日和に憑依転生、百獣海賊団√ 作:Sasa
プロローグ
~光月おでん処刑より10年後~
鈴後の外れより。
常に激しい吹雪が視界を覆い、誰も近づけない雪山。
氷が肌を打ち付けるような極寒の中、一つの集団が訪れていた。
一人の小太りな男が体をさすりながら言う。
「お、おい…。誰か火ィ持ってねぇのか?こんなの寒すぎて、と、凍死しちまう」
「そ、そうだ。焚火だ焚火を焚こう…!」
1歩先を歩いていた長身の男が呆れたように返す。
「お前らバカかよ。こんな吹雪の中で焚火なんぞ焚けるわけねェだろ…」
「け、けどよ…、こんな中でドラゴンを探せなんて、そんな無茶な…」
「なんでオレたちがこんな事をしなきゃならねェんだ…」
「…仕方ねェだろ。キング様からの命令だ」
体を震わせ、手でさすりながら続ける。
「それに、視界が悪いとはいえでかいドラゴンだ。すぐ見つかる───」
「おッおい!なんかあるぞ!!!」
先行していた数人が声を上げた。
寒さで痛む体に鞭を打ち、急いで駆け寄る。
するとそこには、大きいとは言えないものの立派な、この吹雪の中にあるとは思えないほど手入れの行き届いた社が見えてきた。
この極寒に耐えかねていた彼らからしたら希望であり、真っ先に駆け込む。
「なんでこんなもんがここに…」
「と、とりあえず助かったぜ…」
「本当にな」
そんな中、社内を物色していた1人が声を上げる。
「お、おい!これ見てくれ!!」
何だ何だと全員で寄ってみれば、男が手に持っていた紙束には何かが描かれている。
二足歩行に、とげとげとした角。大きな翼を広げた絵だ。
「な、なんだ?こお、こおりりゅう?」
「冰龍…。ま、まさか、こいつか!?」
「こいつ…?」
いまいち理解できていない彼らに男は続ける。
「きっとこいつだ!キング様が言っていた奴は!!」
「「「な、なんだってー!?」」」
その時、外から何かが着地したような音がした。
その瞬間全員の顔が青褪める。
「…お、おい、まさ、まさか」
「だ、誰か見てこいって!」
「お前が行けって!オレはイヤだ!」
そうこう揉めている内に、戸が開かれる。
奴が来たのかと目を向けるとそこには───
「お、女…?」
「な、なんだよビビらせやがって…」
「無駄にビビって損したぜ…。おいお前、こッ───」
急に声が途切れた方を見てみれば、首から上が落ちていた。
それを見て彼らは焦り始める。
「なッ───」
「おっおい!何が───」
「やめッ───」
逃げる間もなく次々と首を落とされていく。
ものの数秒、彼らはわけもわからないまま壊滅していた。
それを為した女はその惨状に目を向け、深くため息を吐いた。
「───はぁ、これで3回目ですか。もうバレてると見ていいですかね…」
はぁ…と再度ため息を吐き、死体を片付け始める。
ここ1週間ですでに2回、これで3回目の侵入者。
このままでは彼ら──百獣海賊団の幹部──が来るのも時間の問題だろう。
死体を凍らせ、刀で細切れにしながら考える。
彼らから逃げ延び、この雪山で過ごして10年。そろそろ覚悟を決めるべきか、と。
彼女───日和は過去の記憶を思い出す。
16年前、とある海賊船の上で生まれた時から、ある”記憶”を持っていた。
所謂転生…この場合は憑依?まぁとにかく、30年近く生きた人間の記憶があったのだ。
生まれてすぐ、両親…”光月トキ”と”光月おでん”を見た瞬間に脳裏に浮かんだのがとある作品。
”ONEPIECE”
前世で人気だった少年漫画だった。
すぐにワンピースの世界に転生したのだと理解した彼女は、最初は歓喜した。
彼女も前世ではファンだったのだ。オタク、というほどでもないが単行本が出たら買っていた程度には好きではあった。
だがすぐに思い出す。
両親は”トキ”と”おでん”、彼らは自分のことを”日和”と呼んだ。
日和…私が生まれたということは、もうすぐトキ、モモの助の三人がワノ国で降りる。
そしておでんはロジャー海賊団について行き、世界の真実を見る代わりに手遅れとなる。
おでんの居ないワノ国は黒炭に乗っ取られ、百獣海賊団の武器工場にされる。
戻ったおでんは一人で花の都に行き、結果5年間裸踊りをすることになって───
5年後に完成する船でワノ国を出るというが、それも結局嘘でしかなく。
結果”無駄”に5年醜態をさらし、ついに討ち入りに行くがひぐらしの邪魔で敗北。
そしてあの「伝説の一時間」となる。
「”ワノ国を開国せよ”!!!」
彼はそう言い放ち、銃弾に撃ち抜かれて死ぬ。
そう。
ワノ国はほぼ詰んでいるのだ。
赤鞘九人男の一部と、モモの助は20年後に飛ばされるが、いわば20年国を放置するわけだ。
光月おでんがあの時に一緒にワノ国に来ていれば違ったかもしれない。
黒炭オロチの見え見えの嘘に騙されなければ、違ったかもしれない。
赤鞘九人男は臣下でありながら、なぜ引き止めなかったのか。
オロチの策略とは言え、国民はなぜまんまと騙されているのか。
記憶を持っているとはいえ、結局当時6歳の子供でしかなく。何もかも変えられなかった。
フツフツと憎悪が湧いてくる。
赤鞘九人男にワノ国の民、そして光月おでんその人に。
見当違いなのは理解してる。
恨むべきは黒炭であり、他を恨むのはただの八つ当たりでしかない。
そして未来を知っていながら何も変えられない私自身を恨むべきだ。
6歳児に無茶なのは理解しているが、力があれば変えられたかもしれない。
弱い奴は死に方も選べない。その通りだ。
原作では日和は河松と逃亡生活を続け、その後に狂死郎に拾われた彼女は「小紫」と名を変えて生きることになる。
だが私は、閻魔を持ち一人で逃げた。
数か月逃亡生活を続ける中、私が転生者だからなのか。
見聞色に目覚めた。
このおかげで1年近く捕まることなく逃げ続けられた。
だが結局1人の子供、鈴後に逃げ込んだはいいがこの寒さで食料があるはずがなく。
意識が朦朧とする中で何とかこの社にたどり着き、安置されていた悪魔の実を口にした。
そこで意識が途切れたが、悪魔の実の能力のお陰で死なずに済んだ。
社にあった文献によれば、冷気を操りすべてを凍てつかせる龍だそうだ。
おそらく大昔に村でもあったのだろう。社に"妖刀"と一緒に奉納されていたところを見るに、信仰でもあったのだろうか。
この吹雪で住めなくなってこの社も放置されたのだろうけれど、感謝するべきだ。
このおかげで生き延びることができた。
耐性ができたおかげでこの環境でも生きることができるし、最初は苦労したがこの吹雪でも生き延びている動物を狩ることもできた。
この吹雪のお陰で追手は来れないのもあり、私は安心して鍛錬を始めることができた。
それに社にあった妖刀も良かった。
閻魔は振れば今の私では死ぬだけだろうし、刀を振ることができなかった。
この妖刀も冷気が使用者を襲う特性があるが、耐性のお陰で何ともなく使える。
そうしてそれから9年近くを鍛錬に費やし、見聞色に武装色の覇気。
さらに血筋だろうが、覇王色まで発現した。
覇王色に関しては下手に放つと気付かれるので、死ぬ気でコントロール出来るよう練習した。
流桜、もとい武装色の覇気の第二段階の内部破壊まではまだ無理そうだが、大分熟達したと思う。
それに見聞色が一番得意みたいで、もう少しで未来が見えるまで行けそうだ。
そんなこんなで10年経ったわけだが、どうやら百獣海賊団に嗅ぎつけられたらしい。
ドラゴンがどうとか言っていたので、私が”光月日和”とはバレてなさそうだが時間の問題だろう。
次に来るとしたら幹部級、さっきの奴らが「キング様」とか言ってたので最悪は大看板だろうか。
「ちょっと勝てませんね…」
流石にきついだろう。
生き残れたとしても捕虜確定だろうし、どうするべきか。
……ワンチャン光月おでんの娘ということを白状して、カイドウと交渉できないか。
私としてはオロチと、赤鞘九人男に復讐できればいい。
それさえ出来ればいいのだ。原作通りならオロチはもう用済み、問題なはずだ。
国民は良いかな。どうせ既に苦しんでいるだろう。
最低限強くはなったし、希少な悪魔の実の能力者でもある。
興味を引くくらいはできそうだ。
この策が通れば百獣海賊団に所属するのは確定、上手くいかなければ死ぬか奴隷扱い。
失敗して、万が一逃げられたらワノ国を一度出てもいいかもしれない。
麦わらの一味が気にならないといえば噓になるし。まぁ逃げられるとは思えないけれど。
・光月 日和
憑依転生主。
原作知識もあっておでんは好いているが、国放置とか色々もあって嫌ってもいる。
好きだけど嫌い。複雑な乙女心ですね(
ただの八つ当たりでしかないことを理解しつつも、おでんを引き止められなかった赤鞘九人男と、裏切った国民を恨んでいる。
設定ガバってる気がしなくもないけど、まぁ二次創作なんでね…(言い訳)
ワノ国編っておでんサイドも結構問題あるよね~?(原作でも言われてた)と思いつつ、引き抜いても修正が容易な立ち位置で、いい感じに曇りそうなキャラっているかなと。
結果コレですね、はい。趣味です。イヴェルカーナも趣味です、これ以外にモンハン要素出す予定はないです。
あと百獣海賊団結構好きなので緑牛返り討ちルート書きたくて…
カイドウさん居たらたぶん行けるよね、終戦から多少時間ありそうだし回復できそう。
ただ死を人生の完成と言ってるカイドウさん、死なせてあげないのどうかなって迷ってます。