魔法少女のパパだが、娘が怪我をしたら俺が出るしかないだろ。   作:ワタリ3@ぼちぼち浮上

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ミスで上げ直しです‼︎


4-9 薔薇に限界はない!

「あの赤いコアに、触れさせて」

 

 ローズの声は、悪魔空間の重さの中でも、まっすぐに響いた。

 ゲキ・マキシマムはすぐには返事をしなかった。

 

 目の前には、黒い人型(エリゴス)

 そして胸には、赤黒く脈打つコア。

 

 あれが弱点であることは、ゲキにも分かっていた。

 

 以前のデビガノイドもそうだった。

 胸の中心にある核。

 そこに、人間が閉じ込められていた。

 

 だが、今回のそれは前よりも危険に見える。

 

 コアはまるで心臓のように激しく脈打ち、黒い人型兵器の全身へ赤黒い光が走る。

 

「あいつの胸のコアに触れれば、暴走を抑えられるかもしれない」

 

「なぜそう思う」

 

「声が聞こえたの」

 

 ローズは黒い人型兵器を見た。

 

「あの子、ただ怒っているだけじゃないわ。痛がってる。苦しんでる。助けてほしいって言えないまま、暴れている」

 

 ゲキ・マキシマムは、黒い人型兵器へ視線を戻す。

 

『ゲキ……マキシマム……』

 

 悪魔兵器が唸った。

 機械音の奥に、少年の声が混じっている。

 

『俺を……見下すな……』

 

『俺は……弱くない……!』

 

 ゲキ・マキシマムはローズの前に立った。

 

「かなり危険だ」

 

「分かってる」

 

「あの攻撃をまともに受けたら、今のあんたじゃ耐えられないぞ」

 

「それも分かってる」

 

「触れたところで、どうなるか分からない」

 

「ええ」

 

 ローズは、ほんの少しだけ笑った。

 

「ゲキ」

 

「なんだ」

 

「アナタ、止める理由を並べるのは上手なのね」

 

「……」

 

「でも、助ける理由は一つで十分よ」

 

 ローズは胸に手を当てた。

 

「あの子が苦しんでいる」

 

 その言葉に、ゲキ・マキシマムは黙った。

 ローズの声に、迷いはなかった。

 

 傷ついていないわけでもない。

 自分が無力だと突きつけられたばかりだ。

 

 それでも、ローズは逃げない。

 

 魔法少女になれなかった男が、魔法少女のように誰かを救おうとしている。

 ゲキ・マキシマムは小さく息を吐いた。

 

「ミププ」

 

「駄目ミプ」

 

 肩の上のミププは即答した。

 

「言わなくても分かるミプ! ゲキ、絶対に“あいつに賭けてみる”とか言う顔してるミプ!」

 

「……ハハ、よく分かったな」

 

「分かりたくなかったミプ!」

 

 ミププはローズを見る。

 

「ローズ、危険ミプ。悪魔エネルギーが濃すぎるミプ。普通の人間がデモンコアに触れたら、心が引きずり込まれるかもしれないミプ」

 

「心に触れられるなら、それでいいわ」

 

「よくないミプ!」

 

「でも、外から声をかけても届かなかった」

 

 ローズは穏やかに言った。

 

「なら、もっと近くに行くしかないでしょう?」

 

 ミププは言葉を詰まらせた。

 ゲキ・マキシマムは、拳を握った。

 

「……分かった」

 

「ゲキ!?」

 

「俺があいつを抑える。ローズ、お前は一瞬で触れろ。長くは無理だ。いいな?」

 

「ええ」

 

 ローズは少しだけ笑った。

 

 その笑みを最後に、彼の表情から軽さが消える。

 周りに人はいない。逃げ遅れた人々は避難できたのだろう。

 ゲキ・マキシマムは黒い人型兵器へ向き直る。

 悪魔兵器は、槍を構えたまま震えていた。

 

 胸のコアが、また激しく脈打つ。

 

『見下すな……』

 

『俺を……笑うな……』

 

『俺は……上だ……!』

 

「だったら、こっちを見ろ」

 

 ゲキ・マキシマムは低く言った。

 

「俺が相手だ。()()()()()()()

 

 その声に反応し、黒い人型兵器の仮面がゲキへ向く。

 

『ゲキ……マキシマム……!』

 

 怒りが膨れ上がった。

 悪魔兵器が地面を蹴る。

 

 速い。

 

 黒い装甲の体が、一気に距離を詰めてくる。

 禍々しい槍が、ゲキ・マキシマムの胸を狙って突き出された。

 

 ゲキ・マキシマムは避けなかった。

 両腕で槍の柄を受け止める。

 

 衝撃。

 

 足元のアスファルトが砕けた。

 

「ぐっ……!」

 

 槍の勢いは重い。

 

 単純な膂力だけではない。

 悪魔エネルギーが槍から流れ込み、ゲキ・マキシマムの腕を焼くように軋ませる。

 

 それでも、ゲキは踏みとどまった。

 

「行くぞ!」

 

 ゲキ・マキシマムの腕に、ピンクの魔力が集まった。

 

 力で押し返すのではない。

 槍の軌道をずらし、体ごと懐へ入る。

 

 ゲキ・マキシマムは一歩踏み込み、黒い人型兵器の腕を掴んだ。

 

「うおおおおっ!」

 

 ゲキ・マキシマムの巨体が沈む。

 腰を落とし、足裏で砕けた道路を踏みしめる。

 次の瞬間、ゲキ・マキシマムは黒い人型兵器の上半身を抱え込むようにして、全力で押さえつけた。

 

 悪魔兵器の体が軋む。

 

 赤い関節光が激しく点滅する。

 

『離せ……!』

 

「離すか!」

 

『俺を……押さえるな……!』

 

「無理な相談だ、俺はしつこいぞ!」

 

 ゲキ・マキシマムの筋肉が膨れ上がる。

 ピンクの魔法少女衣装が、異様なほどの圧を放つ。

 

 その姿は、可憐というよりも怪物同士の組み合いだった。

 

 だが、その背中は確かに誰かを守るためのものだった。

 

「ローズ!」

 

 ゲキが叫ぶ。

 

「今だ!」

 

 ローズは走った。

 砕けた道路を蹴り、悪魔エネルギーの渦へ飛び込む。

 

 近づくだけで、肌が焼けるようだった。

 胸が苦しい。

 耳元で、無数の悪意が囁いてくる。

 

 ——無理だ。

 

 ——お前にはできない。

 

 ——男のくせに。

 

 ——夢なんか叶わない。

 

 ——笑われて当然だ。

 

 聞き慣れた言葉だった。

 

 ローズは歯を食いしばる。

 

「うるさいわね……!」

 

 彼はさらに一歩踏み込む。

 

 ゲキ・マキシマムがエリゴスの腕を押さえている。

 しかし完全には止めきれていない。

 

 黒い人型兵器は暴れ続けていた。

 

 槍が地面を削り、脚がアスファルトを割る。

 胸のコアは、今にも破裂しそうなほど赤く輝いている。

 

 ローズはその光へ手を伸ばした。

 

「届いて……!」

 

 指先が、赤いコアに触れた。

 

 その瞬間。

 

 世界が反転した。

 

    Θ

 

 ローズは、暗い場所にいた。

 

 悪魔空間ではない。

 

 もっと狭い。

 もっと息苦しい。

 

 湿った部屋と散らかった床。閉め切られたカーテン。

 空の弁当容器と、洗われていない食器。

 

 そこに、小さな少年がいた。

 

 膝を抱えて座っている。

 

 顔はよく見えない。

 だが、その手には古びた野球ボールが握られていた。

 

『野球選手になりたい』

 

 少年の声が聞こえた。

 それは、今までの怒鳴り声とは違っていた。

 小さく、か細い声だった。

 

『プロになって、すごい選手になって、みんなに見てもらいたい』

 

 ……映像が揺れる。

 

 小さなグラウンド。少年がバットを振っている。

 

 誰よりも早く来て、誰よりも遅くまで残っている。

 手の皮がむけても、泥だらけになっても、ボールを追っている。

 

 そこには、確かに夢があった。

 

 だが、その夢は少しずつ汚れていく。

 

『グローブ? そんな金ない』

 

『練習? 勝手にやってろ』

 

『試合? はっ、行けるわけないだろ』

 

『夢なんか見てないで、現実見ろ』

 

 大人の声が重なる。

 

 顔は見えない。

 ただ、冷たい声だけが響く。

 

 少年は黙っていた。

 

 怒ることもできない。

 泣くこともできない。

 

 家に帰っても、誰も話を聞いてくれない。

 試合に出ても、誰も見に来ない。

 欲しかった道具は買ってもらえない。

 遠征費も、月謝も、いつも揉め事になる。

 

 それでも少年は、しばらく夢を握っていた。

 

 古びたボールを、何度も壁に投げた。

 夜の公園で、一人で素振りをした。

 誰かに見てもらえる日を、ずっと待っていた。

 

 だが、待っても誰も来なかった。

 

『……無理だな』

 

 誰かの声。

 

『無駄なことしないで』

 

 別の声。

 

『夢なんか、金と才能があるやつのものだ。お前には才能がない』

 

 少年の中で、何かがひび割れた。

 

 映像が変わる。

 

 学校。

 

 廊下。

 

 教室。

 

 少年は、別の誰かを睨んでいる。

 

 自分より弱そうな相手。

 言い返せない相手。

 怯える相手。

 

 その顔を見ると、胸の奥の惨めさが少しだけ薄れた。

 

 誰かを下に見れば、自分が上にいる気がした。

 

 誰かを笑えば、自分が笑われていない気がした。

 

 誰かを踏みつければ、自分が踏みつけられていない気がした。

 

『俺は弱くない』

 

 少年の声が低くなる。

 

『俺は下じゃない』

 

 黒い感情が、足元から湧き上がる。

 

『俺を見下すな』

 

 その感情は、いつしか少年自身を飲み込んでいた。

 

 夢を追えなかった痛み。

 誰にも見てもらえなかった寂しさ。

 諦めきれない悔しさ。

 

 それらが全部、他人への攻撃に変わっていく。

 

 ローズは、その中心に立っていた。

 

 胸が苦しかった。

 

 彼にも分かったからだ。

 

 夢を笑われる痛み。

 無理だと言われる悔しさ。

 誰にも本気にしてもらえない孤独。

 

 それは、ローズも知っている。

 

 けれど。

 

「違うわ」

 

 ローズは、暗闇の中で言った。

 

「その痛みを、誰かを踏みつける理由にしてはいけない」

 

 少年が顔を上げる。

 その表情は黒い影に覆われている。

 だが、泣いているように見えた。

 

『じゃあ、どうすればよかったんだよ』

 

 声が震えていた。

 

『誰も助けてくれなかった』

 

『誰も見てくれなかった』

 

『俺だって……俺だって、すごくなりたかったのに』

 

 ローズは言葉を失う。

 簡単に答えられる問いではなかった。

 

 ……努力すればいい。

 ……諦めなければいい。

 ……夢は叶う。

 

 そんな言葉だけでは、届かない痛みがある。

 

 環境に押し潰される夢がある。

 誰にも支えられず、歪んでしまう心がある。

 

 ローズはゆっくりと少年へ近づいた。

 

「あなたは、苦しかったのね」

 

『……』

 

「でも、もうこれ以上、自分も誰かも傷つけなくていい」

 

『うるさい』

 

「あなたの夢は、笑われるためのものじゃなかった」

 

『うるさい……』

 

 その瞬間、暗闇が揺れた。

 

 黒い棘のようなものが、少年の背後から伸びる。

 

 悪魔エネルギー。

 

 それが少年の心を縛っている。

 

『黙れ!』

 

 少年の叫びと同時に、黒い波がローズを襲った。

 

「っ……!」

 

 ローズの体が吹き飛ばされる。

 

 視界が割れる。

 

 暗闇が遠ざかる。

 

 最後に見えたのは、膝を抱えた少年の姿だった。

 泣きながら怒っている、ただの子供の姿だった。

 

     Θ

 

 ローズの体が、現実へ弾き戻された。

 

「ローズ!」

 

 ゲキ・マキシマムの声が聞こえる。

 ローズは道路の上を転がり、瓦礫に背中を打ちつけた。

 

 息が詰まる。

 

 視界が白くなる。

 

 それでも、彼は赤いコアから目を離さなかった。

 

 エリゴスは、さらに激しく暴れ始めている。

 ゲキ・マキシマムが押さえ込んでいた腕が振りほどかれ、槍が大きく振るわれた。

 

 ゲキは後ろへ跳び、直撃を避ける。

 

 胸の赤いコアは、先ほどよりもさらに不安定に明滅していた。

 少年の心に触れたことで、ローズには分かった。

 

 このままでは、あの子は燃え尽きる。

 

 怒りに飲まれたまま。

 誰にも本当の痛みを見てもらえないまま。

 悪魔兵器の核として使い潰される。

 

 そんな終わり方を、させてはいけない。

 

「……ゲキ」

 

 ローズは立ち上がろうとした。

 

 膝が震える。

 足に力が入らない。

 それでも、立たなければならなかった。

 

「ローズ、動くな!」

 

「駄目よ」

 

 ローズは息を切らしながら言った。

 

「あの子を……これ以上、苦しめちゃ駄目」

 

「何を見た」

 

「……夢を」

 

 ローズは胸を押さえる。

 

「野球選手になりたかった男の子の夢。誰にも見てもらえなくて、支えてもらえなくて、潰れて、歪んでしまった夢」

 

 ゲキ・マキシマムは黙った。

 ミププも、言葉を失っていた。

 

「このまま、あの子の()を、()()()を、使い潰させるわけにはいかない!」

 ローズは黒い人型兵器を見つめる。

 悪魔兵器が咆哮する。

 

『俺は……弱くない……!』

 

『俺を……誰も……!』

 

 声は怒りに満ちている。

 だが、ローズにはもう、そこに混じった泣き声が聞こえていた。

 

「力がいるわ」

 

 ローズは呟いた。

 

「言葉だけじゃ届かない。普通の体では、あの悪魔のエネルギーは抜けない」

 

 必要なのは、浄化の力。

 人を兵器から戻す力。

 誰かの心に巣食った悪魔を、痛みごと抱きしめて引き剥がす力。

 

 魔法少女の力。

 ローズは拳を握りしめた。

 

「お願い……」

 

 それは誰に向けた言葉だったのか、彼自身にも分からなかった。

 

 母か。夢か。

 

 それとも、まだ見ぬ自分自身か。

 

「今だけでいい」

 

 ローズの声が震える。

 

「アタシに、あの子を助ける力を……!」

 

 その瞬間。

 ゲキ・マキシマムの腰元で、()()()()()

 

「何だ?」

 

 ゲキが視線を落とす。

 そこにあったのは、メイクアップ・リグ。

 ゲキが変身に使っている、あの変身アイテム。

 

 それが、()()()を放っていた。

 ただ光っているだけではない。

 

 震えている。

 

 まるで、ローズの願いに応えるように。

 ミププの目が、限界まで見開かれた。

 

「ま、ままま、まさか……」

 

 リグの光が強くなる。

 

 赤い輝きの中に、花びらのような光が混じった。

 ローズは呆然とそれを見る。

 

 ゲキ・マキシマムもまた、言葉を失っていた。

 

 悪魔空間の中で、メイクアップ・リグがローズへ向かって光を伸ばす。

 

 夢を否定された男の願いに。

 苦しむ少年を救いたいという祈りに。

 魔法少女になりたいという、長すぎる夢に。

 

 それは、確かに反応していた。

 まるで、何かが芽吹こうとしているようだった。

 

「ミププ」

 

 ゲキ・マキシマムは、腰元のリグを見下ろした。

 

「これは……」

 

「し、知らないミプ」

 

 ミププは震える声で答えた。

 

「知らないミプ。こんなの、ミププ知らないミプ」

 

 傷だらけの体。

 破れたタンクトップ。

 粉塵をかぶった長い赤髪。

 片目を隠す髪の奥で、残った瞳がリグの光を見つめている。

 

 彼の願いに、リグが応えていた。

 

 魔法少女になりたいという夢に。

 苦しむ少年を救いたいという祈りに。

 そして、誰かを守るために立つ覚悟に。

 

 ゲキ・マキシマムは、深く息を吸った。

 

「ローズ」

 

「……ええ」

 

「受け取れ」

 

 ゲキは腰元からメイクアップ・リグを外した。

 

 

「ゲキ!?」

 

 ミププが叫ぶ。

 

 ゲキ・マキシマムは迷わなかった。

 リグにはまっていたハート型のクリスタルを外し、そのままローズへ向かって投げる。

 

 リグは空中で光の軌跡を描いた。

 

 ローズは両手を伸ばす。

 

 メイクアップ・リグが、その手の中へ収まった。

 

 次の瞬間。

 

 ローズの前に、赤い薔薇の形をしたクリスタルが浮かび上がった。

 

 透き通るような赤。

 花びらの一枚一枚が、魔力で編まれたように輝いている。

 

 ローズは息を呑んだ。

 

「これは……」

 

 胸の奥で、何かが応えた。

 

 長い間、閉じ込めていた夢。

 何度も笑われ、否定され、それでも捨てられなかった願い。

 

 母の声が蘇る。

 

『夢は叶うのよ』

 

 それは、優しい嘘ではなかった。

 少なくとも今、この瞬間だけは。

 

 赤い薔薇のクリスタルを掴み、リグの溝にはめ込む。

 ローズはリグを胸の前に掲げた。

 

「アタシは……」

 

 声が震える。

 だが、それは恐怖ではなかった。

 

「アタシは、誰かに笑われるために夢を見たんじゃない」

 

 ローズの足元に、赤い魔法陣が広がる。

 

「誰かを守るために」

 

 花びらが舞った。

 悪魔空間の紫を裂くように、赤い薔薇の花びらが夜空へ広がっていく。

 

「誰かに勇気をあげるために」

 

 ローズの体を、光が包む。

 

 長い赤髪がふわりと舞い上がる。

 片目を隠す髪が、赤い光を帯びる。

 鍛え上げられた体の輪郭に沿って、魔力のラインが走った。

 

「そして、苦しむ心に手を伸ばすために!」

 

 ローズは叫んだ。

 

「マジカル・ケミカル・フィジカル・メイクアップ!」

 

 薔薇の光が弾けた。

 光の中で、タンクトップとジャージがほどけるように消える。

 

 代わりに現れたのは、赤を基調にした魔法少女衣装だった。

 

 だが、それは少女らしいフリルだけの衣装ではない。

 

 体に沿った滑らかなスーツ。

 薔薇の蔓を思わせる赤いライン。

 胸元には、赤い薔薇のエンブレム。

 脚には長いヒールブーツ。

 肩や腕には、アメコミヒーローのような力強いシルエットがある。

 

 可憐でありながら、強い。

 

 華やかでありながら、戦うための姿。

 

 額には赤い宝石の小さな飾り。

 唇には赤いリップ。

 長い赤髪は、魔力を帯びてさらに鮮やかに輝いていた。

 

 ローズはゆっくりと目を開ける。

 

 片目を隠す赤髪の奥で、瞳が強く光った。

 

 彼は片手を胸に当て、もう片方の手を優雅に広げる。

 

 「可憐なる夢を歩む!」

 

 花びらが舞う。

 

「鍛え抜かれた乙女魂!」

 

 ヒールが、砕けた道路を静かに踏む。

 

「魔法少女——()()()()()()()()()()()

 

 ローズは微笑んだ。

 

「ここに開花よ」

 

 悪魔空間の中に、赤い薔薇の光が広がった。




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