともほんの少しは認めてやらなくもありませんが」

「ふふ、一刀に対してはいつまでも素直じゃないわね」

「か、華琳様?!」

 あぁ、私達を泣かせるのも、笑わせるのも、結局いつもあなたなのね。

 あなたは果報者よ、一刀。

 だってあなたは大陸一の女たちに愛され、今もなお想われ続けているのだから。

 

 

 月が昇り、街に夜の帳が降りた頃、私は一刀と別れて以降一度も来ることのなかった川辺に訪れていた。

 懐かしい水音、風が揺らす木の葉、星と月の光の下で私は何をするわけでもなく、ただ立ち尽くす。

 目を閉じれば、ここで彼と過ごした日々が昨日の事のように思い出され、泡のように儚く消えていく。

 時は必ず過ぎ去るものだが、ただなくなってしまうものではない。

 形をなくしてなおも(ここ)に刻まれ、今も共にあり続けるもの。

 だから今は、寂しくはない。

「それで、あなたはいつまで隠れているつもりかしら?」

 川を見つめたまま問えば、背後に気配を感じられた。

 殺意もなく、敵意もないその存在に私が声をかけたのはただの戯れ。

 ここに居た、ただそれだけの理由で行った気まぐれのものだった。

「あなたは私に何か用でもあるのかしら?

 こんな時間に、こんな場所に来ることはそうないと思うのだけれど」

 やや街から外れたこの場所は、昼間ならばともかく夜に人が訪れるような場所ではないだろう。

 三国が平和になった今、賊こそいないが野の獣は変わらずにあるのだから。

「大陸の覇王・曹孟徳。あなたに問いましょう。

 もしもう一度彼を・・・ 天の遣い・北郷一刀をこの大陸に招く方法があると言ったら、あなたはどうしますか?

 そして、その引き換えに今の世の平和も失い、この穏やかな世でその生涯を閉じる彼女たちをもう一度乱世へと送り込まなければならない。

 この世の全てと引き換えに、あなたは彼との再会を望みますか?」

 『一刀を招く方法』 『この穏やかな世でその生涯を閉じる彼女たち』

 『もう一度乱世』 『この世の全てと引き換え』

 言葉の節々に見られるおかしな点が繋がり、多くの疑問を生み出していく。

 だがもし私がその疑問を口にしたとしても、おそらく答えは返ってこないだろう。

 ならば、私が考えるべきことは疑問ではない。

 私の選択一つであの子たちの生涯を狂わせ、この世界を壊す。

 それどころか、今回以上の犠牲を払うことにすらなりかねない。

 それでも・・・・

「もう一度一刀に会えるというのなら、私は地獄の業火に焼かれようと後悔はないわ。

 あの子たちも、この大陸も、この世界すらも、彼が私の傍に居るのなら、全てを今以上のものに出来ると断言してあげましょう」

 私はその罪を背負ってなおも、彼と共に生きることを選ぼう。

 そして今度こそ、本当に誰もが幸せとなる大陸を築くことを約束するだろう。

 誰に何と言われようと、かまわない。

 許されなくてもいい。

 いつかこの身が、地獄の業火に焼かれることになっても、彼とならば地獄にすら平和をもたらしてみせよう。

「本当に羨ましいほど、彼を愛していたのですね。あなたは」

「愛していた(・・)ではなく、今も愛している(・・)のよ」

 想いは過去ではなく、今も変わらずここにある。

 魏の誰もが、兵の一兵、民の一人に至る全ての者が彼への想いを過去にすることはない。

「知っていますよ。

 彼があなた方をどれほど愛していたかも、彼が成し遂げたかったことも全て。

 ずっと見ているだけの私ですら変わりたくなるほど、眩しくて、温かそうだった」

 その言葉にどれほどの思いがあるかなど、私にはわからない。

 ただ一つわかるのは、彼女もまた彼のせい(おかげ)で変わってしまった(変えられてしまった)という事実だけ。

「彼との再会がいつになるかまでは、明言することは出来ません。

 ですが、必ず彼をこの大陸へと連れてくることを約束しましょう。

 その代わり、あなた方と彼が再会を果たすその時まで彼の時間は私が頂きます」

 これまで例にない斬新な宣戦布告をされ、おもわず笑う。

 なんて欲のない宣戦布告で、独占宣言。

 せめて『奪ってみせます』くらいは、言ってほしかったのだけれど。

「どれほど一緒に居ても、彼の心は私達から動くことはないでしょう。

 どんな行動に移しても、彼は私たちを想い続ける。

 それを耐えられるというのなら、好きになさい」

「えぇ、嫌というほどわかっています」

 私の言葉に頷いて、『嫌』という割にはその言葉に一切の嫌味もなかった。

「それでも私が恋したのは、あなた方を想い、愛し続けた彼だから。

 精々、あなた方が出来なったことを多くしてからお返ししますよ」

 音もなく気配は消え去り、そこに先程まで確かにいた筈の彼女は既にいない。

 一歩下がった辛い恋を自覚し、自覚してもなお想いを捨てきれない。

 報われるようで報われず、報われずに終わるようなそんな恋。

「だけど・・・ そんなあなたを、一刀が放っておくなんてある筈もないのだけどね」

 彼はとても欲が深く、それでいてとても・・・・ お節介なのだから。

 

 

 見上げた空には彼と別れた日と同じ、白き満月が昇り、私を照らす。

 私は届く筈もない月へと手を伸ばし、掴むように強く拳を握りしめた。

「もう二度と、あなたを天になんて渡しはしないわよ。一刀。

 だからそれまではあなたを、彼女に貸しておくわ」

 もう誰にも、彼を奪わせない。

 彼と出会うその日まで、私は私であることに全力を尽くしていくだろう。

「彼女ごとでも構わないから天から多くを持って、帰ってきなさい。

 あなたと再び出会う日を、私はいつまでもここで待っているわよ」

 私の、誰よりも愛しい一刀。


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