申し訳ない……
あれから半年ほど。
任された仕事をこなしつつ、残りの時間に鍛錬をする生活を続けていた。
基本的にはワノ国に散らばった侍の捕縛等。とはいっても光月おでんの処刑から10年、大した侍はすでにおらず木っ端ばかり。
村の護衛に雇われた侍もいるにはいるが大半は賊に落ちた者ばかりで、百獣海賊団の巡回から隠れコソコソと生き延びているのがほとんどだ。
そんな事だから実際に動くのは1時間もなく、最近は暇を持て余していた。
まぁその分鍛錬の時間は増えるので悪くはないが、やはり実戦に勝るモノはないというか……
それはそうと初仕事の時に感じたあの感覚。
あれ以降もたまに感じることもあり、感覚が一瞬ブレるので困るというか。
”アレ”が来るのは決まって侍を斬るときであり、反抗的な一般人を斬っても何も感じない。
これが例えば、相対するのが同格や上の実力者だと明確に隙になるので何とかしたいところである。
そんな悩みはさておいて。
前方の気配が見聞色に引っかかる。
”潮風”が頬を撫でる中、近くにいた船員に声をかける。
「前方右に1つ、船がこちらに向かって来ています。戦闘の準備を」
「こちらからは何も見えませんが……戦闘員に伝えます!」
「お願いします」
ということで現在、ワノ国を離れ船の上である。
というのも、カイドウ様より遠征について行くようにとのことで。
目的は戦力の拡張。目ぼしい海賊を見つけたら勧誘して、従わないのなら無理やり従わせ、それでもならばお察しである。
そうして始まった遠征ではあるがここしばらくは大分暇を持て余していた。
新世界とはいえ早々強者と遭遇するわけもなく、私の出張るまでもない弱者ばかりであった。
───が、今回は”当たり”かもしれない。
おそらく海賊船であろうソレの船員は雑魚ではあるが、船長はそれなりに強そうだ。
そうして航海すること数分。
索敵係の船員が船を視認したようで、報告に声を上げる。
「───海賊船を確認!あの海賊旗は……”鉄拳”のフェールです‼」
「フェール海賊団の船長、”鉄拳”のフェールです。
「億越え……ひとまず勧誘です。ほかの船員はともかく、そのフェールとやらは良い戦力になるでしょう」
「わかりました。とはいえ気性の荒い海賊なので、そう従うかは……」
「その時は斬り伏せるのみでしょう?従わないのならば無理やり従わせ、それでもならば死です」
───ドォン‼
その時、接近してきていた相手の海賊船から砲弾が放たれる。
端から穏便に済ます気はなさそうだ。
先手必勝とばかりに放たれた砲弾はこのままだとこちらの船に直撃するだろう。
「───砲弾はこちらで対処します。敵船に近づき捕縛の準備、相手は能力者なので海楼石の手錠を用意するように」
迫る砲弾を見据え、刀を抜く。
「私は先に乗り込みます。───”氷刃・裏”」
下段から切り上げるように刀を振りぬき、冷気を帯びた斬撃を飛ばす。
砲弾を斬り裂いた斬撃は相殺……されることなくそのまま敵船へと向かい、船のマストを切り落とした。
それにより航行不能となった海賊船をめがけて、”宙を蹴り飛び上がる”。
「──ヒカゲ様!援護は」
「不要です」
呼びかける船員に対し食い気味に返す。
飛んでくる砲弾は斬り落とし、敵船の甲板に着地する。
敵船のクルーの一人が狼狽える。
「あ、あいつ空を飛んで来ました船長ッ!!」
「こんなんで狼狽えるんじゃねェ。どうせ月歩に似たモンだろォが」
「……で、女一人で勝てるとでも思ってんのか?」
にやりと笑ったフェールはこちらを挑発するように問いかける。
「当たり前です。あなた以外は雑魚でしかない、数にもならないでしょう?」
「───言ってくれるじゃねェか」
その時、背後からクルーの一人が斬りかかる。
───が、素直に斬られてやるわけもなく。
振りかぶった剣の上から首を斬り落とした。
それを皮切りに、乗り込み始めた部下たちが戦闘を始める。
「───残念。奇襲するならばその見え見えの殺気を消すことですね」
「……それで、2つ選択肢を与えましょう。こちらに……百獣海賊団に素直に従うか、痛めつけられて従うか。新世界を生きる海賊であるのならば、何が賢い選択か理解できるでしょう?」
「……死んでも従わねェと言ったら?」
「お望みどおりに、死あるのみです」
「だろうな。……ふざけやがって」
フェールは額に筋を浮かべる。
激昂した彼は拳を鉄へと染め、大きく振りかぶり突進してくる。
「──なめてんじゃ、ねェぞォオオ!!!」
「
───ギィン‼
鉄拳を刀で受ける。
その拳と刀は火花を散らし競り合う……ことなく弾かれた。
「ッな!?」
「今ならまだ間に合いますが。”上”には従うのがこの海で長生きするコツですよ」
弾かれ体勢を崩したフェールは、こちらを睨みつけながら叫ぶ。
「ふざけんじゃねェ‼急に襲い掛かってきて従えだとォ!?ンなの通るわけねェだろうが‼」
「先に仕掛けてきたのはそちらでしょうに……」
と、フェールは腰を入れ拳を構える。
その腕は鋼鉄に変わり、力強く握りしめた拳は黒へと染まる。
「……武装色。まぁ使えますよね」
「覚悟しろォ、お前はここでコロス‼その刀諸共粉々に殴り潰してやる……‼」
「やれるものなら、良いでしょう。その拳が届いたのなら殺さずにおいてあげます」
「ナメやがってェ……‼」
先ほどよりも力強く、フェールが飛び出した。
「喰らえ‼”
「───”氷刃・表”」
武装色により黒く染まった拳を大きく振りかぶり、顔面目掛けて振り下ろされる。
こちらも刀を上段に構え、冷気と武装色を纏った刃を振り下ろした。
黒く染まった拳と刃は互いに触れあい、今度は弾かれることなく───通り抜けた。
「ッグ、がぁああアアアァ!!!!!!!!」
フェールの腕は肘から先が二股に割れ、断面は凍り付いていた。
”氷刃・裏”は冷気を纏った斬撃を飛ばす遠距離攻撃技。
対して”氷刃・表”は、冷気を纏った刀で斬り裂く近距離攻撃技。
詰まる所、ただ冷気を纏っただけの──今回は覇気も纏った──縦斬りである。
───コツ、コツ
蹲るフェールを見下ろし、刀を突きつける。
「そんな拙い武装色で殺れるわけないでしょう?」
「クソッ……‼」
「そのまま放置すればじきに腕は壊死するでしょうね。……しかし、こちらに従うというのならば助けてあげましょう。どうしますか?」
「クッ……わ、わかった‼あんた達に従うッ‼だからた、たすけてくれ」
「───いいでしょう」
───ドッ‼
いまだ戦闘していた残りのクルーを覇王色で落とす。
フェールと気絶した彼らはこちらの部下によって拘束されていく。
「───覇王色持ちかよ……そんで、約束通り治してくれよ」
「何のことでしょう。確かに助けるという事は約束しましたが、その腕を治すとは言っていませんよ?」
「なッ!?」
「第一、その腕は貴方の拙い武装色のせいでしょう?鍛錬不足、貴方の責任です」
「ふざけんなァ‼この───」
暴れようとした彼をみねうちで気絶させる。
「───さて、死なない程度に手当てしてあげなさい。腕は問題あるようであれば斬り落として良いですよ」
「わかりましたッ!おい医療班早くしろッ」
フェールが駆け寄ってきた医療班に運ばれていく。
私も船に戻りますかと歩き出した矢先、電伝虫を持った部下が駆け寄ってくる。
「ヒカゲ様!カイドウ様からです‼」
『───ウォロロロロ、順調か?』
「カイドウ様。順調……と言ってもいいものかわかりませんが、億越えを1人捕まえました。と言っても片腕は使い物にならなさそうですが」
『十分だ。それに億越えか……お前にもすぐ懸賞金が付くだろう』
「ありがとうございます」
『あァ、それで一旦戻ってこい。新しい指示を出す』
「承知しました。……遠くに何隻かいますが」
『”そいつらは放っておけ”。どうせ手は出してこねェよ、ウォロロロロ……!』
そういうと通信が切れる。
それにしても今回は運が悪かった。
出会った強者はフェール一人だけだし、そもそも遭遇した海賊も少ない。
「さて、ワノ国へ戻りますよ」
「はい!……お前ら、さっさと奪うモン奪って行くぞ‼」
部下たちが慌ただしく動き始める。
それを横目に見つつ、遠くからこちらを観察している船───海軍を見聞色で探る。
覇気の強さ的に中将クラスも居そうだが、こちらに近づいてくる気配は無さそうだ。
それを確認し、敵意は無いと判断する。
それに追ってくる気も無さそうだ。
それにしても次の指示か……
最近は格下等としか戦っていない。
「……そろそろ強者と戦いたい所ですね」
それこそ、海軍中将とか。
という事でオリキャラのフェールです。
テツテツの実の能力者で、覇気と合わせてかなり固くなります。
と言っても1億どまりですし、例によってまた出てくることはないので忘れて大丈夫です。
原作に登場しない悪魔の実って難しいですね、数が多くて……
戦闘シーンちょっとまだ拙いですね。
次書く予定の戦闘はもうちょっとうまく書きたいですね……
そして現時点の主人公ですが強さ的には2~3億あたりになりますかね?
何かしら手柄を上げれば飛び六胞に昇格できるくらいには海賊団内でも上に上がってきてます。
今回遠征を指示されたのも、ワノ国内でそれなりに成果を上げてきてたからですね。
今週内にもう1話投稿したいなって思ってますのでもうしばらくお待ちを……
そして私事ですが人差し指の爪が割れました。
痛い……