魔法少女のパパだが、娘が怪我をしたら俺が出るしかないだろ。   作:ワタリ3@ぼちぼち浮上

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ローズ・アンリミテッドのビジュアルです

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4-11 オネエの後輩魔法少女 (おまけ…キャラ紹介)

 

 昼。

 

 五月女家二階のリビングには、妙な沈黙が落ちていた。

 

 遠くから聞こえる車の走る音、階下のSAOTOME GYMからは、かすかにマシンの駆動音も響いている。

 

 日常の音。

 

 けれど、テーブルを囲む者たちの空気は、日常とは言いがたかった。

 

 五月女ゲキ。

 五月女エミカ。

 守護精霊ミププ。

 C.H.A.R.M.エージェントの赤司良介。

 

 赤司は、午前中から五月女家を訪れている。

 理由はもちろん、昨夜発生した悪魔空間の件。

 

 連れ去られていた少年は、再び悪魔兵器の核として利用され、今回、本部最新鋭と見られる悪魔兵器に組み込まれていた。

 

 ゲキ・マキシマムと、新たに現れた魔法少女の活躍によって、少年は完全に浄化された。

 現在はC.H.A.R.M.の医療施設で保護されており、意識はまだ安定していないが、前回のような暴走兆候は確認されていないという。

 

 ……そこまでは、よかった。

 

 問題は、その新たに現れた魔法少女だった。

 

 赤司は、テーブルの上に置いた端末を見つめたまま、額を押さえていた。

 映像記録、解析データ。

 どれを見ても結論は変わらない。

 

 魔法少女が増えた。

 そして、その魔法少女は男だ。

 

「……もう一度、確認していいですか」

 

 赤司が、疲れた声で言った。

 

「昨夜、魔法少女が増えました」

 

「ああ、増えたな」

 

 ゲキは腕を組んで答える。

 

 表情は真面目だった。

 

「男性の魔法少女です」

 

「そうだな」

 

「ゲキさんに続いて、二人目です」

 

「そうなるな」

 

「……なぜですか?」

 

「いや、俺に聞くな」

 

 ゲキは即答した。

 

 彼は一人目の当事者ではあるが、原因を説明できる立場ではない。そもそも本人も、娘を守ろうとしたら変身しできてしまった側である。

 

 赤司は困り果てたように、ソファの上を見る。

 

 そこでは、ミププがクッションに顔を埋めていた。

 

 小さな丸い背中が、哀愁を帯びている。

 昨日からずっと、精霊界の常識が崩壊する音を聞き続けている顔だ。

 

「ミププさん」

 

「知らないミプ」

 

「まだ何も聞いてませんよ」

 

「聞かなくても分かるミプ!」

 

 ミププはばっと顔を上げた。

 目の下に、見えない疲労が漂っている。

 

「どうして男の魔法少女がまた出たのか、ミププにも分からないミプ! 完全に事故ミプ!」

 

「事故……ですか」

 

「ゲキで一回目の事故。ローズで二回目の事故。こんな短期間で起きたら、もう事故じゃなくて仕様を疑うミプ!」

 

 ミププは両手で頭を抱えた。

 

「精霊界への()()()、どう書けばいいミプ……」

 

 ミププにとって、魔法少女とは適性のある少女が精霊と契約して変身するもの。それが当たり前で常識だった。精霊界で教わってきた、基本中の基本。

 

 それなのに、ここ最近、なぜか筋肉質な成人男性が次々と魔法少女になっている。

 

 世界が壊れたのか。常識が古かったのか。

 それとも、五月女家周辺だけがおかしいのか。

 

 ミププには、判断がつかない。

 

「正式な報告書、出すんですね」

 

 赤司が言う。

 

「出したくないミプ」

 

「出してください」

 

「嫌ミプ」

 

「業務です。私も頑張りますから」

 

「ミププ、業務という言葉が嫌いになりそうミプ」

 

 赤司は深く頷いた。その気持ちは分かる。

 彼もまた、C.H.A.R.M.側の報告書を書かなければならない。

 

 未登録男性魔法少女二例目の発生。

 

 文字にするだけで胃が重くなる。

 

 赤司は、ミププにわずかなシンパシーを覚えていた。

 立場は違う。種族も違う。

 だが、上に説明しなければならないという点では同じである。

 

 その横で、エミカは腕を組み、ずっと難しい顔をしていた。

 

 父が魔法少女になっただけでも、相当だった。

 

 娘としては、いまだに処理しきれていない。

 父がピンクの衣装を纏った姿が、脳内に強烈な爪痕を残している。

 

 それなのに、今度はジムの新会員が魔法少女になった。

 

 しかも男。

 しかもオネエ。

 しかも魔法少女名は、ローズ・アンリミテッド。

 

 情報量があまりにも多い。

 

「……えっと、つまり」

 

 エミカが低い声で言った。

 

「お父さんが魔法少女になったと思ったら、今度はローズさんという人も魔法少女になったってこと?」

 

「そうだな」

 

「しかも、ローズさんはお父さんの弟子みたいな立場?」

 

「弟子ではないが」

 

「お父さん、いつから魔法少女育成ジムを始めたの?」

 

「ハッハッハ。エミカも可笑しなことを言うようになったな」

 

「……でも実績二件目だよ?」

 

「……パパも困ってる」

 

 ゲキは本当に困っていた。

 

 SAOTOME GYMは小規模ジム。

 

 健康づくり。筋力向上。ダイエット。運動習慣のサポート。

 

 本来はそういう場所だ。

 少なくとも、魔法少女を生み出す施設ではない。

 

「このままだと、SAOTOME GYMが魔法少女養成所みたいに思われるミプ」

 

 ミププがクッションの上で呟いた。

 

「やめてよ。ジムの看板が変わっちゃう」

 

 エミカは顔をしかめる。

 

「SAOTOME GYM 魔法少女育成コース開講、みたいな」

 

「いやいや、開講しないぞ」

 

 ゲキが即座に言った。

 

「でも、実績二件」

 

「実績と言うなエミカ」

 

 ゲキは腕を組んだまま、少し遠い目をした。

 

 その時、エミカはふと思い出したように顔を上げた。

 

「……というか、ローズさんって薔薇なんだよね?」

 

「そうミプ」

 

「私、フラワーメイデンなんだけど。花モチーフ、()()()()()?」

 

 エミカは真剣だった。

 

 父が魔法少女になったことに比べれば小さい問題かもしれない。しかし、本人にとっては、わりと大事な問題である。

 

 フラワーメイデン。

 花をモチーフにした魔法少女。

 

 そこへ現れたのが、薔薇の魔法少女ローズ・アンリミテッド。

 名前からして花である。

 それも、かなり個性の強い部類の花だ。

 

「私の個性、取られてない?」

 

「取られてないミプ」

 

 ミププはすぐに言った。

 ここは精霊として、相棒の不安を払うべき場面だった。

 

「エミカのモチーフは花全般というより、正確にはコスモス寄りミプ」

 

「コスモス?」

 

「フラワーメイデンの花飾りも、魔法のエフェクトも、基本はコスモスの花びらをイメージしてるミプ」

 

「そうだったの?」

 

「そうミプ」

 

「初耳なんだけど」

 

「……言った気がするミプ」

 

「いつ?」

 

「変身初日ミプ」

 

「小五の時の話を今されても困るよ!」

 

 エミカは頭を抱えた。

 赤司が端末を操作しながら、真面目な顔で補足する。

 

「C.H.A.R.M.の登録資料上も、フラワーメイデンのモチーフ分類は“コスモス系花属性”になっています」

 

「え、分類されてるんですか!?」

 

「はい」

 

「私、知らないところで花の種類まで特定されてたの!?」

 

「魔法少女支援機構なので」

 

「理由になってるようでなってないです!」

 

 ゲキは少しだけ感心したように頷いた。

 

「ハハハ、コスモスか。エミカらしいな」

 

「そう?」

 

「ああ。派手すぎないが、しっかり咲く。風に揺れても折れない」

 

「……そう言われると、悪くないけど」

 

 エミカは少しだけ照れた。

 

 だが、すぐに眉を寄せる。

 問題はまだ残っていた。

 

「でも、ローズさんが薔薇でしょ? 私がコスモス。お父さんは?」

 

「パパか?」

 

「お父さんにもモチーフあるの?」

 

 全員の視線がゲキに集まった。

 

 ゲキは胸を張った。

 何かを答えられるわけではない。

 ただ、視線が集まると自然に胸を張る。

 

 ミププが少し考える。

 

「ゲキは……筋肉ミプ」

 

「魔法少女っぽくない!?」

 

「ハートと筋肉ミプ」

 

「組み合わせが混沌している!?」

 

「ミププも悩んでるミプ!」

 

 赤司は端末に何かを入力しながら呟いた。

 

「ゲキ・マキシマムの分類は、暫定で“ハート/フィジカル系”ですね」

 

「そんな分類あるんですか」

 

「ゲキさんのために作りました」

 

 その時だった。

 

 玄関のチャイムが鳴り、リビングの空気が、ぴたりと止まる。

 

 全員がそちらを見た。

 誰も口にはしなかったが、誰が来たのかは何となく分かった。

 

 ゲキが立ち上がり、玄関へ向かう。

 

 そこに立っていたのは、暗い赤色のロングヘアを片目に流した長身の男だった。

 

 ローズ。

 

 昨夜、魔法少女ローズ・アンリミテッドになった男である。

 

「おはよう、ゲキ……いえ、もうこんにちはの時間帯ね」

 

「……復帰するのが早いな」

 

「ええ。体だけは丈夫にできてるの」

 

 ローズはにこりと笑った。

 昨晩の戦いで傷だらけだったはずだが、C.H.A.R.M.の応急処置を受けたおかげで、回復している。

 

 とはいえ、完全に無傷ではない。

 腕には包帯。

 頬には小さな絆創膏。

 首元にも、薄く湿布が見えている。

 

 それでも、立ち姿は華やかだった。

 

「入るか」

 

「いいの?」

 

「もちろん。良ければ昼食も食べていけ」

 

「あら、嬉しい」

 

「それに、話があるだろ」

 

「ええ。たくさん」

 

 ローズがリビングへ入ると、エミカと赤司が同時に固まった。

 

 エミカはローズを見上げる。

 赤司は端末を持ったまま、入力途中で停止する。

 ミププはクッションの上で小さく震えた。

 

「本当に来たミプ……」

 

「あら、ミププちゃん。昨夜ぶりね」

 

「ちゃん付けはやめるミプ」

 

「考えておくわ」

 

「絶対やめない顔ミプ!?」

 

 ローズは楽しそうに笑った後、エミカを見る。

 そして、深く頭を下げた。

 

「初めましてね。フラワーメイデン」

 

 エミカの肩が跳ねる。

 

「今、その名前で呼ばれるとちょっと……」

 

「あら、ごめんなさい」

 

「普通にエミカでいいです」

 

「分かったわ、エミカちゃん」

 

「……まあ、いいです」

 

 エミカは戸惑いながらも、ローズを見つめた。

 

 背が高い。筋肉もすごい。そして、妙に華やか。

 

 この人が魔法少女になったのか。

 エミカの中で、また情報が渋滞する。

 

「ローズさん」

 

「何かしら」

 

「本当に魔法少女になったんですか?」

 

「なったわ」

 

「変身したんですか?」

 

「したわ」

 

「名乗りも?」

 

「もちろん」

 

「もちろんなんだ……」

 

 ローズは胸に手を当てた。

 そして、まるで舞台の上に立つ役者のように、姿勢を正す。

 

「可憐なる夢を歩む、鍛え抜かれた乙女魂――」

 

 エミカの目がわずかに見開かれた。

 

「魔法少女ローズ・アンリミテッド!」

 

 リビングに沈黙が落ちた。

 父の名乗りに慣れかけていたエミカの心へ、別方向から強烈な何かが突き刺さった。

 

 ちゃんとしている。ちゃんと魔法少女の名乗りになっている。

 ただし、言っているのは百九十センチを超える筋肉質な長髪男性である。

 

「す、すごい……ちゃんとしてる……」

 

「ありがとう」

 

「お父さんより魔法少女っぽい……」

 

「それは否定できないミプ」

 

「なに? パパのもちゃんとしているだろ。娘の涙に――」

 

「お父さんはやらなくていいから!」

 

 エミカが即座に止めた。

 赤司は真面目な顔でメモを取っている。

 

「ローズ・アンリミテッドの名乗り、記録しました」

 

「記録しないでください!」

 

「いえ、必要資料ですので」

 

「C.H.A.R.M.って怖い!」

 

「魔法少女支援機構ですから」

 

「便利な言葉みたいに使わないでください!」

 

 ローズは楽しそうに笑った。

 しかしすぐに、その表情を改める。

 

「エミカちゃん」

 

「はい」

 

「お願いがあるの」

 

「お願い?」

 

 ローズは、もう一度深く頭を下げた。

 

「アタシに、魔法少女としての基本を教えてください」

 

 エミカは固まった。

 

「……私が?」

 

「ええ」

 

「ローズさんに?」

 

「ええ」

 

「私、まだ復帰できてないんですけど」

 

「それでも、あなたは先輩よ」

 

「せ、先輩……」

 

 その言葉は、エミカにとって不思議な響きだった。

 

 自分よりずっと年上で、背も高く、筋肉もあり、人生経験もありそうな男が、真剣に頭を下げている。

 しかも、魔法少女としての教えを請うている。

 

 状況はとても変だ。

 だが、ローズの態度にふざけたところはない。

 

「いや、でも、私まだ高校生で……」

 

「魔法少女歴は長いでしょう?」

 

「それは、まあ」

 

「アタシは昨日生まれたばかりの新人よ」

 

「昨日生まれた魔法少女って言い方、すごいですね」

 

「だから、お願い」

 

 ローズは顔を上げた。その目は真剣だった。

 

「変身した時の体の動かし方。魔力の使い方。浄化の感覚。名乗りの間。可憐さの出し方」

 

「最後は私も分かりません」

 

「そうなの?」

 

「名乗りの間も別に授業で習ったわけじゃないです」

 

「感覚?」

 

「魔法少女としての感覚です」

 

「……やっぱり先輩だわ」

 

「今ので!?」

 

 エミカは困ったようにゲキを見る。

 

「教えてやれる範囲で教えてやればいいさ」

 

「お父さんまで」

 

「ローズは本気だぞ、エミカ」

 

「そ、それは分かるけど……」

 

 エミカは、もう一度ローズを見た。

 

 濃くて、少し扱いに困る人。

 けれど昨日、この人は人々を助けた。

 

 魔法少女になる前から、逃げずに戦った。

 囚われた少年を救うために、手を伸ばした。

 そして、夢を叶えた直後も、自分のためではなく誰かを助けるために戦った。

 

 そのことは、エミカにも伝わっている。

 

「……分かりました」

 

 エミカは小さく頷いた。

 

「私でよければ、教えます」

 

 ローズの表情がぱっと明るくなる。

 

「ありがとう、フラワーメイデン先輩」

 

「先輩はやめてください!」

 

「じゃあ、エミカ先生?」

 

「もっとやめてください!」

 

「エミカちゃん先生」

 

「保育園みたいになってる!」

 

 ミププが小さく笑った。

 

「よかったミプ。新しい後輩ができたミプ」

 

「後輩が濃すぎるよ!」

 

 赤司は端末に入力しながら言った。

 

「C.H.A.R.M.としても、エミカさんには実戦経験者として、可能な範囲で助言をお願いします」

 

「赤司さんまで普通に進めてる……」

 

「もう発生した事実なので」

 

 ローズは胸に手を当てた。

 

「大丈夫よ、エミカちゃん。アタシ、飲み込みはいい方だから」

 

「そういう問題かな……」

 

「あと、ジムにも通うわ」

 

「それは普通に会員として?」

 

「ええ。魔法少女見習い兼、SAOTOME GYM会員として」

 

「ジムでは魔法少女の話はするなよ」

 

「もちろんよ」

 

 リビングに、少しだけ笑いが広がった。

 

 エミカは頭を抱えながらも、その空気に少しだけ安心していた。

 

 昨夜、また悪魔空間は広がった。

 けれど、救えた。

 そして、新しい仲間が生まれた。

 

 それがどういう意味を持つのかは、まだ分からない。

 父に続いて男性の魔法少女が二人目という事実は、C.H.A.R.M.にも精霊界にも大混乱をもたらすだろう。

 

 それでも、少なくともローズは味方だ。

 

「ローズ」

 

 ミププは、クッションの上からそっと浮かび上がった。

 

 その小さな手には、メイクアップ・リグが握られている。

 

 ゲキが使っているものと同じ系統の変身アイテムだった。

 元々は、マジカルメイデンズに新しいメンバーが加わる可能性に備えて、ミププが精霊界から持ってきていた予備の一つ。

 

 結局それが使われることはなかった。

 新しい魔法少女が加わる機会は訪れなかった。

 

 だから、そのメイクアップ・リグはずっと予備のまま。

 

 それが昨夜、ローズの覚悟に反応した。

 

 ゲキの時と同じように。

 またしても精霊界の常識を裏切ったのである。

 

「ローズ」

 

 ミププの声が、少しだけ真面目になる。

 

「これは、元々マジカルメイデンズの新メンバー用に用意していた予備のメイクアップ・リグミプ」

 

 ローズは息を呑んだ。

 

「新メンバー用……?」

 

「そうミプ。本当なら、適性のある女の子が現れた時に使う予定だったミプ」

 

 ミププは、少しだけ遠い目をした。

 

「でも、昨日これがローズに反応したミプ。正直、まだ分からないことだらけミプ。ローズがどうして変身できたのか。体にどんな負担があるのか。精霊界的にどう扱えばいいのか。何もかも未確認ミプ」

 

「ええ」

 

「だから、軽い気持ちで渡すわけじゃないミプ」

 

 ミププは、メイクアップ・リグを両手で差し出した。

 

「魔法少女になるってことは、夢が叶うことだけじゃないミプ。誰かを守るために、怖い場所へ行くことミプ。傷つくかもしれないミプ。泣くかもしれないミプ。後悔するかもしれないミプ」

 

「分かっているわ」

 

「たぶん、まだ全部は分かってないミプ」

 

「……そうね」

 

 ローズは静かに頷いた。

 

 ミププの言葉は厳しかった。

 だが、その厳しさには以前の拒絶とは違う温度があった。

 

 もう一度、突き放すための言葉ではない。

 これから共に立つ者へ向ける、精霊なりの覚悟だった。

 

「でも、それでもローズが選ぶなら」

 

 ミププは、メイクアップ・リグをローズへ差し出した。

 

「これは、ローズが持つミプ」

 

 ローズは、両手でそれを受け取った。

 大きな手のひらの中に、小さな変身アイテムが収まる。

 かつては、まだ見ぬマジカルメイデンズの新メンバーのために用意されていたもの。

 

 けれど今は、ローズの手の中にある。

 

 子供の頃から願い続けた夢へと続く鍵が、今、自分の手の中にある。

 

 ローズは、ゆっくりと胸に抱いた。

 

「ありがとう、ミププちゃん」

 

「だから、ちゃん付けはやめるミプ」

 

 エミカはその光景を見ながら、小さく息を吐いた。

 





4話ローズ編完結です!
ここまでのキャラクターを簡易的に紹介
ネタバレ無しです

キャライラスト(仮)

【挿絵表示】


五月女ゲキ/ゲキ・マキシマム
エミカの父で、SAOTOME GYMの店長。娘のためなら魔法少女にすらなる、筋肉と父性の塊。

五月女エミカ/フラワーメイデン
雨玻町を守ってきた魔法少女。現在は負傷中だが、誰かを守りたい気持ちは誰よりも強い。

ミププ
エミカの相棒である守護精霊。常識人枠……のはずだが、周囲が非常識すぎて毎回叫ぶ羽目になる。

井原壮吉/ローズ・アンリミテッド
魔法少女に憧れ続けた大男。鍛え抜いた肉体と可憐な魂で、ついに夢を咲かせた薔薇の魔法少女。

赤司良介
C.H.A.R.M.の若きエージェント。五月女家との連絡役として、規格外すぎる現場に振り回されている。

風間カリン
C.H.A.R.M.の調査主任。冷静な分析力と行動力を持つが、危険な現場にも出てくるタイプの無茶をする大人。

氷野カズマ
C.H.A.R.M.長官。混乱する部下たちをまとめつつ、ゲキ・マキシマムを正式に支援対象として認めた人物。

浅倉沙織
エミカの親友。事情を知る数少ない一般人で、筋肉と創作資料に対する観察眼が妙に鋭い。

タカワラーイ婦人
デビデヴィ・クライシス先行部隊隊長。高笑いと縦ロールが似合う悪の幹部だが、最近は土下座の機会が多い。

イタヴリ博士
悪魔兵器を作る天才開発者。悪趣味な研究への情熱は本物だが、だいたいゲキたちに壊される。

イヴィト副大隊長
デビデヴィ・クライシス本隊の上位指揮官。無邪気な口調とは裏腹に、婦人たちを震え上がらせる危険人物。

ユーギ・ザムライ・ニャンタ
タカワラーイ婦人に忠誠を誓う猫武者。見た目は可愛いが声と行動は渋く、余計な忠義で事態を悪化させる。
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